73 / 92
第73話 図書館
しおりを挟む
ミンミンとセミが鳴く、日差しの熱でアスファルトの上が揺らいで見える・・・
季節は夏真っ只中、坂上竜一は手で太陽の日差しを遮りながら遠くを見詰める・・・
「あぁ、オアシスが見えるがアレは蜃気楼じゃないよな?」
「兄ちゃん、遂に熱で頭がやられたか?」
弟の竜二が冷ややかな目を隆一に向ける。
その手にはノートが抱えられ二人はコンクリートジャングルの中を歩いていた。
「兄ちゃんさぁ、俺達共同で自由研究か・・・図書館で何を調べるんだ?」
「あぁ、それなら白根さんが興味深い物語があるって言ってたから今日はそれを研究してみようかと思ってな」
「白根さん・・・俺、なんだかあの姉ちゃん苦手だな・・・」
まだ小学生高学年の竜二は中学生になった隆一の友人達と一緒に遊ぶ事も多々あった。
だがその中に数名だけ居る女子の存在が違和感を覚えさせる・・・
中学生になっても男女が一緒に遊んでいると言う光景が竜二にとってはおかしな事なのである。
「んーまぁ幼馴染だからってのもあるけど、なんだか一緒に居ても互いに空気みたいなんだよな」
「気にならないけど無いと困る?」
「おいおい・・・深読みしすぎだろそれ・・・」
苦笑いを浮かべながらも隆一にとって年々大人になっていく白根優里の事をそう意識すると隆一の鼓動が早くなる・・・
小さい頃からいつも一緒に居たからこそ、そういった意識を持ってしまうと今までの関係が壊れそうで怖くなる・・・
互いに意識をしつつも今の関係が居心地が良いのでそのままでと言う考えを持っている二人だからこそ仲良くし続けているのもあるのだ。
「とりあえずもう熱くて溶けそうだからさっさと図書館入るぞ」
「はいはい」
歩く速度を早めた竜一に続き竜二も歩く速度を早める。
2人はそのままガラス戸を押し開け中に入ると共にエアコンの冷気に目を閉じて両手を広げる。
「あぁ・・・竜二、天国ってここに在ったんだな」
「それは否定しない・・・」
「はぁ・・・あんた達また遅れてきて意味不明な事する・・・」
目を開くと眼鏡をかけた長髪の白根さんが腕を組んで立っていた。
まるで俺の胸に飛び込んで来いと言うポーズをとったままの竜一と竜二はそのままの姿勢で白根さんを見詰め・・・
「よし、どっちにするか選べ!」
「はぁ?」
白根さんが首を傾けて白い目で竜一を見詰めて問い返す。
その様子に竜二はプッと吹き出し笑い出す。
「やっぱ二人共付き合っちゃえよ」
「「なんでそうなる?!」」
「息ピッタリじゃん!?」
図書館の入り口でそんなやり取りをしていれば係員がギロリと睨みつけて来そうなものだが今日に限ってはそれは無いのだ。
何故なら本来今日は休刊日、それをコネを使って開けてもらっているのだ。
「ねぇ・・・とりあえず奥に行こうよ」
ボソッと小さい声で話しかけてきた声に白根さんは慌てて振り返り両手を合わせて謝罪を述べる。
「ごめんまなみ、忘れていた訳じゃないのよ」
「大丈夫、2人がお似合いのカップルだってのは分かったから」
「あの・・・まなみさん?」
そこに居たのは小柄なおかっぱ頭の少女。
彼女は吉田まなみ、この図書館のオーナーを父に持つ竜一の同級生である。
白根とは小学校からの付き合いで竜一も何度か白根さん経由で共に下校した事もあり知らない仲ではなかった。
「それはそうと、俺達兄弟に解いて欲しい事ってなんだよまなみ?」
「うん、その説明もしたいから早く移動しよ」
「あぁ」
そう言って4人は図書館の中へ入って行く。
町の中でも大きな建物のこの図書館は2階建てでかなり広いスペースが在る。
驚く事に幾つかの個室も完備しておりまるで漫画喫茶の様な使い方も出来るのだ。
「俺この先に行くの初めてだから楽しみ!」
竜二が嬉しそうに話すそこは関係者以外立ち入り禁止とされた通路である。
その一番奥に在る妙な飾りの扉の前にまなみは立ちポケットから金色の鍵を取り出す。
手に持つ部分が骸骨の様な形状をしているそれを差し込み回すとガコンッと何かが外れる音が響いた。
カギというよりは閂が外された様な音に竜一は生唾を飲み込む。
その手にはいつの間にか白根が手を重ねており少し震えているのが分かった。
さり気なく竜一は白根の手を握ってやり落ち着かせながら開く扉を見詰めていた。
