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第3章 兵士ブラン
第15話 ブラン、死の間際にティナを見る・・・
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魔王の城へ攻め込む当日が遂にやって来た。
ブランは魔剣を使うと確実に死に至る事を理解していた。
この戦いが終われば多くの者がその人生を終わらせるだろう・・・
きっとその中にヨハンも居る。
ブランは自らの罪を打ち明けるか悩んでいた。
「ブラン隊長、時間です」
「あぁ・・・行こうか・・・」
リムルダールの広場に集まった総勢300人、いくつもの小隊に別れ城を包囲する形で集結する作戦である以上ヨハンと話せる機会は最後かもしれない。
だがブランは選ばなかった。
自身の優柔不断な考えのまま時間が過ぎるのを待って逃げたのだ。
そして、出発しブランは移動中ずっと苦しみ続けるのであった。
まるで弟の様に慕ってくれるヨハンを裏切る形で生きているのが彼に重くのしかかる・・・
フローラの本当の仇は自分なのに魔人族のせいにしているのだ。
そんな罪の意識に悩まされながらもブランの小隊は無事に魔王城の近くまでやってきていた。
「我々は城の窓から内部へ侵入する経路を通る、中に居る動くものは全て殺せ!」
ブラン達の小隊を率いる男が声をあげ各々はそれぞれの窓から中へ進入する。
そして、先行した者が戦闘を開始した音が響く。
ブランは魔の武具を開放して戦っている仲間がもうじき死ぬ事に覚悟を決めた。
「敵襲!てきしゅ・・・」
小部屋から飛び出した人間にしか見えない人物の口を手で塞いで別の者がそいつの首を切り裂いた。
周囲は血にまみれまた一つの命が散る。
ブランは目の前に居る魔人族の人間が実は自分と全く変わらない普通の人間だと言う事をその時初めて理解した。
そしてブランは吐いた。
その間も城の中では次々に人が死に城の内部は死で満ちていく・・・
まるでこの城に死神が宿っているかのように感じたブランであったがその脳内に声が響く!
『我が城へ攻め込んできた人族は一人残らず皆殺しにせよ!』
(そうだ、ヨハンも今きっと戦っているんだ!)
ブランはまるで導かれるように通路を駆け出す。
それに合わせて数名の部下がブランに追従する。
長い廊下を抜けてまるで城の内部を全て知っているかのようにブランは一直線にその部屋へ向かった。
そして、その部屋へ足を踏み入れてそれを見た。
背中から魔剣を突き刺されまるで何かに抱きつくように座り込んでいる男と沢山の死体。
その座り込む男の服装と容姿からそいつが魔王だとブランは理解した。
その部屋の中に腹部を切り裂かれ上半身だけになったヨハンの姿も在った。
ブランはヨハンの方を向いて口を開く・・・
「ヨハン・・・お前が魔王を倒したのか・・・本当にすまなかった・・・俺はお前に・・・フローラを殺したのは・・・俺なんだ・・・」
その言葉を伝えると同時にヨハンの目から色が消えた。
だがその表情は穏やかであった。
ブランは部下の腰に装備されていた魔剣を奪い取る。
「ブ、ブラン隊長?!」
そう、この使用すると使用者の命を奪う魔の武具は小隊長以上の者には渡されていなかったのだ。
理由は簡単、小隊長以上の地位に居るものは貴族の関係者だったりリムルダールの町でも守られるべき存在であったからである。
その為ブランも魔の武具は所持していなかった。
だがブランはその封印を解いて魔剣をその手にして魔王の背中へ突き刺す!
