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第二夜 ひとりでに鳴る音楽室のピアノ
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蓮に初めて会った夜から、3日が経った。
鳳城学園七不思議、第四の怪異──「ひとりでに鳴る音楽室のピアノ」。
その真相を確かめるため、悠生は再び夜の校舎に足を踏み入れていた。
塀が崩れたところから身を屈め、猫のように校舎に侵入する。
正門には最新型の電子錠と赤外線センサー付きの監視カメラが設置されているというのに、敷地の外れにあるこの崩れた塀は、数年前から修繕されずに放置されている。
校舎の内部はしんと静まり返っていた。
白い非常灯が一定間隔で足元を照らし、磨き上げられた床は青白い光と月明りを鈍く反射する。
廊下の壁にはめ込まれた強化ガラスに、夜空と月影が鏡のように映り込んでいた。
二階へと続く階段を上りきると、突き当りに「音楽室」と記された扉がある。
防音機能を備えた重厚な扉が、夜の闇の中でひときわ重々しく感じられる。
噂はこうだ。
誰もいない夜の音楽室から、ピアノを練習する音が流れてくる。
血だらけになりながらも死ぬまで弾き続けた生徒の幽霊が、今も練習を続けているらしい。
「想定される原因としては……」
悠生は、独り言を漏らしながら音楽室の扉に手を掛けようとした。
「……!」
扉の向こうから、かすかに、しかし確かに、音が聞こえる。
悠生は思わず息を飲む。
その音は途切れがちで、時折つまずくように同じ小節を繰り返す。
まるで見えない誰かが、深夜にひとり練習しているかのようだ。
(……本当に鳴ってる)
ゆっくりと扉を開く。
蝶番がきしむ音と共に扉が開いた瞬間、悠生の目の前でピアノの音が止まった。
月明りが差し込む広い音楽室の中央、漆黒のグランドピアノが静かに鎮座している。
椅子には、誰も座っていない。
部屋の中はじんわりと暑い。空気がこもっているのを感じる。
グランドピアノに近づいて見ると、漆黒の塗装が月光を吸い込み、深い光沢を返していた。
脚部には繊細な装飾が施され、ペダルは金色に輝いている。
(高そうだ……いや、高いなんてもんじゃない)
奨学金で鳳城に通う、貧乏な生まれの悠生には、このピアノがいくらするのか想像すらできない。
けれど、最新型の高級品であることは間違いないだろう。
「えーっと、ステ……スタイン……」
悠生は譜面台の下に刻まれた文字を一つずるなぞるように読み上げた。
「スタインウェイ&サンズ。最新型のSPIRIOだな」
背後から、不意によく通る声がした。
そこに立っていたのは、窓から差し込む月光に照らされた金髪の青年──蓮だった。
金色の髪は夜の闇の中でも淡く輝き、前髪の隙間から覗く切れ長の瞳は鋭さと涼しさを併せ持っている。
鼻筋は真っ直ぐに伸び、長い睫毛が頬に影を落としている。
前に会ったときは暗い理科室の中だったので、こうして正面からまともに顔を見たのは初めてだった。
振り返って蓮の姿を見たとき、悠生は一瞬息をのんだ。
(……まるで、雑誌から抜け出してきたみたいだ)
初めてまじまじと見るその姿に、思わず目を奪われ、心臓がひと拍遅れて打つ。
「……詳しいですね」
我に返った悠生は、慌てて視線を逸らす。わざと何でもないかのように言った。
蓮は答えず、気だるげに肩をすくめて室内へ入ってくる。
月明りに照らされた金髪が、蓮が動くたびにわずかに揺れる。
制服の第一ボタンを外してネクタイを緩めた様子は、いかにも不良といった印象なのに、その立ち居振る舞いにはどこか洗練されたものがある。
「自動演奏付きだよ。専用のアプリから操作できる」
そう言いながら、蓮は鍵盤に指先を落とす。
音が出ないほどの軽いタッチだったが、その仕草にはどこか愛情めいたものがこもっていた。
「自動演奏?」
聞き慣れない言葉に、悠生は思わず聞き返す。
「人が弾かなくても曲が流れる。鍵盤もちゃんと動く。レストランとかホテルのBGM用だったり、指の動きを目で見て演奏の練習に使ったりもする」
「へえ。そんな機能がついてるピアノがあるんですね……」
グランドピアノが置いてあるような高級レストランに行ったこともなければ、ピアノに触れたこともない悠生には未知の世界だった。
(……ということは、『ひとりでに鳴るピアノ』の正体はそれで解決じゃないか?)
