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浮上4
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雅鷹さんは一息付く様に紅茶を飲み、ソファに深く座り足を組み換える。
「さて、私達に関してはこんな所なんだが。何故今回君を協力者として求めているか説明をしないといけないね」
「……はい、お願い致します」
昨夜、久志からパートナーとして必要。と言われてはいたが、何故俺が?とずっと思っていた。
「細かい事は私達の協力者になる事を了承してもらえないと言えないが、先程も伝えた通り君が犯罪者になる事は無いし命が危険に晒される事も決して無いから心配しないで欲しい。ただ、この依頼を成功させる為には君の存在が必要不可欠なんだ」
そもそも木根家は、これ迄依頼を受けた事は無い。
今まで存在を知り得なかった美術品等が突如として表舞台に現れ世間を騒がせている訳だが、木根家は自らが持つ情報から持ち主の元に戻しているだけ。そして元所持者は不正に所持していた物の為、警察に被害届は出せない。
よって、木根家の存在を知られる事はほぼ皆無なはずだが、所持していた側からすれば宝が盗まれた事に変わりは無く、当然盗んでいった者を探し出そうとありとあらゆる手段を講じる。
更にインターネットの普及により無遠慮に他人のプライバシーを侵す暇なユーザー達の努力(?)により怪盗・怜悧の名が明るみになった。
だが元々情報で生き抜いてきた一族だけあって赤子を相手にするが如く追及を躱し、偽の情報で彼等を踊らす。
そんな中で突然届いた依頼書。
そこには10日後迄に取り戻して欲しい宝の事、そして怪盗・怜悧の実態と木根家全員の名前、依頼を成功させる鍵を握るのが俺だと名前が記載され、その宝に触れる事もその場所に入れるのも俺なのだと書かれていたのだそうだ。
「………」
依頼主が俺を指名?
俺にしか入れない場所ってどういう事だ?
浮かんだ疑問に対し考えてみるも、残念ながら何も思い浮かばない。
「協力出来ない場合は、どうなりますか?」
「……そうだね、彰信達が帰国するまで我が家で君を監禁せざるを得ないかな。そして君には一生我々の監視が付く事にもなる」
「それだけですか?」
「私達の内情を聞いてしまったから殺されるかと思ったのかい?」
「いえ、そこまでは思い至りませんでしたが…、と言うか、先程までのお話でそれは無いですよね。ですが、一生監禁される事になってしまうのかとは思いました」
真っ直ぐ雅鷹さんの目を見ながらそう言うと、俺の手を(未だに!)擦っていた久志の手がピクリと反応し軽く握られる。
「そんな事はしないよ。しても構わないなら、喜んでするけどね♪」
少し眉を下げて上目遣いになった俺を見て、何故か色気を全開にした雅鷹さんは嬉しそうにパチッとウィンクをしてくる。
雅鷹さんからの溢れかえる色気に俺はまたもや当てられ、顔だけでなく全身が一瞬で熱くなってしまった。
「……親父」
そんな雅鷹さんを見ていた隣の久志は、握っている手に力を込め地を這う様な低い声を出し、雅鷹さんを睨み付ける。
「冗談だよ♪お前はまだまだだなぁ」
今の雅鷹さんと俺とのやり取りの中で、一体どこに久志を怒らせる要素があったのか俺には不明だったが、目に見えるんじゃないかと思える程久志から発せられている黒いオーラに俺は助けを求める様に貴美恵さんと蕾紗さんを見る。
しかし、気付いていないのかはたまたこんな久志に慣れてしまっているのか、全く意に介す事無く2人は小さな声であれこれ話し合っていた。
「彰ちゃん、協力は嫌?」
久志が背中からどんどん漂わせている黒いオーラに息が出来なくなりそうだった俺の視線に気付いたのか、蕾紗さんは首を傾げながら口を開いた。
「嫌、とは思わないのですが……。何故俺なんだ?と言う疑問と言い知れぬ不安を感じています。……ですが、俺でしかその宝を手に入れられず手に入れたら誰かに幸せが戻るなら、……協力するしかないですよね」
俺しか手に入れられないなんて、一体どんな宝なのか正直興味が引かれたのもある。
それにしても、世間を騒がしてきた怪盗がまさか親友の家族達だったとは。驚き過ぎて全く実感が湧かない。
しかし、それ以上に隣にいる親友の昨日からの突然の変わり様に、俺は今回の事が深く関係している気がしてしまっている。
協力しながら原因を究明して出来るなら以前の様に戻って欲しいと願っていた。
俺は、久志の手の上に自分の手を重ねて優しく擦る。
俺の『大丈夫だから』という思いに気付いた久志から手を離して貰い、座る位置も少しズレて座り直して姿勢を正し頭を深く下げた。