それを見ていた部下の数名もブランに続き魔の武具を開放し座り込む魔王へ攻撃する。
殆ど反応が返っては来なかったがそれでも小さく呼吸している事が分かった肩の動きがゆっくりと止まった。
この時ブランは魔王を仕留めたのを確信した。
「我々の勝利だ!」
「「「「「オオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」」」
ブランの声が響き残党狩りを終えた別の隊の者が次々とその部屋へ集まる。
そして、魔王の首が切り取られ魔の武具を開放していない者がリムルダールの町まで持ち帰る事となった。
後に残されるのはブランを含む魔の武具を使用した者だけであった・・・
「やりましたね、ブラン隊長」
「あぁ、これで人族は救われるな・・・」
「最後の最後までブラン隊長にお供できる事を光栄に思います」
疲れたのかブランはその場に座り込みその周囲を囲むように部下達が和気藹々とブランを褒め称える。
事実ブランの作った魔の武具が無ければこの勝利は無かったのだ。
彼等の嬉々とした会話は徐々に小さくなってく・・・
魔の武具に吸い取られた命が尽きようとしているのだ。
1人、また1人と意識を失い眠るように死んでいく仲間達。
ブランは1人が倒れる度に名前と一言伝えていく・・・
一番最後に魔の武具を開放したブランは最後の一人になるまで生き残る。
そうしてブラン以外の全員がその人生を終えて倒れる。
「あぁ・・・ヨハン、俺が死んだらそっちに行くからタップリ文句を言うがいいさ」
そう独り言を言いながらゆっくりとやってくる死の感覚に身を委ねるブラン・・・
その時足音が聞こえた。
(だ・・・れ・・・だ・・・?)
薄っすらと目を開くとそこにはあの緑髪の少女が立っていた。
少女は部屋の状況を見て回り両手を合わせて命を捧げるように天井を見詰める。
すると緑髪の少女の姿が足先から消えていく・・・
(なん・・・だ・・・あれ・・・は・・・)
そして、消えた緑髪の少女の隣にいつの間にかもう1人の少女が立っていた。
その少女は天井に向かって何かを必死に語りかけていた。
既にブランの呼吸は止まり心臓も動いていなかった。
だがその少女の事が気になりブランは徐々に暗くなる視界の中で必死に少女を見続けた。
そして・・・
少女は自らの胸に見覚えのある短剣を突き刺したのであった。
そのまま床へ崩れる少女の姿を最後にブランの意識は闇の中へ沈んでいった。
死が渦巻く闇の中へ沈むブランが最後に考えたのは『少女も同じところへ行くのだろうか』と言う事であった…
第3章 ブラン 完
ブランは魔剣を使うと確実に死に至る事を理解していた。
この戦いが終われば多くの者がその人生を終わらせるだろう・・・
きっとその中にヨハンも居る。
ブランは自らの罪を打ち明けるか悩んでいた。
「ブラン隊長、時間です」
「あぁ・・・行こうか・・・」
リムルダールの広場に集まった総勢300人、いくつもの小隊に別れ城を包囲する形で集結する作戦である以上ヨハンと話せる機会は最後かもしれない。
だがブランは選ばなかった。
自身の優柔不断な考えのまま時間が過ぎるのを待って逃げたのだ。
そして、出発しブランは移動中ずっと苦しみ続けるのであった。
まるで弟の様に慕ってくれるヨハンを裏切る形で生きているのが彼に重くのしかかる・・・
フローラの本当の仇は自分なのに魔人族のせいにしているのだ。
そんな罪の意識に悩まされながらもブランの小隊は無事に魔王城の近くまでやってきていた。
「我々は城の窓から内部へ侵入する経路を通る、中に居る動くものは全て殺せ!」
ブラン達の小隊を率いる男が声をあげ各々はそれぞれの窓から中へ進入する。
そして、先行した者が戦闘を開始した音が響く。
ブランは魔の武具を開放して戦っている仲間がもうじき死ぬ事に覚悟を決めた。
「敵襲!てきしゅ・・・」
小部屋から飛び出した人間にしか見えない人物の口を手で塞いで別の者がそいつの首を切り裂いた。
周囲は血にまみれまた一つの命が散る。
ブランは目の前に居る魔人族の人間が実は自分と全く変わらない普通の人間だと言う事をその時初めて理解した。
そしてブランは吐いた。
その間も城の中では次々に人が死に城の内部は死で満ちていく・・・
まるでこの城に死神が宿っているかのように感じたブランであったがその脳内に声が響く!
『我が城へ攻め込んできた人族は一人残らず皆殺しにせよ!』
(そうだ、ヨハンも今きっと戦っているんだ!)
