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合わない合計の秘密
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「頼む!1万円貸してくれ!分割で必ず返すから!」
「いや、そんな事言われても・・・」
高校から出て直ぐに余り話した事も無いクラスメイトに声を掛けられた。
学年1位の頭脳を持っている目の前のそいつは俺を拝むように頭を下げていた。
内容は会話の通りだ、欲しいゲームを買う金を無くしたらしく借りたいって言ってきているのだ。
ゲームが好きなのになんでこいつはこんなに頭がいいのかと憎く思うが俺は考えを改めた。
貸しを作れば勉強で分からない事を教えてもらえるかもしれない・・・
幸い財布の中には父親が非常時用に渡してくれている1万円が入っているのだ。
「本当に頼む、どうしても初回限定版が欲しいんだ」
「ま・・・まぁちゃんと対価になる物を預けてくれるなら考えなくも無い」
俺の言葉に表情をパアッと変化させたそいつは以外に可愛い事に気が付いた。
髪の毛が短いし男っぽい話し方をしているがやっぱり女なのだ。
まぁ服装見れば直ぐに分かるだろって話なんだけどな。
「分かった、俺の大事にしている万年筆を預ける。だから頼む」
「ハァ・・・分かったよ、万年筆なんか預かって無くしたら大変だから書面で書いてくれればいいよ」
「本当か?!恩にきるよ!!」
そうして俺はそいつに簡単な書面でサインをさせて毎月の金額は定めていないが半年以内に全額返すと約束させた。
約束を破った時はそいつの親に伝えると言う誓約も書かれているから大丈夫だろう。
そして、俺は財布の中の1万円を貸した。
翌月、あれ以来仲良くなったそいつから5000円が返って来た。
俺は帰ってから忘れないように支払われた金額と残り残額を記載するようにした。
銀行の通帳を真似て分かりやすく作ったのだ。
更に翌月、そいつから2500円が返って来た。
俺は忘れずにそれも記載した。
更に翌月、そいつから1000円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
更に翌月、そいつから800円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
更に翌月、そいつから500円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
徐々に毎月の返済額が減っているのはもしかしたらこの不思議な関係をそいつが終わらせるのを嫌がり引き伸ばしているのかもしれないと徐々に俺は思うようになっていった。
クラスメイトからはいつの間にかお似合いの二人なんて言われて茶化されたりもする、そんな関係をそいつも悪い風には感じていない様子だったからだ。
しかし、俺は何故か胸騒ぎがずっとしていたのだ。
そして、今日最後の200円が返って来た。
すると昨日まで仲良く下校していたそいつは態度を急変させて無言で俺の前から立ち去った。
その雰囲気に違和感を覚えながら帰って最後の記載を終えた。
返金 残高
5000 5000
2500 2500
1000 1500
800 700
500 200
200 0
それを見て俺は怒りを覚えた。
一体どうやったのかは全く分からない、だが忘れていたのだ。
あいつは学年で一番頭がいいのだということを・・・
俺との関係をずっと続けていたいからなのだと妄想していた自分が馬鹿みたいだ。
その答えが今日の態度である。
そう・・・あいつは最初からそういうつもりだったのだ。
もう一度記載したメモを見ながら俺は最後に追加で記載をした。
返金 残高
5000 5000
2500 2500
1000 1500
800 700
500 200
200 0
──────────
10000 9900
そう、何回計算し治しても返金された額の合計は1万円になる筈なのに残高の合計は100円足りなくなるのだ。
その時、俺の携帯にあいつからメールが届いた。
『あのさ、明日の休み・・・話があるんだ・・・』
きっと俺を騙し通せたか確認したいんだろうな・・・
たった100円、だけど約束は約束だ。
俺はあいつの親に電話で金を貸した事を伝えた。
