WSG ANOTHER 異世界に死を運ぶ少女

昆布海胆

文字の大きさ
13 / 24
第3章 兵士ブラン

第13話 ブラン、ヨハンと再開する

しおりを挟む
あの日からブランは犯罪者を使って10本以上の魔の武具を作り上げていた。
その評価は高くブランはかなり優遇され給金も改善されていた。
 女性の命と引き換えに1つの魔の武具を作り出すのも当初は抵抗があったが回数を重ねる毎にそれにも慣れてきていた。
そして、ブランは気付かなかった。
 元々死刑にされる程の犯罪を犯した女性がそれ程多く居るわけではない事実に・・・
 ブランは気付かない内に犯罪者だけに限らずに誘拐された者や奴隷を使って魔の武具を作らさせられていたことを・・・
 そして、それを偶然知ったブランは既に後戻りが出来なくなっていた。

 「ブランよ、これも人族が魔人族に勝つ為の必要な事なのだ。あまり思いつめるなよ」
 「・・・はい、大丈夫・・・です・・・」

 考えてはいけない、そう自身に言い聞かせブランは今日も魔の武具を作っていた。
そんなブランの知らない所で事件は起こっていた。





 「申し上げます。魔人族にアニガンに続きプロメタの町が落ちました」

 王へ入った報告にその場に居た誰もが苦い顔をする。
それはそうだろう、この2つの町が無くなったと言う事は人族に残されたのはこのリムルダールのみとなったという事である。
しかし、彼等にはブランが作っている魔の武具が在った。
これが在れば反撃の狼煙を上げる事が出来る、だがそれにはまだまだ本数が足りないのが問題であった。

 「魔の武具の生産状況は?」
 「現在18本です」
 「足りんな・・・せめて300は欲しい所だ・・・」

 1日にブランが作り出せるのは3本が限度であった。
その為ブランから作り方を聞き出し他の者を使って生産ペースを上げようという試みは行なわれていたが上手く行っていなかった。
それは仕方ないだろう、ブランが持っているメモにしても本人にしか分からない様に暗号化されたメモであり、作っている所は開示されていなかったのだ。

 「何とか見て覚える事は出来ないのか?」
 「それにしても300人近い生贄が必要ですが・・・」
 「300人もの女性の命と引き換えか・・・」

このリムルダールの町の住人は約1000人、その内女性は約400人しか居ないのだ。
それも子供から年寄りまでを含めた人数である、生贄に使ってしまってはその後人族が滅びるのは時間の問題となる事は明白であった。

 「大臣、何か良い案は無いか?」
 「そうですな・・・一つ方法があります」
 「ほぅ、申してみよ」
 「はい、アニガンとプロメタの町から脱出しここリムルダールに非難してきた避難民を使うのはどうでしょうか?」
 「ふむ・・・男は兵士として女は武具に使ってしまうわけか、確かに2つの町の避難民の人数を養う食料問題も解決しますな」
 「良かろう、その案を採用しよう!」

こうして誰にも知らされないリムルダール史上最大の悲劇が始まる・・・

「ブラン、魔人族により脳死となった者の肉体が大量に集まったぞ。お前の負担を減らす為にも今日は作り方を学ばせてくれ」
 「えっ・・・本当ですか?」

ブランにとっても人の命を毎日奪いながら魔の武具を作り続けているのは気が狂いそうになりつつあったのだ。
それを別の誰かが行なってくれる、つまり自分の手を汚す事が減る・・・
 それだけが頭にあったブランはその女性の体が何処から来たのか考える事をしなかった。
そして、その日最初に寝かされていた女性の体にいつも通り魔草を塗った剣を突き立てる。
 人の死を間近で見続けるのは精神衛生上宜しくないと女性の顔に布が掛けられていたのでブランは自分が誰に剣を突き立てたのか気付かなかった。

 「ヴッ・・・」

 小さな呻き声と共にいつも通り作業が終わり3時間そのまま置いておく為に部屋を出るブラン。
そして、一息付こうと休憩所で休んでいる時にそれは聞こえた。

 「聞いたか、アニガンとプロメタが魔人族に滅ぼされたらしい」
 「本当なのか?!このリムルダールに居る兵士の中にはそこ出身の者も多数居るはずだろ?」
 「あぁ、だから情報開示する事で反撃の士気を上げるつもりなのだろう」
 「なるほど、今上が行なっている魔人族への対抗手段の噂も真実味が増してきたな」
 「あぁ、それに二つの町の生き残りもこの町に来ているらしいから兵士不足もこれで解消されるかもな」
 「ラストハルマゲドンは近いと言うわけか・・・」

ブランは耳を疑った。
プロメタの町が魔人族に滅ぼされた?
 両親や知り合いが被害にあった・・・
 そして、ブランは今朝の上司の言葉を思い出す・・・

「魔人族により脳死となった者の肉体が大量に集まったぞ」

まさか・・・まさか・・・まさか・・・まさか・・・まさか・・・

 ブランは踵を返して先程の部屋に戻る。
そこにはブランが使っていた魔草を研究している者が数名居りブランが戻ってきたのに気付いて話しかけてくる。
だがブランはそれを無視して魔剣に命を吸わせている女性の顔に掛かった布を取った。

 「そんな・・・そ、そんな・・・ふ・・・フローラ・・・」

それはブランも良く知る女性であった。
ブランの弟の様な存在であるヨハンという青年の婚約者でブランとも子供の頃からの知り合いだ。
 後ろで研究者達が何かを話しかけているがブランの耳には届かなかった。
そして、自分の両手を見詰める・・・
既に真っ赤に人の血で染まったその両手が見えるブランはその時壊れた・・・

「そうだな・・・俺は何も知らない・・・何もしていないんだ・・・」

 現実逃避、それが彼の選んだ選択肢であった。
そして、ブランはその場に居た研究者達に魔の武具の作り方を詳しく教え自分は魔の武具の作り方を知らないと自己暗示を掛けた。
 彼は完成したそのフローラの命の宿った魔剣を自室に仕舞い込み城から出て空を眺める・・・
記憶を自ら改ざんし始めたブランにとってもこの気分転換は非常に効果的であった。
 先程まで真っ青だったブランの顔色はかなりマシになり一呼吸した所で城の休憩所が騒がしくなっているのに気付き立ち上がった。

 「何事だ?」
 「あっブランさん、この新人がどうやらプロメタの町出身の様で魔人族に滅ぼされたと聞いて意識を失いました」
 「ん?こいつは・・・ヨハン?!」

その時ブランの脳内に激痛が走る。
 思い出してはいけない何かを思い出しそうになったブランであったが頭を振ってそれを忘却しヨハンの肩を自身に回す。

 「誰か医務室まで運ぶのを手伝ってくれ」
 「あっ俺一緒に行きます」

そうしてブランはヨハンを医務室まで運ぶのであった・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...