そう思ってから、いや、と思い返す。
悠生がこの部屋に入ったとき、中には誰もいなかった。
そして、演奏は悠生の目の前で勝手に止まったのだ。
誰かが操作したわけじゃない。
(それに、自動演奏で流れるにしては、あまりにも下手すぎた……)
悠生が聞いたピアノの音は、何度も何度も同じところを繰り返していた。
それがまるで、執念深く練習しているように聞こえたのだ。
もしあれが自動演奏だとして、あんな演奏が高級レストランで流れたらクレームものだ。
そんなことを考えながら、鞄から小型の温湿度計と電磁波測定器を取り出す。
蓮は悠生が取り出すたびに一つずつ機器を手にとって、興味深そうに眺めている。
「夜な夜なショパンを弾く幽霊の正体も、オカ研なら解明できる?」
蓮が試すように言った。
「そうです。もちろん、怪奇現象には必ず原因がある。幽霊なんていません」
悠生は蓮の手から測定器を取り上げると、かがみ込んでピアノの周囲を測定器でなぞり始める。
言い切る悠生の声に、蓮が笑う。
「……オカ研なのに、オカルトを信じてないんだ」
「僕が信じているのは、幽霊ではなく科学ですよ」
測定を続けながら、悠生はさらりと言った。
悠生の言葉に、蓮が関心したように眉を上げる。
悠生はピアノの周囲を一歩一歩確かめるように歩き、外装や配線をくまなく調べていく。
鏡を使って蓋の隙間をのぞき込み、大きさを測ってノートに書き込む。
悠生の真剣な横顔を、蓮はじっと見つめていた。
「……とは言え、こんな高価なものに触れるのはちょっと怖いですね。壊したりしたら弁償出来ないし……ピアノの構造もよく知らないので、変なところを触って壊さないか、不安です」
しゃがみ込んだまま、そう言って悠生は蓮を見上げる。
急に現実的な弱音を吐く悠生に、蓮は笑いながら鍵盤の蓋を軽く指で叩いた。
「はは。幽霊は怖くないのに、ピアノの弁償は怖いんだ」
「当たり前ですよ。……僕、特待生なんですよ。鳳城の人たちからは想像できないくらい貧乏なんです」
「大丈夫。なんかあったら俺が何とかするから。好きに調べていいよ。……それに、ピアノの扱いには多少慣れてる」
蓮の言葉に背中を押されるように、悠生はピアノをくまなく観察しはじめた。
鍵盤の摩耗、蓋の隙間、配線の取り回し、USBやLANポート……しかし、科学に対する知識はあっても、ピアノに関しては素人。何が原因なのか見当もつかず、困り果てて顔を上げた悠生を見て、蓮がふっと笑みを浮かべた。
「汗かいてる。緊張しすぎ。大丈夫だって、そんなに簡単に壊れない」
差し出された指先が、悠生の額に張り付いた前髪をそっと払う。
一瞬、視線が交差する。
触れた指先が驚くほど熱を持っているような気がした。
何故だろう、触れられた部分が熱い。
悠生はまたじわりと汗がにじむのを感じた。
「……この部屋が暑いんですよ。扉や壁が防音仕様で分厚いせいか、なんだか空気が悪くてむしむしして……」
言いかけてから、悠生ははっとしたように立ち上がる。
机に駆け寄り、温湿度計の数字を確認する。
「……やっぱり。湿度が高すぎます。普通、こういう部屋は24時間制御で空調が一定に保たれてるはずなのに」
悠生は壁に耳をつける。空調が作動していれば、音や振動が響くはずなのに、何も聞こえない。
「空調が止められてますね。自動演奏機構は基盤で制御されているはず。湿度で基盤やコネクタが劣化すれば、誤作動を起こしてもおかしくありません」
悠生はピアノを指で示しながら、蓮に向かって言った。
「先輩、ちょっと中を開けてみてもらえませんか?」
「は、俺が?」
思わぬ依頼に、蓮が眉を跳ね上げる。
「はい。僕よりも先輩の方が手先が器用ですし」
悠生はわずかに口元を緩め、蓮に向かってにっこりとほほ笑む。
「……それに、何かあったらどうにかしてくれるんでしょう?」
悠生は鞄からドライバーセットを取り出すと、当然のように差し出す。
