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第一夜 理科室の白い手
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街の中心から少し離れた高台の上に、私立鳳城学園はある。
緩やかな坂道を上っていくと、やがて白亜の建物群が巨大な影のように暗闇に浮かび上がる。
遠くから見れば、それはまるで月を抱く城壁のようだ。
街の明かりは遠ざかり、周囲は深い闇に沈む。
学園の正門へと続く並木道は、等間隔に並んだ街灯がかろうじて足元を照らすだけ。
路面は暗く沈み、夜風に揺れる枝葉だけが、時折ささやくような音を立てている。
高い塀が敷地をぐるりと囲み、正面には立派な正門がそびえ、
最新式のゲートの中央では、銀色のエンブレムが月明りを受けてわずかに光る。
そこに刻まれているのは、大きく翼を広げた鳳凰の紋章。
私立鳳城学園は、日本でも有数の名門男子高校である。
ここに通う生徒たちは、政財界や文化界の名士の子息がほとんどで、卒業生には総理大臣から企業の創業家、著名な芸術家も多く名を連ねている。
親から子へ、孫へと受け継がれてきたのは、家柄と財だけではない。
鳳城学園に在籍するという"紋章"そのものが、彼らの誇りだ。
固く閉ざされた正門をくぐることが許されるのは、ごく一握りの選ばれし者のみ。
明るい未来を約束された彼らに、学園は最高の教育環境を提供する。
鳳城学園は、長い歴史と伝統を誇りながら最先端の教育環境を備えた、どこから見ても完璧な学園なのである。
──だが、この学園には数年前から囁かれている仄暗い噂があった。
誰もいない校舎の中で、夜な夜な起こる、不可解で奇妙な現象。
影が映る鏡、窓に浮かぶ白い手、どこからともなく聞こえてくるピアノの音……
完璧な学園の持つ、もう一つの夜の顔。
そのいくつかは「七不思議」として、生徒たちの間でまことしやかに語られている────
*
カラン……カラン……
静まり返った廊下に、金属がぶつかり合うような乾いた音が響いている。
夜の校舎は、昼間のざわめきが嘘のように息をひそめ、暗い闇に沈んでいる。
その廊下を、一人の生徒が、ぶつぶつと何かを呟きながら歩いていた。
篠原悠生──鳳城学園二年生。
悠生は長めの黒髪を耳にかけると、目を細めて音のする方へと視線を送る。
口をつぐみ、耳を澄ませて、音の響きの質を探る。
反射音の方向、距離の変化、空気の流れ……
頭の中で、理屈と可能性をいくつも並べ、幾通りもの推察を行いながら、目的の場所へと歩を進める。
ポケットから取り出したノートを、慣れた手つきでパラパラとをめくる。
そこにびっしりと書き込まれているのは、さまざまなメモやスケッチ。
その中でも大きく丸が付けられていた文字を、悠生は指でなぞった。
鳳城学園七不思議──第三の怪異「理科室の白い手」。
夜の理科室の窓に浮かび上がる、白い手。
かって実験の失敗で手を失った生徒の右手が、夜な夜な持ち主を探して彷徨っている……そんな噂だ。
(理科室なら、骨格標本とか、ホルマリン漬けとか、もっと怪談に結び付きそうなものがあるのに)
敢えての、「白い手」。
悠生は眉をほんの少しだけ持ち上げる。
──この怪奇現象には、何か原因があるはずだ。
廊下の突き当りで足を止めた悠生は、「理科室」と記された扉をゆっくりと引く。
真っ暗な部屋は非常灯に照らされ、棚の中のビーカーやフラスコがぼんやりと浮かび上がっている。
「よし、と」
怯むことなく暗い部屋に足を踏み入れた悠生は、慣れた手つきで鞄から次々に機械を取り出していく。
温湿度計、小型メトロノーム、携帯型差圧計、レーザー水平器、録音機──すべて業務用の高精度機器だ。
それらすべてには「鳳城学園 オカルト研究会」とテプラが貼られている。
悠生は、オカルト研究会、通称オカ研の唯一の部員だった。
幽霊や怪談を「科学的に解明する」ことを目的とした、風変わりな部活動。
一般の生徒はその部室がどこにあるのかすらも知らないだろう。
当然、そこに所属している悠生も、学園内では敬遠される存在であった。
