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「帰ってきたわ!」
先に降りたザイリスの手に自分の手を重ねて、馬車から降り立ったマーシェは開口一番そう言った。
ポリント辺境伯は、その足を活かして既に到着しているだろう。マーシェはザイリスとレイオニーとともに、馬車でゆっくり帰路についていた。
「おかえりなさいマーシェ様」
次期辺境伯である兄の妻が、幼い子どもたちとともにマーシェを歓迎してくれた。
兄と父達は、直ぐに次の問題発生のため出かけているという。
「お義姉様ただいま帰りました」
理不尽な王命のため、3年近く留守にしていた義妹を抱きしめた。
「さぁ皆様、中でゆっくりなさって」
兄の妻は右手で示して、三人を辺境伯邸へと誘った。
「ミエルは私付きになってくれるの?」
マーシェの元専属侍女であったミエルが先導して、部屋へと案内している廊下でマーシェが尋ねる。
かつてマーシェに専属侍女は、ミエル一人しかいなかった。
王命の婚姻で王都に旅立つ時、本当なら彼女も連れて行きたかったが、彼女は辺境伯騎士と婚約していた為、マーシェは一人で王都へ行っていた。
「お嬢様がご指名していただけましたら光栄にございます。それにしてもお嬢様は、2年で少し成長されましたね」
「そう?」
「えぇ、お嬢様が馬車を降りた時、そう思いました」
「ふふっ、私もそう思う」
アルマンと結婚前のマーシェなら、馬車を降りたときはきっと静かに無言で降りただろう。
そして先程の『帰ってきたわ』の台詞は、部屋に戻ってきてから発していたはずだ。
それほどにマーシェは外と内を分けていた。
外部に自分を曝け出すことに怯えていたのだ。
だから王都には従順な女性と間違った報告が、されていたと思われる。
マーシェは変わった、いい意味で。
自分を飾らず誤魔化すことなく、このポリント辺境伯領に戻ってきた。
かつての専属侍女、これからも専属侍女志願のミエルは、気分が高揚していた。
「こちらがレイオニー様とザイリス様のお部屋です」
先にザイリス達の部屋にミエルは案内した。
その部屋はマーシェの知る辺境伯家の部屋ではなかった。
改装によって二部屋をぶち抜いて、一部屋に改装されていた。
家具も半分以上がレイオニーに合わせてあった。男の子が好む青を基調にしていた。
水色のフカフカの絨毯に、ザイリスの机と思われるブロンズ色が、何ともちぐはぐでアンバランス。
二人の部屋というよりもレイオニーの部屋と言ってもいいのでは?マーシェはそう思うほどに、ザイリス用の家具が少なかった。
そして気づく。
「ザイリス様のベッドは?」
部屋に置いてあるベッドは、明らかにレイオニーの背丈に合わせてある子供用のベッドだった。
薄く目に優しい水色の掛布には、雲の形の刺繍、可愛らしい装飾で、子供の寝具としては完璧だが、ではザイリスは?
とうのザイリスもポカンとしていた。
自分の部屋でもあるここに案内されたのに、どうして自分のベッドがないのだろう?
すると事も無げにミエルが種を明かした。
「あぁザイリス様は、レイオニー様を寝かしつけたあとに、こちらでお休みください」
そう言って、続き部屋の入り口と思われる扉を開けた。
そもそも続き部屋がある事に驚く。
「「は?」」
その部屋はほぼベッドで占領されていた。
どう見てもキングサイズ、どこの王族か!と言いたくなるほど、ご立派なベッド。
黒檀の厳しさとは裏腹に、白い掛布には透かし模様が施されていた。それが何とも艶かしくて思わずマーシェはザイリスを見た。
「貴方が?」
ザイリスが要望したのかとマーシェは聞いたつもりだったが、その気持ちはしっかりと正しくザイリスに届いたようだった。彼はブンブンと頭を振る、それはもう異常な程に。
それ以上振ったら首が捥げると思った時、ミエルが、お二人でお使いになるにはまだ先でしょうけど、と爆弾発言。
その先を聞きたいような聞きたくないような、そんな微妙な顔でマーシェがミエルに振り向くけれど、ミエルはさっさと次の行動に出ていた。
「そして、マーシェ様の新しい部屋です」
彼女はその寝室のもう一つの扉を開けた。両サイドに個人の部屋で中央に寝室。こんな物父が指示しなければ誰がする!
思わずマーシェはその場にヘナヘナと崩れ落ちていた。
(お父様、貴方って、何を考えていらっしゃる?)
