【完結】婚約者が好きなのです

maruko

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sideオーラン 1回目の人生

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オーラン・ドートル。侯爵家の嫡男で誰にでも優しい男。俺の世間の評価はそんなものだろう。
俺はこの人生は2回目だ。所謂「死に戻り」ってやつだ。
そして前世の記憶もある。前世は日本という国で書道家だった。書道を広める活動のために海外へ渡航するため乗船した船の上が最後の記憶だ。船から落ちたのか沈没したのかはわからない。

1回目の人生の産まれた時から前世の記憶があった。
なので子供の頃はこの世界の中世的な雰囲気や侯爵令息という身分に合わせた生活に大興奮だった。
ある程度の年になったら前世の知識を活かして侯爵家の為に色々事業を立ち上げたりして大金持ちになろうと野心満々だった。
だから凄く傲慢な子供だったのだろうと思う。

同じ身分の侯爵家で王都のタウンハウスが近所だったこともあり派閥など関係なしに、カイルとアリーと俺は5歳位からの付き合いで仲の良い幼馴染だった。
なんとなく親達もそして俺達もカイルか俺がアリーと将来結婚するのだろうと思っていた。

そんなある日カイルのとこのソーダン家が新事業を立ち上げる事になり、その関係でスワロ伯爵家と提携する事からスワロ家の長女とカイルが婚約する事になった。因みにカイルは次男だ。婿に行くのも問題はないしスワロ家は伯爵家だが国内有数の資産家だ。
話を聞いた時は爵位は落ちるが相手は資産家。上手いこと玉の輿にのれたんじゃないか!やったなカイル!と俺は心の中で祝福した。実際には「良かったな!」しか言ってない。
子供だからね。
頭の中ではカイルの婿入り後にスワロ家と事業展開するにはどんな事業をしようかと電卓を叩いてた。

婚約が整った後の初顔合わせに、堅苦しくならないようにと俺とアリーもお茶会に招待された。
俺は姿は子供でも頭の中は前世の記憶32年分があるのでスワロ家の長女とも円満な関係になろうと計算高く立ち回る為、ワクワクしながら茶会に臨んだ。
その会で将来カイルの義妹になる予定のリリーベルを見て俺は衝撃を受けた。

姉妹はお揃いの淡いピンクのドレスで現れた。髪につけてるリボンは色違いだったが二人の性格を表してるのか姉のメリーベルは赤、リリーベルは白だった。
二人とも年の割にはほぼ完璧なカーテシーで挨拶をしてカイルの両親や兄は「ほぉっ」と感嘆の声をあげカイルは真っ赤になってた。カイルだけじゃないおそらく俺も真っ赤だっただろう。俺はリリーベルに釘付けだった。
えっこの異世界は妖精物か?と本気で思った。
この時からアリーはおそらく不穏な空気を醸し出していたんだろう。俺達は全く気づかなかったがメリーベルは感づいていたらしい。