休み時間に校舎裏で風向きを測っていたり、誰もいない教室で一人録音機を仕掛けていたり──
「あいつの存在そのものがオカルト」だと、もっぱら噂されている。
しかし悠生にとっては、オカ研は夢のような場所だった。
廃部寸前にも関わらず備品は異様に充実しており、誰が何のためにそろえたのかわからないが、最先端の機械が使い放題だ。
科学オタクの悠生にとって、こんなにも素晴らしい部活は他になかった。
「ほんと、鳳城じゃなきゃ出来ないよな、こんなこと」
口元を緩ませ、独り言をもらしながら作業に取り掛かる。
カラン……カラン……
金属音は相変わらず響き続けている。一定間隔。
悠生は小型メトロノームを机の上に置き、針の動きと音のタイミングを照合する。間隔を正確に測り、ノートに数字と波形スケッチを書き込む。
次に、棚の上段に紙テープを貼りつけ、空調のわずかな流れでも揺れるようにして観察。
レーザー水平器の赤い点を棚脚に当て、反射店のブレ幅を数値化して振動の有無を確認した。
差圧計のノズルを天井側と床側に交互に向け、空気の出入りをミリ単位で記録する。
「……やっぱり、風と振動だ。問題は、“どこから”来てるかだな……」
顎に細い指を這わせ、理科室をぐるりと見渡す。
「あそこか……?」
理科室の奥、天井近くにある四角い点検口。
悠生は右手を上げると、何かを確かめるように空中で何度か指を振った。
ほんのわずかに空気が冷たい気がする。
温湿度計を掲げてみれば、表示されている数値が数字一つ分だけ下がった。
「ってことは……」
手がかりを見つけた悠生の瞳の奥がきらりと輝く。
悠生は床の排水溝に目を留めると、ためらうことなく床に這いつくばり、理科室の冷たい床に頬をつけた。
いくら隅々まで清掃が行き届いている鳳城学園の校舎とはいえ、腹ばいになれば制服は容赦なく埃や粉塵で汚れる。
悠生はそんなことは微塵も気にしていなかった。
排水溝の金属格子に鼻先をぴたりとつけ、くんくんと犬のように嗅ぎまわる。
そして、深く息を吸い込み、鼻腔いっぱいに排水溝の匂いを取り込んだ。
化学薬品の匂いじゃない。
悠生の口元がわずかに緩む。
────これは外から吹き込む外気の匂いだ。
その時だった。
ガラガラガラッ
金属がきしむような大きな音とともに、理科室の扉が開いた。
床に這いつくばったままの悠生は、ぴたりと体を硬直させ、長い前髪の隙間から視線だけを上げる。
「あ~あ、まじくそだりぃ……」
低く、気だるそうな声が闇の中に響く。
ドアの隙間から流れ込む空気の変化で、悠生は誰かが入ってきたことを察する。
────こんな夜更けににわざわざ校舎に忍び込む物好きが、自分以外にもいたというのか?
(夜間は正門のゲートだって電子施錠されてるはずだ)
自分は抜け道から侵入していることを棚に上げて、悠生は訝しむ。
まだ相手はこちらに気づいていない。
悠生は体勢を変えず、息をひそめたまま、暗闇に目をこらす。
ぎゅむっ
「ぎぇっ!?」
突然、背中に重みがかかった。しかも遠慮のない全体重。
振り返る間もなく、その足は跳ね退き────
「う、うわぁぁぁぁっ!?!?」
盛大な叫び声と共に、尻もちをつく鈍い音が響いた。
「……い…ったいなぁ……」
悠生は背中を押さえながら立ち上がる。
床に尻もちをついているのは、背の高い青年だった。
非常灯に照らされた紙は金色に染まり、制服は着崩されて、耳にはピアスが光っている。
いかにも「不良です」と自己紹介しているかのような出で立ち。
悠生が普段から、本能的に避けているタイプだ。
無駄に偉そうで、攻撃的で、用もないのにこちらに絡んできたり揶揄ってきたりするような、いけ好かない人種。
その「いかにもな不良」が、目の前で腰を抜かしている。
「……なんだ、人かよ。何してんだよ、こんなとこで、こんな時間に」
情けなく腰を抜かしたまま、青年が言う。
「こんなところでこんな時間に何をしている、は、僕のセリフですよ。どうやって入ったんですか」
「いや、お前こそどうやって入ったんだよ。電子錠の番号なんて関係者しか──」
