王太子に婚約破棄されたと思ったら、国王陛下に溺愛されました!

万和彁了

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第2章 婚約破棄されたと思ったら、国王陛下が略奪溺愛のアップをはじめました!

第5話 大抵の場合、王太子の傍にいる清楚系ビッチぶりっ子にはどデカい地雷が隠れている--婚約破棄②--

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 王太子が口にした婚約破棄という言葉でホールの人々は騒めきだす。だがすぐに静まり返る。そして事の成り行きを注意深く見守ることにしたようだ。なにせ私の実家はこのバッコス王国の全領土の3分の1、国富の半分を有するカドメイア州を領している。この国は建国事情がやや複雑であり、私の実家のアイガイオン家は王国に名目上は所属しているが事実上の独立諸侯として振る舞っている。幕府が名指しで要注意監視対象軍閥として警戒しているレベル。だからこの婚約破棄は王家から見ると非常にヤバい。いちいちデメリットを上げていくと両手では数えきれないほどヤバい。もちろん私だって王国の政治が出来なくなるんだからヤバい。でもそれ以上に私をブチ切れさせた王太子が悪い。いちおう王太子を人前で辱めてやる前に国王陛下の方に目を向ける。さきほどとは打って変わって静かにだけど厳しい視線で王太子を見ていた。そこには父として息子を心配するような優しい色はない。冷徹な政治家としての計算高い視線そのものだ。

『へっ。ざまーみろジョゼーファ。いっぱい恥かけばいいんだばーか』
 
 声には出ていなかった。だけど王太子の傍にいるミュレルの唇はそう動いていた。よほど私が嫌いらしい。この婚約破棄で王太子はフリーになる。そんなにミュレルは王太子が好きなのか。満遍なく男に好かれチヤホヤされる方が好きなタイプだと思っていたのだが?まあいい。

「ジョゼーファ!!お前に王妃としてこの国の未来の政治にかかわる徳は無いのだ!!国母たるものには優しさが必須だ。お前にはそれが根本的に欠けている!」

 そう言われればそうかも知れない。私は冷酷な人間だ。実家にいた時は軍を率いて豪族共を弾圧した。反逆者は吊るし首に、その財は全て近代化政策の原資にさせてもらった。私は自分が決めたことで流血が伴おうともやり遂げる。

「だがここでマルルーチェに謝るのであれば、せめて側妃として王室に入ることくらいは認めてもいい!!私は悔い改めたものまで責めようとは思わない!さあ今すぐにマルルーチェに頭を下げるんだ!新しいこの国の王太子妃マルルーチェに!!」

 男子生徒を中心に歓声が沸き上がる。女子たちと大人たちの反応は冷ややかだったが。なぜ男ってこう自分が推している女が誰かとくっついても理解あるフリして応援しちゃうんだろう?まったく理解できない感情だ。男は度し難い生き物だ。というか王太子は婚約破棄しても私を後宮に入れたいの?王太子の考えていることがなんかキモい。この婚約破棄、多分ただの勢いか何かで思い付きのノリで言ったんだな。馬鹿だなこいつ。

「え?あの…ええ?!あたしが王太子妃?!そんな!?」

 はて?なぜか新しく王太子妃に内定なさったミュレルが困惑の表情を浮かべている。…もしかして事前に話してないの?バカなの?これってあれなの?ミュレルへのサプライズってやつ?

「マルルーチェ。私は君を愛している!!だから君をこの国一の女である王妃にするよ!!」

 また男共から歓声がおこる。女子たちドン引き。大人たちオロオロ。国王陛下、なぜか鼻で嗤ってる。そしてその未来の王妃様であるミュレルさん。取り繕った笑みを浮かべてるけど、内心凄く困ってらっしゃるような冷や汗を額や肩に浮かべてる。

「カーティスさま…その…あたしは。そう!あたしみたいな貧乏男爵の娘なんて王太子妃ましてや王妃なんて煌びやかな地位は似合いません!そう!うん!絶対そう!!」

「もう謙遜なんていらないんだよマルルーチェ。君のその奥ゆかしく控えめなところこそが未来の王妃に必要な資質なんだ。そこの女とは違って」

 他の女と比較してディスられるの腹立つね。

「そんな…!?いえいえ!あたしなんて。そう!蔭から誰も見えないようなところからカーティスさまを見守るだけでいいんです!そうだ!うん!あれですよ!あたしなんて血筋も身元も怪しいんですよ!ほらたしか男爵だし!男爵なんてあれですよ!なんかこう!ね?」

