32 / 46
ナーチェ編
31
それから暫くしてオルト一味による『カールトン公爵家乗っ取り事件』が世間に公表された。
その際にやはりルーディスト侯爵家のアンソニーは貴族達の中でも嘲笑の的になってしまった。
『悪女にまんまとだまされた間抜けで哀れな男』
そんな軽口が紳士クラブや各家のお茶会などで話題になっていた。
そんな中、その醜聞を払拭する為に手を差し伸べたのは王家であった。
あくまでもアンソニー・ルーディストは被害者、それを証明するのは嘗ての学園関係者全員だった。
何故なら誰一人として入学してきたナーチェ・カールトンがチェルシー・ターシルドだと見破った者は居なかったのだから。
アンソニーが間抜けならばその時通っていた貴族子女等は皆間抜けということ。
軽口を叩けば叩くほど自身が間抜けだと披露することになると、ある日の茶会でポロッと王妃が零してからルーディスト侯爵家への当たりは緩和することになった。
そんな事態をナーチェは見届けて父のカールトン公爵と領地へ戻ったのだった。
公爵家はあの一件で使用された離れの屋敷は取り壊すことになった。忌まわしい事件を思い出させる物は全てを取り壊すに限る。
その解体作業をナーチェは自身の目で確かめる事を希望した。
そうする事で10年の辛い日々をリセットしたいからだった。
壁が取り壊されていく度に舞う埃も大きな崩れる耳障りな音も、ナーチェの心を救うように聞こえるし見えるように思った。
お昼になれば解体作業の作業員に公爵家の料理人が作る料理とお菓子を配るのも最近のナーチェの日課になっていた。
そしてその後は必ずそこに向かう。
公爵邸の裏庭には庭師が丹精込めた色とりどりの花達が並んでいる。花壇に沿うように小道が付けられ、そこを道なりに進むと無機質なグレイに塗られた壁で出来たガゼボが建っていた。
その先に人ひとりがやっと歩ける道が繋がっている。解体作業が終わったらその道を舗装して貰う予定になっていた。
周りに伸びる木々は、光の遮断が丁度よい塩梅になるように均等に立ち並んで、歩く人の歩行を妨げない様に工夫されていた。
子供の頃には気付かなかったことだった。
そこを抜けると広い湖が広がるはずだったが、子供の頃に見たからそう感じたのかもしれない。
湖はそれほど大きくも広くもなかった。
紙面で表されていた領地の境界線がこの湖の真ん中を通っている事に、ナーチェはここから離れた王宮の図書館で初めて知ったのだった。
半分がカールトン公爵領で向こう側の半分はユースティオの生家ソルバンジー公爵領だった。
その境界線に最近建てられた小さな休憩所が存在する。
そのテラスに置かれたテーブルにナーチェの愛しい人が待っていた。
「ティオ!」
ナーチェが呼び掛けると彼は立ち上がり手を振る。
「ナーチェ!遅い!」
遅かったのはユースティオだ。
ナーチェは10年彼が来るのを待ちわびたのだから。
でもこれはまだ冗談のように軽くは口に出せないから心の中に呑み込む。
「ごめんなさい!」
素直に謝罪を言葉にしてナーチェはユースティオに向かって進む。
今日ユースティオは話があると言っていた。
まだ彼からは何も言われていないけれどナーチェは彼が何を言うか予想していた。
だからその返事は選択する必要を感じない「はい」一択だとナーチェは心に決めていた。
✎ ------------------------
いつも読んで頂きありがとうございます🙇♀
※明日から『ユースティオ編』になります。
暫く3話更新にしていましたが、ストックの都合で明日からは暫く2話更新に戻します🫡
スタートは12時10分👀
よろしくお願いします🙇♀
その際にやはりルーディスト侯爵家のアンソニーは貴族達の中でも嘲笑の的になってしまった。
『悪女にまんまとだまされた間抜けで哀れな男』
そんな軽口が紳士クラブや各家のお茶会などで話題になっていた。
そんな中、その醜聞を払拭する為に手を差し伸べたのは王家であった。
あくまでもアンソニー・ルーディストは被害者、それを証明するのは嘗ての学園関係者全員だった。
何故なら誰一人として入学してきたナーチェ・カールトンがチェルシー・ターシルドだと見破った者は居なかったのだから。