「抜け道があるんですよ。我が研究会に代々伝わる、ね」
「研究会?」
「……オカルト研究会です」
悠生はわざとらしく口角を上げた。
その時だった。
悠生の背後で、ふわりと白いものが揺れる。
薄い煙のような、輪郭の定まらない白い靄。
それは非常灯の明かりを受けて、窓ガラスに沿ってするりと漂っていく。
「お、おい、あれ……!」
青年が悠生の肩越しに窓の方を指差す。指先がかすかに震えている。
「……鳳城学園七不思議、第三の怪異──理科室の白い手」
悠生はわざと低い声で囁く。
「実験に失敗した生徒の手が、持ち主を探して夜な夜な────」
「やめろやめろやめろ……!」
青年の頬に冷や汗が伝う。
悠生はその様子を心底楽しむように見下ろし、わざとらしく首を傾げた。
「怖いんですか?」
青年は返事をせず、青ざめた顔のまま、ごくりと唾を飲み込んだ。
喉仏が上下するのが分かる。
視線は窓際を漂う白い靄に釘付けのままだ。
「……でもね、怪奇現象なんて、実は単純なものなんですよ」
悠生は温湿度計と差圧計を手に、得意げに天井を指さした。
「たとえば、あの点検口……」
悠生はそう言いながら、立てかけてあった脚立を引き寄せると、一段目に足を掛ける。
脚立の金属がきしむ音が、理科室の静けさにやけに大きく響いた。
「おい、あぶねえって」
背後から青年の声が飛ぶ。
「でも、上らないと確かめられないので。おそらく、原因はあれなんですよ」
「……あれを見ればいいのか?」
青年が天井の点検口を顎でしゃくった。
「はい。おそらく、ダクトから冷気が漏れています。なので、それを直せばよいかと」
「……俺がやる」
思いがけない申し出に、悠生は首をかしげた。
「え、なんでですか」
本当にわからない、という顔で目を細める。
青年は少し言い淀み、代わりに悠生の頭からつま先まで視線を送る。
「……お前じゃ届かないだろ」
平均よりもやや小柄な身長のことを言っているのか、と、悠生は理解する。
たしかに、青年は悠生よりもずっと背が高い。
「僕でも、天板に乗れば届きますよ、たぶん」
「いいから貸せって」
青年が悠生の腕を掴んで脚立から引き離して、呟いた。
「……あぶないだろ」
「はあ……」
悠生はあまり納得していなそうな様子で頷いた。
青年は悠生の手から差圧計を取り上げると、片手で脚立を押さえながらゆっくりと上った。
長い指先が器用に点検口の縁を探る。
「ネジが緩んでるな。確かに冷たい気がする。……コインある?」
「え、あ、はい」
言われるがまま、悠生はポケットから硬貨を取り出す。
青年は器用にネジを締めると、中の部品を引っ掛けるように固定する。
カラン……カラン……と響いていた音が、ぴたりと止む。
窓際の白い靄も、スッと消えていく。
「……やっぱり、空調ダクトから冷気が漏れてたんですね。それが湿った空気と混ざることで、結露や水蒸気が発生する。それが非常灯に照らされて、白い靄になってたんです。要は、空調機器の故障ですね」
悠生はノートに記録を書き込みながら、一人でうんうんと頷いた。
「……それが『白い手』の正体?」
悠生のノートを覗き込みながら、青年が尋ねる。
「そうです。ちなみに、七不思議の第一の怪異『影だけが映る鏡』も、第二の怪異『校内放送の笑い声』も、ちゃんと原因がありました。どちらもちょっとした設備不良が原因です。それに尾ひれがついて七不思議として広まった感じですね」
理科室の様子をさらさらとスケッチに描きながら、図形やメモも書き足していく。
あっという間にノートのページが埋まっていった。
「怪奇現象の正体なんて、そんなものですよ」
ノートに視線を落としたまま、悠生は言った。
「……お前はそれを一人で調べてるわけ?」
「はい。オカルト研究会なので。学園の七不思議を追っています」
ノートをパタンと閉じると、机の上の道具を片付け始める。
この学園に入らなければ使うことも出来なかっただろう、高度な機械の数々。
温湿度計ひとつをとっても、一般の学校にある安価な簡易型ではなく、研究機関が使用するような精密モデルだ。
理科室を見渡してみても、試薬棚のロックは最新式で、湿度や温度の記録も自動で防災センターに送信されるようになっている。