「雅鷹さん、……協力したいので詳しく聞かせて下さい」
「さて、私達に関してはこんな所なんだが。何故今回君を協力者として求めているか説明をしないといけないね」
「……はい、お願い致します」
昨夜、久志からパートナーとして必要。と言われてはいたが、何故俺が?とずっと思っていた。
「細かい事は私達の協力者になる事を了承してもらえないと言えないが、先程も伝えた通り君が犯罪者になる事は無いし命が危険に晒される事も決して無いから心配しないで欲しい。ただ、この依頼を成功させる為には君の存在が必要不可欠なんだ」
そもそも木根家は、これ迄依頼を受けた事は無い。
今まで存在を知り得なかった美術品等が突如として表舞台に現れ世間を騒がせている訳だが、木根家は自らが持つ情報から持ち主の元に戻しているだけ。そして元所持者は不正に所持していた物の為、警察に被害届は出せない。
よって、木根家の存在を知られる事はほぼ皆無なはずだが、所持していた側からすれば宝が盗まれた事に変わりは無く、当然盗んでいった者を探し出そうとありとあらゆる手段を講じる。
更にインターネットの普及により無遠慮に他人のプライバシーを侵す暇なユーザー達の努力(?)により怪盗・怜悧の名が明るみになった。
だが元々情報で生き抜いてきた一族だけあって赤子を相手にするが如く追及を躱し、偽の情報で彼等を踊らす。
そんな中で突然届いた依頼書。
そこには10日後迄に取り戻して欲しい宝の事、そして怪盗・怜悧の実態と木根家全員の名前、依頼を成功させる鍵を握るのが俺だと名前が記載され、その宝に触れる事もその場所に入れるのも俺なのだと書かれていたのだそうだ。
「………」
依頼主が俺を指名?
俺にしか入れない場所ってどういう事だ?
浮かんだ疑問に対し考えてみるも、残念ながら何も思い浮かばない。
「協力出来ない場合は、どうなりますか?」
「……そうだね、彰信達が帰国するまで我が家で君を監禁せざるを得ないかな。そして君には一生我々の監視が付く事にもなる」
「それだけですか?」
「私達の内情を聞いてしまったから殺されるかと思ったのかい?」
「いえ、そこまでは思い至りませんでしたが…、と言うか、先程までのお話でそれは無いですよね。ですが、一生監禁される事になってしまうのかとは思いました」
真っ直ぐ雅鷹さんの目を見ながらそう言うと、俺の手を(未だに!)擦っていた久志の手がピクリと反応し軽く握られる。
「そんな事はしないよ。しても構わないなら、喜んでするけどね♪」
少し眉を下げて上目遣いになった俺を見て、何故か色気を全開にした雅鷹さんは嬉しそうにパチッとウィンクをしてくる。
雅鷹さんからの溢れかえる色気に俺はまたもや当てられ、顔だけでなく全身が一瞬で熱くなってしまった。
「……親父」
そんな雅鷹さんを見ていた隣の久志は、握っている手に力を込め地を這う様な低い声を出し、雅鷹さんを睨み付ける。
「冗談だよ♪お前はまだまだだなぁ」
今の雅鷹さんと俺とのやり取りの中で、一体どこに久志を怒らせる要素があったのか俺には不明だったが、目に見えるんじゃないかと思える程久志から発せられている黒いオーラに俺は助けを求める様に貴美恵さんと蕾紗さんを見る。
しかし、気付いていないのかはたまたこんな久志に慣れてしまっているのか、全く意に介す事無く2人は小さな声であれこれ話し合っていた。
「彰ちゃん、協力は嫌?」
久志が背中からどんどん漂わせている黒いオーラに息が出来なくなりそうだった俺の視線に気付いたのか、蕾紗さんは首を傾げながら口を開いた。
「嫌、とは思わないのですが……。何故俺なんだ?と言う疑問と言い知れぬ不安を感じています。……ですが、俺でしかその宝を手に入れられず手に入れたら誰かに幸せが戻るなら、……協力するしかないですよね」
俺しか手に入れられないなんて、一体どんな宝なのか正直興味が引かれたのもある。
それにしても、世間を騒がしてきた怪盗がまさか親友の家族達だったとは。驚き過ぎて全く実感が湧かない。
しかし、それ以上に隣にいる親友の昨日からの突然の変わり様に、俺は今回の事が深く関係している気がしてしまっている。
協力しながら原因を究明して出来るなら以前の様に戻って欲しいと願っていた。
俺は、久志の手の上に自分の手を重ねて優しく擦る。
俺の『大丈夫だから』という思いに気付いた久志から手を離して貰い、座る位置も少しズレて座り直して姿勢を正し頭を深く下げた。
「雅鷹さん、……協力したいので詳しく聞かせて下さい」
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