公爵夫人マーシェのお悩みは、きれいサッパリ無くなったのに、父によって辺境伯令嬢マーシェのお悩みへと移行して行くようだ。
だけどマーシェのお悩みは1年後には解決する。
ザイリスとマーシェのウェディングベルが辺境の地に響き渡るから。
end
✎ ------------------------
『公爵夫人マーシェのお悩み』
これにて完結いたします
長くお付き合いいただきまして誠にありがとうございました🙇♀
恋愛小説大賞に投票して頂いた皆様には、重ねて深く深く感謝申し上げます。
マーシェは公爵夫人ではなくなったので、お悩みは貴族令嬢のものになります。
いつか、ザイリスとマーシェのその後を書きたいと思っていますが、タイトルに“公爵夫人”とつけましたので、番外編ではなく、別物として投稿させて頂こうと思っています。
その際には、字数にもよりますが短編集に入るかもしれません
投稿いたしましたら、読んでいただけますと幸いです
marukoとmarukoの作品を愛でてくださる
海よりも広い心の読者様へ
( ˶˘ ³˘˶)ちゅ♡届きますように♡
先に降りたザイリスの手に自分の手を重ねて、馬車から降り立ったマーシェは開口一番そう言った。
ポリント辺境伯は、その足を活かして既に到着しているだろう。マーシェはザイリスとレイオニーとともに、馬車でゆっくり帰路についていた。
「おかえりなさいマーシェ様」
次期辺境伯である兄の妻が、幼い子どもたちとともにマーシェを歓迎してくれた。
兄と父達は、直ぐに次の問題発生のため出かけているという。
「お義姉様ただいま帰りました」
理不尽な王命のため、3年近く留守にしていた義妹を抱きしめた。
「さぁ皆様、中でゆっくりなさって」
兄の妻は右手で示して、三人を辺境伯邸へと誘った。
「ミエルは私付きになってくれるの?」
マーシェの元専属侍女であったミエルが先導して、部屋へと案内している廊下でマーシェが尋ねる。
かつてマーシェに専属侍女は、ミエル一人しかいなかった。
王命の婚姻で王都に旅立つ時、本当なら彼女も連れて行きたかったが、彼女は辺境伯騎士と婚約していた為、マーシェは一人で王都へ行っていた。
「お嬢様がご指名していただけましたら光栄にございます。それにしてもお嬢様は、2年で少し成長されましたね」
「そう?」
「えぇ、お嬢様が馬車を降りた時、そう思いました」
「ふふっ、私もそう思う」
アルマンと結婚前のマーシェなら、馬車を降りたときはきっと静かに無言で降りただろう。
そして先程の『帰ってきたわ』の台詞は、部屋に戻ってきてから発していたはずだ。
それほどにマーシェは外と内を分けていた。
外部に自分を曝け出すことに怯えていたのだ。
だから王都には従順な女性と間違った報告が、されていたと思われる。
マーシェは変わった、いい意味で。
自分を飾らず誤魔化すことなく、このポリント辺境伯領に戻ってきた。
かつての専属侍女、これからも専属侍女志願のミエルは、気分が高揚していた。
「こちらがレイオニー様とザイリス様のお部屋です」
先にザイリス達の部屋にミエルは案内した。
その部屋はマーシェの知る辺境伯家の部屋ではなかった。
改装によって二部屋をぶち抜いて、一部屋に改装されていた。
家具も半分以上がレイオニーに合わせてあった。男の子が好む青を基調にしていた。
水色のフカフカの絨毯に、ザイリスの机と思われるブロンズ色が、何ともちぐはぐでアンバランス。
二人の部屋というよりもレイオニーの部屋と言ってもいいのでは?マーシェはそう思うほどに、ザイリス用の家具が少なかった。
そして気づく。
「ザイリス様のベッドは?」
部屋に置いてあるベッドは、明らかにレイオニーの背丈に合わせてある子供用のベッドだった。
薄く目に優しい水色の掛布には、雲の形の刺繍、可愛らしい装飾で、子供の寝具としては完璧だが、ではザイリスは?
とうのザイリスもポカンとしていた。
自分の部屋でもあるここに案内されたのに、どうして自分のベッドがないのだろう?
すると事も無げにミエルが種を明かした。
「あぁザイリス様は、レイオニー様を寝かしつけたあとに、こちらでお休みください」
そう言って、続き部屋の入り口と思われる扉を開けた。
そもそも続き部屋がある事に驚く。
「「は?」」
その部屋はほぼベッドで占領されていた。
どう見てもキングサイズ、どこの王族か!と言いたくなるほど、ご立派なベッド。
黒檀の厳しさとは裏腹に、白い掛布には透かし模様が施されていた。それが何とも艶かしくて思わずマーシェはザイリスを見た。
「貴方が?」
ザイリスが要望したのかとマーシェは聞いたつもりだったが、その気持ちはしっかりと正しくザイリスに届いたようだった。彼はブンブンと頭を振る、それはもう異常な程に。
それ以上振ったら首が捥げると思った時、ミエルが、お二人でお使いになるにはまだ先でしょうけど、と爆弾発言。
その先を聞きたいような聞きたくないような、そんな微妙な顔でマーシェがミエルに振り向くけれど、ミエルはさっさと次の行動に出ていた。
「そして、マーシェ様の新しい部屋です」
彼女はその寝室のもう一つの扉を開けた。両サイドに個人の部屋で中央に寝室。こんな物父が指示しなければ誰がする!
思わずマーシェはその場にヘナヘナと崩れ落ちていた。
(お父様、貴方って、何を考えていらっしゃる?)
公爵夫人マーシェのお悩みは、きれいサッパリ無くなったのに、父によって辺境伯令嬢マーシェのお悩みへと移行して行くようだ。
だけどマーシェのお悩みは1年後には解決する。
ザイリスとマーシェのウェディングベルが辺境の地に響き渡るから。
end
✎ ------------------------
『公爵夫人マーシェのお悩み』
これにて完結いたします
長くお付き合いいただきまして誠にありがとうございました🙇♀
恋愛小説大賞に投票して頂いた皆様には、重ねて深く深く感謝申し上げます。
マーシェは公爵夫人ではなくなったので、お悩みは貴族令嬢のものになります。
いつか、ザイリスとマーシェのその後を書きたいと思っていますが、タイトルに“公爵夫人”とつけましたので、番外編ではなく、別物として投稿させて頂こうと思っています。
その際には、字数にもよりますが短編集に入るかもしれません
投稿いたしましたら、読んでいただけますと幸いです
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海よりも広い心の読者様へ
( ˶˘ ³˘˶)ちゅ♡届きますように♡
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