蓮はため息をついた。
「あのなぁ、グランドピアノの中の機構なんて、専門の技師じゃないといじれないんだぞ。素人にどうにか出来るもんじゃないんだからな」
「素人じゃないでしょう?」
蓮を試すように言う。
蓮がピアノに詳しいことは、これまでの会話から十分に推察できていた。
「弾けるのと直せるのは別だっての。どうなっても知らないからな」
ぶつぶつ文句を言いながら、蓮は鍵盤蓋に手を掛ける。
木の表面が軋むわずかな音が、静まり返った音楽室に響く。
蓮はドライバーを差し込むと、奥のパネルのネジを一つ、回して外してみせる。
「……ほら、やっぱり器用じゃないですか」
「お前、何偉そうにそこに突っ立ってるんだよ」
「僕はこのピアノ触るの怖いので」
「はいはい……俺がやればいいんだろ」
そう言いながら、蓮は小さなネジを一つ一つ外していく。
作業に集中する蓮の横顔が、窓から差し込む月明りに縁どられている。
黒い瞳は夜の闇に深く沈み、唇が噛みしめられている。
額には汗が滲んでいた。
やがてパネルが外され、内部の基盤が露わになる。
「ここ、少し錆びてないか?」
蓮が低く呟き、指先でそっと示す。
悠生は蓮の肩越しに覗き込む。
基盤の表面は薄く曇り、水分を含んだ痕跡があった。
そして、端の方の銀色の接点の部分には、わずかに緑青の錆が浮いていた。
「ですね。……やっぱり湿気が原因だったんだ」
悠生はそう言いながら、小さな布と無水エタノールを蓮に手渡す。
「これで接点を拭いてください。錆びた部分を綺麗にするだけでも改善されるかもしれません」
「了解」
悠生の指示通りに、蓮が手早く作業を進めていく。
基盤の微細な汚れが拭き取られ、コネクタが正しく接続される。
全ての部品を元通りに戻し、蓮が蓋を閉じると、音楽室に静けさが戻った。
「……よし、試してみよう」
悠生がタブレットの画面を操作すると、ピアノの蓋の奥で機構が微かに動き、すぐにショパンの「別れの曲」が流れ始めた。
今度は途切れたり繰り返したりすることなく、スムーズな音が流れ始める。
「『ひとりでに鳴るピアノ』の正体は、湿度で基盤が錆びたことによる自動演奏の誤作動ですね。故障によって演奏が乱れていたのが、まるで練習中みたいに聞こえたんだ」
悠生は顎に細い指を当て、視線を落としたまま考え込む。
「それにしても、なんで夜間の空調が切られてたんだろう……」
「さあ、節電とか?」
蓮が興味なさそうに肩をすくめる。
「天下の鳳城がそんなことしますか? もちろん、24時間空調をかけ続ければ経費は掛かりますけど、こんな高価なピアノを置くなら、そのくらい当然必要な維持費ですよ。……そりゃ、うちならすぐ消しますけど」
悠生は納得できないと言うように眉間に皺を寄せる。
これまで七不思議のうち4つを調査してきたが、どれも怪奇現象ではなく、ただの設備の不具合や保守不足が原因だった。
古いままの配線、交換されていない部品、止められた夜間空調──
(偶然にしては、あまりにも多すぎる)
完璧なはずのこの学園でささやかれる七不思議とは、果たしてただの怪談話なのだろか。
その向こうに、隠された何かがあるのかもしれない────
悠生はそんな考えを、まだ曖昧なまま胸の奥にとどめた。
窓の外を見ると、空がかすかに明け白み始めている。
悠生ははっとして腕時計を確かめた。
「……と、あぁ、もうこんな時間だ。付き合わせてしまってごめんなさい」
「いや、別に……」
蓮は短く答え、それきり黙り込んだ。
二人の間に沈黙が流れる。
遠くで、朝を告げる鳥が鳴いていた。
薄明の気配が音楽室を包み込む。
悠生の視線は、自然とピアノへ吸い寄せられていた。
先ほど自動演奏で聞いたショパンの「別れの曲」が、まだ耳に残っている。
「……『別れの曲』って、別れがテーマの曲じゃないって言ってましたよね」
ふと、先日理科室で交わした会話を思い出しながら口を開く。
