短編読み切り企画!人気が高かった作品を連載します!

昆布海胆

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第1回 作品3『勇者?いえ、自分『マ男者』ですがなにか?』

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世界に魔物が溢れ帰り世界中の人々は魔王が誕生したと噂していた。
人々は魔王が現れたのなら勇者も世界の何処かで誕生しているに違いない!
誰もがそう考えた。
ここはとある森の中、二人の金髪少女が走っていた。

「リム!急いで!」
「リアお姉ちゃん待って!」

その後ろを追い掛けるのは数匹のゴブリン。

「君ら可愛いね!ちょっと芸能界に興味ないギャギャ?!」

どうみてもヤクザより質の悪そうなゴブリンは巧みに人間の言葉を使っている。
魔物に捕まった人間の末路は悲惨だ。
専属マネージャーという名の見張りを付けられ魔物達の世界で枕営業をやらされる。
魔物の安眠の為に種族毎に開発した独自の枕を訪問販売させられるのだ!
例えばコカトリスならその羽を使って羽毛枕、ゴブリンなら巧みな技術で作った藁の枕・・・
そして、その行き着く先は邪心集を出して乳を見せさせられるヌードならぬ乳ド邪心を強制される。
これは男も女も変わらず年配の人間であっても魔物にはそれなりの需要があるのだ。

「きゃあ?!」
「リム!?」

後ろを走っていた一人の少女が木の根に足を取られて転んだ。

「お姉ちゃん私に構わず逃げて!」
「えっ?いいの?それじゃバイバイ」

そう言い残して姉は走り去った。

「えっ…」

前々から空気の読めない姉の土壇場での行動に固まるリム…
後ろから近付いてきたゴブリン達は倒れている少女の肩に手を置いて…

「ま、まぁなんだ。元気出せギャギャ」

妙に優しいゴブリンに家族ってなんだろう…
そう考えていた少女の前に上から飛び降りて来た全裸の男が着地した。
少女は固まる…目の前に男のアレが在るのだ。
そして、全裸の男はゴブリンを指差し叫ぶ!

「この痴漢め!その手を離せ!私はお前みたいな変質者が許せないんだ!」

男は少女の肩に手を置いてるゴブリンに怒鳴り付けた!
一同は固まる…
しかし、そこは野生のゴブリン、健康で若い男は高く売れる!

「なんだ貴様は?まぁ獲物が増えたんだからこっちとしてはいいんだがなギャギャ!」

そう言って襲い掛かってくるゴブリンを全裸の男は拳で反撃する。
しっかりと腰の入ったパンチはゴブリンの顔面にヒットしてゴブリンを吹き飛ばす。
殴った拳は人差し指と中指の間から親指が出ていた。
少女の目の前ではアレが左右に激しく動く!
さらに飛び込んできたゴブリンに合わせてハイキックを決める!
少女の顔まで数センチの所でアレが揺れる!
そして、横から来たもう一匹を掴んで背負い投げを決める!
少女の目の前では尻と股の間からアレが万華鏡ならぬちんg…

「おっ覚えていろー!」

ゴブリン達はそう叫んで走り去った。
全裸の男は少女の方に振り返り笑顔を見せて。

「やぁお嬢さん、お怪我は無いかな?変質者達は私が撃退したからもう安心だ。」
「えっと…あの…」
「あぁお礼なんて良いんだ。私はあぁいう変質者が大嫌いでね、これは私が好きでやったことだ。それでは気を付けて帰るんだよ」

そう言って全裸の男は木の上に飛び上がり何処かへ行ってしまう。

「なんだったの一体…」

固まるリムであったが落ち着いて考えればさっきの全裸の男は素手でゴブリンを撃退した。
それは本来有り得ないこと。
ゴブリンの強さは武器を持った人間3人と同じくらいと言われているからだ。

「まさか…勇者様なの?」

リムは立ち上がり村に帰って勇者様に助けられたという話をした。
ゴブリン4匹を素手で追い払ったと興奮気味に話したちまち勇者の出現が話題になった。
村人はリムに勇者の人相を聞き出して絵にしようとしたのだが…

「男の人でした…それ以上覚えてません…」

それはそうだろう、リムの記憶に残っているのは全裸の男の股間に生えたアレだけなのだから。
人の記憶とは曖昧なもので自分を救ってくれたあの人の顔を思い出そうとすると首から上がアレになってる姿しか想像できなかった。
リムは嘘つき呼ばわれされてもおかしくなかった。
だが一緒に逃げてた姉のリアがリムを置き去りにしてゴブリン4匹から逃げ切ったと先に話していたのでその信憑性は高かった。




