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44 少々抜けてるザイリス
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今から丁度10年前、ストナム王国の王太子エリザイルがポリント辺境伯の学園に留学するという情報が、マッケンロウ王家に齎された。
内々にフォスティーヌとの縁談をホワっと打診していた国王は、何故王都の学園ではなくポリント領なのかを探らせるため、マーロウ公爵家に指示を出した。
当時のマーロウ公爵は、他の仕事を抱えていたため、門下筆頭のセバダ侯爵に丸投げした。
当時16歳だったザイリスは、マーロウ家の影の騎士団を率いる為の修行を始めたばかりだった。
それまで自身の家が王家の影の仕事をしていたなんてザイリスは知らなかった。
話を聞いた途端に始まった無理矢理な修行に、剣術が好きで、将来騎士になるのを夢見ていたザイリスは、そのことで心が折れた。
何故なら、国に忠誠を誓うのは同じでも、マーロウ公爵やセバダ侯爵家が担うのは国の影の部分、主に汚い公にはできない仕事。
正義ではないその仕事に、ザイリスは誇りが持てなかった。
その手で剣を折ったが家からの出奔は叶わなかった。剣と真逆の文官を目指すと父にも言ってみたが、言わなきゃよかったと思ったのは、その後の配置換えで、アルマンの侍従を命じられたからだった。
くさくさしていたザイリスの、修行がてらの旅行のつもりで、父セバダ侯爵は、ザイリスをポリント辺境伯領に同行させてくれた。
その時にザイリスはまさかの迷子になった。
父は身分を隠し入領したが、ザイリスは学園の短期留学という体で入り、身分を隠すことはしなかった。
ザイリスは寮に入った為、父と同じ場所にも泊まらず、単独で学園内に侵入したようになっていたが、如何せんまだ修行を始めたばかり、ただ楽しく学園生活を堪能するつもりだった。
それというのも、王都の学園と違い、ポリント領の学園は変わっていた。
まず10日に一度学力試験がある。
丁度ザイリスが学園に手続きに行った日、学長室で話を聞いている途中、学生が入室の許可を求めてきた。
本来なら断るはずの学長もにこやかに入室を許可する。そして入ってきた学生に何かの封筒を渡した。彼は中の手紙を見て「アチャーマジかぁ」とか言いながら「失礼しましたぁ」と言って部屋を出ていった。
その出ていく後ろ姿に、同席していた教師が「頑張れよー」と声をかけているし、学長はニコニコとしていた。
不思議な顔をしていたザイリスに明日学力試験があるのだという二人。ますますわけがわからなかったザイリスに二人が教えてくれたのは、とんでもない試験の方法だった。
ポリント学園では、学力試験の問題を選択することができるのだという。
選択は三つ、A、B、Cというらしい。
Aは試験範囲の中でも難易度MAXで、ただし5割できていれば、学年で20位以内には自動的に入れるらしい。何故なら問題用紙が20枚しかないから。
Bは試験範囲の中でそこそこの難易度。但しその問題を全問正解しても、21位にしかなれない。
Cは試験範囲のBよりも優しい問題、こちらは全問正解でも55位が最高の順位。
試験の方法も変わっているけれど、この問題を入手する方法も変わっていた。
今回は借り物競争だったそうだ。
先程来た生徒に渡した紙には、数字が書いてあってその番号が、試験問題を選ぶ番号だった。
ザイリスが意外だったのは、Aの試験問題が一番人気だということで、これを実施するようになってから、ポリント学園の学力は他領とは比べ物にならないくらいに跳ね上がったと聞かされた。
ザイリスは唖然としながらもワクワクする気持ちを抑えられなかった。
試験を楽しみにするなんて、学生になってから初めて体験する気持ちだった。
そんな試験問題争奪戦の途中でザイリスは迷子になった。
ザイリスが留学して初めての試験も前回好評だったという事で借り物競争だった。
借り物と言っているが要は書いてある人の元に行って手紙を受け取るだけのもの。
何を借りるかというと、紙に書いてある人の時間を借りるというものだった。
ザイリスも教室でくじを引いた。
中に入っている紙に書かれた人のところに行くのだが、留学してきた記念だと言って一番に引いていい権利を与えられたのだ。
ワクワクしながら箱に手を突っ込んだ。
ザイリスが引いた紙には『美化委員会顧問ティアーズ』と書かれていた。
そして無謀にもザイリスは誰に聞くことなく、走り出した。
顧問と書かれているならば教師だ、教師は教員室にいるはずだ!その場所は知ってる!