「そう。本当のタイトルは、『エチュード 作品10-3』。『別れの曲』って呼び名は、あとからついた愛称だ」
蓮の指先がそっと鍵盤をなぞる。
「……悲しい曲だと思いますか?」
「美しい曲だよ。少なくとも俺には、ただの悲しい旋律には思えない」
短く答える声は、どこか遠い場所を見ているようだった。
「そうですね。僕、クラシック音楽なんて全然聴いたことがなくて、『別れの曲』もさっき初めてちゃんと聴いたんですけど……綺麗な曲だなって思いました」
蓮は目を伏せたまま、しばらく黙っていた。
何かを考えこむように、目の前の鍵盤をじっと見つめている。
そしてしばらくしてから、おもむろに口を開いた。
「……せっかくだし、人間が弾く音も聞かせてやるよ」
蓮は鍵盤に指を置き、静かに目を閉じた。
音楽室の空気が、すっと張り詰める。
深く息を吸い込むその横顔は、何かを振り切るかのようだった。
そして、蓮の指がそっと鍵盤を離れる。
最初の一音が静寂を破る。
水面に落ちた一滴の水のように、音は広がりながら部屋中に満ちていく。
低音は重く、地を踏むように鳴り、高音は柔らかく跳ね、光の粒となって降り注ぐ。
蓮の指が鍵盤の上を舞う。
悠生は、息をすることすら忘れていた。
どくんどくんと自分の鼓動が大きく波打つ。
全身が心臓になったかのようだった
血の流れが指の先まで熱を帯びる。
窓から差し込む淡い光が、蓮の金髪を柔らかく縁どっている。
一本一本が光を纏い、まるで朝日を閉じ込めているかのように揺れる。
やがて旋律は静かに転調し、光から影へと表情を変える。
音が変わるたび、蓮の背中に宿る光と影までもが揺れ動くようで、悠生は目が離せなくなった。
悠生はこみ上げてくる何かに涙が溢れそうになる。
蓮の心の奥に触れてしまったかのような、そんな感覚。
音が重なり合い、溶けて消えていくたび、悠生は目の前の人に深く深く引き込まれていくような気がした。
自分でもこの感情が何なのかわからないまま、ただ、胸の奥が熱くなる。
────この人のことを、もっと知りたい。
もっと近くで、その音を、その息遣いを、感じていたい。
そう思ってしまうのは、蓮の演奏があまりにも美しかったからだろうか。
ピアノの生演奏なんて初めて聴いたから、柄にもなく感動してしまっているんだろうか。
それとも────なんて、これ以上考えたくなくて。
最後の音が静かに消え、蓮の指が鍵盤から離れる。
音楽室に残ったのは、明るくなった空と、二人の間の沈黙だけだった。
「……これで、幽霊も成仏だな」
笑いながらそう言った蓮の声が、悠生を現実へと引き戻した。
あまりにも自然に笑うから、さっきまでの演奏が夢だったのではないかと思えてしまう。
まだ胸の奥がざわついている。
何と言ったらいいのかわからないまま、悠生は無言で蓮を見つめていた。
上手く表現できないざらざらとした感情が、胸の奥で渦巻いている。
科学的に解明できないことなどないと、信じていたはずだったのに。
自分の感情さえもうまく解き明かすことが出来ない。
蓮が、ゆっくりと振り返る。
穏やかで、でもどこか試すような微笑み。
その瞳に、悠生は自分が映っているのをはっきりと感じた。
「……次は、いつにする?」
蓮の声は驚くほど柔らかくて、耳の奥までしみ込んでくる。
そして、蓮はそのまま言葉を続けた。
「次の七不思議も一緒に調べようぜ、悠生」
音楽室の静けさの中で、蓮が初めて呼んだ自分の名前が、はっきりと響く。
頬にかっと熱が上る。
この熱さは、空調の止められた部屋のせいだ、と、悠生は自分に言い聞かせる。
朝の光の差し込む中、悠生は何も言えないまま、ただただ蓮を見つめていた。
鳳城学園七不思議、第四の怪異──「ひとりでに鳴る音楽室のピアノ」。
その真相を確かめるため、悠生は再び夜の校舎に足を踏み入れていた。
塀が崩れたところから身を屈め、猫のように校舎に侵入する。