顕微鏡は研究者仕様の大型双眼タイプで、光学レンズは海外の専門メーカー製。ガス栓やドラフトチャンバーは大学並みに整備され、換気システムまで産業レベルの性能を備えている。
学園の廊下や教室の建材も上質で、床は傷一つなく磨き上げられ、天井には最新の空調と照明が整然と配置されている。
ここが高校であることを忘れそうになるほどの環境。
(だからこそ、こんな風に空調機器が壊れているのは不自然だ……)
点検口のネジの緩みだって、定期点検をしていればすぐに気が付くはずだろう。
悠生が考え込んでいたときだった。
「誰かいるのか?!」
理科室の扉が勢いよく開き、懐中電灯の光が差し込んだ。顔を上げれば、入口に立っている警備員の姿が見える。
「また君か! 夜間立入禁止だと言っているだろう、篠原くん」
悠生が言い訳を探す前に、背後にいた青年が一歩前に進み出る。
「オヤジからの依頼だよ。なんだっけ、異音調査? 夜にしか出ないとかいうやつ。詳しそうだから篠原に頼んだんだよ」
青年は差圧計をひらひらと振って見せる。
その姿は堂々としていて、あたかも最初から用意されていた口実のようだった。
警備員は訝しげにその顔へ懐中電灯を向け──そして一瞬で表情を変え、慌てて背筋を伸ばした。
「あ、あなたは……! そ、そうでしたか。もう調査は?」
「音、しなくなったでしょ」
「確かに……。では、早めにお帰りください」
「はーい、おつかれさん」
去って行く警備員の後ろ姿に青年が手を振る。
懐中電灯の光が廊下の奥に吸い込まれ、足音だけがしばらく残る。
「……僕の名前」
その背中が角を曲がったのを確認してから、悠生は青年を見上げた。
「僕の名前、知ってたんですか」
「いや? さっきあいつが呼んでたから、篠原っていうんだなって」
青年は肩をすくめ、涼しい顔で答える。
「……意外と機転が利きますね。助かりました」
「どうも。オカ研くん」
「篠原悠生です。あなたは?」
"オカ研"と呼ばれたことにムッとした悠生は立ち上がると、改めて名を名乗った。
青年は、ほんの一瞬だけ視線を逸らし、窓の外へと泳がせる。
その横顔は、何かを迷っているように見えた。
そして、短い沈黙のあとで、
「……蓮」
とだけ答えた。
悠生は蓮と名乗る青年の顔をじっと見つめる。
まるで、未知の怪異を解き明かすときのように。
相手を測ろうとする冷静さと、好奇心に沸き立つ興奮とを織り交ぜた、研究者の瞳。
そんな悠生のまっすぐな視線が居心地が悪いのか、蓮はあからさまに話題を変えた。
「七不思議って、あといくつ残ってんの」
「未調査が4つ。次は第四の怪異『ひとりでに鳴る音楽室のピアノ』です」
悠生は再びノートを広げながら答える。
「あぁ、ショパンね」
蓮は窓辺に歩み寄り、夜の校庭を見下ろした。ガラスに映る横顔が、闇の中でわずかに光を拾う。
その指先が、静かに音を探すように動いている。
「え?」
「ショパンの『別れの曲』だろ。何だっけ、死ぬまで練習を続けた生徒の幽霊が──っていう噂だろ? まあ、別にあの曲、別れをテーマに作曲されたわけでもないんだけどね」
「……詳しいですね」
金髪の不良がクラシック音楽を語る姿に、悠生は興味を惹かれる。
「ま、警備員に捕まらないように、せいぜい頑張って」
蓮はそう言って踵を返し、足音を響かせながら廊下の闇に消えて行った。
残された悠生は、静まり返った理科室でわずかに残る冷たい空気を感じていた。
窓の外では風が木々を揺らし、枝葉の影が校庭をゆらゆらと渡っていく。
胸の奥が、ざわざわと音を立てる。
未知のものに触れたときに特有の、胸が騒ぐような、高揚にも似た感覚。
怪異は解き明かしたはずなのに、まだ気持ちが落ち着かないのは、解き明かせない何かがまだ残っているからだろうか。
悠生は窓を開けると、目を閉じて大きく息を吸い込んだ。
秋の夜の匂いに、かすかに煙草と柑橘めいた香りが混じる。
冷えた空気の中に、さっきまでここにいた男の匂いが混じっているのを、悠生は感じた。
────これが、悠生と蓮の、最初の出会いだった。
