公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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11一番の笑顔

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 マーシェは客室に鍵をかけて、暫くあれやこれやと対策を施しベッドに潜り込んでそのまま寝る事にした。
 大事なものはマーロウ公爵家この家に来た時から肌身離さずを徹底している。
 アルマンが来たのが湯浴みをする前で良かったと、姉の手紙を入れた胸ポケットを押さえた。

 目を瞑って暫くするとガチャガチャと鍵を回す音がした。今日の夫は積極的だ。
 だがマーシェも頑張った。
 扉は内開きになっているので、ちゃんと押さえられるようにチェストを移動させていたのだ。とても重くて大変だった。

「マーシェ!開けるんだ!」

 驚く事にアルマンは執拗に声掛けまでして粘っている。まぁおそらく王家からどうにかしろと散々に言われたのだろうと思う。
 でも今回の件はマーシェのせいではない。
 このマッケンロウ王国の失態だ。

 今までの2年間、蔑ろにされ続けたマーシェが仲介役をすると本気でこの国は思っているのだろうか?扉を叩き続けている夫にも呆れる。

 煩い音を聞きたくないマーシェは掛布を頭から被って蹲って目を閉じた。


 ◇◇◇


 翌朝のマーシェは小鳥の囀りで目が覚めた。
 昨夜の事が嘘のように清々しく感じる。

「あ~昨日ばかりはお姉様でなくて良かったわ。あんな音がしていたらお姉様は寝られなかったでしょうね」

 マーシェの特化部分は鼻なので彼女はぐっすり眠れた。おそらくそれだけではなく、存外マーシェは肝が座った豪胆な性格だったのだろう、マーシェ自身初めて知ったのだけど。

 ふふふんと鼻唄を歌いながらしわくちゃになったルームドレスを揺らしながら、マーシェは一人でダンスを踊った。踊りながらカーテンを開き窓を開ける。
 今からマーシェには力仕事が待ってるのだ、昨夜は勢いで何とかやってのけたが、今は冷静だ。
 何かしらの踏ん切りがないと覚悟が決まらない。
 ダンスの勢いのままに扉の前のチェストに力を込める。
 やはり昨夜のマーシェ自分は火事場のバカ力を発揮していた様だ。
 額に汗を浮かべながらその後30分ほど自身の所業の後始末に時間をかけた。

 何食わぬ顔で自分にあてがわれ約2年を過ごした部屋へ帰ると、ソファでアルマンが寝入っていた。

「ふぅ」

 本当は知らぬ顔をしたかったが、着替えたいマーシェは彼に部屋から出ていってもらわなければならない。それに汗もかいたし手紙も書きたい。大きく息を吐きアルマンに声をかけた。

「旦那様、起きてください」

 夫の体を揺らしながら、やはりあの時すれ違ったのは夫だったと再確認していた。
 すると起こすマーシェの腕をアルマンがぎゅっと掴んだ。
 いつからなのか狸寝入りだったようだ。

「いつから気付いていたんだ」

「何にです?」

 夫の質問に心当たりが多すぎて、マーシェはどれを聞きたいのか分からずに聞き返した。

「フォスティーヌ様の事だ」

「あぁ⋯⋯ふふっ」

 マーシェは最近ではリリアンと、フォスティーヌの事を『出戻り』という悪口で呼び合っていたので、アルマンが王女に様付で呼ぶ事につい笑ってしまった。

「貴方の第二夫人になると仰っていましたわよ」

「なぬ!?」

 アルマンの間の抜けた声にマーシェは嫁いでから初めて心の底から笑えた。











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