正門には最新型の電子錠と赤外線センサー付きの監視カメラが設置されているというのに、敷地の外れにあるこの崩れた塀は、数年前から修繕されずに放置されている。
校舎の内部はしんと静まり返っていた。
白い非常灯が一定間隔で足元を照らし、磨き上げられた床は青白い光と月明りを鈍く反射する。
廊下の壁にはめ込まれた強化ガラスに、夜空と月影が鏡のように映り込んでいた。
二階へと続く階段を上りきると、突き当りに「音楽室」と記された扉がある。
防音機能を備えた重厚な扉が、夜の闇の中でひときわ重々しく感じられる。
噂はこうだ。
誰もいない夜の音楽室から、ピアノを練習する音が流れてくる。
血だらけになりながらも死ぬまで弾き続けた生徒の幽霊が、今も練習を続けているらしい。
「想定される原因としては……」
悠生は、独り言を漏らしながら音楽室の扉に手を掛けようとした。
「……!」
扉の向こうから、かすかに、しかし確かに、音が聞こえる。
悠生は思わず息を飲む。
その音は途切れがちで、時折つまずくように同じ小節を繰り返す。
まるで見えない誰かが、深夜にひとり練習しているかのようだ。
(……本当に鳴ってる)
ゆっくりと扉を開く。
蝶番がきしむ音と共に扉が開いた瞬間、悠生の目の前でピアノの音が止まった。
月明りが差し込む広い音楽室の中央、漆黒のグランドピアノが静かに鎮座している。
椅子には、誰も座っていない。
部屋の中はじんわりと暑い。空気がこもっているのを感じる。
グランドピアノに近づいて見ると、漆黒の塗装が月光を吸い込み、深い光沢を返していた。
脚部には繊細な装飾が施され、ペダルは金色に輝いている。
(高そうだ……いや、高いなんてもんじゃない)
奨学金で鳳城に通う、貧乏な生まれの悠生には、このピアノがいくらするのか想像すらできない。
けれど、最新型の高級品であることは間違いないだろう。
「えーっと、ステ……スタイン……」
悠生は譜面台の下に刻まれた文字を一つずるなぞるように読み上げた。
「スタインウェイ&サンズ。最新型のSPIRIOだな」
背後から、不意によく通る声がした。
そこに立っていたのは、窓から差し込む月光に照らされた金髪の青年──蓮だった。
金色の髪は夜の闇の中でも淡く輝き、前髪の隙間から覗く切れ長の瞳は鋭さと涼しさを併せ持っている。
鼻筋は真っ直ぐに伸び、長い睫毛が頬に影を落としている。
前に会ったときは暗い理科室の中だったので、こうして正面からまともに顔を見たのは初めてだった。
振り返って蓮の姿を見たとき、悠生は一瞬息をのんだ。
(……まるで、雑誌から抜け出してきたみたいだ)
初めてまじまじと見るその姿に、思わず目を奪われ、心臓がひと拍遅れて打つ。
「……詳しいですね」
我に返った悠生は、慌てて視線を逸らす。わざと何でもないかのように言った。
蓮は答えず、気だるげに肩をすくめて室内へ入ってくる。
月明りに照らされた金髪が、蓮が動くたびにわずかに揺れる。
制服の第一ボタンを外してネクタイを緩めた様子は、いかにも不良といった印象なのに、その立ち居振る舞いにはどこか洗練されたものがある。
「自動演奏付きだよ。専用のアプリから操作できる」
そう言いながら、蓮は鍵盤に指先を落とす。
音が出ないほどの軽いタッチだったが、その仕草にはどこか愛情めいたものがこもっていた。
「自動演奏?」
聞き慣れない言葉に、悠生は思わず聞き返す。
「人が弾かなくても曲が流れる。鍵盤もちゃんと動く。レストランとかホテルのBGM用だったり、指の動きを目で見て演奏の練習に使ったりもする」
「へえ。そんな機能がついてるピアノがあるんですね……」
グランドピアノが置いてあるような高級レストランに行ったこともなければ、ピアノに触れたこともない悠生には未知の世界だった。
(……ということは、『ひとりでに鳴るピアノ』の正体はそれで解決じゃないか?)
