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34 マーシェ優しさに触れる
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2杯目のお茶は、ミントティーだった。
スーッと鼻に抜けるこの匂いをマーシェは好きだが、この後が好きではない。
ただでさえ利く鼻が益々鋭さを増すからだ。
だが折角気を利かせてくれた夫人が手ずから入れてくれたのだ、飲まないという選択は尚の事出来なかった。
匂う匂う、マーシェは二人の匂いを完全に自分の鼻にインプットした。
一期一会ではっきり記憶するのはマーシェの中でもかなり珍しかった。それほど鼻が鋭く利いていた。
利きすぎる鼻に苦労していた時、次期ブッセ伯爵がようやく答えを出した。
「我が家、少なくとも私はリリアンの選択に任せます。妹がどんな結論を出しても私は彼女の応援に回ります。ブッセ伯爵家に残っても妹たちの面倒は私達がちゃんと暮らしが成るようにします。それに⋯⋯」
そこで、ずっとマーシェの目を見て話していた彼が、少し躊躇うように言い淀み、瞬きをゆっくり2回した。
「それに、公爵夫人の行く末に安心できたら、妹は領地にいる父の元へ戻るつもりでいましたから、元々王都に長くいるつもりはなかったので、復縁するのかしたいのか、それは一度も聞いたことがないのです。別れ方がアレでしたしね」
リリアンは本当にマーシェの事を心配してくれていたのだと、その事がよく分かった。
そんな優しい彼女だからアルマンは守ろうと思えたのだろう、でもやり方はどうかと思う。
マーシェは残念な言葉足らずの夫を思い出し、その頭を叩きたい衝動が湧いてきた。
その時、リリアンの到着を伯爵家の執事が伝えに来た。
久しぶりに見るリリアンは急いで部屋にやってきたのだろう、少し顔が上気して頬が薄っすら桃色に染まっていた。
「マーシェ様、お待たせしてごめんなさい。お兄様もお義姉様も到着が遅れて申し訳ありません」
リリアンの声は、謝罪の声も朗らかでいつものようにマーシェの心を軽くしてくれる。
声だけでマーシェを癒せるなんて、貴方は聖女様ですか?とマーシェは心の中で独り言ちた。
「今日はどうされたのですか?」
いつもは図書館で会っていた二人だったから、突然の先触れをリリアンは驚いたことだろう。
マーシェはリリアンに報告するべく、彼女の方へと居住まいを正した。
「リリアン様。リリアン様には沢山ご助言も一緒に調べものまでして頂いて、私深く感謝しております。長くご相談に乗って頂きましたが、この度めでたく離婚する事が叶いそうです。そのご報告にと思いまして、ご連絡させて頂きましたの」
「まぁ!マーシェ様、それで本当に悔いはありませんか?慰謝料は充分に話し合われましたか?」
「その点は心配ないと思います。裁判の記録を引っ張り出してまでご協力頂きましたが、裁判はせずに済みそうです」
「そう、良かった。それはマーシェ様の本望よね?」
「はい、リリアン様。私の嘘偽りない希望です」
マーシェがそう言うと、マーシェの右前の一人がけソファに座っていたリリアンは、彼女に近付いて来て「失礼しますね」そう言ってマーシェの頭を胸に抱いてくれた。
そして頭を撫でながら「頑張りましたね」そう言って二年の間のマーシェの物思いを労ってくれた。
辛くはなかったはずだった。
マーシェはアルマンを愛していたわけじゃないから、未練は何もないはずだった。
だから泣いてなんていない。
一層今日のミントティーのように清々しい気持ちのはずだった。
だけどリリアンから頭を撫でられた時、マーシェは知らず泣いていた。
リリアンの腰あたりに腕を伸ばした。
その手をいつの間にか側に来ていた、リリアンの兄嫁が、力強く握ってくれた。
