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第4話 演奏会にいるとか聞いてないんだが? 5

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「桜、いい感じに誤魔化せてたわよ、最後にわざと演奏を止めた所とか」

 
  紗綾が、私の所へ駆けつけてそう言った。

 
「最後のはわざとじゃなかったんだよね、誰かが私の名前を読んだ気がして……」
「桜の名前を?」
「うん、でも気のせいかも、前世の名前を知ってる人なんて紗綾以外にいるはずないし」
「そう、ならいいけど、もしかしたら他に転生した人がいるかもしれないじゃない?」
「確かに、それは否定出来ないけど……」
「まあ、あまり考えすぎるのもよくないわよ、ほらお菓子でも食べに行きましょう」
「そうだね、なんか今疲れがドッと来たよ」
 

 ピアノ弾く時は何にも感じてなかったんだけど、終わった後に緊張で力が抜けたというか、疲れたというか、疲れたんだよなあ。
 

「や、やっと見つけましたわ、フィーネ様、レガート嬢! はあはあ」
 

 なんか、疲れそうな感じの子が絡んできた……。
 

 シルバーの髪にショートカット。ピンク色のドレスには沢山のレースが付けられている。
 
 (どちら様? )
 (すっかり忘れてたわ、前回、寝込んでて会うことが出来なかった悪役令嬢の取り巻きBことクロード・マリア嬢よ)
 (あー)
「ちょっと内緒話とかしないでくださる!」
「仲間に入れて欲しいって言ってるわ」
「そ、そんなこと言ってないわよ」
 

 どうしてこう、悪女令嬢の周りってツンデレが集まるのかなあ……。
 
 これ以上ツンデレ増えたら収集がつかなくなるんじゃ……。と思いながら2人を交互に見てため息を吐く。
 
「な、「なによ?」」
「いえ、何でもないですわ」
 

   ツンデレが増えたことで、私の死亡フラグも2倍になったかもなあ。紗綾だけですらたまに照れて、首絞められたりするのに……。うん。いらん事は言わないようにしよう、じゃないと身が危うい。私は自分にそう言い聞かせるようにうんうんと頷く。



 それにしても、演奏会が始まってから結構時間経ってるんだが、なぜ今来たんだろう…。


「本当にここの会場は広くて困りますわ、おかげでこんな時間になりましてよ」


 マリアは、パタパタと手で扇ぎながらそう呟く。


 (きっと迷ったのね)
 (あーやっぱりそうなんだ)
「そこっ、聞こえてましてよっ」
「気のせいですわよ、おほほほほ」
「フィーネ様が言うんでしたら、きっとそうですわね」


   うん。何この子ちょろい。可愛い、子分にしたいなあ。


「紗綾、あんた心の声漏れてるわよ」
「おほほほほほほほ」
「誤魔化せてないわよ?」


 同じツンデレでも可愛さが大違いだなあと紗綾を眺めていたら蹴られた解せぬ。


「そろそろ帰る時間ね、また今度みんなで話しましょう」
「そ、そんな私やっとフィーネ様に会えたのに……」


 なんだこのかわいい生き物は……。


「しょうがないじゃない、マリア嬢が来るのが遅すぎたのよ」
「うっ、そうですわね。仕方ないのでまた出直しますわ。覚えてらっしゃいっ」


 マリア嬢、それ負けた時に悪役令嬢が言うセリフだよ......。


 マリア嬢の悪役令嬢Bの素質を感じながら馬車に揺られるフィーネであった。



 
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