最悪最凶スキル『デスゲームメーカー』生存確率…

昆布海胆

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第80話 変化する事態と消える遺体

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「うそ・・・」

白根が口にするのも仕方が無いだろう、目の前に広がる光景・・・
それは一番最初にこの図書館を訪れた時の本来の図書館だったからだ。

「私1人・・・帰ってこられたの?」

左手に見える受付の上には貸し出し様の様々な物が乱雑に置かれているのが目に入り正面には図書館の正面玄関が見えていた。
帰れる・・・このまま真っ直ぐあのドアから出ればこのデスゲームは終わる。
死んでしまった竜二はともかく2人はまだここに残る事になるが大人を呼んでくれば・・・
果たしてそれで何がどう変わるのか問われれば分かる筈が無いという答えに行き着くのは当たり前。
そもそも今まで起こった出来事事態がありえない現象なのは間違い無いのだ。

「どう・・・しよう・・・」

オロオロする白根、自分一人であれば迷う事無く外を目指していた。
いや、竜一とまなみが横に居てもそれは同じであろう。
だが白根は一歩を踏み出す足を上げたが元に戻した。

「だめ・・・このままじゃきっと駄目なんだ・・・えっ?」

そう口にした時であった。
突然目の前の図書館の天井が落下して全てを押し潰した。
遅れて聞こえる轟音に目を瞑って後ろに下がる白根。
不思議な事に埃も何も巻き上がらずドアの外は壁となっていた。
もしもあのまま一歩踏み出していたら、外を目指して進んでいたら・・・
そう考えると背筋がゾゾゾっと震え遅れて全身が恐怖に動かなくなる。

「ザザザ・・・ザザザザーーー」

後ろのモニターから聞こえる音が突然大きくなった。
白根は恐る恐る振り返る・・・
するとモニターに手形が映った。
それも1つ・・・また1つと増えていきモニターは手形でいっぱいになりどんどん埋め尽くされていく・・・
後ろは壁、密閉された部屋の中で出来る事など殆どなく壁となったドアの向こうに背中を預けて一歩下がる。

「なに・・・なんなの?」

次々と増え続けた手形はモニターを埋め尽くし真っ黒となっていた。
そして、モニターにヒビが入り今にも中から何かが飛び出してくるのが想像できた。

「分からない・・・分から無いよ・・・どうすればいいの・・・」

頭を抱えてかがみこむ白根、それをあざ笑うようにモニターの内側からドン!ドン!っと叩くような音が響く。
恐怖に震えながら白根は心の中でその名を呼ぶ・・・

(助けて・・・竜一君・・・)

恐怖に動けない状態に走馬灯の様に竜一の事が頭に浮かび消えていく・・・
まるで記憶を喰らわれるように頭の中の竜一の顔が消えていき白根はそれに恐怖する。
徐々に名前も分からなくなりつつある竜一のその顔すらもモヤに包まれて思い出せなくなった時に白根は叫んだ。

「やだ・・・ヤダァアアアアアア!!」

窮鼠猫を噛む、追い詰められた時に予期せぬ行動を取る事である。
白根は叫びながら立ち上がったのだ。
最早顔も名前も分からないその男の子の事を必死で想い過去の思い出が消えていく中、たった一つの思い出だけが白根を動かした。
それは幼少の頃のなんでもない日常の1ページ、勿論竜一にとっては記憶にも残っていないであろう出来事。
なんでもない他愛無い出来事、白根が親に買ってもらった風船を放してしまった時の事だ。

高く高く空を目指して上がっていく風船に手を伸ばしても既に大人ですら届かない上空に上がった風船。
今にも泣き出しそうになる白根に後ろから歩いてきた竜一がソッと白根の手に自分が持っていた風船を握らせたのだ。