「なにぃ?!取り逃がしただとブヒ?!」

ゴブリン達はアジトに戻っていた。
そこでゴブリン達のボスとして君臨するオークのビッツが叫んでいた。

「は、はい、一人の人間にやられましたギャギャ」
「そいつはそんなに強かったブヒ?」

何よりも戦いを好むオークのビッツは立ち上がりゴブリン達にそいつを探すように指示を出す。

ゴブリン達は一斉に森の中へ走り出すのだった。




森の中、木の枝に乗って横になり日光浴を楽しむ日陰の中にいる全裸の男。
彼は普通ではなかった。
何故全裸なのか?
それは彼の特異体質のせいである。

「見つけたギャギャwww」

それを下から見上げる1匹のゴブリンが居た。
早速オークを呼ぶ為にスキル『口臭電輪』を使用する!
これは口の中のフェロモンの濃度を変える事で仲間に合図を送る伝達スキルである!
程なくしてその場にオークが現われた。

「あいつかブヒ・・・」

オークはその男が乗っている木に体当たりをした!
そして、そのまま死んでしまった。

こうしてこの森のゴブリン達を支配していたオークが死んだ。
人々はゴブリンが人を襲い枕営業に追いやる姿が減りそれが勇者の仕業だと直ぐに気付いた。
勇者によって平和になったこの村で盛大に祝いの宴が開かれた時に一人の男が捕らえられた。

「離せ!俺は変質者じゃない!」
「うるさい!この森の中で全裸で飛び回ってるヤツが変質者じゃなくてなんなんだ!」
「俺は『マ男者』と書いて『マオシャ』ってちゃんとした名前があるんだ!変質者なんて名前じゃない!」
「いやそこかよ?!」

腰に布を巻かれて村に連行されたその男を見てリムが声を上げた。

「ゆ・・・勇者様だ!?」
「「「「えぇええええええええええええええええ?!?!?!?!」」」」
「お、お前が勇者だと?!」
「いや、俺はマオシャだが・・・」
「お前、森の中のオークを倒したのか?!」
「ん?いや、知らんぞ。俺が寝ていた木の下で死んでるオークなら美味かったが・・・」
(((喰ったのか?!)))

この世界の魔物には魔液と言う名の体液が体内を巡っており人間がそれを摂取すると良くて意識不明、悪いと尻毛が猛烈に伸びてう○こが毛に絡まって出しても体から離れない金魚の糞状態になるという恐ろしい効果があるのだ。
だが目の前の男の尻はキュッとしまって毛など毎日処理してますと言わんばかりに綺麗であった。

「って両手縛られてるのにどうやって布を取った?!」
「ふふふ・・・俺をこの村に入れたのが運の付きだな村の諸君!」

そう言って男は両手のロープを力任せに引きちぎって空高くジャンプした!
この村の一番高い2階建ての家より高く飛んだその男はそのまま元の場所に着地して・・・

「それでは村の皆さんまた!」

その言葉を残して走り去っていった・・・

「「「「「何故ジャンプしたんだーーーー?!?!?!??!?!?!」」」」」




その夜、その村に迫る多数の影があった。
ゴブリンの大群である。
オークが死んだことで稼ぎを行う方法を失った彼等は人間を大量に捕縛してアイドルユニット等を一斉に結成させ一発逆転を狙っていたのだ。
そして、宴で飲みすぎてトイレに行こうと家から出た村人がそのゴブリンの姿に気が付いてしまった。

「ご・・・ゴブリンだぁあああああ!!!」
「ま、待て!我々は怪しいゴブリンではないギャギャ!」
「嘘だぁあああ怪しくないゴブリンなんて空を飛ばない鶏だぁあああ!!」
「いや、それ普通じゃないかギャギャ・・・」

その叫び声に次々と村人たちが外に出てきてゴブリンが村を襲おうとしているのに気が付いた!

「しまったギャギャ!こうなったら無理やり村人を拉致するんだギャギャ!」
「そこまでだ!」
「誰ギャ?!」

村の家の屋根の上に人影が在りその人物が叫んだ!
何故かポーズを決めるのだが非常に格好悪い!

「天が呼ぶ地が呼ぶ海が呼ぶ!金を返せと俺を呼ぶが俺は文無しどこから尻の毛すらもない!」

意味の分からない叫び声を上げながら次々とポーズをとっていくその人物!
やがて月明かりがその人物の姿を映し出す!
それは昼間に村人が捕らえていた全裸の男『マオシャ』であった。

「泣く子も泣き止まない俺の名前は謎の男『ヒーローマスク』!又の名を『マオシャ』!」
「「「「謎の男と自分で言ってて名乗った?!」」」ギャギャ!!?」

村人とゴブリンが一斉に息を合わせて叫んだ!
そして、その人物はその屋根の上から飛び降りようと屋根を踏み切って!

