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17 マーシェの叱咤激励
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「何をしている!」
マーシェは元来た廊下を壁伝いに戻ろうとしたけれど、気付いたアルマンは彼女の所まで走ってきた。
マーシェの弱った体を支えてくれたけれど、マーシェはイヤイヤをするように抵抗した。
「離してください!」
「駄目だ!大人しくしてくれ!」
アルマンの腕の中でマーシェは上手く逃げられなかった自分を呪う。
抵抗するマーシェをアルマンは軽々と抱き上げ元居た部屋へと連れて行った。
ベッドにそっと下ろされたマーシェはアルマンをキッと睨みつけた。
「どうして放っておいてくれないのですか?」
「出来るわけがないだろう」
「今まで散々放っておいたくせに」
「っ⋯⋯!」
マーシェの言葉に口の音も出ないアルマンはひるんでしまった。
「自分の都合で2年も放っておいて、今度はまたもや自分の都合で構うのですか?私は人です!人形ではありません!飾っておくなら別の方にどうぞ!大人しく貴方に従順な女性を選ばれてはいかがですか?!」
まさしく大人しく従順な女性として選ばれたのがマーシェだったのだが、そんな事は言えないアルマンはますます黙った。今それを言えば火に油を注ぐようなものだと目に見えていた。
そして改めて自分という人間が非道な男だと反省する。
だが今は弱った妻を大人しくベッドで安静にさせなければならない。
先ほど別室で診察した医師から、風呂で溺れた妻の容態を聞いたばかりだった。
「とにかく!安静にしているんだ。医師にも言われただろう」
掛布の上に下ろしていたから、それを引っ張り出して無理矢理マーシェの体にかけた。半身を起こそうとする彼女をアルマンは体を張って止めた。
夢中でそんな事をしていてふと気付くと二人の顔の位置はお互いの鼻先だった。
我に返って奇しくも見つめ合う二人。
普通の夫婦ならおそらくそこから甘い展開になるのだろうが、この二人にそれは当てはまらなかった。どちらともなく二人は互いにそっぽを向いた。
「⋯⋯近いですわ!」
「⋯⋯すまん」
そっぽを向いたマーシェは抵抗しても無駄に労力を使うと気付いた。思った以上に弱った体は歩くのもままならないのだと先ほどの行動で嫌というほど分かったからだ。
誰も他には部屋に入ってこないのだろうと思い、マーシェはしょうがなくアルマンに王宮にいる経緯を求めた。
「貴方が居なくなった事に気付いて探していた所に宰相から連絡が入ったんだ。君を保護していると」
「⋯私はどうして私がここにいるのか聞いているのですが?」
どうやらその辺をアルマンは誤魔化そうと思っていたらしいが、マーシェの追究は止まらなかったので諦めて話すことにした。
「君が湯船で溺れたのはどれくらいの時間か分からないが、宿泊客が気付いてくれて助けられた。だが宿帳に載る名は明らかな偽名で半信半疑で問い合わせてみたものの、やはりと宿屋では困惑したそうだ」
「⋯⋯」
少し睨みながら話すアルマンに無言でマーシェは抵抗した。家を出たのに本名を名乗るわけないではないか!そんなの当たり前!そんな気持ちを込めて睨み返した。
だが宿屋の人達には申し訳ないと思う。ここを出たらすぐに謝罪に行こうと心に決めた。
「それで憲兵を呼んでその立ち会いのもとで荷物を開ける事になったのだが、貴方は身ひとつで更に困惑したそうだ。だが宿泊料は前金でもらっていたから財布がどこかにあるはずだと、脱衣所にあった君の衣服を調べた。そこで見つけたのが折り畳まれたストナム王家の封書だった。宿の奥方がストナムのご出身だったから見覚えがあったのが幸いしたな」
「⋯⋯」
それは幸いだろうか?
だが姉の手紙を悪用されなかっただけマシかもしれない。マーシェは宿屋の奥様にも感謝をして心の中で拝んだ。
「王家からの封書だから中身は見ずにそのまま憲兵の手によって宰相に届けられて、君はそのまま王家に運ばれたんだ。そして宛名を確認した宰相が私に身元確認で連絡をくれた」
「そうですか⋯お手数おかけしました」
「⋯⋯あまり無茶をしないでくれ」
アルマンはそう言って胸元からハンカチを取り出した。何かを包んでいるようでマーシェの前でそれを開いた。
そこにはマーシェの母の形見のネックレスがあった。
「!」
思わず両手で口を押さえたのは、先程蒼白になって最悪諦めなければならないかもしれないと思っていたネックレスが目の前に出てきて涙が込み上げてきたからだった。
ネックレスを手に取りアルマンはマーシェの首に着けてくれた。されるがままにマーシェは己の首を差し出した。
ネックレスがつけられるとそのハンカチでアルマンが優しくマーシェの涙を拭う。
(今優しくしないで!私も絆されるな!頑張れ私!)