そんな思いで行った教員室には、教師は一人しかいなかった。
だが不運なことにこの教師も赴任してきたばかりの新任教師だった。
彼はここにいて来た生徒に封筒を手渡すように言われただけだった。
「これをお願いします!」
走ってきたザイリスが興奮顔で渡した紙には、その教師の名は書かれていなかった。
「これは違うね、君にはこの封筒は渡せないよ。僕は数学教師リシャードだ」
「そんな!ではこの方は?」
「うーん美化委員って良く学園内の庭園にいるから、そこじゃないかな?」
「ありがとうございます!」
張り切って学び舎を出て庭園の方に向かうザイリス。
庭園の場所は案内図に書かれていたので頭に入れていた。
だがザイリスは知らなかった。
美化委員会顧問ティアーズが待っていたのは、学園内の温室だった。
その場所は庭園にはなかった。
そして庭園の途中では、小さな門が有りそこから学園の隣にあるポリント植物研究所と繋がっていた。
ザイリスは人を探しながら突っ走っていた為、周りがよく見えていなかった。
いつの間にか研究所に入り、そしていつの間にか外に出てしまっていた。
そして猪突猛進のザイリスが気づいた時には、その場所がどこなのかまるでわからなかった。
内々にフォスティーヌとの縁談をホワっと打診していた国王は、何故王都の学園ではなくポリント領なのかを探らせるため、マーロウ公爵家に指示を出した。
当時のマーロウ公爵は、他の仕事を抱えていたため、門下筆頭のセバダ侯爵に丸投げした。
当時16歳だったザイリスは、マーロウ家の影の騎士団を率いる為の修行を始めたばかりだった。
それまで自身の家が王家の影の仕事をしていたなんてザイリスは知らなかった。
話を聞いた途端に始まった無理矢理な修行に、剣術が好きで、将来騎士になるのを夢見ていたザイリスは、そのことで心が折れた。
何故なら、国に忠誠を誓うのは同じでも、マーロウ公爵やセバダ侯爵家が担うのは国の影の部分、主に汚い公にはできない仕事。
正義ではないその仕事に、ザイリスは誇りが持てなかった。
その手で剣を折ったが家からの出奔は叶わなかった。剣と真逆の文官を目指すと父にも言ってみたが、言わなきゃよかったと思ったのは、その後の配置換えで、アルマンの侍従を命じられたからだった。
くさくさしていたザイリスの、修行がてらの旅行のつもりで、父セバダ侯爵は、ザイリスをポリント辺境伯領に同行させてくれた。
その時にザイリスはまさかの迷子になった。
父は身分を隠し入領したが、ザイリスは学園の短期留学という体で入り、身分を隠すことはしなかった。
ザイリスは寮に入った為、父と同じ場所にも泊まらず、単独で学園内に侵入したようになっていたが、如何せんまだ修行を始めたばかり、ただ楽しく学園生活を堪能するつもりだった。
それというのも、王都の学園と違い、ポリント領の学園は変わっていた。
まず10日に一度学力試験がある。
丁度ザイリスが学園に手続きに行った日、学長室で話を聞いている途中、学生が入室の許可を求めてきた。
本来なら断るはずの学長もにこやかに入室を許可する。そして入ってきた学生に何かの封筒を渡した。彼は中の手紙を見て「アチャーマジかぁ」とか言いながら「失礼しましたぁ」と言って部屋を出ていった。
その出ていく後ろ姿に、同席していた教師が「頑張れよー」と声をかけているし、学長はニコニコとしていた。
不思議な顔をしていたザイリスに明日学力試験があるのだという二人。ますますわけがわからなかったザイリスに二人が教えてくれたのは、とんでもない試験の方法だった。
ポリント学園では、学力試験の問題を選択することができるのだという。
選択は三つ、A、B、Cというらしい。
Aは試験範囲の中でも難易度MAXで、ただし5割できていれば、学年で20位以内には自動的に入れるらしい。何故なら問題用紙が20枚しかないから。
Bは試験範囲の中でそこそこの難易度。但しその問題を全問正解しても、21位にしかなれない。
Cは試験範囲のBよりも優しい問題、こちらは全問正解でも55位が最高の順位。
試験の方法も変わっているけれど、この問題を入手する方法も変わっていた。
今回は借り物競争だったそうだ。
先程来た生徒に渡した紙には、数字が書いてあってその番号が、試験問題を選ぶ番号だった。
ザイリスが意外だったのは、Aの試験問題が一番人気だということで、これを実施するようになってから、ポリント学園の学力は他領とは比べ物にならないくらいに跳ね上がったと聞かされた。
ザイリスは唖然としながらもワクワクする気持ちを抑えられなかった。
試験を楽しみにするなんて、学生になってから初めて体験する気持ちだった。
そんな試験問題争奪戦の途中でザイリスは迷子になった。
ザイリスが留学して初めての試験も前回好評だったという事で借り物競争だった。
借り物と言っているが要は書いてある人の元に行って手紙を受け取るだけのもの。
何を借りるかというと、紙に書いてある人の時間を借りるというものだった。
ザイリスも教室でくじを引いた。
中に入っている紙に書かれた人のところに行くのだが、留学してきた記念だと言って一番に引いていい権利を与えられたのだ。
ワクワクしながら箱に手を突っ込んだ。
ザイリスが引いた紙には『美化委員会顧問ティアーズ』と書かれていた。
そして無謀にもザイリスは誰に聞くことなく、走り出した。
顧問と書かれているならば教師だ、教師は教員室にいるはずだ!その場所は知ってる!
そんな思いで行った教員室には、教師は一人しかいなかった。
だが不運なことにこの教師も赴任してきたばかりの新任教師だった。
彼はここにいて来た生徒に封筒を手渡すように言われただけだった。
「これをお願いします!」
走ってきたザイリスが興奮顔で渡した紙には、その教師の名は書かれていなかった。
「これは違うね、君にはこの封筒は渡せないよ。僕は数学教師リシャードだ」
「そんな!ではこの方は?」
「うーん美化委員って良く学園内の庭園にいるから、そこじゃないかな?」
「ありがとうございます!」
張り切って学び舎を出て庭園の方に向かうザイリス。
庭園の場所は案内図に書かれていたので頭に入れていた。
だがザイリスは知らなかった。
美化委員会顧問ティアーズが待っていたのは、学園内の温室だった。
その場所は庭園にはなかった。
そして庭園の途中では、小さな門が有りそこから学園の隣にあるポリント植物研究所と繋がっていた。
ザイリスは人を探しながら突っ走っていた為、周りがよく見えていなかった。
いつの間にか研究所に入り、そしていつの間にか外に出てしまっていた。
そして猪突猛進のザイリスが気づいた時には、その場所がどこなのかまるでわからなかった。
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