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AV男優、コイヤー・カカツテ

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 俺は転生者だ。

 治癒師をやっている。成り行きで。

 転生者の自覚があるということは、当然、前世の記憶もある。

 前世ではAV男優だった。

 サラリーマン時代、ひょんなことからAV監督と知り合いになり、意気投合。

 ちょっとAVに出てみないかと誘われ、興味本位でやってみたのが始まりだ。

 べつにアブノーマルな作品でもなかったので、俺も楽しみつつ何本か汁男優として参加した。

 そんなある日、女優がノリで俺のペニスを亀頭責めしたのが運命の分岐点だった。

 もともと感じやすかった俺は七転八倒して悶絶した。その姿がカメラ映えしたらしく、女優も監督も大ウケ。

 さらに責められながら「もうやめちゃおうか?」と女優に囁かれた俺が、「かかってこいやー!」と叫んだことで、俺の名前が決まった。

 コイヤー・カカツテの誕生だ。

 そこから俺が出演する作品は、ことごとくM男系に偏った。しかし最初は、なんだかんだでそれを楽しんでた。

 乳首や亀頭、アナルを責め続けられて、気を失いそうなほどの快感を受け続けるのは、男なら一度は経験したいのではなかろうか。

 そう、一度なら。

 しかし、幸か不幸か……、いや、不幸にも、俺は人気AV男優になってしまったのだ。

 いったい俺の何が世の中の成人にウケたのか、さっぱり理解できない。

 一日のスケジュールがずっと撮影で埋まる日もあった。

 だけど、そんなの、ただの拷問だ。快楽も度を過ぎたら苦痛に変わる。

 デビューしてから何年か耐えていたが、いよいよ限界が近づいていた。

 撮影に行きたくなかった。本気で行きたくなかった。

 円形脱毛症になり、それを隠すためにスキンヘッドにした。

 そしたら、そのスキンヘッドで絶倫感が増したと、さらにウケた。

 女の尿を頭の上からかけてもらって「滝行」なんて撮影をしたこともある。罰当たりだ。

 そうして俺は、ついに最後の撮影を迎えることとなる。



 撮影はいつものように、俺が拘束されているところから始まった。

 基本的に俺に台詞はない。求められているのは余計な演技ではないのだ。

「ほら、さっさと吐いちまいなよ」

 ボンテージ姿の女が鞭を持って近づいてきた。

 吐いて終われるなら吐いてしまいたいが、そもそも俺の役が何なのか俺は知らない。

 俺は黙って首を振った。

 女優は鞭で地面を叩くと、俺の後ろに回って、目隠しをしてきた。

 ああ、くそっ。目隠しをされると間違いなく感度が上がる。地獄だ。

 音だけを頼りに次の展開を待っていた。すると、右の乳首に強い刺激が走った。

「んっ」

 つねられていた。そして、つねったまま乱暴にぐりぐりとひねられた。断続的にじんっじんっと右半身に快感が走り抜ける。

「吐け! ほら!」

 俺は首を振った。

 乳首から指が離れた。次は左かと待っていたら、右側の乳首が少し冷たいぬるっとしたものに包まれた。

 乳首が吸われている。きゅっと吸われた瞬間に、ぬろんと舐められた。気持ちよさで力が抜ける。

「ぐっ、ううぅ」

 俺は堪えた。しかしすぐに左の乳首も同時に摘まれる。

 右と左、交互に刺激が与えられる。

 右の乳首を甘咬みされた。ぴりりっと足先までぞくぞくする。

 次の瞬間に左の乳首を捻り上げられる。左足の指をきゅっと閉じて快感に耐える。

 しかしまたすぐに右、左、右、左、と快感の波が押し寄せてくる。

 頭がおかしくなりそうだ。

 ペニスがギンギンに硬直しているのが分かる。硬直の限界を超えようとするかのように、びくびくと脈打っている。

 不意に俺の両乳首から女優が離れた。

 ふう、と一息つく間も与えず、俺のペニスの先が掴まれた。

 俺の体がのけぞる。拘束具がガシャンと鳴った。

「早く吐かないと大変なことになるよ?」

 やめてくれ。今はまだ気持ちいいが、これが段々と苦痛へと変わっていくのだ。

 俺のペニスに何かがぬとっと落ちた。女優が唾を落としたのだ。

 それを塗り付けるように俺の竿をしごき始める。

「ぬうっ、ぐぅ」

 全身を得も言われぬ快感が駆け巡る。

 女優はぬるぬるのペニスをぐーっと引っ張った。手から滑り抜けるときに、小指、薬指、中指、人差し指と順番にカリ首に引っかける。そしてまたペニスの根本まで握り直し、同じことを繰り返す。

「これ、気持ちいいんでしょ?」

 俺は首を振った。が、腰が痙攣するほど気持ちよかった。このままだと射精しそうだった。

 俺の右乳首がまた女優の口に含まれた。れろれろと高速で舐められながら、ペニスのしごきが続けられた。

「あっ、まっ……てっ、いっ、い、く……」

 俺のその言葉で、女優はぱっと離れた。

「ぶあっはぁ!」

 寸止めをされて、俺の体ががくんと震えた。そしてうなだれる。

 ペニスがぐんっ、ぐんっ、と脈打つように上下していた。

 がぽんっと、ペニスが温かいもので包まれて締め付けられた。

 女優がフェラチオをしてきたのだ。

 ぐっぽぐっぽと唾液と舌を絡ませながら、俺のペニスを吸い上げる。

 全身が痙攣を始め、汗が吹き出す。俺は腰を前に突き出すと、一度大きく震えた。

「がっ、あっ、あ、うっうぅ」

 射精してしまった。

「なに勝手に射精してんだよ」女優は地面を鞭打った。「まだまだ終わらねえからな!」

 ここから地獄が始まるのだ。



 その後、男の潮吹き、二回目、三回目の射精と責められる。

 途中で何度かシーン変更や休憩が入ったが、今回はかなり無茶な撮影が強行されている感があった。

 俺の陰のうがずきずきと痛み始め、もう射精は無理だと思った。

 三回目の射精が終わったところで拘束を解かれたが、足腰が立たなくなっていた。

(もう辞めよう)

 いつからか、撮影が終わる頃には毎度こう考えるようになっていた。

 だけど、このときは本気だった。もう限界だったんだ。

 最後はセックスシーンだったが、俺が立てないことを見越して、正常位で終わらせることになっていた。

 拘束から抜け出した俺が、復讐とばかりに女優を突きまくるシーンだ。

 俺は心を無にして必死に腰を動かした。

 射精はできないと思った。だが、できなければ撮影が終わらない。何が何でも射精する。射精してみせる。

 心臓がひっくり返るんじゃないかというぐらい、ドンドンと拍動していた。

 無我夢中で腰を動かしながら、女優の顔を見た。

 すると、喘ぐ演技をしているはずの女優が真っ青な顔で俺を見ていた。

 それが最後の光景だった。

 俺はひゅっと息を吐いて女優の上に突っ伏した。



 そして、死んだ。
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