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ライラは今、幸せと絶望を一度に感じるという人生であまり経験する人は少ないんじゃないかと思える体験をしている。
王都で八百屋を営む両親の一人娘としてライラは生まれた。
父の才覚なのかそれとも母の愛嬌ある接客のおかげなのか、八百屋の売上は順調で平民にしては裕福な暮らしをしている。
一人娘のライラは近所の子とは違い常にメイドが側にいてライラの世話を焼いてくれた。
両親の営む八百屋は、いつの間にか商会なる物に変化して従業員も数名抱える程になる、それと並行してライラもスクスクと育ち両親は満足していた。
娘の成長と自分の商いを一緒くたにするような父ではあるが概ね大事にしてもらえたとライラは思っている。
母は女は愛嬌だと、ライラが幼い頃から言い続け、上目遣いの練習をさせるようなちょっとズレた人ではあったが、本人に悪気はないし教えてもらった上目遣いを、ライラは封印しているので実害がないから良しとしていた。
そんな両親の間で育ったライラは学はあった方が良いという父の方針で学園にも通わせてもらえた。貴族の子女等と同じ様に馬車も出してもらい、一端のお嬢様の様に何事も無く無事に通う事が出来た。
市井で流行っているような平民と王子様の恋物語などもライラには無縁だったし、高位貴族にはなる丈近付かない!という思いでいたから卒業式まで気を張って学業に邁進した。
そんなライラだが卒業後に本当は文官の試験を受けたかった。だが働く必要はないと父の猛反対で諦めた。自立の第一歩を阻まれて呆気なく撃沈したライラは今、毎日暇でしょうがなかったから、教会に隣接されていた孤児院で子供達に字を教えていた。
その日ライラはいつものように教会で子供達に教えたあと、そろそろ子供達にノートの差し入れをしようと父の営む商会へとやって来た。
メイドのジルと一緒にノートの注文序に自分の使う文房具を物色していた。
「よぉ!ライラ」
「アレッ?どうしたの」
声をかけてきたのは幼馴染のレオだった。
彼はライラの家の3件先の子でライラよりも1つ年上だ。父親が王宮の文官職に就いていて確か今は総務部の課長補佐だったと記憶している。王宮の文官は忙しくてなかなか家に帰れないらしく、幼い頃からそんな父を見てきたレオは騎士の道へと進んだ。
体を動かすのが得意な彼だったが今は王宮の騎士ではなく、とある侯爵家に仕えていた。
侯爵家の使用人の寮に入っていて、なかなか家に帰らないのは父親と変わらないと、レオの母親がライラの母と居間でお茶する序に愚痴っていたのを聞いたのはつい先日の事だった。
「ライラに頼みがあってさ、教会に行く途中で馬車を見かけたから」
「そうなの?」
「なぁちょっとカフェにでも行かないか?」
「カフェ!!」
ライラは平民だが箱入りなのでカフェもあまり行ったことはない。学園の帰りに友人と寄り道をする時でさえ、父の許可を要していたのだが、これがとても大変だった。
ライラは許可取りが面倒で自然とそういう事から足は遠のいていた。
「お父様に聞かなきゃ」
「俺が頼んでくる、ちょっと待ってて」
レオはライラが許可取りを面倒臭がってるのを知っているから、商会の奥へとさっさと進んで行った。勝手知ったるとばかりに進むレオだが、従業員も顔見知りのレオを咎めたりはしない。
そんなレオの背中を見つめながら密かにライラの胸は跳ねていた。ライラは子供の頃からレオが好きだった。
焦げ茶の髪もチョコレートみたいで好き
切れ長の一重の涼しい目も格好良くて好き
すっと通った鼻筋も薄い唇も大大大好き
女にしては高めの身長のライラが見上げる事ができる高身長も、鍛えた体がムキムキに見えない細マッチョな所も大大大好きだ!