大人達とは別に俺達5人は丸いテーブルに座り楽しくお喋りに夢中になってた。カイルの両親が用意したお菓子も絶品で普段はあまり食べないと話したリリーベルもニコニコしてクッキーをリスのように頬張り可愛さ満載だった。
横で甲斐甲斐しく世話するメリーベルには若干引いたが、二人の両親も世話を焼かれてるリリーベル本人も何も言わないところを見るとこれが日常なのだろう。
そんな時だった、アリーがリリーベルに
「噂では金魚の糞と聞いていたけど実際は‥…11歳なのに赤ちゃんなのね。なるたけお姉様に迷惑かけてはだめよ。子供は領地でおとなしくしていた方が周りに迷惑かけずにいられるのではないかしら?」と爆弾をぶち込んだ。
普段のアリーを知ってる俺とカイルはアリーの放った全身から滲み出るような嫌味な言葉が信じられずポカンとしてたら、メリーベルがキレてアリーにお茶をぶっかけた。
悲鳴をあげたアリーとお茶だけでは足らないとばかりにテーブル毎ひっくり返そうとしてるメリーベルを両親が慌てて止めているという地獄絵図を俺は呆然と眺めていた。ハッと我に返ってリリーベルを見ると姉の所業をぼーっと見ながら涙を流してた。
きっと傷ついたのだろうと推察した俺はアリーに謝れと言ったが泣き喚いてるアリーには届かなかった。
そのままお茶会はお開きになり俺とアリーは家に帰された。
後日カイルから、婚約はそのまま継続になったと聞いた時はホッと胸を撫で下ろしたが俺達はアリーについて語り合った。
普段のアリーは幼少時から俺達と遊んでた影響からか活発で前世で云うところの竹を割ったようなサッパリとした性格のはずだった。13歳になってるので最近は外で走り回るようなことは3人とも控えていたし、男女ではマナーやダンスなど勉強の内容も変わってくるので3人一緒に行動する事も少なくなっていたが、それでも"あの"アリーの言葉は信じられなかった。
ホントにアリーが言ったのか?まぁ目の前で二人とも聞いてたので疑う余地はないのだが……
「女って怖いなぁ」とカイルが呟いたのがアリーとメリーベルのどちらに向けた言葉なのかわからなかったが俺も同感だった。


それから俺は密かに動いた。あの日のお茶会で一目惚れしたリリーベルとなんとか婚約したいと親に頼んでみたが、父から出た言葉は俺の期待した物ではなかった。

なんと!当人が知らぬ間に俺とアリーの婚約が決まってた。丁度今日話そうと思ってたんだよと軽いノリで言われたが、あの発言を聞いた俺は激しく抵抗した。

「アリーは俺の嫌いな嫌味な女達の部類に成り下がった。自分よりも年下の子を蔑むようなやつとは結婚したくない」と両親に訴えたが、あの発言で婚約が決まったらしい。何でだ!!!!

両親の説明によるとアリーは昔から俺と結婚するのが夢だったらしく、ずっと親に俺との婚約を頼んでたみたいだ。でも学園入学前に婚約者を決めてしまうのは子供の選択肢を狭めてしまうと思ったアリーと俺の両親が止めてた模様。アリーはそれに悶々としてたのだが、あのお茶会で俺がリリーベルに一目惚れしたのに勘付いて情緒がぶっ壊れあの発言だったと言う事だ。
普段そんな事を言わない娘の心を守る為に、娘の願いを叶えてやろうとアリーの親が婚約を申し込んで来たとのこと。
アリーの親曰く今回の事は真摯に受け止めて反省している。その上で俺と婚約を結べば不安になる事もなくなり、情緒も安定してあんな発言をする事なく元の娘に戻るはずということで俺の両親もそれならばと同意したらしい。
だけど俺の勘は、ホントか?元々そんな発言をするような女だったんじゃないのか?と警報を鳴らしてた。でもなんだかんだと親に言いくるめられ俺の淡い初恋は木端になって崩れ、俺のせいで情緒不安定になったアリーに同情から婚約を結んだ。
この時の勘を信じていつもの傲慢な俺様で両親に嫌だと訴えていればあんな悲劇は起こらなかったかもしれないのに、後悔する俺の1つめの失敗だった。


─────────────────


それから3年たち俺達は学園に入学した。
俺とカイルとメリーベルはSクラス、アリーはBクラスだった。因みにクラス分けは入学試験の結果で分けられる。
SからDまであるクラスでDだけは平民のみのクラスだ。

俺達の通う学園は創立時から貴族のみが通う学園だったが近年、王城で働く文官を平民から試験などで登用してることもあり、優秀な平民の文官候補はある程度の貴族の作法を学ぶ為、特待生として受け入れられている。なので成績順のクラス分けだがDクラスは全員成績優秀な特待生の平民クラスだった。

クラス分けは前もって各家庭に届くのだが、その時点でアリーは俺とクラスが別れてることに対して不満爆発だった。
正直結果を聞いて俺もびっくりした。そんなにアリーが出来が悪いとは思ってなかった。
俺の婚約者なら将来は侯爵夫人になり家政を取り仕切ったり、社交を行う。それなのにBクラスは頂けない。

