1 / 25
プロローグ
しおりを挟む「どうして、できないの! もうやりたくない」
私はピアノの鍵盤を叩きつけた。不協和音が部屋中に響く。
「しかし、お嬢様、お嬢様は王子様と同じ音楽学校に進学されたいのですよね? もっと練習しないと合格は厳しいかと」
「うるさいっ!」
私はピアノの椅子から立ち上がり、怒りにまかせて楽譜を全部床に落とす。
「あなたが教えるのが下手なのが行けないんだわ、こいつを今すぐ解雇して!」
「待ってくださいお嬢様!」
髭を生やしたふくよかなピアノ講師が私のドレスをつかむ。力のままに、引っ張られた方向へ体が傾いた。しかし、それだけでは終わらない。
バランスを崩した私は、履いていたお気に入りのかなり高さがあるヒールで、床に散らばった楽譜を踏んでしまったのだ。
スルッ。
あ、やばい倒れる。
景色がくるりと暗転する。傷一つない白い天井が視界に入った。
ゴンッ。
最悪なことに、私が倒れた方向には、ピアノの足があった。なので非常にいい音が部屋に響いた。そして、変な所を打ってしまったのからだろうか、強く頭を打ったと同時に頭の中に大量の曲が流れてきた。
ベートー◯ェン、バッ◯、そしてシューベ◯ト。ドビュッ◯ー。モーツァ◯ト。
ああ、ピアノが弾きたい。
「お嬢様!」
遠くからメイドがこっちに走ってくる音が聞こえる。
ショ◯ン、リ◯トもいいなあ、あとシ◯ーマンも
手のひらの冷たく固い木の感覚を思い出し、手を天井へとまるで鍵盤へと伸ばすように挙げる。そして、私はゆっくりと瞼を閉じた。
ガクッ
「お嬢様!!!」
♫♪♬♫♪♬
私は天野 桜は、ピアノ科を専攻している音大生だった。それでも最初からピアノが好きだったわけではない。私がピアノを始めたきっかけは、6才の頃に母とあるピアノニストの公演を聞きにいったことだった。
席は最後尾。こんな遠くからピアノの音を聞くことが出来るのか正直不安だった。なぜならステージに立つピアニストの姿は、自分の手のひらよりも小さかったからだ。
実際に、聞こえるピアノの音は小さかったし、小学生だった私は、まだ音楽で出てくる何曲かしか知らないのでつまらなかった。
何曲も演奏を聞き、退屈に思っていた頃、その人は現れた。スペシャルゲストとして現れた彼女は、身長がとても低かった。
早く帰りたいなあ。帰ってテレビゲームがしたい。
眠たい瞼を擦る。ホールの光が淡くそれがまた、私の眠気を誘った。
ガンッ
殴られたかのように思えた。まるでこちらを挑発しているかのような。そんな音。
何、この音。
さっきまで音なんてそんなに聞こえなかったはずだ。それなのに。
音が空気を震わす。そして空気は、遠くまで彼女の音を運んだ。
本物だ。本物なんだ。
髙橋 露木。パンフレットに書かれた文字をもう一度眺める。
私もこの人みたいになりたい。初めて感じた熱い思いを胸に感じながら、私は、聞き逃すまいと彼女の演奏に耳を傾けた。
それから、私は、髙橋 露木のCDを買い集め、何度も何度も飽きるまで聞き続けた。髙橋 露木は、歳を重ねるこどに名を広げ、ついにアニメや、ゲームのピアノ演奏でも使われるようになった。
この中でも私が一番好きな演奏をしていたのが、「奏でる音色と恋」、略してかな恋という、ピアノが得意な平民のヒロインが音楽学校に通い恋をするというストーリーの乙女ゲー厶だった。
乙女ゲームの中では珍しく音楽ゲーム、(音ゲー)も兼ね備えていて、音ゲーをクリアしなければストーリーが見れない設定だった。ゲームの中では、音ゲーが難しいと批評もあったがそれなりに人気があったようだ。
さらに、音ゲーにはクラシック音楽が採用されており、音ゲーをクリアすると、ヒロイン(髙橋 露木)の映像に切り替わるようになっていた。私は、この髙橋 露木の演奏を目当てにこのゲームをしていたので音ゲーは5つの難易度のうちの一番下にあるeasyモードだったし、その間にあるストーリーの全てをスキップしていた。なので、ストーリーは全く分からない。今になって後悔している。
唯一覚えてるのはヒロインに嫉妬して対決しに来る悪役令嬢がいたってことかな。確かその悪役令嬢は最後に断罪されて音楽界から追放される。つまり、2度とピアノが弾けなくなるんだよね。
確か、名前は、モデラート・フィーネ
12
あなたにおすすめの小説
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!
158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・
2話完結を目指してます!
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる