公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

文字の大きさ
53 / 59

52 マーシェ操縦する

しおりを挟む
 フォスティーヌは悔しかった。
 たかが辺境伯の娘のくせに、王女に意見する目の前の女がムカついた。でもその女に畏怖を感じることが悔しかった。
 そして王女のくせに何一つ反論できない、自分が情けなかった。

「貴方と貴方のもうすぐ夫になる予定の男の罪はね。ちゃんとケリをつけていないことなのよ」

「⋯⋯⋯ケリ?って何?」

「ケリ、始末、んー後始末。貴方達やらかしただけじゃない?そしてそれは間違ったことなのよ。じゃあどうするの?間違ってたら正さないといけない。王女様もそう言ったじゃない?で、貴方方の間違いの正し方は?」

「えっえっ何?私間違ってないわ」

「リリアン様の件は濡れ衣でしょう?」

「ウッ!」

 明らかにバレている自身の所業。あの時は頭に血が登ってしまっていた。

 マッケンロウ王国の王族と貴族の婚約、婚姻の法律については殆ど変わらない。だが唯一変わるのが離婚してから婚姻出来るまでの期間だった。
 通常貴族の場合は、死別後や離婚後一ヶ月以上の婚約期間があれば、直ぐに婚姻できる。
 だが王族は、離婚後婚約期間を1年設けなければならない。それをフォスティーヌは、帰国するまで知らなかった。

 マッケンロウでの友人(男)が、離婚後1ヶ月して婚姻したから、自分もそうできると思っていた。
 大公子との結婚は最悪だった。
 マッケンロウからの厄介払いの王女が嫁いできたと、端から侮られた。周りは気のせいだと言ったけれど絶対にそうではない。
 侍女に命じて避妊薬を用意した、序に媚薬や神経に作用する薬、何が効くかはわからないから、とことん色々飲ませたし、自分でも飲んだ。
 フォスティーヌは子ができないという理由で、離婚するつもりではなかった。子ができないから側室を持つと言わせて、それを理由に離婚するつもりだったのに、薬を服用させていたのがバレて罪に問われた。

 正直、国に、アルマンの元に帰れるなら何でも良かった。
 そんな思いで帰ってきたのに、彼は政略妻と子まで成して幸せそうに(リリアンが)しているのが許せなかった。

 何も考えずやってしまった後、思惑通りに離婚したのに、自分との再婚は1年後にしか出来ない事を王太子に知らされた。
 そうこうしているうちに何故かアルマンは再婚してしまったのだ。
 フォスティーヌは自分のした事が全て無駄だった事に絶望した。
 しかも王命ときたから、自分の父親を呪い殺したいほどに腹が立った。父親の言い訳はよくわからなかったけれど、マーロウ公爵家の仕事に関する事だというのはわかった。

 ならば第二夫人として公爵家に入り、マーシェをどこかの部屋に押し込めばいいと考えた。
 それでも2年は待たなければならない。

 フォスティーヌは勘違いしているが、法律によれば3年である。
 2年経過で子ができない場合、それから第二夫人の申請ができる。それから婚約期間を1年設けるから早くても3年だ。
 色々と交錯している法律書を、読み込む気がないフォスティーヌは、侍女に法律書を読み込ませていた。
 そして、王妃の指示で肝心な所を暈して教えられていたのだ。それに未だに気付いていないし、今後も気付くことはないだろう。

「貴方が着せた濡れ衣は、曖昧なままなのです。リリアン様は勿論否定しておられますが、マーロウ公爵家が黙ってしまっては、ずっと疑われたままなのですよ。それはお子様方にも及びます。何時までもお母上の疑いが晴れなければ托卵を疑われてしまいますものね」

「それはアルマンが考えることでしょう?」

「えぇですからマーロウ公爵は、復縁を申し込まれましたわ」

「えっ?!」

「お分かりですか?今王女様が浮かれていられるのは、リリアン様が復縁を断ったからですよ」

「どうして断ったのよ」

「あらっ復縁してよかったのですか?」

「いいわけないでしょっ!」

 マーシェは段々自分が王女と話しているのか、そこら辺の令嬢と話しているのか区別が付かなくなってきた。
 それほどに目の前の王女は、マーシェに対して感情を隠すことをしない。常からそうなら全く以て、彼女は王族には向いてないと言わざるを得ない。

「まぁリリアン様が断ったのは、浅慮な当主を持つ公爵家を既に見限ったからに他なりませんけど。ですが!それはそれこれはこれです。変な醜聞はここらで終わりにしなければなりません。それは公爵夫人になられるフォスティーヌ様のお仕事では御座いませんか?」

「えっ?次期公爵夫人?」

 ポポッとわかりやすく頬を染め、その頬に両手を添えるフォスティーヌ。十代のご令嬢達のように照れているのか「えっ!そんなぁ」などと呟いている様は、まんざらでもないのが丸わかりだった。

 (来い来い来い!乗って来い!)

 下げてから上げる
 姉から教わった子供の躾の操縦方法。
 ここに来て役に立ちそうだと、もうすぐ掛かるフォスティーヌ子羊を今か今かと、心の中で待ちわびるマーシェだった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました

よどら文鳥
恋愛
 ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。  ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。  ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。  更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。  再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。  ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。  後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。  ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。

【完結】旦那に愛人がいると知ってから

よどら文鳥
恋愛
 私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。  だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。  それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。  だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。 「……あの女、誰……!?」  この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。  だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。 ※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。

冷たい王妃の生活

柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。 三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。 王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。 孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。 「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。 自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。 やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。 嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

処理中です...