そう思ってから、いや、と思い返す。
悠生がこの部屋に入ったとき、中には誰もいなかった。
そして、演奏は悠生の目の前で勝手に止まったのだ。
誰かが操作したわけじゃない。
(それに、自動演奏で流れるにしては、あまりにも下手すぎた……)
悠生が聞いたピアノの音は、何度も何度も同じところを繰り返していた。
それがまるで、執念深く練習しているように聞こえたのだ。
もしあれが自動演奏だとして、あんな演奏が高級レストランで流れたらクレームものだ。
そんなことを考えながら、鞄から小型の温湿度計と電磁波測定器を取り出す。
蓮は悠生が取り出すたびに一つずつ機器を手にとって、興味深そうに眺めている。
「夜な夜なショパンを弾く幽霊の正体も、オカ研なら解明できる?」
蓮が試すように言った。
「そうです。もちろん、怪奇現象には必ず原因がある。幽霊なんていません」
悠生は蓮の手から測定器を取り上げると、かがみ込んでピアノの周囲を測定器でなぞり始める。
言い切る悠生の声に、蓮が笑う。
「……オカ研なのに、オカルトを信じてないんだ」
「僕が信じているのは、幽霊ではなく科学ですよ」
測定を続けながら、悠生はさらりと言った。
悠生の言葉に、蓮が関心したように眉を上げる。
悠生はピアノの周囲を一歩一歩確かめるように歩き、外装や配線をくまなく調べていく。
鏡を使って蓋の隙間をのぞき込み、大きさを測ってノートに書き込む。
悠生の真剣な横顔を、蓮はじっと見つめていた。
「……とは言え、こんな高価なものに触れるのはちょっと怖いですね。壊したりしたら弁償出来ないし……ピアノの構造もよく知らないので、変なところを触って壊さないか、不安です」
しゃがみ込んだまま、そう言って悠生は蓮を見上げる。
急に現実的な弱音を吐く悠生に、蓮は笑いながら鍵盤の蓋を軽く指で叩いた。
「はは。幽霊は怖くないのに、ピアノの弁償は怖いんだ」
「当たり前ですよ。……僕、特待生なんですよ。鳳城の人たちからは想像できないくらい貧乏なんです」
「大丈夫。なんかあったら俺が何とかするから。好きに調べていいよ。……それに、ピアノの扱いには多少慣れてる」
蓮の言葉に背中を押されるように、悠生はピアノをくまなく観察しはじめた。
鍵盤の摩耗、蓋の隙間、配線の取り回し、USBやLANポート……しかし、科学に対する知識はあっても、ピアノに関しては素人。何が原因なのか見当もつかず、困り果てて顔を上げた悠生を見て、蓮がふっと笑みを浮かべた。
「汗かいてる。緊張しすぎ。大丈夫だって、そんなに簡単に壊れない」
差し出された指先が、悠生の額に張り付いた前髪をそっと払う。
一瞬、視線が交差する。
触れた指先が驚くほど熱を持っているような気がした。
何故だろう、触れられた部分が熱い。
悠生はまたじわりと汗がにじむのを感じた。
「……この部屋が暑いんですよ。扉や壁が防音仕様で分厚いせいか、なんだか空気が悪くてむしむしして……」
言いかけてから、悠生ははっとしたように立ち上がる。
机に駆け寄り、温湿度計の数字を確認する。
「……やっぱり。湿度が高すぎます。普通、こういう部屋は24時間制御で空調が一定に保たれてるはずなのに」
悠生は壁に耳をつける。空調が作動していれば、音や振動が響くはずなのに、何も聞こえない。
「空調が止められてますね。自動演奏機構は基盤で制御されているはず。湿度で基盤やコネクタが劣化すれば、誤作動を起こしてもおかしくありません」
悠生はピアノを指で示しながら、蓮に向かって言った。
「先輩、ちょっと中を開けてみてもらえませんか?」
「は、俺が?」
思わぬ依頼に、蓮が眉を跳ね上げる。
「はい。僕よりも先輩の方が手先が器用ですし」
悠生はわずかに口元を緩め、蓮に向かってにっこりとほほ笑む。
「……それに、何かあったらどうにかしてくれるんでしょう?」
悠生は鞄からドライバーセットを取り出すと、当然のように差し出す。
