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4 sideアーデル
しおりを挟む金の装飾が輝く馬車に乗り込む。今日は、ユーレイル様のお屋敷に伺う日だ。
それにしても、お姉様が最近大人しくてつまらないわね。でも、きっと私がこれからユーレイル様に会うと知ったら悔しがるに違いないわ。あのガマガエルが勘違いしないように今日のことを帰ったらたっぷり聞かせてあげないと。
アーデルは、にやけてしまう口を扇子で隠す。この豪華な馬車も私のために、ユーレイル様が用意してくれたのだ。アーデルは、ユーレイル様と婚約したらどんな生活が待っているのか胸を躍らせた。
「ユーレイル様!早くお逢いしたかったですわ」
馬車から降りるとユーレイル様が出迎えてくれた。目の前には今まで見たこともない大きな屋敷や、色鮮やかな花壇。そして、細かな彫刻が彫られた噴水からは、吹き出る水がきらきらと日の光を反射していた。
「っ!」
ユーレイル様は、私のドレス姿を見て固まってしまったようだ。きっと私が美しすぎて言葉を失ってしまったのだろう。
「どうして、そのドレスを貴方が」
ユーレイル様、どうしたのかしら?
「マリーベル! 最近うちに来ないから心配していたのよ。あれ、貴方はどちら様?」
誰?このおばさんは?
「母上、どうしてこちらに?」
「ユーレイルが、出迎えるなんて、マリーベルくらいじゃない? だから来たのだけど」
ふーんユーレイル様のお母様ね。正直、マリーベルと間違えるなんて許せないけど、将来のお母様になる方だから、丁寧にしなきゃいけないわよね。
「お母様私は、マリーベルの妹のアーデルです。今日は、ユーレイル様に招待していただきこちらに参りましたわ」
「そう、でもそのドレスは、私がマリーベル宛に贈った物だけど、どうして貴方が?」
「っ!」
ユーレイル様が贈ってくれた物だとばかり思っていたけど、まさかユーレイル様のお母様が贈って下さった物だったなんて……。
「メ、メイドが間違えてしまったようですわね。帰ってからマリーベルにお返しいたしますわ」
「いいのよ、気にしないで。マリーベルにはもう一着新しいのを贈りますから、そんなことより、ここは寒いから早く屋敷の中に入りましょう」
そう言いながらユーレイル様のお母様は、屋敷の中に入っていった。アーデルとユーレイル様もそれに続いて屋敷の中へ入る。
「今日は、急に招待してしまって申し訳ない」
「いえ、とっても嬉しかったですわ」
「そう、それは良かった。今日は、朝から来客を知った料理人達が腕を奮っていてね、良かったら昼食を食べていってほしい」
「まぁ、それは楽しみですわね!」
こんなに屋敷も広いし、きっと料理も豪華に違いないわ。将来ここに暮らすことになるかも知れないし、ここの味に慣れておかなくてはいけないわね。
ユーレイル様に案内された部屋に入ると、テーブルにはすでにフォークとナイフが置かれており、所々にお花が飾られていた。
「アーデル嬢。さっきは、挨拶もできず申し訳なかったわね、ユーレイルの母のマーガレットと申し上げます。ユーレイルをよろしくね」
「マーガレット様、お初にお目にかかりますラーク家の次女ラーク·アーデルですわ。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「アーデル嬢、ユーレイルもどうぞおかけになって」
ユーレイル様のお母様であるマーガレット様に促されたまま、アーデルとユーレイルは、各々椅子に腰かけた。
それにしてもなんて、美味しいの!
普段食べている物とは、比べ物にならないくらい、お肉は、柔らかく、複雑かつ繊細な味付けが食材をまとめあげている。
「アーデル嬢、ところで、今日の料理に使われている夢桜という名前のさつまいもの特産地は、どこだか分かる?」
「まぁ、ユーレイル様面白いことを言いますのね! 食べた物の特産地が分かったら私、今頃料理人ですわ」
私とユーレイル様の会話を聞いていたユーレイル様のお母様がぽつりと呟いた。
「マリーベルは、よく自分の領地のために知識を身につけたいと、本を読んでいたわ。貴方は、マリーベルの妹と聞いていたけど、マリーベルとは全く似ていないのね」
「もちろんですわ」
あんなガマガエルと天使のような私を一緒にされるなんて、屈辱以外の何者でもない。
それに、本を読んだって可愛くなれないじゃない。本を読むことに何の意味があるのか私にはさっぱり分からなかった。
「そう、私はそろそろ部屋に戻るわ。ユーレイル、後はよろしくね」
「かしこまりました。母上」
もう少し、未来のお母様とも距離を近づけたかったけど、今日は、初日だしこんなものよね。アーデルは、マーガレット様が席を外したことを気にすることなく、次の料理を口に運んだ。
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