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ルクルト伯爵家との縁談は父の勘違いというより、伯爵側の説明不足だという事が分かったライラだったが、エリーゼの護衛騎士と婚約が結び付かなかった。
伯爵や女子爵の話では縁談相手のガルシスは女嫌いらしいのに、態々婚約する意味が分からなかった。
それにレオの話だと護衛騎士に選ばれやすいのは婚約者を持つ騎士の筈だ。選ばれたくないなら婚約するのは悪手ではないのだろうか?
そんな疑問が湧いてきてライラは質問せずにはいられなかった。
「ルクルト伯爵、失礼を承知でお訊ねします。護衛騎士を断る為に婚約するというのが私にはよく分からないのですが?私の知る情報ですと婚約者が居ない方が宜しいのではないでしょうか?」
ライラの質問にルクルト伯爵は目を丸くした。
「あぁ護衛の件を話してしまったからそう感じたんだね。益々勘違いさせて済まない」
「勘違いですか?」
「そうだね、そんな意図ではなかったんだけど、護衛騎士の件はキッカケなんだ。それに選ばれないではなくて、既にガルシスは護衛の総責任者として赴く事は決定しているから、行きたくなくて婚約打診をしたわけじゃないよ」
「そうなんですか?」
ライラは首を捻りながら父を見ると父は優しい目で頷きながらルクルト伯爵の話を引き継いでくれた。
「ルクルト伯爵、申し訳ありません、私の方から娘に説明しても宜しいですか?」
「あぁそうだね、そのほうがいいかもしれない。私は話を聞きながら補足するとしよう」
「ありがとうございます。ライラ父さんの勘違いで不安にさせてしまって悪かった。昨日伯爵から丁寧に説明を受けたから、それを聞いてから考えればいいと思うよ。伯爵達は無理強いしたいわけではないそうだ」
「はい、お父様」
「うん、実はねスコット侯爵家のご令嬢が隣国の公爵家にお輿入れされるのは、国同士の政略の為というのが理由だったそうだよ。我々平民はその辺が疎いし、私の商会は大きくないからね。そんな情報は届かなかった」
「エリーゼ様が見初められたというのは」
「あぁどうやら違うらしいね」
マークが苦笑しながらライラに言った。
今から2年前、まだライラ達が学園生の時、スコット侯爵令嬢が隣国の公爵家と婚約を結んだと新聞の一面を飾った。
その新聞記事で隣国の公爵令息が、国賓でこの国を訪ったときにエリーゼを見初めたと報じていた。
ライラ達はそれを信じていたけれどどうやら誤報だったようだ。
「あぁ誤報じゃないよ、そう書けとスコット侯爵家から圧力をかけられたんだと思うよ。因みにさ、その政略も王家のというよりシスの都合ね」
「「えっ?」」
補足のつもりなのかルクルト伯爵が間に割って入って、爆弾を落としたから知らない平民親子は揃って驚いた。
王家の政略に副騎士団長が関与するってどういう事なの?
ライラは何だかどんどん話が大きくなってくるから、こんな事平民のライラやジル、母が聞いてもいいのかと部屋から逃げ出したくなってきた。
「実はね、ココだけの話」
でた!ココだけの話!
思わずライラは貴族の前で不敬な発言をしそうになって慌てて口を両手で押さえた。
ふと見ると母メアリーも同じように口元を手で隠していたから、母娘だなぁとライラは感じた。絶対同じ事思ったはずとライラはこんな時なのに母との絆を感じて嬉しくなった。
「シスが結婚したアイリーンが不貞で妊娠したからなんだ」
元子爵令嬢で騎士の妻が妊娠して、どうして国同士の政略結婚の話に繫がるのだろう?
ライラは益々意味がわからずに困惑してしまう。
「シスはお飾りの妻を欲していた、結局アイリーンを選んで放っておいた。彼女はシスに相手にされずに寂しかったのだとは思うけどね、割と早くに浮気はしていたんだよ。だけどシスは別にそれでも良かった。妻という名が戸籍に入っていれば令嬢達の抑止力になるからさ」
「⋯⋯⋯⋯酷い」
「そう酷い男だよね。でもそれは条件だったとシスは言っていたけど、それでもね酷いと思うよ」
ライラは思わずアイリーンの気持ちになってしまって、本音がポロリと溢れた。
ライラは平民だからかもしれないが、貴族の義務の婚姻がよく分かっていない。
両親も仲睦まじく過ごしているから、結婚というのはお互い好きな者同士がするのだと思っていた。
学園で少し親しくなった男爵令嬢に貴族の政略結婚の重要性を説かれた時は、お貴族様って大変なんだ、と同情の目を彼女に向けたものだ。
だから、貴族の政略結婚の事を少しは知っている、だけどそれでもアイリーンは結婚に夢見て嫁いだはずで、しかも相手は好きな男性なのにお飾りの妻だなんて、きっと絶望したのだろうとアイリーンの気持ちを考えて胸がキリッと痛くなった。
甥の婚約を申し込んでいる相手に、この話は良くなかったとルクルト伯爵はライラの表情を見て後悔した、だがそもそもの出発点はそれだから話さないわけにはいかなかった。
何とか他で挽回させよう!と気持ちを切り替えて続きを話し始めた。
「シスはアイリーンが浮気していても、妻という場所に居てくれればそれで良かったから、彼女の浮気は気にしなかった。だが彼女は妊娠してしまった。その子が生まれてしまうとシスの子になってしまう、それはね王家にもちょっと問題だった」
「どうしてですか?托卵は良くないと思いますけど、それは仕方がないのではないでしょうか?黙認していたのですから。それに王家はそこまで干渉するフグフガフ?」
ライラはすっかりアイリーンに同情しているから、つい王家批判までしてしまっていた。そんなライラの口を思わずマークは手で塞いだ
伯爵や女子爵の話では縁談相手のガルシスは女嫌いらしいのに、態々婚約する意味が分からなかった。
それにレオの話だと護衛騎士に選ばれやすいのは婚約者を持つ騎士の筈だ。選ばれたくないなら婚約するのは悪手ではないのだろうか?