そして、この出会いが、この先の夜をどれだけ騒がせることになるのかを、悠生はまだ知らなかった。
緩やかな坂道を上っていくと、やがて白亜の建物群が巨大な影のように暗闇に浮かび上がる。
遠くから見れば、それはまるで月を抱く城壁のようだ。
街の明かりは遠ざかり、周囲は深い闇に沈む。
学園の正門へと続く並木道は、等間隔に並んだ街灯がかろうじて足元を照らすだけ。
路面は暗く沈み、夜風に揺れる枝葉だけが、時折ささやくような音を立てている。
高い塀が敷地をぐるりと囲み、正面には立派な正門がそびえ、
最新式のゲートの中央では、銀色のエンブレムが月明りを受けてわずかに光る。
そこに刻まれているのは、大きく翼を広げた鳳凰の紋章。
私立鳳城学園は、日本でも有数の名門男子高校である。
ここに通う生徒たちは、政財界や文化界の名士の子息がほとんどで、卒業生には総理大臣から企業の創業家、著名な芸術家も多く名を連ねている。
親から子へ、孫へと受け継がれてきたのは、家柄と財だけではない。
鳳城学園に在籍するという"紋章"そのものが、彼らの誇りだ。
固く閉ざされた正門をくぐることが許されるのは、ごく一握りの選ばれし者のみ。
明るい未来を約束された彼らに、学園は最高の教育環境を提供する。
鳳城学園は、長い歴史と伝統を誇りながら最先端の教育環境を備えた、どこから見ても完璧な学園なのである。
──だが、この学園には数年前から囁かれている仄暗い噂があった。
誰もいない校舎の中で、夜な夜な起こる、不可解で奇妙な現象。
影が映る鏡、窓に浮かぶ白い手、どこからともなく聞こえてくるピアノの音……
完璧な学園の持つ、もう一つの夜の顔。
そのいくつかは「七不思議」として、生徒たちの間でまことしやかに語られている────
*
カラン……カラン……
静まり返った廊下に、金属がぶつかり合うような乾いた音が響いている。
夜の校舎は、昼間のざわめきが嘘のように息をひそめ、暗い闇に沈んでいる。
その廊下を、一人の生徒が、ぶつぶつと何かを呟きながら歩いていた。
篠原悠生──鳳城学園二年生。
悠生は長めの黒髪を耳にかけると、目を細めて音のする方へと視線を送る。
口をつぐみ、耳を澄ませて、音の響きの質を探る。
反射音の方向、距離の変化、空気の流れ……
頭の中で、理屈と可能性をいくつも並べ、幾通りもの推察を行いながら、目的の場所へと歩を進める。
ポケットから取り出したノートを、慣れた手つきでパラパラとをめくる。
そこにびっしりと書き込まれているのは、さまざまなメモやスケッチ。
その中でも大きく丸が付けられていた文字を、悠生は指でなぞった。
鳳城学園七不思議──第三の怪異「理科室の白い手」。
夜の理科室の窓に浮かび上がる、白い手。
かって実験の失敗で手を失った生徒の右手が、夜な夜な持ち主を探して彷徨っている……そんな噂だ。
(理科室なら、骨格標本とか、ホルマリン漬けとか、もっと怪談に結び付きそうなものがあるのに)
敢えての、「白い手」。
悠生は眉をほんの少しだけ持ち上げる。
──この怪奇現象には、何か原因があるはずだ。
廊下の突き当りで足を止めた悠生は、「理科室」と記された扉をゆっくりと引く。
真っ暗な部屋は非常灯に照らされ、棚の中のビーカーやフラスコがぼんやりと浮かび上がっている。
「よし、と」
怯むことなく暗い部屋に足を踏み入れた悠生は、慣れた手つきで鞄から次々に機械を取り出していく。
温湿度計、小型メトロノーム、携帯型差圧計、レーザー水平器、録音機──すべて業務用の高精度機器だ。
それらすべてには「鳳城学園 オカルト研究会」とテプラが貼られている。
悠生は、オカルト研究会、通称オカ研の唯一の部員だった。
幽霊や怪談を「科学的に解明する」ことを目的とした、風変わりな部活動。
一般の生徒はその部室がどこにあるのかすらも知らないだろう。
当然、そこに所属している悠生も、学園内では敬遠される存在であった。
休み時間に校舎裏で風向きを測っていたり、誰もいない教室で一人録音機を仕掛けていたり──
「あいつの存在そのものがオカルト」だと、もっぱら噂されている。
