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41知らなかったマーシェ➀
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モリアの顔が蒼白になっている、その様子をマーシェは見つめていた。
するとふと目の端に見覚えのあるドレスの色が映った。
(⋯リリアン様)
おそらくモリアに気付かれたくないのだろう、マーシェに移動しようと、誘うつもりで姿を現したのだとマーシェは理解した。
(ひょっとしたら今の話聞かれていたかも)
アルマンの再婚話をしている時にリリアンを見かけたら、モリアなら十中八九復縁させようと躍起になるはず、使用人達の中では、おそらくリリアンの不貞疑惑など、心の中では鼻で嗤っていたと思う。
誰も信じていないのに、不貞の罪だけを押し付けられる、そんなリリアンの辛さなど、使用人達は考えたことがあるのだろうか?
本当は信じていなかったなんて言葉は後でいくらでも言えるのだ。
「貴方が覗き込むから集中出来ないわ、場所を変えます。いつものように適当に時間を潰してて」
マーシェはモリアにそう告げると、いつもの個室へと向かった。
ノックをするとリリアン自ら扉を開けてくれる。
「マーシェ様、ごきげんよう」
マーシェの顔を見て小声で挨拶しながら、リリアンは部屋へと招き入れてくれた。
だが部屋に入って思わずマーシェは立ち止まる。
「どうして貴方がここにいるの?」
マーシェに尋ねられたのは、アルマンの従者ザイリスだった。
窓から差し込む光で彼の薄茶色の髪が透けて金髪に見える。
戯けた表情は最近良く目にする物だ。以前は常に無表情だった。
そういえばマーロウ公爵家では、アルマンよりもこのザイリスのほうがよく目に入っていたと、今更ながらマーシェは思った。
「奥様、もうすぐ元奥様になるマーシェ様と交渉しようと思いまして参りました」
まっすぐマーシェを見つめる、エメラルドの瞳は、なんだか心の奥までも見透かされる気分になって、マーシェは途端にそわそわと落ち着かなくなった。
立ったまま見つめ合う(?)二人に、取りあえず座ろうと言ったのは、リリアンだった。
「そうだ!どうしてリリアン様がザイリスとともにここにいるの?」
心に思った疑問をマーシェはそのまま声に出していて、それに気づいたマーシェは、慌てて口元を隠した。
「フフ、吃驚したかしら?説明は⋯貴方がしてね」
リリアンが気安くザイリスに言うのをマーシェは不思議なものを見てるように、目をキョロキョロとさせて二人の顔を交互に見た。
「奥様、私とリリアン様、いやリリアンは遠い遠い遥かに遠い親戚なんです」
「それはもう他人では?」
ザイリスのツッコミどころ満載の説明に思わず、マーシェは我慢できずに声に出してしまった。
そんなマーシェの返しに、リリアンもザイリスも笑っている。
「マーシェ様、以前私がマーシェ様を気にしていた話しをしたと思うのですが⋯」
リリアンから言われてマーシェは頷いた。
そうだ、リリアン様はマーシェまでフォスティーヌの被害にあってるのでは、合うのではと危惧して探っていたと言っていたのを思い出した。
それで、マーシェをお飾りどころか、完全に放置したアルマンよりも、無機質に感情も乗せずに遠巻きにしている使用人達よりも、よっぽどリリアンの方が暖かいと感じたのだ。
「ですが、私も公爵家を追われた身です。情報などなかなか手に入れられるものではなかった。それこそ心配していても、それだけでしたの」
「えっ?でもリリアン様はこちらに来てくださいました」
「えぇあの時は、まだ話せる段階ではなかったので言いませんでしたが、ザイリスからの進言で私はここに来たのです」
「えっ?そうなのですか?」
またもやリリアンとザイリスを交互に見ながら、マーシェは、どうしてだろうと思った。
彼はアルマンの従者だから、当然アルマン寄りの考えを持っているはずで、おそらくアルマンの考えも知っていたはずだ。
それなのに⋯。
その行動はマーシェの監視ではなく、マーシェを救う行動だった。
ザイリスの顔を見つめてマーシェは首を傾げた。
するとふと目の端に見覚えのあるドレスの色が映った。
(⋯リリアン様)
おそらくモリアに気付かれたくないのだろう、マーシェに移動しようと、誘うつもりで姿を現したのだとマーシェは理解した。
(ひょっとしたら今の話聞かれていたかも)
アルマンの再婚話をしている時にリリアンを見かけたら、モリアなら十中八九復縁させようと躍起になるはず、使用人達の中では、おそらくリリアンの不貞疑惑など、心の中では鼻で嗤っていたと思う。
誰も信じていないのに、不貞の罪だけを押し付けられる、そんなリリアンの辛さなど、使用人達は考えたことがあるのだろうか?
