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プロローグ
しおりを挟む「どうして、できないの! もうやりたくない」
私はピアノの鍵盤を叩きつけた。不協和音が部屋中に響く。
「しかし、お嬢様、お嬢様は王子様と同じ音楽学校に進学されたいのですよね? もっと練習しないと合格は厳しいかと」
「うるさいっ!」
私はピアノの椅子から立ち上がり、怒りにまかせて楽譜を全部床に落とす。
「あなたが教えるのが下手なのが行けないんだわ、こいつを今すぐ解雇して!」
「待ってくださいお嬢様!」
髭を生やしたふくよかなピアノ講師が私のドレスをつかむ。力のままに、引っ張られた方向へ体が傾いた。しかし、それだけでは終わらない。
バランスを崩した私は、履いていたお気に入りのかなり高さがあるヒールで、床に散らばった楽譜を踏んでしまったのだ。
スルッ。
あ、やばい倒れる。
景色がくるりと暗転する。傷一つない白い天井が視界に入った。
ゴンッ。
最悪なことに、私が倒れた方向には、ピアノの足があった。なので非常にいい音が部屋に響いた。そして、変な所を打ってしまったのからだろうか、強く頭を打ったと同時に頭の中に大量の曲が流れてきた。
ベートー◯ェン、バッ◯、そしてシューベ◯ト。ドビュッ◯ー。モーツァ◯ト。
ああ、ピアノが弾きたい。
「お嬢様!」
遠くからメイドがこっちに走ってくる音が聞こえる。
ショ◯ン、リ◯トもいいなあ、あとシ◯ーマンも
手のひらの冷たく固い木の感覚を思い出し、手を天井へとまるで鍵盤へと伸ばすように挙げる。そして、私はゆっくりと瞼を閉じた。
ガクッ
「お嬢様!!!」
♫♪♬♫♪♬
私は天野 桜は、ピアノ科を専攻している音大生だった。それでも最初からピアノが好きだったわけではない。私がピアノを始めたきっかけは、6才の頃に母とあるピアノニストの公演を聞きにいったことだった。
席は最後尾。こんな遠くからピアノの音を聞くことが出来るのか正直不安だった。なぜならステージに立つピアニストの姿は、自分の手のひらよりも小さかったからだ。
実際に、聞こえるピアノの音は小さかったし、小学生だった私は、まだ音楽で出てくる何曲かしか知らないのでつまらなかった。
何曲も演奏を聞き、退屈に思っていた頃、その人は現れた。スペシャルゲストとして現れた彼女は、身長がとても低かった。
早く帰りたいなあ。帰ってテレビゲームがしたい。
眠たい瞼を擦る。ホールの光が淡くそれがまた、私の眠気を誘った。
ガンッ
殴られたかのように思えた。まるでこちらを挑発しているかのような。そんな音。
何、この音。
さっきまで音なんてそんなに聞こえなかったはずだ。それなのに。
音が空気を震わす。そして空気は、遠くまで彼女の音を運んだ。
本物だ。本物なんだ。
髙橋 露木。パンフレットに書かれた文字をもう一度眺める。
私もこの人みたいになりたい。初めて感じた熱い思いを胸に感じながら、私は、聞き逃すまいと彼女の演奏に耳を傾けた。
それから、私は、髙橋 露木のCDを買い集め、何度も何度も飽きるまで聞き続けた。髙橋 露木は、歳を重ねるこどに名を広げ、ついにアニメや、ゲームのピアノ演奏でも使われるようになった。
この中でも私が一番好きな演奏をしていたのが、「奏でる音色と恋」、略してかな恋という、ピアノが得意な平民のヒロインが音楽学校に通い恋をするというストーリーの乙女ゲー厶だった。
乙女ゲームの中では珍しく音楽ゲーム、(音ゲー)も兼ね備えていて、音ゲーをクリアしなければストーリーが見れない設定だった。ゲームの中では、音ゲーが難しいと批評もあったがそれなりに人気があったようだ。
さらに、音ゲーにはクラシック音楽が採用されており、音ゲーをクリアすると、ヒロイン(髙橋 露木)の映像に切り替わるようになっていた。私は、この髙橋 露木の演奏を目当てにこのゲームをしていたので音ゲーは5つの難易度のうちの一番下にあるeasyモードだったし、その間にあるストーリーの全てをスキップしていた。なので、ストーリーは全く分からない。今になって後悔している。
唯一覚えてるのはヒロインに嫉妬して対決しに来る悪役令嬢がいたってことかな。確かその悪役令嬢は最後に断罪されて音楽界から追放される。つまり、2度とピアノが弾けなくなるんだよね。
確か、名前は、モデラート・フィーネ
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