しかし悠生にとっては、オカ研は夢のような場所だった。
廃部寸前にも関わらず備品は異様に充実しており、誰が何のためにそろえたのかわからないが、最先端の機械が使い放題だ。
科学オタクの悠生にとって、こんなにも素晴らしい部活は他になかった。
「ほんと、鳳城じゃなきゃ出来ないよな、こんなこと」
口元を緩ませ、独り言をもらしながら作業に取り掛かる。
カラン……カラン……
金属音は相変わらず響き続けている。一定間隔。
悠生は小型メトロノームを机の上に置き、針の動きと音のタイミングを照合する。間隔を正確に測り、ノートに数字と波形スケッチを書き込む。
次に、棚の上段に紙テープを貼りつけ、空調のわずかな流れでも揺れるようにして観察。
レーザー水平器の赤い点を棚脚に当て、反射店のブレ幅を数値化して振動の有無を確認した。
差圧計のノズルを天井側と床側に交互に向け、空気の出入りをミリ単位で記録する。
「……やっぱり、風と振動だ。問題は、“どこから”来てるかだな……」
顎に細い指を這わせ、理科室をぐるりと見渡す。
「あそこか……?」
理科室の奥、天井近くにある四角い点検口。
悠生は右手を上げると、何かを確かめるように空中で何度か指を振った。
ほんのわずかに空気が冷たい気がする。
温湿度計を掲げてみれば、表示されている数値が数字一つ分だけ下がった。
「ってことは……」
手がかりを見つけた悠生の瞳の奥がきらりと輝く。
悠生は床の排水溝に目を留めると、ためらうことなく床に這いつくばり、理科室の冷たい床に頬をつけた。
いくら隅々まで清掃が行き届いている鳳城学園の校舎とはいえ、腹ばいになれば制服は容赦なく埃や粉塵で汚れる。
悠生はそんなことは微塵も気にしていなかった。
排水溝の金属格子に鼻先をぴたりとつけ、くんくんと犬のように嗅ぎまわる。
そして、深く息を吸い込み、鼻腔いっぱいに排水溝の匂いを取り込んだ。
化学薬品の匂いじゃない。
悠生の口元がわずかに緩む。
────これは外から吹き込む外気の匂いだ。
その時だった。
ガラガラガラッ
金属がきしむような大きな音とともに、理科室の扉が開いた。
床に這いつくばったままの悠生は、ぴたりと体を硬直させ、長い前髪の隙間から視線だけを上げる。
「あ~あ、まじくそだりぃ……」
低く、気だるそうな声が闇の中に響く。
ドアの隙間から流れ込む空気の変化で、悠生は誰かが入ってきたことを察する。
────こんな夜更けににわざわざ校舎に忍び込む物好きが、自分以外にもいたというのか?
(夜間は正門のゲートだって電子施錠されてるはずだ)
自分は抜け道から侵入していることを棚に上げて、悠生は訝しむ。
まだ相手はこちらに気づいていない。
悠生は体勢を変えず、息をひそめたまま、暗闇に目をこらす。
ぎゅむっ
「ぎぇっ!?」
突然、背中に重みがかかった。しかも遠慮のない全体重。
振り返る間もなく、その足は跳ね退き────
「う、うわぁぁぁぁっ!?!?」
盛大な叫び声と共に、尻もちをつく鈍い音が響いた。
「……い…ったいなぁ……」
悠生は背中を押さえながら立ち上がる。
床に尻もちをついているのは、背の高い青年だった。
非常灯に照らされた紙は金色に染まり、制服は着崩されて、耳にはピアスが光っている。
いかにも「不良です」と自己紹介しているかのような出で立ち。
悠生が普段から、本能的に避けているタイプだ。
無駄に偉そうで、攻撃的で、用もないのにこちらに絡んできたり揶揄ってきたりするような、いけ好かない人種。
その「いかにもな不良」が、目の前で腰を抜かしている。
「……なんだ、人かよ。何してんだよ、こんなとこで、こんな時間に」
情けなく腰を抜かしたまま、青年が言う。
「こんなところでこんな時間に何をしている、は、僕のセリフですよ。どうやって入ったんですか」
「いや、お前こそどうやって入ったんだよ。電子錠の番号なんて関係者しか──」
「抜け道があるんですよ。我が研究会に代々伝わる、ね」
「研究会?」
「……オカルト研究会です」
悠生はわざとらしく口角を上げた。
その時だった。
悠生の背後で、ふわりと白いものが揺れる。
薄い煙のような、輪郭の定まらない白い靄。