蓮はため息をついた。
「あのなぁ、グランドピアノの中の機構なんて、専門の技師じゃないといじれないんだぞ。素人にどうにか出来るもんじゃないんだからな」
「素人じゃないでしょう?」
蓮を試すように言う。
蓮がピアノに詳しいことは、これまでの会話から十分に推察できていた。
「弾けるのと直せるのは別だっての。どうなっても知らないからな」
ぶつぶつ文句を言いながら、蓮は鍵盤蓋に手を掛ける。
木の表面が軋むわずかな音が、静まり返った音楽室に響く。
蓮はドライバーを差し込むと、奥のパネルのネジを一つ、回して外してみせる。
「……ほら、やっぱり器用じゃないですか」
「お前、何偉そうにそこに突っ立ってるんだよ」
「僕はこのピアノ触るの怖いので」
「はいはい……俺がやればいいんだろ」
そう言いながら、蓮は小さなネジを一つ一つ外していく。
作業に集中する蓮の横顔が、窓から差し込む月明りに縁どられている。
黒い瞳は夜の闇に深く沈み、唇が噛みしめられている。
額には汗が滲んでいた。
やがてパネルが外され、内部の基盤が露わになる。
「ここ、少し錆びてないか?」
蓮が低く呟き、指先でそっと示す。
悠生は蓮の肩越しに覗き込む。
基盤の表面は薄く曇り、水分を含んだ痕跡があった。
そして、端の方の銀色の接点の部分には、わずかに緑青の錆が浮いていた。
「ですね。……やっぱり湿気が原因だったんだ」
悠生はそう言いながら、小さな布と無水エタノールを蓮に手渡す。
「これで接点を拭いてください。錆びた部分を綺麗にするだけでも改善されるかもしれません」
「了解」
悠生の指示通りに、蓮が手早く作業を進めていく。
基盤の微細な汚れが拭き取られ、コネクタが正しく接続される。
全ての部品を元通りに戻し、蓮が蓋を閉じると、音楽室に静けさが戻った。
「……よし、試してみよう」
悠生がタブレットの画面を操作すると、ピアノの蓋の奥で機構が微かに動き、すぐにショパンの「別れの曲」が流れ始めた。
今度は途切れたり繰り返したりすることなく、スムーズな音が流れ始める。
「『ひとりでに鳴るピアノ』の正体は、湿度で基盤が錆びたことによる自動演奏の誤作動ですね。故障によって演奏が乱れていたのが、まるで練習中みたいに聞こえたんだ」
悠生は顎に細い指を当て、視線を落としたまま考え込む。
「それにしても、なんで夜間の空調が切られてたんだろう……」
「さあ、節電とか?」
蓮が興味なさそうに肩をすくめる。
「天下の鳳城がそんなことしますか? もちろん、24時間空調をかけ続ければ経費は掛かりますけど、こんな高価なピアノを置くなら、そのくらい当然必要な維持費ですよ。……そりゃ、うちならすぐ消しますけど」
悠生は納得できないと言うように眉間に皺を寄せる。
これまで七不思議のうち4つを調査してきたが、どれも怪奇現象ではなく、ただの設備の不具合や保守不足が原因だった。
古いままの配線、交換されていない部品、止められた夜間空調──
(偶然にしては、あまりにも多すぎる)
完璧なはずのこの学園でささやかれる七不思議とは、果たしてただの怪談話なのだろか。
その向こうに、隠された何かがあるのかもしれない────
悠生はそんな考えを、まだ曖昧なまま胸の奥にとどめた。
窓の外を見ると、空がかすかに明け白み始めている。
悠生ははっとして腕時計を確かめた。
「……と、あぁ、もうこんな時間だ。付き合わせてしまってごめんなさい」
「いや、別に……」
蓮は短く答え、それきり黙り込んだ。
二人の間に沈黙が流れる。
遠くで、朝を告げる鳥が鳴いていた。
薄明の気配が音楽室を包み込む。
悠生の視線は、自然とピアノへ吸い寄せられていた。
先ほど自動演奏で聞いたショパンの「別れの曲」が、まだ耳に残っている。
「……『別れの曲』って、別れがテーマの曲じゃないって言ってましたよね」
