聖女が不要になった世界で王子と結婚しましたが、私は必要ないみたいなので出て行きます【R18】

Rila

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第一章:聖女から冒険者へ

1.不要になった聖女の末路

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 私の名前は、有栖川ありすがわ月菜るな
 黒髪ロングストレートに色素の薄い茶色の瞳。
 まだ幼さが残る顔立ちで、周囲からしたらどこにでもいそうな平凡な見た目をしているのだと思う。

 五年前、私は突然この世界にやって来た。
 というよりは、強引に連れて来られたと言った方が正しい表現な気がする。
 当時の私はまだ十五歳で、突然の出来事に戸惑い、直ぐには受け入れる事なんて到底出来なかった。

 私は何人もの優秀な魔術師の手によって、聖女としてこの世界に召喚された。
 そして城にいる偉い人達から『この世界を災厄から救ってほしい』とか「救えるのは聖女である君だけだ』と散々説得させられた。
 私よりも何倍も年上の人達に囲まれて、あの時は怖くて仕方が無かった。
 断ることも出来ず、世界を守るために戦う事を決意する他なかった。

 この世界は私が元いた場所とは大きく文明が異なっていて、慣れるのにも時間がかかった。
 そして元の世界に戻れないと知った時は絶望した。
 沢山泣いたし、この世界に私を呼んだ人間を恨んだりもした。
 だけどそんなことをしたって、元の世界に帰れる方法が見つかるはずもなかった。

 そんな一番辛かった時に傍に居てくれたのがイザナだった。
 イザナ・デニス・ベルヴァルト、それが彼の名前だ。
 彼はこの国の王太子であり、私と一緒に戦う仲間でもあった。
 金髪のサラサラな長い髪を後ろで一纏めにしていて、瞳の色は深い碧色。
 色白で端麗な顔立ちをしていて、その風貌は誰が見ても王子そのものだった。

 そんなイザナはいつも優しくて、私の話を何でも聞いてくれた。
 私はいつしかそんなイザナの事が好きになってしまった。

 そして召喚されてから三年後、災厄から世界を守り再びこの世界に平和が戻った。
 私は世界を救った聖女として称えられ、多くの人々から賞賛された。
 その功績から王太子であったイザナとの結婚が決まった。

 当時イザナには婚約者がいたのだが国王の命によりそうなった。
 私はイザナの事が好きだったから素直に喜んだ。
 イザナも嫌そうな素振りはしていなかったし、私の事を大事にするって約束をしてくれた。
 私達はお互いを想い合っているのだとずっと信じていた。

 だけど現実はそうでは無かった。
 イザナと結婚して二年経つが、私は一度もイザナと肌を重ねたことがない。
 いわゆる『白い結婚』というものらしい。

 結婚初夜は私が緊張していたから、気を遣ってくれたんだと思っていた。
 だけど、それからもイザナは私に手を出すことは一切なかった。
 それどころか部屋は別々のままで、最近はお互い忙しくて会う時間さえ殆どない。
 最後にイザナと話をしたのは、一週間以上前な気がする。

 私は本当にイザナに愛されているのだろうか。
 そもそもこの結婚は国王が強引に決めたものであり、イザナが望んだものではない。
 それに貴族でもない私が、王妃なんて務まるとは到底思えない。

 イザナと結婚すると同時に王妃教育が始まった。
 この国についての歴史や、他国との関係についての話を延々と聞かされた。
 聞きなれない単語が飛び交い、頭の中は混乱でパンク寸前になる。

 次に社交界に出れるように、礼儀作法を教え込まれる。
 私は元々貴族ではなかった為、全て一から覚える事となり、当然上手く出来ずに苦労することになった。
 時には怒鳴られることもあり、怖かったし嫌で仕方がなくて、今すぐにここから逃げ出したい気分でいっぱいだった。

 私には王宮に知り合いはいない。
 唯一話せるイザナも、すれ違いばかりでまともに話せる時間なんてなかった。
 相談出来る相手もいないまま、私の中には不安とストレスだけが溜まっていく。

 そんな時だった。
 廊下を歩いていると扉が少し開いていて、中から明るい声が響いていた。
 扉の隙間から覗いてみると、そこには楽しそうに談笑するイザナと元婚約者だった公爵令嬢のティアラの姿があった。

 あんなに楽しそうに話すイザナの姿を見たのは久しぶりだった。
 私の前ではあんな顔、もう随分見せていない。
 胸の奥が痛くなり、私は直ぐにその場から立ち去った。

 私は本当にイザナと結婚して良かったのだろうか……。

 平和を取り戻したこの世界では、聖女なんて存在はもう要らない。
 それならば、私がここに居る意味はあるのだろうか。
 何の為に自分が今ここにいるのかが分からなくなった。

 私はイザナに話し合いの時間を作って貰えるように頼んだ。
 彼だけはちゃんと私の声を聞いてくれる、分かってくれると信じていたから。
 だけど多忙を理由にされ、結局その時間を作って貰うことは叶わなかった。

 きっとそれが彼の答えなんだと思った。
 私の気持ちなんて誰も分かってくれる人はいない。
 ここには私の居場所なんて無い。
 それならば……、出て行こう。
 私はそう決心した。
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