それは非常灯の明かりを受けて、窓ガラスに沿ってするりと漂っていく。
「お、おい、あれ……!」
青年が悠生の肩越しに窓の方を指差す。指先がかすかに震えている。
「……鳳城学園七不思議、第三の怪異──理科室の白い手」
悠生はわざと低い声で囁く。
「実験に失敗した生徒の手が、持ち主を探して夜な夜な────」
「やめろやめろやめろ……!」
青年の頬に冷や汗が伝う。
悠生はその様子を心底楽しむように見下ろし、わざとらしく首を傾げた。
「怖いんですか?」
青年は返事をせず、青ざめた顔のまま、ごくりと唾を飲み込んだ。
喉仏が上下するのが分かる。
視線は窓際を漂う白い靄に釘付けのままだ。
「……でもね、怪奇現象なんて、実は単純なものなんですよ」
悠生は温湿度計と差圧計を手に、得意げに天井を指さした。
「たとえば、あの点検口……」
悠生はそう言いながら、立てかけてあった脚立を引き寄せると、一段目に足を掛ける。
脚立の金属がきしむ音が、理科室の静けさにやけに大きく響いた。
「おい、あぶねえって」
背後から青年の声が飛ぶ。
「でも、上らないと確かめられないので。おそらく、原因はあれなんですよ」
「……あれを見ればいいのか?」
青年が天井の点検口を顎でしゃくった。
「はい。おそらく、ダクトから冷気が漏れています。なので、それを直せばよいかと」
「……俺がやる」
思いがけない申し出に、悠生は首をかしげた。
「え、なんでですか」
本当にわからない、という顔で目を細める。
青年は少し言い淀み、代わりに悠生の頭からつま先まで視線を送る。
「……お前じゃ届かないだろ」
平均よりもやや小柄な身長のことを言っているのか、と、悠生は理解する。
たしかに、青年は悠生よりもずっと背が高い。
「僕でも、天板に乗れば届きますよ、たぶん」
「いいから貸せって」
青年が悠生の腕を掴んで脚立から引き離して、呟いた。
「……あぶないだろ」
「はあ……」
悠生はあまり納得していなそうな様子で頷いた。
青年は悠生の手から差圧計を取り上げると、片手で脚立を押さえながらゆっくりと上った。
長い指先が器用に点検口の縁を探る。
「ネジが緩んでるな。確かに冷たい気がする。……コインある?」
「え、あ、はい」
言われるがまま、悠生はポケットから硬貨を取り出す。
青年は器用にネジを締めると、中の部品を引っ掛けるように固定する。
カラン……カラン……と響いていた音が、ぴたりと止む。
窓際の白い靄も、スッと消えていく。
「……やっぱり、空調ダクトから冷気が漏れてたんですね。それが湿った空気と混ざることで、結露や水蒸気が発生する。それが非常灯に照らされて、白い靄になってたんです。要は、空調機器の故障ですね」
悠生はノートに記録を書き込みながら、一人でうんうんと頷いた。
「……それが『白い手』の正体?」
悠生のノートを覗き込みながら、青年が尋ねる。
「そうです。ちなみに、七不思議の第一の怪異『影だけが映る鏡』も、第二の怪異『校内放送の笑い声』も、ちゃんと原因がありました。どちらもちょっとした設備不良が原因です。それに尾ひれがついて七不思議として広まった感じですね」
理科室の様子をさらさらとスケッチに描きながら、図形やメモも書き足していく。
あっという間にノートのページが埋まっていった。
「怪奇現象の正体なんて、そんなものですよ」
ノートに視線を落としたまま、悠生は言った。
「……お前はそれを一人で調べてるわけ?」
「はい。オカルト研究会なので。学園の七不思議を追っています」
ノートをパタンと閉じると、机の上の道具を片付け始める。
この学園に入らなければ使うことも出来なかっただろう、高度な機械の数々。
温湿度計ひとつをとっても、一般の学校にある安価な簡易型ではなく、研究機関が使用するような精密モデルだ。
理科室を見渡してみても、試薬棚のロックは最新式で、湿度や温度の記録も自動で防災センターに送信されるようになっている。
顕微鏡は研究者仕様の大型双眼タイプで、光学レンズは海外の専門メーカー製。ガス栓やドラフトチャンバーは大学並みに整備され、換気システムまで産業レベルの性能を備えている。