学園は小さな社交場なのだ。将来侮られるのはアリーなのだと言い聞かせ、俺と俺の両親はアリーに2年のクラス分けでは最低でもAクラスになるように厳命した。
アリーは素直に頷いたがアリーの母が物申した。
心の中で俺はそんなに甘やかすからこの成績なんだろう、3年前の事ホントに反省してるのか?と毒づいてたがアリーの父は俺達に責任持って成績向上に励むと言った。

1年のときは表面的には何事もなく日々を過ごした。偶にカイルの家で4人で集まった時などメリーが最愛の妹の話をするのを密かな楽しみにして自分を慰めていた。アリーに申し訳ないと思うが木端になった俺の初恋はまだ俺の心に住み着いて消えてくれなかった。

恋心を見せないように必死で仮面を被りメリーの話を聞く。なかなかな苦行だったが俺は乗り切ったつもりだったが、アリーは密かに臍を噛んでたようだ。

この時も自分の気持ちを押し殺すのに必死で婚約者の心の機微を見逃してアリーの憎悪を膨らませてしまっていた。

俺の2つめの失敗。


──────────────


2年になった時アリーはAクラスに進級した。

俺は頑張ったアリーに精一杯の賛辞を贈り家に招待したら、アリーはとても喜んで頬を染め嬉しそうに俺に抱きついてきた。
俺は受け止めたが顔は真顔だったらしく、それを見た母にアリーが帰ったあと怒られた。

Dクラスに割と裕福な商会の娘でエミリー・バートンがいた。彼女から声掛けされたのは2学年が始まって暫くたった頃だった。社交界では身分の下のものが上の者に自分から話しかけるのはご法度だが学園ではその辺を緩和している。将来を見越して間口を広くする為の処置だと思われる。

彼女は昼食時に俺の顔を見て声をかけ、そのまま立ち去った。

1言「スマホないと不便よね」と、

俺は立ち上がり彼女を追いかけた。転生者だ!

同胞がいた事が嬉しくて夢中で彼女を追いかけ捕まえた。

「何でわかったんだ」

「名前を呼んでも大丈夫ですか?」

「あぁ失礼。オーランと呼んでくれて構わない」

「では、お言葉に甘えまして、オーラン様の侯爵家の事業で文房具を開発されましたよね、便利グッズとして。実はうちも開発しようと立ち上げたところで発表されちゃったんです」

俺は学園入学の少し前に前世の記憶を活かして比較的作るのが簡単そうな文房具を父に進言して見た。自分で作るスキルは持ち合わせてないので説明だけしてあとは父に丸投げした。

父の優秀な部下の中にとてつもなく器用な男がいて、俺の拙い説明でクリップとA4サイズのファイル、芯が太めのシャーペンを作り上げてくれた。
最初は鉛筆の説明をしてたのだが合わせてボールペンの話になった時、その器用な部下は自分でシャーペンを作り上げた。思わず転生者かと思ったが単に奇天烈な男だった。

使用する芯の原材料などは俺にはわからなかったけど、その男の実家で昔からデッサン用の木炭を画家に提供してたらしい。ナイス奇天烈!

「それで侯爵家のどなたかが転生者だろうと思ってたのですが、先日図書館でオーラン様がシャーペンを指先でクルクル回してるのを見てお声をかけさせてもらおうと思ったんです。反応なかったら言い逃げしちゃおうと思って」

ケラケラ笑いながらエミリーは暴露した。

「そっか。転生に気づいたのは幾つだったんだ?」

「14歳の時です。学園入ったら勉強で忙しくなると思って入学前に父達と構想練ってたらドドーンと発表されちゃって。がっかりでしたよー。ひと儲けできると張り切ってたのに。オーラン様は?」

「生まれた時からだ」

「それじゃあ敵わないわ」

俺達は同胞なので気安かった。なのでここが階段下の逢瀬の穴場スポットだと気づくのが遅れた。
二人でこの状況が不味いことに気づいた俺達は今度の週末に会う約束をして急いでその場を離れた。が、時既に遅し次の日には学校中の噂になってしまった。