夫人たちの悲しみ苦しみは、夫人にしか分からない。
リリアンの兄はそっと応接室を出て人払いをしてくれていた。
スーッと鼻に抜けるこの匂いをマーシェは好きだが、この後が好きではない。
ただでさえ利く鼻が益々鋭さを増すからだ。
だが折角気を利かせてくれた夫人が手ずから入れてくれたのだ、飲まないという選択は尚の事出来なかった。
匂う匂う、マーシェは二人の匂いを完全に自分の鼻にインプットした。
一期一会ではっきり記憶するのはマーシェの中でもかなり珍しかった。それほど鼻が鋭く利いていた。
利きすぎる鼻に苦労していた時、次期ブッセ伯爵がようやく答えを出した。
「我が家、少なくとも私はリリアンの選択に任せます。妹がどんな結論を出しても私は彼女の応援に回ります。ブッセ伯爵家に残っても妹たちの面倒は私達がちゃんと暮らしが成るようにします。それに⋯⋯」
そこで、ずっとマーシェの目を見て話していた彼が、少し躊躇うように言い淀み、瞬きをゆっくり2回した。
「それに、公爵夫人の行く末に安心できたら、妹は領地にいる父の元へ戻るつもりでいましたから、元々王都に長くいるつもりはなかったので、復縁するのかしたいのか、それは一度も聞いたことがないのです。別れ方がアレでしたしね」
リリアンは本当にマーシェの事を心配してくれていたのだと、その事がよく分かった。
そんな優しい彼女だからアルマンは守ろうと思えたのだろう、でもやり方はどうかと思う。
マーシェは残念な言葉足らずの夫を思い出し、その頭を叩きたい衝動が湧いてきた。
その時、リリアンの到着を伯爵家の執事が伝えに来た。
久しぶりに見るリリアンは急いで部屋にやってきたのだろう、少し顔が上気して頬が薄っすら桃色に染まっていた。
「マーシェ様、お待たせしてごめんなさい。お兄様もお義姉様も到着が遅れて申し訳ありません」
リリアンの声は、謝罪の声も朗らかでいつものようにマーシェの心を軽くしてくれる。
声だけでマーシェを癒せるなんて、貴方は聖女様ですか?とマーシェは心の中で独り言ちた。
「今日はどうされたのですか?」
いつもは図書館で会っていた二人だったから、突然の先触れをリリアンは驚いたことだろう。
マーシェはリリアンに報告するべく、彼女の方へと居住まいを正した。
「リリアン様。リリアン様には沢山ご助言も一緒に調べものまでして頂いて、私深く感謝しております。長くご相談に乗って頂きましたが、この度めでたく離婚する事が叶いそうです。そのご報告にと思いまして、ご連絡させて頂きましたの」
「まぁ!マーシェ様、それで本当に悔いはありませんか?慰謝料は充分に話し合われましたか?」
「その点は心配ないと思います。裁判の記録を引っ張り出してまでご協力頂きましたが、裁判はせずに済みそうです」
「そう、良かった。それはマーシェ様の本望よね?」
「はい、リリアン様。私の嘘偽りない希望です」
マーシェがそう言うと、マーシェの右前の一人がけソファに座っていたリリアンは、彼女に近付いて来て「失礼しますね」そう言ってマーシェの頭を胸に抱いてくれた。
そして頭を撫でながら「頑張りましたね」そう言って二年の間のマーシェの物思いを労ってくれた。
辛くはなかったはずだった。
マーシェはアルマンを愛していたわけじゃないから、未練は何もないはずだった。
だから泣いてなんていない。
一層今日のミントティーのように清々しい気持ちのはずだった。
だけどリリアンから頭を撫でられた時、マーシェは知らず泣いていた。
リリアンの腰あたりに腕を伸ばした。
その手をいつの間にか側に来ていた、リリアンの兄嫁が、力強く握ってくれた。
夫人たちの悲しみ苦しみは、夫人にしか分からない。
リリアンの兄はそっと応接室を出て人払いをしてくれていた。
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