大人になった今、当時の事を思い出しながら見つけたメモを見て頬を涙が伝う・・・
なんて・・・俺は・・・馬鹿だったんだ・・・
終
「いや、そんな事言われても・・・」
高校から出て直ぐに余り話した事も無いクラスメイトに声を掛けられた。
学年1位の頭脳を持っている目の前のそいつは俺を拝むように頭を下げていた。
内容は会話の通りだ、欲しいゲームを買う金を無くしたらしく借りたいって言ってきているのだ。
ゲームが好きなのになんでこいつはこんなに頭がいいのかと憎く思うが俺は考えを改めた。
貸しを作れば勉強で分からない事を教えてもらえるかもしれない・・・
幸い財布の中には父親が非常時用に渡してくれている1万円が入っているのだ。
「本当に頼む、どうしても初回限定版が欲しいんだ」
「ま・・・まぁちゃんと対価になる物を預けてくれるなら考えなくも無い」
俺の言葉に表情をパアッと変化させたそいつは以外に可愛い事に気が付いた。
髪の毛が短いし男っぽい話し方をしているがやっぱり女なのだ。
まぁ服装見れば直ぐに分かるだろって話なんだけどな。
「分かった、俺の大事にしている万年筆を預ける。だから頼む」
「ハァ・・・分かったよ、万年筆なんか預かって無くしたら大変だから書面で書いてくれればいいよ」
「本当か?!恩にきるよ!!」
そうして俺はそいつに簡単な書面でサインをさせて毎月の金額は定めていないが半年以内に全額返すと約束させた。
約束を破った時はそいつの親に伝えると言う誓約も書かれているから大丈夫だろう。
そして、俺は財布の中の1万円を貸した。
翌月、あれ以来仲良くなったそいつから5000円が返って来た。
俺は帰ってから忘れないように支払われた金額と残り残額を記載するようにした。
銀行の通帳を真似て分かりやすく作ったのだ。
更に翌月、そいつから2500円が返って来た。
俺は忘れずにそれも記載した。
更に翌月、そいつから1000円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
更に翌月、そいつから800円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
更に翌月、そいつから500円が返って来た。
俺は忘れずに記載した。
徐々に毎月の返済額が減っているのはもしかしたらこの不思議な関係をそいつが終わらせるのを嫌がり引き伸ばしているのかもしれないと徐々に俺は思うようになっていった。
クラスメイトからはいつの間にかお似合いの二人なんて言われて茶化されたりもする、そんな関係をそいつも悪い風には感じていない様子だったからだ。
しかし、俺は何故か胸騒ぎがずっとしていたのだ。
そして、今日最後の200円が返って来た。
すると昨日まで仲良く下校していたそいつは態度を急変させて無言で俺の前から立ち去った。
その雰囲気に違和感を覚えながら帰って最後の記載を終えた。
返金 残高
5000 5000
2500 2500
1000 1500
800 700
500 200
200 0
それを見て俺は怒りを覚えた。
一体どうやったのかは全く分からない、だが忘れていたのだ。
あいつは学年で一番頭がいいのだということを・・・
俺との関係をずっと続けていたいからなのだと妄想していた自分が馬鹿みたいだ。
その答えが今日の態度である。
そう・・・あいつは最初からそういうつもりだったのだ。
もう一度記載したメモを見ながら俺は最後に追加で記載をした。
返金 残高
5000 5000
2500 2500
1000 1500
800 700
500 200
200 0
──────────
10000 9900
そう、何回計算し治しても返金された額の合計は1万円になる筈なのに残高の合計は100円足りなくなるのだ。
その時、俺の携帯にあいつからメールが届いた。
『あのさ、明日の休み・・・話があるんだ・・・』
きっと俺を騙し通せたか確認したいんだろうな・・・
たった100円、だけど約束は約束だ。
俺はあいつの親に電話で金を貸した事を伝えた。
大人になった今、当時の事を思い出しながら見つけたメモを見て頬を涙が伝う・・・
なんて・・・俺は・・・馬鹿だったんだ・・・
終
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