公爵夫人マーシェのお悩み

maruko

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58 最終話

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「帰ってきたわ!」

 先に降りたザイリスの手に自分の手を重ねて、馬車から降り立ったマーシェは開口一番そう言った。
 ポリント辺境伯は、を活かして既に到着しているだろう。マーシェはザイリスとレイオニーとともに、馬車でゆっくり帰路についていた。

「おかえりなさいマーシェ様」

 次期辺境伯である兄の妻が、幼い子どもたちとともにマーシェを歓迎してくれた。
 兄と父達は、直ぐに次の問題発生のため出かけているという。

「お義姉様ただいま帰りました」

 理不尽な王命のため、3年近く留守にしていた義妹を抱きしめた。

「さぁ皆様、中でゆっくりなさって」

 兄の妻は右手で示して、三人を辺境伯邸へといざなった。


「ミエルは私付きになってくれるの?」

 マーシェの元専属侍女であったミエルが先導して、部屋へと案内している廊下でマーシェが尋ねる。

 かつてマーシェに専属侍女は、ミエル一人しかいなかった。
 王命の婚姻で王都に旅立つ時、本当なら彼女も連れて行きたかったが、彼女は辺境伯騎士と婚約していた為、マーシェは一人で王都へ行っていた。

「お嬢様がご指名していただけましたら光栄にございます。それにしてもお嬢様は、2年で少し成長されましたね」

「そう?」

「えぇ、お嬢様が馬車を降りた時、そう思いました」

「ふふっ、私もそう思う」

 アルマンと結婚前のマーシェなら、馬車を降りたときはきっと静かに無言で降りただろう。
 そして先程の『帰ってきたわ』の台詞は、部屋に戻ってきてから発していたはずだ。
 それほどにマーシェは外と内を分けていた。

 外部に自分を曝け出すことに怯えていたのだ。

 だから王都には従順な女性と間違った報告が、されていたと思われる。

 マーシェは変わった、いい意味で。
 自分を飾らず誤魔化すことなく、このポリント辺境伯領に戻ってきた。
 かつての専属侍女、これからも専属侍女志願のミエルは、気分が高揚していた。

「こちらがレイオニー様とザイリス様のお部屋です」

 先にザイリス達の部屋にミエルは案内した。
 その部屋はマーシェの知る辺境伯家の部屋ではなかった。
 改装によって二部屋をぶち抜いて、一部屋に改装されていた。
 家具も半分以上がレイオニーに合わせてあった。男の子が好む青を基調にしていた。

 水色のフカフカの絨毯に、ザイリスの机と思われるブロンズ色が、何ともちぐはぐでアンバランス。
 二人の部屋というよりもレイオニーの部屋と言ってもいいのでは?マーシェはそう思うほどに、ザイリス用の家具が少なかった。
 そして気づく。

「ザイリス様のベッドは?」

 部屋に置いてあるベッドは、明らかにレイオニーの背丈に合わせてある子供用のベッドだった。
 薄く目に優しい水色の掛布には、雲の形の刺繍、可愛らしい装飾で、子供の寝具としては完璧だが、ではザイリスは?
 とうのザイリスもポカンとしていた。
 自分の部屋でもあるここに案内されたのに、どうして自分のベッドがないのだろう?

 すると事も無げにミエルが種を明かした。

「あぁザイリス様は、レイオニー様を寝かしつけたあとに、こちらでお休みください」

 そう言って、続き部屋の入り口と思われる扉を開けた。
 そもそも続き部屋がある事に驚く。

「「は?」」

 その部屋はほぼベッドで占領されていた。
 どう見てもキングサイズ、どこの王族か!と言いたくなるほど、ご立派なベッド。
 黒檀のいかめしさとは裏腹に、白い掛布には透かし模様が施されていた。それが何とも艶かしくて思わずマーシェはザイリスを見た。

「貴方が?」

 ザイリスが要望したのかとマーシェは聞いたつもりだったが、その気持ちはしっかりと正しくザイリスに届いたようだった。彼はブンブンとかぶりを振る、それはもう異常な程に。
 それ以上振ったら首が捥げると思った時、ミエルが、お二人でお使いになるにはまだ先でしょうけど、と爆弾発言。
 その先を聞きたいような聞きたくないような、そんな微妙な顔でマーシェがミエルに振り向くけれど、ミエルはさっさと次の行動に出ていた。

「そして、マーシェ様の新しい部屋です」

 彼女はその寝室のの扉を開けた。両サイドに個人の部屋で中央に寝室。こんな物父が指示しなければ誰がする!

 思わずマーシェはその場にヘナヘナと崩れ落ちていた。

 (お父様、貴方って、何を考えていらっしゃる?)

 公爵夫人マーシェのお悩みは、きれいサッパリ無くなったのに、父によって辺境伯令嬢マーシェのお悩みへと移行して行くようだ。

 だけどマーシェのお悩みは1年後には解決する。

 ザイリスとマーシェのウェディングベルが辺境の地に響き渡るから。



end


✎ ------------------------

『公爵夫人マーシェのお悩み』

これにて完結いたします
長くお付き合いいただきまして誠にありがとうございました🙇‍♀

恋愛小説大賞に投票して頂いた皆様には、重ねて深く深く感謝申し上げます。

マーシェは公爵夫人ではなくなったので、お悩みは貴族令嬢のものになります。
いつか、ザイリスとマーシェのその後を書きたいと思っていますが、タイトルに“公爵夫人”とつけましたので、番外編ではなく、別物として投稿させて頂こうと思っています。
その際には、字数にもよりますが短編集に入るかもしれません

投稿いたしましたら、読んでいただけますと幸いです

marukoとmarukoの作品を愛でてくださる
海よりも広い心の読者様へ

( ˶˘ ³˘˶)ちゅ♡届きますように♡



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