 たしかってなんだ?自分ちの爵位もわかってないのか?というかなに?まじで輿入れしたくないの?それはそれで不可解だ。普通の女なら王太子の正妃になるのを喜ぶものだ。側妃や愛人でさえ人気の地位なのに。まあ中には中堅貴族の妻でスローライフしたいっていうタイプもいるけどミュレルみたいなぶりっ子はそこを目指したりはしないだろ。

「マルルーチェ。君が私に教えてくれたんだ。人の品性とは身分や生まれや血筋ではなく行動で決まるものだと。君の博愛は人々を安らかに導いてくれるだろう。私はそう思うよ。それに君は聖女認定されている。敬虔な国民達も君が王太子妃になれば喜ぶだろう」

 いやお前らの関係は典型的なお姫様とその騎士たちみたいな馬鹿馬鹿しいものだったよ。博愛どころか身分制度バリバリの身内志向でした。それに聖女って。それも身分制やん…。もういいや突っ込むの疲れた。

「…そう!そうだった!あたしは聖女!カーティスさま!あたしは聖女として皆の為に祈りたいのです。王太子妃になればそれもできなくなります!聖女としての本分を全うしないと!そうですよね!ねぇ!ねぇ陛下!!??」

 とうとうミュレルは国王陛下に向かって声を上げた。その気持ちわかる!だって王太子って話通じないし。

「なんだね?」

「あたくしのような身元も血筋も怪しげで卑しく、それでいて聖女として皆の為に祈りを捧げ続けなければいけないような女は王太子さまに嫁ぐなんてだめですよね?ね?そうですよね?」

 どことなく甘えるようなニュアンスのある声でミュレルは国王陛下に確認を取ってる。というか言ってることがすごい。ここまで必死に王太子妃になるのを固辞しようとする理由がまったく理解できない…。だがそのおねだり染みた言い訳を国王はぴしゃりと論破してしまう。

「マルルーチェ。お前は別に身元も血筋も怪しくないし、ましてや卑しくもないだろう?忘れたとは言わせないぞ。お前はコーンウォール聖大公国の聖大公第一公女だったではないか。先の内戦で国は滅んで一族族滅となって幕府の天領となってしまったが、お前はたしかに独立国家のお姫様だったじゃないか。それを証明する聖遺物もちゃんと敎后庁は保存してあるしな」

 え?なにそれ?すげぇ爆弾が出てきた。会場内がざわざわとざわめく。

『あの聖大公国の姫?!』『あの名門小国の!!』『なるほど!だからこそ聖女としてあれほどの素晴らしい癒しの術がつかえたのか!』『あの美しさもお優しい性格も聖なる血のなせる業だったのか』『これほど素晴らしい結婚が他にあろうか!?いやない!』

 カビの生えた保守派貴族からは感嘆の声が聞こえてくる。逆に近代化で勢力を伸ばした連中は宗教色の強い血筋に警戒しているような空気だ。

「だから王太子妃になるにあたって特に障害はない。好きにすればよいさ。私は息子とお前の結婚に反対はしないよ」

 つまらなさげに国王陛下はそう吐き捨てる。すごい話してるはずなのに全然興味無さそう。

「そんなぁ!?陛下?!なんでぇ?!なんでなの!!あたしは?!あたしはぁ?!」

 ミュレルは両手で顔を押さえて俯いてしまう。まわりはなんか労りの視線を送ってる。王太子はミュレルの両肩に優しく手をのせて。

「マルルーチェ。君は今まで頑張って来たんだ。だから幸せになってもいいんだよ」

『そうだよ!マルルーチェちゃん!』『おめでとう!』『がんばったね!』

男子共がうっすらと感動の涙を浮かべながら拍手をしている。うわーカンドウテキナフウケイダナァ。私を含めた女子たちはこの背景の暴露に、だからあのぶりっ子は板についてたのか。生まれながらのぶりっ子わかるー。って感じなのに…。謎の上目線も生まれがとてもいいんだから当たり前だよね。でもあの俯き。どう考えても感動の涙を隠すものではなくて、ガチで悲しくて悔しくて泣いているような感じに見えるぞ。そんな時だ。王太子が私に向かって怒鳴る。

「ジョゼーファ!!」

「あっはい。なんですか?」

 なんか久しぶりに話を振ってもらえて逆に嬉しいぞ。

「これでわかっただろう?!お前は王妃には相応しくないのだ!もっと相応しい者がいる!だから謝れ!そうしたら側妃で許してやる!そうでなければ国外追放だ!!」

 やっと話題が私に帰ってきてくれた。さあ今度こそ反撃の時間だ!!いやまじでけちょんけちょんに反撃してやるんだからぁ(涙)!

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