ブランはまるで導かれるように通路を駆け出す。
それに合わせて数名の部下がブランに追従する。
長い廊下を抜けてまるで城の内部を全て知っているかのようにブランは一直線にその部屋へ向かった。
そして、その部屋へ足を踏み入れてそれを見た。
背中から魔剣を突き刺されまるで何かに抱きつくように座り込んでいる男と沢山の死体。
その座り込む男の服装と容姿からそいつが魔王だとブランは理解した。
その部屋の中に腹部を切り裂かれ上半身だけになったヨハンの姿も在った。
ブランはヨハンの方を向いて口を開く・・・
「ヨハン・・・お前が魔王を倒したのか・・・本当にすまなかった・・・俺はお前に・・・フローラを殺したのは・・・俺なんだ・・・」
その言葉を伝えると同時にヨハンの目から色が消えた。
だがその表情は穏やかであった。
ブランは部下の腰に装備されていた魔剣を奪い取る。
「ブ、ブラン隊長?!」
そう、この使用すると使用者の命を奪う魔の武具は小隊長以上の者には渡されていなかったのだ。
理由は簡単、小隊長以上の地位に居るものは貴族の関係者だったりリムルダールの町でも守られるべき存在であったからである。
その為ブランも魔の武具は所持していなかった。
だがブランはその封印を解いて魔剣をその手にして魔王の背中へ突き刺す!
それを見ていた部下の数名もブランに続き魔の武具を開放し座り込む魔王へ攻撃する。
殆ど反応が返っては来なかったがそれでも小さく呼吸している事が分かった肩の動きがゆっくりと止まった。
この時ブランは魔王を仕留めたのを確信した。
「我々の勝利だ!」
「「「「「オオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」」」
ブランの声が響き残党狩りを終えた別の隊の者が次々とその部屋へ集まる。
そして、魔王の首が切り取られ魔の武具を開放していない者がリムルダールの町まで持ち帰る事となった。
後に残されるのはブランを含む魔の武具を使用した者だけであった・・・
「やりましたね、ブラン隊長」
「あぁ、これで人族は救われるな・・・」
「最後の最後までブラン隊長にお供できる事を光栄に思います」
疲れたのかブランはその場に座り込みその周囲を囲むように部下達が和気藹々とブランを褒め称える。
事実ブランの作った魔の武具が無ければこの勝利は無かったのだ。
彼等の嬉々とした会話は徐々に小さくなってく・・・
魔の武具に吸い取られた命が尽きようとしているのだ。
1人、また1人と意識を失い眠るように死んでいく仲間達。
ブランは1人が倒れる度に名前と一言伝えていく・・・
一番最後に魔の武具を開放したブランは最後の一人になるまで生き残る。
そうしてブラン以外の全員がその人生を終えて倒れる。
「あぁ・・・ヨハン、俺が死んだらそっちに行くからタップリ文句を言うがいいさ」
そう独り言を言いながらゆっくりとやってくる死の感覚に身を委ねるブラン・・・
その時足音が聞こえた。
(だ・・・れ・・・だ・・・?)
薄っすらと目を開くとそこにはあの緑髪の少女が立っていた。
少女は部屋の状況を見て回り両手を合わせて命を捧げるように天井を見詰める。
すると緑髪の少女の姿が足先から消えていく・・・
(なん・・・だ・・・あれ・・・は・・・)
そして、消えた緑髪の少女の隣にいつの間にかもう1人の少女が立っていた。
その少女は天井に向かって何かを必死に語りかけていた。
既にブランの呼吸は止まり心臓も動いていなかった。
だがその少女の事が気になりブランは徐々に暗くなる視界の中で必死に少女を見続けた。
そして・・・
少女は自らの胸に見覚えのある短剣を突き刺したのであった。
そのまま床へ崩れる少女の姿を最後にブランの意識は闇の中へ沈んでいった。
死が渦巻く闇の中へ沈むブランが最後に考えたのは『少女も同じところへ行くのだろうか』と言う事であった…
第3章 ブラン 完
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