「アレがその本」
扉を開けて中を見ると中央に石で出来た台が在り、その上に一冊の本が置かれていた。
それを見た瞬間3人の背筋にゾクゾクッと寒気が走る。
その様子を確認したまなみは中へと入り台の側へ寄る。
それに続くように3人も部屋に入りその本を中央に囲むように立った。
「なぁ、これってもしかして・・・」
「気付いた?どうも人の皮膚で出来た本みたいなの」
「マジかよ・・・」
人皮装丁本と呼ばれる物を聞いた事がある人も居るだろう。
これは外側が人の皮膚で作られた本の事である。
それと同じ物が4人の目の前の本なのだ。
「確かに産毛みたいな物もあるな・・・」
じっくりと見詰めると本の表紙に産毛が生えているのが見て取れた。
しかし同じようにじっくりと見詰めていた白根が小さく悲鳴を上げた。
「ひっ?!」
「ど、どうした?」
その白根の様子を見てまなみは一回頷いた。
「見られたのね?」
「うん・・・」
見られた?
その言葉が何を意味するのかと考えた時に竜一にもそれが分かった。
目である。
本の表紙に巨大な一つ目が現れたのである。
それは竜一を見詰め二三度瞬きをして再び目を閉じた。
「なぁ、まなみ・・・この本がそうなのか?」
竜一の言葉にまなみは一度深く頷く。
その本こそが彼等の運命を狂わせ世界に死神を生み出す呪われた本である事をまだ4人は知らない・・・
季節は夏真っ只中、坂上竜一は手で太陽の日差しを遮りながら遠くを見詰める・・・
「あぁ、オアシスが見えるがアレは蜃気楼じゃないよな?」
「兄ちゃん、遂に熱で頭がやられたか?」
弟の竜二が冷ややかな目を隆一に向ける。
その手にはノートが抱えられ二人はコンクリートジャングルの中を歩いていた。
「兄ちゃんさぁ、俺達共同で自由研究か・・・図書館で何を調べるんだ?」
「あぁ、それなら白根さんが興味深い物語があるって言ってたから今日はそれを研究してみようかと思ってな」
「白根さん・・・俺、なんだかあの姉ちゃん苦手だな・・・」
まだ小学生高学年の竜二は中学生になった隆一の友人達と一緒に遊ぶ事も多々あった。
だがその中に数名だけ居る女子の存在が違和感を覚えさせる・・・
中学生になっても男女が一緒に遊んでいると言う光景が竜二にとってはおかしな事なのである。
「んーまぁ幼馴染だからってのもあるけど、なんだか一緒に居ても互いに空気みたいなんだよな」
「気にならないけど無いと困る?」
「おいおい・・・深読みしすぎだろそれ・・・」
苦笑いを浮かべながらも隆一にとって年々大人になっていく白根優里の事をそう意識すると隆一の鼓動が早くなる・・・
小さい頃からいつも一緒に居たからこそ、そういった意識を持ってしまうと今までの関係が壊れそうで怖くなる・・・
互いに意識をしつつも今の関係が居心地が良いのでそのままでと言う考えを持っている二人だからこそ仲良くし続けているのもあるのだ。
「とりあえずもう熱くて溶けそうだからさっさと図書館入るぞ」
「はいはい」
歩く速度を早めた竜一に続き竜二も歩く速度を早める。
2人はそのままガラス戸を押し開け中に入ると共にエアコンの冷気に目を閉じて両手を広げる。
「あぁ・・・竜二、天国ってここに在ったんだな」
「それは否定しない・・・」
「はぁ・・・あんた達また遅れてきて意味不明な事する・・・」
目を開くと眼鏡をかけた長髪の白根さんが腕を組んで立っていた。
まるで俺の胸に飛び込んで来いと言うポーズをとったままの竜一と竜二はそのままの姿勢で白根さんを見詰め・・・
「よし、どっちにするか選べ!」
「はぁ?」
白根さんが首を傾けて白い目で竜一を見詰めて問い返す。
その様子に竜二はプッと吹き出し笑い出す。
「やっぱ二人共付き合っちゃえよ」
「「なんでそうなる?!」」
「息ピッタリじゃん!?」
図書館の入り口でそんなやり取りをしていれば係員がギロリと睨みつけて来そうなものだが今日に限ってはそれは無いのだ。
何故なら本来今日は休刊日、それをコネを使って開けてもらっているのだ。
「ねぇ・・・とりあえず奥に行こうよ」
ボソッと小さい声で話しかけてきた声に白根さんは慌てて振り返り両手を合わせて謝罪を述べる。
「ごめんまなみ、忘れていた訳じゃないのよ」
「大丈夫、2人がお似合いのカップルだってのは分かったから」