「えっ・・・」

その時はまだ名前も知らないその男の子は先を歩いていた両親に駆け寄り。

「風船飛んで行っちゃった」

そう告げて怒られていた。
子供の頃に在ったとても小さく一瞬の出来事、だが白根はその見返りも何も求めない行為に胸を打たれたのだ。
そんな竜一の思い出が消えていくのが我慢できなかった白根は・・・切れた。

「なんで・・・なんで私から・・・彼を奪うの・・・なんで・・・なんで・・・なんで・・・なんで・・・なんでよおおおおお!!!!」

そのまま立ち上がりがむしゃらにモニターに向かって駆け出す白根。
その目には恐怖も迷いも何も無かった。
あるのはただただ一つの感情。
怒り、である。

「うああああああああああああ!!!」

そのままモニターの方へ駆けた白根はソレにぶつかった。
両腕を顔の前でクロスして突っ込んだそこに在ったのは見えない壁。
それが白根の体辺りと共に砕けるように崩壊した。
そして、白根は転がり出た。

「白根さん!?」
「帰ってきた?!」

飛び出すと共に誰かとぶつかり地面を転がる。
2人の声が聞こえた。
男と女だ。

「大丈夫か?」

男が声を掛けてくる、だが顔を見ても誰だか思い出せない。
しかし、胸の内に込み上げる暖かい何かに白根は抵抗なくその男が出した手に捕まり立ち上がる。

「大丈夫白根さん?」
「えぇ・・・大丈夫よ・・・」

女の顔を見ても誰だか分からない、だが自分の名前を言っている事から知り合いなのだろうと言う事は分かった。
ふと振り返るとそこには割れたブラウン管モニターが置かれていた。
それを見て白根は気付く。

「そっか、私・・・中に閉じ込められていたのね」

思い出すのはモニターに映った沢山の手形。
それは2人が中に閉じ込められた自分を助けようとしていた時に付いた物だったのだ。
そして、割れたモニターの中に在る一冊の本に気が付いた。

「こんな所に在ったのね・・・」

それは間違い無く『見者の本』である事に3人は気付いた。
それを手に取り白根は振り返る。
名前も思い出せない2人だが共にココから出ようと頑張ってきた記憶だけは残っていた。
フト視線をやると椅子に座った状態で死んでいるもう1人の男に気が付く。
そう、なんで気付かなかったのか・・・
死んだ一人がモニターの中の世界には居なかったのだ。
それに気付ければ違う場所に移されていた事が直ぐに分かったのにと小さく溜め息を吐いて白根は先頭を歩いて部屋を出て行く・・・
その今までとは違う白根の様子に一瞬戸惑いながらも竜一とまなみは後を追いかける。

人の人格を形成するのは人の記憶だと言う。
クローンで作られた者は細胞レベルで一緒だとしても全く別人の様になるのは記憶が関係しているのだ。
竜一とまなみ、それ以外の事象も含めて白根はそれらの記憶を失っていた。
だからこそまるで別人の様に行動したのだ。

「さぁ、これが最後の一冊よ」

台に開いた最後の場所へ白根はその本をソッと置く。
それと同時に3人を残して周囲の景色が一瞬にして真っ白になり空中を浮遊するように3人は宙に浮く。
その前に黒髪の少女が・・・いや、背格好は低いが高齢の女性が・・・いや、白骨死体が・・・
3人の目にはそれぞれ違う姿が映し出されておりそれは口を開いた。

『ありがとう・・・これで私も終われる・・・最後に願いを1つずつ聞いてあげるわ』

あのイナバンが何処かに現れるのかと警戒していた竜一はその言葉に迷う事無く答えた。

「頼む、弟を・・・竜二を助けてくれ!」

何故かは分からない、だが目の前の高齢の女性は願いを本当に叶えてくれるのだと理解していた竜一は口にした。
その言葉に高齢の女性は頷き答える・・・

「対価として貴方の記憶と寿命の一部を頂戴します・・・」

そして、竜一の姿はその場から消えるのであった。
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