ズボッ!
「へぁ?!ぁあああああああ!!!!」

屋根を突き破って家の中に落下した。

「あぁああああ!オラの家の屋根が!?まだローンが15年残っているのに?!」

一人の男性が叫びながら泣いているがそんな事はおかまいなくマオシャは窓を突き破って飛び出した!
それを見て男性は絶望の表情を浮かべる・・・
そして、男が手にしていたのは杖であった。
それは男の家に置いてあった長旅を歩く時の必需品『ただの杖』である。
だがその杖をマオシャが持つと異変が起こる!

「ドレスアップ!『マほうつかい』!」

まるでセーラーな美少女戦士みたいなシルエットのマオシャが変身をして次々と衣装が着せられていく!
腕に白い手袋!足にブーツ!体にはリボンの様な物が巻かれそれがヒラヒラの服に変身していく!
そして、胸元にペンダントが現われ空から降りて来た冠が頭に装着され・・・
橙色のローブを着た汚らしい老人がそこに居た。

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ」」」」ギャギャ・・・」

またしても村人とゴブリンの叫びがハモッて上がったところでマオシャは杖をゴブリンに向けて呪文を唱える・・・

「あらやだわ今日は燃えるゴミの日じゃないの!まぁ雑誌も読んだら燃えるから燃えるゴミよね!」

その詠唱が終わると杖の先から炎が飛び出した!
その炎は人型に変化しそしてそいつが両手をゴブリンに向けて呪文を唱える!

「踊れ火炎!叫べ悲鳴!煉獄の炎に焼かれて消えろ!メガファイア!」

人型の炎の両手から火柱が出るように勢い良く炎が噴出した!真上に!
一同はその火柱を見上げる・・・
そして、その隙にマオシャはゴブリンに駆け寄り手にしていた杖でゴブリンを滅多打ちにして戦う!
全員が見上げている中、殴られたゴブリンだけがマオシャの存在に気付き反撃をしようとするが先手を打たれ一方的に殴られ続けたゴブリンはそのまま意識を失う。
それを確認したらマオシャは次のゴブリンに向かう!
炎の巨大な音と熱で誰もがすぐ近くで戦いが行われているなどと言う事に気が付かず炎が消える頃にはゴブリン達は頭がたんこぶだらけになりその場で倒れていた。

「な・・・なんなんだお前はギャギャ!」

最後に残ったボスと思われる1匹のゴブリンの前に立つマオシャ。
そして、マオシャは名乗る!

「俺の名前は『マ男者』と書いて『マオシャ』!お前たちみたいな変質者を許さない者だ!」

既に着ていたローブは炎の消失と共に徐々に下から消えていき下半身が丸出しになっているマオシャはゴブリンに向かって叫ぶ!

「それじゃお前で最後だ!くらえ俺様の必殺・・・『アトミックスーパーウルトラデリシャスワンダフルニャンダフルウォーリャードウリャーコウリャーミラクルパーンチ』!」

マオシャが技名を叫びパンチを突き出したままゴブリンに向かって走りだす!
そして、直前で足を縺れさせて頭からゴブリンの腹に頭突きをぶちかました!
予想外の攻撃にゴブリンは反応できずそのまま腹を抑えて倒れるのであった。

「変質者は絶対に許さん!」

再び全裸になったマオシャは決めポーズを取って走りだす!
借りていた杖を返しに行ったのだ。
そして、その家の別の窓からぶち破って外へ脱出したマオシャはそのまま森の中へ走り去る・・・
後に残ったのは人間側の被害0、ゴブリン全滅、家一軒の天井に大穴と窓2枚破損。

翌日村はマオシャの話題で持ちきりであった。
遠くに居た人はマオシャを魔王じゃって聞こえたと言い勇者ではなく魔王だったと言う声も上がった。
そんな中、夜でぐっすり寝ていたリムは夜中にマオシャがこの村を襲おうとしていたゴブリンの大群を一人で全滅させたと言う話を聞いてマオシャにもう一度会いたくなった。

そして、マオシャに会う為に彼女は冒険者になる事を決意する。
強くなって今度は彼を逆に助けるんだ!

これは変質者を憎むマ男者と言う謎の人物とその彼を追う少女リムの物語。
彼女の頭の中にはマオシャの㌢㌧㌢㌧がずっと浮かんでいるのできっと再会しても股間を見るまでは彼だと気付かないだろう・・・
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