そんな疑問が湧いてきてライラは質問せずにはいられなかった。
「ルクルト伯爵、失礼を承知でお訊ねします。護衛騎士を断る為に婚約するというのが私にはよく分からないのですが?私の知る情報ですと婚約者が居ない方が宜しいのではないでしょうか?」
ライラの質問にルクルト伯爵は目を丸くした。
「あぁ護衛の件を話してしまったからそう感じたんだね。益々勘違いさせて済まない」
「勘違いですか?」
「そうだね、そんな意図ではなかったんだけど、護衛騎士の件はキッカケなんだ。それに選ばれないではなくて、既にガルシスは護衛の総責任者として赴く事は決定しているから、行きたくなくて婚約打診をしたわけじゃないよ」
「そうなんですか?」
ライラは首を捻りながら父を見ると父は優しい目で頷きながらルクルト伯爵の話を引き継いでくれた。
「ルクルト伯爵、申し訳ありません、私の方から娘に説明しても宜しいですか?」
「あぁそうだね、そのほうがいいかもしれない。私は話を聞きながら補足するとしよう」
「ありがとうございます。ライラ父さんの勘違いで不安にさせてしまって悪かった。昨日伯爵から丁寧に説明を受けたから、それを聞いてから考えればいいと思うよ。伯爵達は無理強いしたいわけではないそうだ」
「はい、お父様」
「うん、実はねスコット侯爵家のご令嬢が隣国の公爵家にお輿入れされるのは、国同士の政略の為というのが理由だったそうだよ。我々平民はその辺が疎いし、私の商会は大きくないからね。そんな情報は届かなかった」
「エリーゼ様が見初められたというのは」
「あぁどうやら違うらしいね」
マークが苦笑しながらライラに言った。
今から2年前、まだライラ達が学園生の時、スコット侯爵令嬢が隣国の公爵家と婚約を結んだと新聞の一面を飾った。
その新聞記事で隣国の公爵令息が、国賓でこの国を訪ったときにエリーゼを見初めたと報じていた。
ライラ達はそれを信じていたけれどどうやら誤報だったようだ。
「あぁ誤報じゃないよ、そう書けとスコット侯爵家から圧力をかけられたんだと思うよ。因みにさ、その政略も王家のというよりシスの都合ね」
「「えっ?」」
補足のつもりなのかルクルト伯爵が間に割って入って、爆弾を落としたから知らない平民親子は揃って驚いた。
王家の政略に副騎士団長が関与するってどういう事なの?
ライラは何だかどんどん話が大きくなってくるから、こんな事平民のライラやジル、母が聞いてもいいのかと部屋から逃げ出したくなってきた。
「実はね、ココだけの話」
でた!ココだけの話!
思わずライラは貴族の前で不敬な発言をしそうになって慌てて口を両手で押さえた。
ふと見ると母メアリーも同じように口元を手で隠していたから、母娘だなぁとライラは感じた。絶対同じ事思ったはずとライラはこんな時なのに母との絆を感じて嬉しくなった。
「シスが結婚したアイリーンが不貞で妊娠したからなんだ」
元子爵令嬢で騎士の妻が妊娠して、どうして国同士の政略結婚の話に繫がるのだろう?
ライラは益々意味がわからずに困惑してしまう。
「シスはお飾りの妻を欲していた、結局アイリーンを選んで放っておいた。彼女はシスに相手にされずに寂しかったのだとは思うけどね、割と早くに浮気はしていたんだよ。だけどシスは別にそれでも良かった。妻という名が戸籍に入っていれば令嬢達の抑止力になるからさ」
「⋯⋯⋯⋯酷い」
「そう酷い男だよね。でもそれは条件だったとシスは言っていたけど、それでもね酷いと思うよ」
ライラは思わずアイリーンの気持ちになってしまって、本音がポロリと溢れた。
ライラは平民だからかもしれないが、貴族の義務の婚姻がよく分かっていない。
両親も仲睦まじく過ごしているから、結婚というのはお互い好きな者同士がするのだと思っていた。
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だから、貴族の政略結婚の事を少しは知っている、だけどそれでもアイリーンは結婚に夢見て嫁いだはずで、しかも相手は好きな男性なのにお飾りの妻だなんて、きっと絶望したのだろうとアイリーンの気持ちを考えて胸がキリッと痛くなった。
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