──────────────


噂を聞いたカイルとメリーに教室で真相を尋ねられた俺はどうするか迷った。
転生のことを言っていいものかどうか。

正直俺は二人を信用してたので言っても差し支えはなかったがエミリーの事情もあるだろうから独断で話すわけにはいかない。
焦ってしどろもどろになる俺に訝しむ二人。
困ったなーと考え込んでいたらアリーがSクラスにやってきた。

益々困った俺は逃げ出して早退した。

明日一日休めば週末なので、エミリーに会ってから話す了解を得ようと思った。その日のうちにエミリーを訪ねて話すべきだったと後で思った俺の失敗3回目が週末に待っていた。


王都の商店が立ち並ぶど真ん中に大きな噴水がある。待ち合わせの時間に少し早めに着いたのだが、エミリーはもう噴水の前のベンチで空を見上げて座ってた。

「ごめん。早く来たつもりだったけど待たせちゃったかな?」

「いいえ、私もさっき来たばかりです。ふふ前世でも男の方と待ち合わせなんてしたことなかったからチョット新鮮」

「そっか。早速なんだけど俺らの事が学園で噂になってるだろう。その他大勢には適当な事で誤魔化そうと思うんだが幼馴染達には、転生のことを話してもいいか?」

「オーラン様。婚約者様とは少しでも話し合われてますか?」

「イヤ。彼女にはまだ話してない。どう話せばいいのかわからずにこの2日避けてる。エミリーの許可を得たら午後にでも話に行こうかと思ってる」

「んー。転生のことは話さないでください。実は私学園退学になったんです」

「えっ!」

「昨日付で。昨日の時点で例の噂。将来有望な侯爵家嫡男を誑かした悪女を排除しないといけない運動ってのに変わっちゃってます。学園長に呼ばれた時に私も転生の事言えなくて、ただ話をしてたと言っただけだったから怪しまれちゃって。まぁ場所が場所でしたし運がなかったですよね。何であそこに入っちゃったかなぁ、反省ですね」

「何で。君だけ………ごめん。俺が考えなしで自分だけ逃げたから」

「いいんです。って言いたいんですけど実はお願いがあって今日はここへ来たんです。話すのは楽しかったし同胞だし、でもこの世界では身分が違うのでもう会わないほうがいいかなと思って、でも家族のこともあるので話に来ました」

「家族?」

「アリー様にうちの商会を潰すのをやめるように止めてもらえませんか?」

「どういうことだ!」

俺はある予感でブルブル体を震わせながらエミリーに尋ねると、彼女は上を向きながら目をパチパチさせて話し始めた。

彼女の話はさっきの物言いである程度の予感はしてたが概ね俺の考える通りだった。

昨日の夜、アリーとアリーの母親がエミリーの家を約束なしに突然訪ねて来て、エミリーの両親を脅したらしい。一家で国外に出ろと、要求を呑まなければ商会の取引相手に手を回すと。

あいつらは馬鹿なのか?

そんな事ができたとしても直接出向いて言えば、俺に伝わるとか思わなかったのか!呆れてため息をついた。

「愚かな脅しなので逆に怖いんです。何かあって直接手を出されると、弟妹はまだ小さいですし。学園は未練がないといえば嘘になりますが目的は貴族との繋がりを少しでも家の役に立てたくて入ったので、諦めもつくんですけど、危害を加えられるのを黙って待つつもりはないので、お願いできませんか?同胞のために家の家族を守ってください。お願いします」

エミリーの必死の訴えに何度も頷いて守ると誓った。

エミリーと別れたあと俺は真っ直ぐ父の所へ向かった。
これは俺の手に追える話ではないと判断したからだ

「父上緊急の話があります。お時間よろしいでしょうか?」

返事も待たずに父の執務室に入ったら苦虫を噛み潰したような父の顔に迎えられた。
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