知らされた真実〜それぞれの選択〜

maruko

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アンソニー編

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「実はチェルシーの正体が分かった時点で私達の婚姻は無効になっている」

「「「「⋯⋯」」」」

アンソニーの言葉に一同は言葉も出ないようで俯いていた。

「だからランディは今の時点で庶子になる」

「では嫡男としてはもう道がないのでしょうか?」

執事の問にアンソニーは頷いた。

「陛下はチェルシーと再び婚姻し直すならランディを籍に入れるのは自由と言われた。但し平民で罪人のチェルシーを養子にするところはないだろうから、侯爵家は降爵されることになる」

「⋯⋯⋯そうなってしまいますね、旦那様はどうされるおつもりですか」

「捕縛されたチェルシーに会ってきたがアレは別人だったよ。殺しておけば良かったなどと戯言を言われた。婚姻し直すなんてありえない。ランディをどうするか聞いたら好きにすればいいと言われた。だが私はまだ迷ってるんだ」

「迷う、ですか?」

執事以外は皆口を閉ざしていた。
迷うというアンソニーの言葉に執事は不思議そうに聞いてくる。
それもそのはずでアンソニーはランディを殊の外可愛がっていた。休日になれば幼いランディを連れて釣りに行ったり、近くの遊歩道へ散歩に連れ出したりと普段一緒にいる夫人よりもアンソニーの方がランディを構っていたのだ。
それがここに来て迷うという言葉が出ることが皆信じられなかった。

「ランディは私の子だ。庶子であっても可愛いと思えると思っていたんだ。だが牢に繋がれたあの男とあの女に会って、その血を引いているのだと思った時から震えが止まらないんだ。私は普通にランディと接することが出来るか自信がない」

「旦那様のお気持ちは旦那様の為だけのもので、私どもにはその心の中の全てが分かるわけではございません。ですがランディ様にはちゃんと向き合ってあげて欲しいと思います」

侍従が、俯くアンソニーの震える背中に向けて言った言葉に顔を上げたアンソニーは頷いた。

「旦那様、お話は分かりました。使用人には全てを話してもよろしいのですか?」

「処罰が決まったら発表されるが、それまでは取り敢えずは誤魔化してくれ」

「では離縁なさったと言ったほうがいいかもしれませんね、離縁の時期などあとで推察されれば分かるでしょうが、不在を誤魔化すにもそれ相応の理由が必要ですから」

「あぁそうしてくれ」

侍女長の言葉にアンソニーはゆっくり頷いて、そのまま皆には下がるように伝えた。

少し迷ったが今日は寝室には行きたくなかった。
アンソニーの自室にはベッドは置いていない、彼はいつも夫婦の寝室で寝起きしていた。
今日は1階の客室へと向かった。

ベッドにゴロンと寝転がり天井を見つめる。
暫くそれを眺めていたアンソニーは目を閉じて怒涛の一日を終わらせた。



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