マーシェは弱った体で心まで弱くなりそうな自分に胸の中で叱咤激励していた。
マーシェは元来た廊下を壁伝いに戻ろうとしたけれど、気付いたアルマンは彼女の所まで走ってきた。
マーシェの弱った体を支えてくれたけれど、マーシェはイヤイヤをするように抵抗した。
「離してください!」
「駄目だ!大人しくしてくれ!」
アルマンの腕の中でマーシェは上手く逃げられなかった自分を呪う。
抵抗するマーシェをアルマンは軽々と抱き上げ元居た部屋へと連れて行った。
ベッドにそっと下ろされたマーシェはアルマンをキッと睨みつけた。
「どうして放っておいてくれないのですか?」
「出来るわけがないだろう」
「今まで散々放っておいたくせに」
「っ⋯⋯!」
マーシェの言葉に口の音も出ないアルマンはひるんでしまった。
「自分の都合で2年も放っておいて、今度はまたもや自分の都合で構うのですか?私は人です!人形ではありません!飾っておくなら別の方にどうぞ!大人しく貴方に従順な女性を選ばれてはいかがですか?!」
まさしく大人しく従順な女性として選ばれたのがマーシェだったのだが、そんな事は言えないアルマンはますます黙った。今それを言えば火に油を注ぐようなものだと目に見えていた。
そして改めて自分という人間が非道な男だと反省する。
だが今は弱った妻を大人しくベッドで安静にさせなければならない。
先ほど別室で診察した医師から、風呂で溺れた妻の容態を聞いたばかりだった。
「とにかく!安静にしているんだ。医師にも言われただろう」
掛布の上に下ろしていたから、それを引っ張り出して無理矢理マーシェの体にかけた。半身を起こそうとする彼女をアルマンは体を張って止めた。
夢中でそんな事をしていてふと気付くと二人の顔の位置はお互いの鼻先だった。
我に返って奇しくも見つめ合う二人。
普通の夫婦ならおそらくそこから甘い展開になるのだろうが、この二人にそれは当てはまらなかった。どちらともなく二人は互いにそっぽを向いた。
「⋯⋯近いですわ!」
「⋯⋯すまん」
そっぽを向いたマーシェは抵抗しても無駄に労力を使うと気付いた。思った以上に弱った体は歩くのもままならないのだと先ほどの行動で嫌というほど分かったからだ。
誰も他には部屋に入ってこないのだろうと思い、マーシェはしょうがなくアルマンに王宮にいる経緯を求めた。
「貴方が居なくなった事に気付いて探していた所に宰相から連絡が入ったんだ。君を保護していると」
「⋯私はどうして私がここにいるのか聞いているのですが?」
どうやらその辺をアルマンは誤魔化そうと思っていたらしいが、マーシェの追究は止まらなかったので諦めて話すことにした。
「君が湯船で溺れたのはどれくらいの時間か分からないが、宿泊客が気付いてくれて助けられた。だが宿帳に載る名は明らかな偽名で半信半疑で問い合わせてみたものの、やはりと宿屋では困惑したそうだ」
「⋯⋯」
少し睨みながら話すアルマンに無言でマーシェは抵抗した。家を出たのに本名を名乗るわけないではないか!そんなの当たり前!そんな気持ちを込めて睨み返した。
だが宿屋の人達には申し訳ないと思う。ここを出たらすぐに謝罪に行こうと心に決めた。
「それで憲兵を呼んでその立ち会いのもとで荷物を開ける事になったのだが、貴方は身ひとつで更に困惑したそうだ。だが宿泊料は前金でもらっていたから財布がどこかにあるはずだと、脱衣所にあった君の衣服を調べた。そこで見つけたのが折り畳まれたストナム王家の封書だった。宿の奥方がストナムのご出身だったから見覚えがあったのが幸いしたな」
「⋯⋯」
それは幸いだろうか?
だが姉の手紙を悪用されなかっただけマシかもしれない。マーシェは宿屋の奥様にも感謝をして心の中で拝んだ。
「王家からの封書だから中身は見ずにそのまま憲兵の手によって宰相に届けられて、君はそのまま王家に運ばれたんだ。そして宛名を確認した宰相が私に身元確認で連絡をくれた」
「そうですか⋯お手数おかけしました」
「⋯⋯あまり無茶をしないでくれ」
アルマンはそう言って胸元からハンカチを取り出した。何かを包んでいるようでマーシェの前でそれを開いた。
そこにはマーシェの母の形見のネックレスがあった。
「!」
思わず両手で口を押さえたのは、先程蒼白になって最悪諦めなければならないかもしれないと思っていたネックレスが目の前に出てきて涙が込み上げてきたからだった。
ネックレスを手に取りアルマンはマーシェの首に着けてくれた。されるがままにマーシェは己の首を差し出した。
ネックレスがつけられるとそのハンカチでアルマンが優しくマーシェの涙を拭う。
(今優しくしないで!私も絆されるな!頑張れ私!)
マーシェは弱った体で心まで弱くなりそうな自分に胸の中で叱咤激励していた。
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