異世界で音ゲー革命! 音楽ゲームが異世界に進出?!

昆布海胆

文字の大きさ
80 / 86

第80話 DDRパフォーマンス大会 その9

しおりを挟む
静まり返る会場・・・
先程とは真逆のその光景だが誰一人声を上げる者は居ない。
マス・・・ミスターMがパフォーマンスで完成させた5つのカクテルを手にした審査員の感想を待っているのだ。

「一つだけ言わせて貰う、これはDDRのパフォーマンスの審査だ。これを飲んだところで君の評価は変化しないがそれでも?」
「・・・」

コンマイ国王の言葉に礼をしながら頷くマス・・・ミスターM。
それを見て他の審査員達も手にしたカクテルを口元へ移動させる。

ごくり・・・

それは観客達の生唾を飲み込む音であった。
ミスターMが用意した5つのカクテルはこのイベントで即興で作られた全く新しいカクテル。
ミスターMの招待を知る人々はその価値を理解していた。
あの音ゲーが並ぶバーのメニュー欄に記載された『マスターのお勧め』というカクテルが正に今並んでいるのだ。
しかも注文したとしても何が出てくるのかは誰にも分からないそのカクテル、初めて目にした物もあるのだ。

「ふむ・・・これは深いな・・・」

帝国皇帝が口にした・・・
それを皮切りに他の物もそれぞれの感想を述べる。
美味いとは誰一人として言わない、だがその表情は決して不満がある様子ではない。
むしろ誰も味わった事のない全く新しい世界を垣間見た様子であったのだ。

「そ・・・それではそろそろ皆さん得点を宜しくお願いします」

受付嬢が恐る恐る声を掛ける。
それも仕方ないだろう、各国のTOPが満喫している瞬間を邪魔するのだ。
だがこのままでは時間が押してしまう、止むを得ないのである。
渋々と言った感じではあるが、誰もがそれを理解しているのかグラスを置いて紙に得点を記載していく・・・

「お待たせしました、ただ今の得点は・・・えぇっ!?」

受付嬢が驚きで声を上げる、だがそこはプロ根性で直ぐに軌道修正し発表を続けた。

「ただ今の得点・・・9点、10点、8点、9点、8点! 合計44点!み・・・見事暫定1位獲得です!」

割れんばかりの拍手と歓声が一気に押し寄せた!
文句のつけようが無い見事なパフォーマンス、僅かに満点に及ばなかったのはスコアと足の動きが少なかったからである。
だがそれでもTOPに躍り出たのは間違いなかった。

「ありがとうございました!それでは続きまして・・・ウィズさんどうぞ!」

歓声が落ち着くのを待つ事無くそのまま受付嬢は進めた。
本当であればロクドーの感想を聞きたいところではあったのだが時間が押していたのだ。
そして、歓声が落ち着く頃に1人の青年が筐体の横に震えながら近寄っていった。

「ウィズさん、何か一言ありますか?」
「い・・・いえ・・・別に・・・」
「そ、そうですか・・・それでは早速どうぞ!」

正直誰もがミスターMのパフォーマンスを見た事で期待は一切していなかった。
例えウィズと名乗る普段芸戦で余り見かけない青年がメモリーカードを刺しても冷め始めていた。
今回のイベントもマス・・・ミスターMの1人勝ちだろうと考えていたからだ。
しかし、誰もが予想もしていなかった・・・
これから始まるウィズのパフォーマンス内容に!

「えっと・・・どうぞ始めて下さい」

そう受付嬢が告げる、だがそれは仕方ないだろう、ウィズは筐体の横に立っていたからだ。
曲は既にセットされており筐体からは『MAKE A JAM!』が流れていた。

MAKE A JAM!
御存知家庭用初代DDRで一番最初に解禁される隠し曲。
最初に流れてくる譜面がコンマイコマンドである↑↑↓↓←→←→だと言うのは余りにも有名な曲・・・
だが曲の速度も控えめで譜面的にもコレと言った特徴が無い曲である。

誰もがえっ?あれで何をやるの?と言いたそうな顔をしていた。
それでも今まで良い意味で期待を裏切られる事が続いた観客達は決して見下したりはしなかった。
それが逆に良かった、実は緊張で心臓がバクバク言っているウィズは罵声を掛けられたら逃げ出していたからである。
それでも彼は勇気を出して左手を伸ばして決定ボタンを押した!

「それでは宜しくお願いします!ウィズさんでMAKE A JAM!ですどうぞ!」

軽やかな曲が流れ出し筐体横に立ったウィズは何故か画面ではなく正面を見詰めていた。
その状態から一体何が始まるのか誰もが見守る中、画面に矢印が1つ上がってきた。
『←』である。
ウィズはそれを右足で踏んで筐体に上がった。
続けて左足も筐体の上に上げ踏んで・・・右足を筐体から下ろし元の位置へ戻った。

「・・・はっ?」

一体何をやっているのか理解が出来ない人々は首を傾けて困惑した。
だが再び上がってきた『←』をウィズが踏んだ事で気付いた!

「ま・・・まさか・・・まさかこれは・・・!!!!」

声を上げたのはロクドー、そして気付いた観客も互いに顔を見合わせて頷き合う。
一般人でも国が推奨する健康診断を受けた事のある者は沢山居た。
だからこそ知っているのである!
だがまさかそれをDDRで再現するなどとは一体誰が思っただろうか・・・
そう、ウィズが今目の前で行なっている行為・・・
それは・・・

『踏み台昇降運動』である!

延々と上がっては降りてを繰り返すウィズ・・・
発想、それがどれ程の価値を持っているのかこの場に居る誰もが理解していた。
誰も気付かなかった誰にでも出来るパフォーマンス、それがどれ程凄いかと言うのを理解しているのだ!

「お・・・おぉ・・・おおおおおおおおおお!!!!!」

最初に歓声を上げたのはコンマイ国王である、国を挙げて国民の健康を考えて推奨していたそれをDDRで再現した事を高く評価したのだ!
そして、きっかり1分間上がり降りを繰り返したウィズは反転しパネルの上に座って・・・
自らの左手首に右手の親指を添えた!

「み・・・脈計ってる?!」

一斉に大爆笑が会場を包み込んだ!
ミスターMが動く事で観客を魅了したのに対し、ウィズは動かない事で観客を魅了したと言っても過言ではない!
踏み台昇降運動を行なった後には必ず脈拍測定が付き物なのだ!
そして、そのまま左手首を押さえたまま曲が終了しリザルトが画面に表示される・・・
だがそれを見向きもせずにウィズはそのまま立ち上がって歩いて去っていく・・・
耳まで真っ赤に染まった状態だが最後までやり切った彼に再び割れんばかりの拍手が送られた!
余りにも異質、余りにも常識外れ、だがそれすらも有りなのがDDRなのだ!

「ウィズさんでした!ありがとうございましたー!それでは審査員の皆様、得点をどうぞ!」

受付嬢が押している時間を巻き返す為に審査員を煽った。
ロクドーが解説をしようと立ち上がって手を差し出した状態のまま固まっているのに観客達が気付き、再び大爆笑に会場が包まれるのであった・・・
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...