生贄令嬢の幸せ

maruko

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警告!警告!

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「やぁシェリーご機嫌かい?」

「⋯⋯」

ルーカスの言葉にアルシェリーナの表情は一切の色を無くした。

「ちぇっ」

何の反応も示さないアルシェリーナを見て口を尖らせながらもルーカスは無理矢理、彼女の隣に腰を下ろした。

「ちょっ!ルーカス様狭いですわ!」

元々アルシェリーナとラクサスが座っていたのだが、彼女を間に挟むようにルーカスは座ったのだ。
それはとても狭苦しく、アルシェリーナは彼に押されながら眉を釣り上げた。

「シェリーは私のこの姿が気に食わないのか」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そんな事ござい⋯ません」

「間が開きすぎる返事だな、ホントに解りやすい」

アルシェリーナが大人ルーカスに会うのはこれで2回目だった。
その姿を見てアルシェリーナは実はショタの時よりも衝撃を受けるほど見惚れてしまった。
それはアルシェリーナには誤算であり、ショタ命!可愛いは正義!を貫く姿勢の彼女には屈辱なのだ。
だからアルシェリーナは素直になれない。
大人ルーカスを見て頬を染めないように喜びを顔に出さないように表情を消すのだった。
実際にはショタだろうが大人だろうがどちらもルーカスでどちらも好ましいと思っているのだから、アルシェリーナはルーカスにメロメロなのだが本人だけは認められずに、掲げだ可愛いは正義の名の元にショタの時だけ気持ちを全開に押し出している。

二人の軽口の応酬をにこやかに眺めながらトゥールが戻ってきた。
手にはショタルーカスの衣装を手にしていた。

「ドュバン侯爵、いつも迷惑かけるな」

「とんでもございません殿下、我が家で少しでもお寛ぎ頂けますと幸いです」

始めは婚約を嫌がっていたラクサスだったが、噂と違って好青年なルーカスに既に心惹かれている。
どちらかというとショタの時に吐く毒舌の姿よりも大人ルーカスをラクサスは気に入っていた。
娘の相手として、今は全く反対はしていない。
欲を言えば愛子めでごでなかったらと思うが、そもそも愛子でなければ二人は婚約には至らなかったであろうと思うから、運命とは皮肉なものであると感じていた。

「先程の話しの続きをさせて頂きますね」

ショタルーカスの着ていたシャツを畳みながらトゥールが話しを続けた。
なぜ今それをしているの?アルシェリーナはトゥールを見ながら不思議に思ったがそこは突っ込むのは止めた。

「王妃派がそろそろまた動き出したようなのです。本日はそれを伝える為にドュバン侯爵にも同席願いました」

「というと?」

「今までも何度も危険な目にあっていますが、ある程度の対処が出来るようにもなりましたし今は陛下も睨みを聞かせてくれてますので、そうそう命までは取られません。ですが、ドュバン家は違いますというより陛下の目が届きにくいのです」

トゥールの言葉にラクサスが頷く。
このゲート王国というより現陛下の事情が王家を歪ませてしまっていて王国はおかしな系譜になっている。
これは陛下が王太子時代に遅すぎる反抗期の名残なのだ。

ルーカスが愛子になる2ヶ月前に今のゲート王国、国王のダートンは前陛下のサイラスの私室に呼ばれた。
その時に初めて愛子の存在を知ることになり長らくサイラス父親を誤解していた事に気付いた。
何故そのタイミングで話したのかはマイケルの体が日に日に衰えていき寿命が長くない事を悟り、今後の事を考えたからだった。
マイケルの寿命が尽きた時に、次代の愛子が誕生する。
誰に成るかはわからないが国中に目を光らせ困っているなら手を差し伸べなければならないからだ。
そして可能であるならマイケルの孫を愛子と添わせる手続きもしなければならない。
直ぐに愛子が見つかればいいが見つからなければそれはダートンに頼まなければならなかった。
だからこそのタイミングだったのだが、話しを聞いた途端ダートンは膝を付くほど落ち込んだのだという。

長年の婚約者のアネトスを差し置いて側妃を先に娶ったのはサイラスへの反抗からだったと彼は打ち明けたのだが、既に後の祭りだ。
彼の愚行のせいで先に生まれたのにも関わらずルーカスは臣下に下す為と彼を貶めるために第二王子と位置づけられたから。

そしてそれは皮肉な事にルーカスが愛子に選ばれた事には僥倖であった。
そのまま第一王子、そして王太子になった後だったら廃嫡の憂き目に合うところだったからだ。

だがその一連の流れは現王妃アネトスと彼女の一門には伝えられていない。

何かとマリアを侮り彼女の素直でちょっとばかりオツムの悪い所を利用して側妃の宮を魔窟に変えたのもアネトスだった。

「実は⋯元々アルシェリーナ様を狙っていたようなのですよ」

「「えっ!」」

アルシェリーナとラクサスは同時に驚いた。
表向きは斜陽貴族のドュバン侯爵家が第一王子の婚約者候補になど名前すら上がらないと思っていたからだ。

「ライアンがシェリーを気に入ってたんだそうだが。面識があったのか?」

「え~とぉ⋯あったかしら?」

ルーカスの問いにアルシェリーナは記憶を辿るが、その途中でトゥールに止められた。

「まぁあってもなくてもそれはもうこの際関係ないのです。ただアルシェリーナ様には手は出せないとは思いますが、ドュバン家の他の皆様には陛下の目も充分には届かないと思うので是非とも自己防衛をお願いしたいのです」

「⋯⋯解りました。具体的にどんな事を仕掛けるとかは?」

「一番危惧するのは婚約を薦めてくるかもしれません」

「ダイサスのですか?」

ルーカスとトゥールは二人で頷いた。
アルシェリーナは驚いた。
王妃様って⋯⋯暇なのかしら?
そんな派閥争いなどとしょうもない事に力を使わずに国政を頑張って欲しいものだとアルシェリーナは憤ったが、この国は妖精から守られていて本当に平和だから表立っての問題は何もないのだと気付いた。
アルシェリーナはまだ話にも登っていない兄の婚約者の顔なしの姿を思い浮かべた。

「そっかぁ王妃様って暇なのねぇ」

アルシェリーナの勝手で適当な思考から漏れ出した呟きは三人の男達の目を点にさせていた。

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