アンソニーが間抜けならばその時通っていた貴族子女等は皆間抜けということ。
軽口を叩けば叩くほど自身が間抜けだと披露することになると、ある日の茶会でポロッと王妃が零してからルーディスト侯爵家への当たりは緩和することになった。
そんな事態をナーチェは見届けて父のカールトン公爵と領地へ戻ったのだった。
公爵家はあの一件で使用された離れの屋敷は取り壊すことになった。忌まわしい事件を思い出させる物は全てを取り壊すに限る。
その解体作業をナーチェは自身の目で確かめる事を希望した。
そうする事で10年の辛い日々をリセットしたいからだった。
壁が取り壊されていく度に舞う埃も大きな崩れる耳障りな音も、ナーチェの心を救うように聞こえるし見えるように思った。
お昼になれば解体作業の作業員に公爵家の料理人が作る料理とお菓子を配るのも最近のナーチェの日課になっていた。
そしてその後は必ずそこに向かう。
公爵邸の裏庭には庭師が丹精込めた色とりどりの花達が並んでいる。花壇に沿うように小道が付けられ、そこを道なりに進むと無機質なグレイに塗られた壁で出来たガゼボが建っていた。
その先に人ひとりがやっと歩ける道が繋がっている。解体作業が終わったらその道を舗装して貰う予定になっていた。
周りに伸びる木々は、光の遮断が丁度よい塩梅になるように均等に立ち並んで、歩く人の歩行を妨げない様に工夫されていた。
子供の頃には気付かなかったことだった。
そこを抜けると広い湖が広がるはずだったが、子供の頃に見たからそう感じたのかもしれない。
湖はそれほど大きくも広くもなかった。
紙面で表されていた領地の境界線がこの湖の真ん中を通っている事に、ナーチェはここから離れた王宮の図書館で初めて知ったのだった。
半分がカールトン公爵領で向こう側の半分はユースティオの生家ソルバンジー公爵領だった。
その境界線に最近建てられた小さな休憩所が存在する。
そのテラスに置かれたテーブルにナーチェの愛しい人が待っていた。
「ティオ!」
ナーチェが呼び掛けると彼は立ち上がり手を振る。
「ナーチェ!遅い!」
遅かったのはユースティオだ。
ナーチェは10年彼が来るのを待ちわびたのだから。
でもこれはまだ冗談のように軽くは口に出せないから心の中に呑み込む。
「ごめんなさい!」
素直に謝罪を言葉にしてナーチェはユースティオに向かって進む。
今日ユースティオは話があると言っていた。
まだ彼からは何も言われていないけれどナーチェは彼が何を言うか予想していた。
だからその返事は選択する必要を感じない「はい」一択だとナーチェは心に決めていた。
✎ ------------------------
いつも読んで頂きありがとうございます🙇♀
※明日から『ユースティオ編』になります。
暫く3話更新にしていましたが、ストックの都合で明日からは暫く2話更新に戻します🫡
スタートは12時10分👀
よろしくお願いします🙇♀
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
[完結]優しすぎた選択
青空一夏
恋愛
恋人の玲奈とコンサートへ向かう途中、海斗は思いがけない出来事に遭遇する。
たいしたことはないはずだったその出来事とその後の選択は、順風満帆だった彼の人生を狂わせた。
十年後、理由の分からない別れを抱えたまま生きる海斗の前に、忘れていた過去と向き合うための期限が訪れる。
これは、優しさから選んだはずの決断が、取り返しのつかない後悔へと変わった物語。
これは、すべてを手に入れてきたはずの人生を歩んできた男が、たった一度の選択で、一生後悔することになったお話。
※本作は他サイトにも掲載しています。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
仮面王の花嫁
松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。
しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。