本当は信じていなかったなんて言葉は後でいくらでも言えるのだ。
「貴方が覗き込むから集中出来ないわ、場所を変えます。いつものように適当に時間を潰してて」
マーシェはモリアにそう告げると、いつもの個室へと向かった。
ノックをするとリリアン自ら扉を開けてくれる。
「マーシェ様、ごきげんよう」
マーシェの顔を見て小声で挨拶しながら、リリアンは部屋へと招き入れてくれた。
だが部屋に入って思わずマーシェは立ち止まる。
「どうして貴方がここにいるの?」
マーシェに尋ねられたのは、アルマンの従者ザイリスだった。
窓から差し込む光で彼の薄茶色の髪が透けて金髪に見える。
戯けた表情は最近良く目にする物だ。以前は常に無表情だった。
そういえばマーロウ公爵家では、アルマンよりもこのザイリスのほうがよく目に入っていたと、今更ながらマーシェは思った。
「奥様、もうすぐ元奥様になるマーシェ様と交渉しようと思いまして参りました」
まっすぐマーシェを見つめる、エメラルドの瞳は、なんだか心の奥までも見透かされる気分になって、マーシェは途端にそわそわと落ち着かなくなった。
立ったまま見つめ合う(?)二人に、取りあえず座ろうと言ったのは、リリアンだった。
「そうだ!どうしてリリアン様がザイリスとともにここにいるの?」
心に思った疑問をマーシェはそのまま声に出していて、それに気づいたマーシェは、慌てて口元を隠した。
「フフ、吃驚したかしら?説明は⋯貴方がしてね」
リリアンが気安くザイリスに言うのをマーシェは不思議なものを見てるように、目をキョロキョロとさせて二人の顔を交互に見た。
「奥様、私とリリアン様、いやリリアンは遠い遠い遥かに遠い親戚なんです」
「それはもう他人では?」
ザイリスのツッコミどころ満載の説明に思わず、マーシェは我慢できずに声に出してしまった。
そんなマーシェの返しに、リリアンもザイリスも笑っている。
「マーシェ様、以前私がマーシェ様を気にしていた話しをしたと思うのですが⋯」
リリアンから言われてマーシェは頷いた。
そうだ、リリアン様はマーシェまでフォスティーヌの被害にあってるのでは、合うのではと危惧して探っていたと言っていたのを思い出した。
それで、マーシェをお飾りどころか、完全に放置したアルマンよりも、無機質に感情も乗せずに遠巻きにしている使用人達よりも、よっぽどリリアンの方が暖かいと感じたのだ。
「ですが、私も公爵家を追われた身です。情報などなかなか手に入れられるものではなかった。それこそ心配していても、それだけでしたの」
「えっ?でもリリアン様はこちらに来てくださいました」
「えぇあの時は、まだ話せる段階ではなかったので言いませんでしたが、ザイリスからの進言で私はここに来たのです」
「えっ?そうなのですか?」
またもやリリアンとザイリスを交互に見ながら、マーシェは、どうしてだろうと思った。
彼はアルマンの従者だから、当然アルマン寄りの考えを持っているはずで、おそらくアルマンの考えも知っていたはずだ。
それなのに⋯。
その行動はマーシェの監視ではなく、マーシェを救う行動だった。
ザイリスの顔を見つめてマーシェは首を傾げた。
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