学園の廊下や教室の建材も上質で、床は傷一つなく磨き上げられ、天井には最新の空調と照明が整然と配置されている。
ここが高校であることを忘れそうになるほどの環境。
(だからこそ、こんな風に空調機器が壊れているのは不自然だ……)
点検口のネジの緩みだって、定期点検をしていればすぐに気が付くはずだろう。
悠生が考え込んでいたときだった。
「誰かいるのか?!」
理科室の扉が勢いよく開き、懐中電灯の光が差し込んだ。顔を上げれば、入口に立っている警備員の姿が見える。
「また君か! 夜間立入禁止だと言っているだろう、篠原くん」
悠生が言い訳を探す前に、背後にいた青年が一歩前に進み出る。
「オヤジからの依頼だよ。なんだっけ、異音調査? 夜にしか出ないとかいうやつ。詳しそうだから篠原に頼んだんだよ」
青年は差圧計をひらひらと振って見せる。
その姿は堂々としていて、あたかも最初から用意されていた口実のようだった。
警備員は訝しげにその顔へ懐中電灯を向け──そして一瞬で表情を変え、慌てて背筋を伸ばした。
「あ、あなたは……! そ、そうでしたか。もう調査は?」
「音、しなくなったでしょ」
「確かに……。では、早めにお帰りください」
「はーい、おつかれさん」
去って行く警備員の後ろ姿に青年が手を振る。
懐中電灯の光が廊下の奥に吸い込まれ、足音だけがしばらく残る。
「……僕の名前」
その背中が角を曲がったのを確認してから、悠生は青年を見上げた。
「僕の名前、知ってたんですか」
「いや? さっきあいつが呼んでたから、篠原っていうんだなって」
青年は肩をすくめ、涼しい顔で答える。
「……意外と機転が利きますね。助かりました」
「どうも。オカ研くん」
「篠原悠生です。あなたは?」
"オカ研"と呼ばれたことにムッとした悠生は立ち上がると、改めて名を名乗った。
青年は、ほんの一瞬だけ視線を逸らし、窓の外へと泳がせる。
その横顔は、何かを迷っているように見えた。
そして、短い沈黙のあとで、
「……蓮」
とだけ答えた。
悠生は蓮と名乗る青年の顔をじっと見つめる。
まるで、未知の怪異を解き明かすときのように。
相手を測ろうとする冷静さと、好奇心に沸き立つ興奮とを織り交ぜた、研究者の瞳。
そんな悠生のまっすぐな視線が居心地が悪いのか、蓮はあからさまに話題を変えた。
「七不思議って、あといくつ残ってんの」
「未調査が4つ。次は第四の怪異『ひとりでに鳴る音楽室のピアノ』です」
悠生は再びノートを広げながら答える。
「あぁ、ショパンね」
蓮は窓辺に歩み寄り、夜の校庭を見下ろした。ガラスに映る横顔が、闇の中でわずかに光を拾う。
その指先が、静かに音を探すように動いている。
「え?」
「ショパンの『別れの曲』だろ。何だっけ、死ぬまで練習を続けた生徒の幽霊が──っていう噂だろ? まあ、別にあの曲、別れをテーマに作曲されたわけでもないんだけどね」
「……詳しいですね」
金髪の不良がクラシック音楽を語る姿に、悠生は興味を惹かれる。
「ま、警備員に捕まらないように、せいぜい頑張って」
蓮はそう言って踵を返し、足音を響かせながら廊下の闇に消えて行った。
残された悠生は、静まり返った理科室でわずかに残る冷たい空気を感じていた。
窓の外では風が木々を揺らし、枝葉の影が校庭をゆらゆらと渡っていく。
胸の奥が、ざわざわと音を立てる。
未知のものに触れたときに特有の、胸が騒ぐような、高揚にも似た感覚。
怪異は解き明かしたはずなのに、まだ気持ちが落ち着かないのは、解き明かせない何かがまだ残っているからだろうか。
悠生は窓を開けると、目を閉じて大きく息を吸い込んだ。
秋の夜の匂いに、かすかに煙草と柑橘めいた香りが混じる。
冷えた空気の中に、さっきまでここにいた男の匂いが混じっているのを、悠生は感じた。
────これが、悠生と蓮の、最初の出会いだった。
そして、この出会いが、この先の夜をどれだけ騒がせることになるのかを、悠生はまだ知らなかった。
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