それほど好きでもライラは告白は出来なかった。何故ならレオはとってもモテる。
学園の騎士科に通っていたレオだったが、その鍛錬する姿を一目見ようと、鍛錬場には毎日のように令嬢や平民女子の見学者が殺到していた。
それを遠巻きに眺める事しかライラには出来なかった、幼馴染という中途半端な付かず離れずの関係を馴れ馴れしくして壊したくなかった。
だから自分の想いも上目遣い毎封印したのだ。
そんなレオからの初めてのお誘い
ライラの心は激しく浮かれていた
今にも踊りだしそうな心持ちだ
そんな彼女の気持ちを知っているのは、こちらも幼い頃から共に育ったジルだけだった。
(お嬢様、良かったですね)
ジルは心からそう思った、ジルにとってもレオは幼馴染でそして彼女の初恋でもあった。
お嬢様の想いびとに懸想なんかしてはならない!かなり前にジルもレオへの想いを封印していた。
王都で八百屋を営む両親の一人娘としてライラは生まれた。
父の才覚なのかそれとも母の愛嬌ある接客のおかげなのか、八百屋の売上は順調で平民にしては裕福な暮らしをしている。
一人娘のライラは近所の子とは違い常にメイドが側にいてライラの世話を焼いてくれた。
両親の営む八百屋は、いつの間にか商会なる物に変化して従業員も数名抱える程になる、それと並行してライラもスクスクと育ち両親は満足していた。
娘の成長と自分の商いを一緒くたにするような父ではあるが概ね大事にしてもらえたとライラは思っている。
母は女は愛嬌だと、ライラが幼い頃から言い続け、上目遣いの練習をさせるようなちょっとズレた人ではあったが、本人に悪気はないし教えてもらった上目遣いを、ライラは封印しているので実害がないから良しとしていた。
そんな両親の間で育ったライラは学はあった方が良いという父の方針で学園にも通わせてもらえた。貴族の子女等と同じ様に馬車も出してもらい、一端のお嬢様の様に何事も無く無事に通う事が出来た。
市井で流行っているような平民と王子様の恋物語などもライラには無縁だったし、高位貴族にはなる丈近付かない!という思いでいたから卒業式まで気を張って学業に邁進した。
そんなライラだが卒業後に本当は文官の試験を受けたかった。だが働く必要はないと父の猛反対で諦めた。自立の第一歩を阻まれて呆気なく撃沈したライラは今、毎日暇でしょうがなかったから、教会に隣接されていた孤児院で子供達に字を教えていた。
その日ライラはいつものように教会で子供達に教えたあと、そろそろ子供達にノートの差し入れをしようと父の営む商会へとやって来た。
メイドのジルと一緒にノートの注文序に自分の使う文房具を物色していた。
「よぉ!ライラ」
「アレッ?どうしたの」
声をかけてきたのは幼馴染のレオだった。
彼はライラの家の3件先の子でライラよりも1つ年上だ。父親が王宮の文官職に就いていて確か今は総務部の課長補佐だったと記憶している。王宮の文官は忙しくてなかなか家に帰れないらしく、幼い頃からそんな父を見てきたレオは騎士の道へと進んだ。
体を動かすのが得意な彼だったが今は王宮の騎士ではなく、とある侯爵家に仕えていた。
侯爵家の使用人の寮に入っていて、なかなか家に帰らないのは父親と変わらないと、レオの母親がライラの母と居間でお茶する序に愚痴っていたのを聞いたのはつい先日の事だった。
「ライラに頼みがあってさ、教会に行く途中で馬車を見かけたから」
「そうなの?」
「なぁちょっとカフェにでも行かないか?」
「カフェ!!」
ライラは平民だが箱入りなのでカフェもあまり行ったことはない。学園の帰りに友人と寄り道をする時でさえ、父の許可を要していたのだが、これがとても大変だった。
ライラは許可取りが面倒で自然とそういう事から足は遠のいていた。
「お父様に聞かなきゃ」
「俺が頼んでくる、ちょっと待ってて」
レオはライラが許可取りを面倒臭がってるのを知っているから、商会の奥へとさっさと進んで行った。勝手知ったるとばかりに進むレオだが、従業員も顔見知りのレオを咎めたりはしない。
そんなレオの背中を見つめながら密かにライラの胸は跳ねていた。ライラは子供の頃からレオが好きだった。
焦げ茶の髪もチョコレートみたいで好き
切れ長の一重の涼しい目も格好良くて好き
すっと通った鼻筋も薄い唇も大大大好き
女にしては高めの身長のライラが見上げる事ができる高身長も、鍛えた体がムキムキに見えない細マッチョな所も大大大好きだ!
それほど好きでもライラは告白は出来なかった。何故ならレオはとってもモテる。
学園の騎士科に通っていたレオだったが、その鍛錬する姿を一目見ようと、鍛錬場には毎日のように令嬢や平民女子の見学者が殺到していた。
それを遠巻きに眺める事しかライラには出来なかった、幼馴染という中途半端な付かず離れずの関係を馴れ馴れしくして壊したくなかった。
だから自分の想いも上目遣い毎封印したのだ。
そんなレオからの初めてのお誘い
ライラの心は激しく浮かれていた
今にも踊りだしそうな心持ちだ
そんな彼女の気持ちを知っているのは、こちらも幼い頃から共に育ったジルだけだった。
(お嬢様、良かったですね)
ジルは心からそう思った、ジルにとってもレオは幼馴染でそして彼女の初恋でもあった。
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