ふと、先日理科室で交わした会話を思い出しながら口を開く。
「そう。本当のタイトルは、『エチュード 作品10-3』。『別れの曲』って呼び名は、あとからついた愛称だ」
蓮の指先がそっと鍵盤をなぞる。
「……悲しい曲だと思いますか?」
「美しい曲だよ。少なくとも俺には、ただの悲しい旋律には思えない」
短く答える声は、どこか遠い場所を見ているようだった。
「そうですね。僕、クラシック音楽なんて全然聴いたことがなくて、『別れの曲』もさっき初めてちゃんと聴いたんですけど……綺麗な曲だなって思いました」
蓮は目を伏せたまま、しばらく黙っていた。
何かを考えこむように、目の前の鍵盤をじっと見つめている。
そしてしばらくしてから、おもむろに口を開いた。
「……せっかくだし、人間が弾く音も聞かせてやるよ」
蓮は鍵盤に指を置き、静かに目を閉じた。
音楽室の空気が、すっと張り詰める。
深く息を吸い込むその横顔は、何かを振り切るかのようだった。
そして、蓮の指がそっと鍵盤を離れる。
最初の一音が静寂を破る。
水面に落ちた一滴の水のように、音は広がりながら部屋中に満ちていく。
低音は重く、地を踏むように鳴り、高音は柔らかく跳ね、光の粒となって降り注ぐ。
蓮の指が鍵盤の上を舞う。
悠生は、息をすることすら忘れていた。
どくんどくんと自分の鼓動が大きく波打つ。
全身が心臓になったかのようだった
血の流れが指の先まで熱を帯びる。
窓から差し込む淡い光が、蓮の金髪を柔らかく縁どっている。
一本一本が光を纏い、まるで朝日を閉じ込めているかのように揺れる。
やがて旋律は静かに転調し、光から影へと表情を変える。
音が変わるたび、蓮の背中に宿る光と影までもが揺れ動くようで、悠生は目が離せなくなった。
悠生はこみ上げてくる何かに涙が溢れそうになる。
蓮の心の奥に触れてしまったかのような、そんな感覚。
音が重なり合い、溶けて消えていくたび、悠生は目の前の人に深く深く引き込まれていくような気がした。
自分でもこの感情が何なのかわからないまま、ただ、胸の奥が熱くなる。
────この人のことを、もっと知りたい。
もっと近くで、その音を、その息遣いを、感じていたい。
そう思ってしまうのは、蓮の演奏があまりにも美しかったからだろうか。
ピアノの生演奏なんて初めて聴いたから、柄にもなく感動してしまっているんだろうか。
それとも────なんて、これ以上考えたくなくて。
最後の音が静かに消え、蓮の指が鍵盤から離れる。
音楽室に残ったのは、明るくなった空と、二人の間の沈黙だけだった。
「……これで、幽霊も成仏だな」
笑いながらそう言った蓮の声が、悠生を現実へと引き戻した。
あまりにも自然に笑うから、さっきまでの演奏が夢だったのではないかと思えてしまう。
まだ胸の奥がざわついている。
何と言ったらいいのかわからないまま、悠生は無言で蓮を見つめていた。
上手く表現できないざらざらとした感情が、胸の奥で渦巻いている。
科学的に解明できないことなどないと、信じていたはずだったのに。
自分の感情さえもうまく解き明かすことが出来ない。
蓮が、ゆっくりと振り返る。
穏やかで、でもどこか試すような微笑み。
その瞳に、悠生は自分が映っているのをはっきりと感じた。
「……次は、いつにする?」
蓮の声は驚くほど柔らかくて、耳の奥までしみ込んでくる。
そして、蓮はそのまま言葉を続けた。
「次の七不思議も一緒に調べようぜ、悠生」
音楽室の静けさの中で、蓮が初めて呼んだ自分の名前が、はっきりと響く。
頬にかっと熱が上る。
この熱さは、空調の止められた部屋のせいだ、と、悠生は自分に言い聞かせる。
朝の光の差し込む中、悠生は何も言えないまま、ただただ蓮を見つめていた。
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