「あの・・・まなみさん?」
そこに居たのは小柄なおかっぱ頭の少女。
彼女は吉田まなみ、この図書館のオーナーを父に持つ竜一の同級生である。
白根とは小学校からの付き合いで竜一も何度か白根さん経由で共に下校した事もあり知らない仲ではなかった。
「それはそうと、俺達兄弟に解いて欲しい事ってなんだよまなみ?」
「うん、その説明もしたいから早く移動しよ」
「あぁ」
そう言って4人は図書館の中へ入って行く。
町の中でも大きな建物のこの図書館は2階建てでかなり広いスペースが在る。
驚く事に幾つかの個室も完備しておりまるで漫画喫茶の様な使い方も出来るのだ。
「俺この先に行くの初めてだから楽しみ!」
竜二が嬉しそうに話すそこは関係者以外立ち入り禁止とされた通路である。
その一番奥に在る妙な飾りの扉の前にまなみは立ちポケットから金色の鍵を取り出す。
手に持つ部分が骸骨の様な形状をしているそれを差し込み回すとガコンッと何かが外れる音が響いた。
カギというよりは閂が外された様な音に竜一は生唾を飲み込む。
その手にはいつの間にか白根が手を重ねており少し震えているのが分かった。
さり気なく竜一は白根の手を握ってやり落ち着かせながら開く扉を見詰めていた。
「アレがその本」
扉を開けて中を見ると中央に石で出来た台が在り、その上に一冊の本が置かれていた。
それを見た瞬間3人の背筋にゾクゾクッと寒気が走る。
その様子を確認したまなみは中へと入り台の側へ寄る。
それに続くように3人も部屋に入りその本を中央に囲むように立った。
「なぁ、これってもしかして・・・」
「気付いた?どうも人の皮膚で出来た本みたいなの」
「マジかよ・・・」
人皮装丁本と呼ばれる物を聞いた事がある人も居るだろう。
これは外側が人の皮膚で作られた本の事である。
それと同じ物が4人の目の前の本なのだ。
「確かに産毛みたいな物もあるな・・・」
じっくりと見詰めると本の表紙に産毛が生えているのが見て取れた。
しかし同じようにじっくりと見詰めていた白根が小さく悲鳴を上げた。
「ひっ?!」
「ど、どうした?」
その白根の様子を見てまなみは一回頷いた。
「見られたのね?」
「うん・・・」
見られた?
その言葉が何を意味するのかと考えた時に竜一にもそれが分かった。
目である。
本の表紙に巨大な一つ目が現れたのである。
それは竜一を見詰め二三度瞬きをして再び目を閉じた。
「なぁ、まなみ・・・この本がそうなのか?」
竜一の言葉にまなみは一度深く頷く。
その本こそが彼等の運命を狂わせ世界に死神を生み出す呪われた本である事をまだ4人は知らない・・・
0
あなたにおすすめの小説
国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした
玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。
しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様”
だけど――あれ?
この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!?
国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる
書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。
鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。
だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。
その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。
俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。
ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。
なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる