短編集

昆布海胆

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魔王少女アメリー

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魔族の町『ヌリエ』
今、この町を人間が襲っていた。

「野郎共!男は奴隷に!女は商品にするから出来るだけ傷付けるなよ!」

強面の男達が次々と家の扉を破壊して中へ押し入っていた。
中から悲鳴が上がる前に麻酔薬の様なものを使用されて意識を無くした住人が運び出されていく。
他人との関係が薄い魔族は隣人が襲われても基本的に無干渉である。
だがここ暫く人間に襲われ続けている魔族達は徐々にその意識を変え始めていた。

「人間だー!人間が攻めてきたぞー!」

見張りと呼ぶには余りにも適当な配置を任されていた者が叫びを上げる。
殆どの者は自分には関係無いと無関心を決め込むが何人かは決められた避難場所へ逃げ出す。
しかし、人間にとって高く売れる魔族が一ヶ所に集まるというのは逆に一気に捕獲できるチャンス。
人間の本陣がそこを目指して動き始めた。

「チャンスだ!一気に捕らえるぞ!」

広場に集まって結界で身を守ろうとする魔族達に魔族の力を流し込まれた人間『魔人』が近寄る。
恐るべきは人間の魔化学である、人間よりも遥かに高い魔力を持つ魔族の力を取り込んだ魔人はその結界を軽々と破壊した。

「ひぃ?!」

恐怖に震える魔族、だがそこに一人の少女が降り立った。
紫色のヒラヒラドレスにナースキャップのような帽子を被り、手には先端に☆が着いたステッキを持つ少女はクルッと何故かターンを決めてポーズをとる。

「魔族の平和は私が守る!魔王少女アメリーここに参上!魔石に代わってお仕置きよ!」

誰もが唖然とそれを見て固まっていた。
それをチャンスとばかりにアメリーはステッキを魔人へ向けて唱える!

「魔光少女ライト!」

ステッキの先端が輝き人間の目を眩ました。
続いて唱える!

「魔装少女アーマー!」

ステッキからヒラヒラのリボンが出現しアメリーの体に巻き付きヒラヒラドレスがバージョンアップする!

「魔闘少女グローブ!」

ステッキから出たキラキラ光る物質がアメリーの両手を包み込む!

「魔濃少女結界!」

ヌリエを町が巨大な結界に包み込まれ出入りが不可になった。

「魔法少女ドレスアップ!」

着ていたドレスがパワーアップしてフリフリが付いた!

「魔猛少女ギア、ランクアップ!」

アメリーの目の色が変わり黒と赤に染まる!

「魔妖少女マスク!」

顔に白いマスクが装着された。

「魔牢少女ロックオン!」

ようやく視力が戻り始めた魔人の周囲に魔力で作られた檻が出来て囲まれた。
慌てて脱出を試みる魔人であるが濃度の高すぎる牢は破壊するどころか傷ひとつ付かない。
そんな魔人の前にアメリーは一歩踏み出し白いマスクの隙間から白い息を吐きながら低い声で述べた。

「マジカルチェーンソー」

手にしていたステッキが光に包まれチェーンソーへと変化した。
ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォーーーン!!!
と刃が回転する音が響きチェーンソーを両手で持ちながらゆっくりと近付いていく。

「ヒッ…ヒッ…」

人よりも魔力に長け、魔族よりも知に長ける魔人の口から漏れた小さな悲鳴。
その悲鳴をもっと要求するように大きく響くチェーンソーの音に周囲に居た人間達は我先にと逃げ出す。

「魔拷少女参る!」

白いマスクをしている筈なのに口元がニヤリと開き周囲に惨劇を見詰める魔族の悲鳴が響き渡った。
魔族達は後に語り継ぐ…

『あれは悪魔だ、マジカルとは『真剣狩る』と書くに違いない』








魔王城の王の間。
大臣が魔王女に報告を行っていた。

「ほぅ、魔王少女とな?」
「はっ、奇妙な力を持って人間を撃退したとの事です」

その報告を楽しそうに聞く魔王女アメリーアは横に立て掛けられたステッキを手に取りそれを慈しむ目で見つめる。

「アメリーア様そちらは?」
「ん?これか?これはな…」

魔王女アメリーア、現在975歳となる彼女は以前から語っていた若返りたいと言う願いを最近口にしなくなった…


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