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7 私から贈る言葉
私は1つ年上の元婚約者の姉が大好きだ。
私は隣国との国境に領地を構える辺境伯の次女として生まれた。
我がモルト領はこの国では南側に位置している。
領地も広く海にも近い、王国の避暑地や観光にも利用されている、偶に隣国からも旅行で訪れる人々もいて本当に恵まれた領地だ。
この国の貴族は15歳になると学園に通うのだが、どの学園に通うのかは当主に拠って考え方が異なる。
通える学園は王都に2ヶ所、このモルト領の真逆の北の位置にある学園の3ヶ所だけが王家に認められた学園だった。
このモルト領から選ぶなら王都の2択になる。
私の兄姉も王都の学園に通っていた。主に、兄は領地運営の為に姉は嫁ぎ先を決める為。姉の時王都のタウンハウスで生活している貴族達は子供の頃から婚約を結ぶのが主で、婚約者の決まっていない姉は相手を探すのにとても苦労したのだとか、結局姉が嫁いだのは学園に留学生で来ていた隣国の公爵家だった。
喩え公爵家だったとしても隣国は遠い、何かあっても直ぐには駆けつけられないし、今の平和な世の中ではないと思いたいが、隣国と戦争が始まったりする可能性もゼロではない。
そんな不安要素を払拭したい父は、姉の事を教訓に早々と王都に出向き私の婚約を決めてきた。
私が、10歳の時だった。
婚約者とは早めに交流を持つことが望ましいと父は婚約が決まってすぐ10歳の私を一人王都に送り出す事を決定した。
顔合わせはまだ1ヶ月も先の予定だったけど、早めに王都に慣れるために私一人で先に出立することになる。
「メイラ来月には顔合わせだ、私達も行くからな」
辺境伯という爵位の立場上、国境を守らないといけない父、それを支えなければならない母は長く領地を離れられない。そんな事情もあって早く一人に慣れさせる為という考えもあったのかもしれない。
一人で王都に出てきた私は寂しくて寂しくて毎日泣いていた。一緒に付いてきてくれた侍女のミアも、婚約者が辺境騎士団にいるので結婚したら帰ってしまう。その心細さもあって王都に着いて1週間、私は屋敷に引き篭もった。
すると1週間目にグランバス伯爵家から婚約者とその姉が訪いたいと先触れが来た。
ミアに泣きはらした目の周りと衣服を整えてもらい初めて会うことになった。
寂しさに引き篭もっていると聞いた二人は私を心配して両家の顔合わせを前倒しにしてくれたのだ。
「君がメイラ嬢?僕はサッシュ、君より一つ年上だよ。これからよろしくね」
サッシュは王都に多い金髪で目は琥珀色の男の子、とても優しそうな可愛らしい男の子だった。
「私はハッシュ!メイラって呼ぶわね!私達もう姉妹よ。仲良くしようね」
手を差し出して握手をするとそのまま抱きしめてくれた。ハッシュとサッシュは髪と瞳の色は同じだが顔つきが違っていた。ハッシュはどちらかというとキレイ系だった。
「寂しくないよメイラ、今日から私とサッシュが貴方を守るから。それでも寂しかったらうちに泊まりにおいで」
ハッシュは抱きしめたままそう言ってくれた。抱き合う私とハッシュ二人を纏めて抱きしめようと腕の長さが足らないと「うーんうーん」と手を伸ばすサッシュ。
私はその日から二人が大好きだった。
その婚約に影が差したのは学園に入学してからだった。私は王都に来てからずっと勉強していたから二人と一緒に居たくて飛び級制度を利用した。
本当なら新入生の私だったが二人と同じ学年の2年に編入できた、でも編入者は私の他にもいたのだ。それがアルディオーレだった。
編入生は1年のブランクがある為、3ヶ月はお世話係が必要になる、本当は私のお世話係をハッシュがするはずでお願いしていたのに、何故か分からないけれどアルディオーレが突然ハッシュを指名してきた。
その指名の仕方も「ルイス・マーモン様の婚約者でお願いします」という失礼千万な申し込み。
だが私のお世話係を巡ってサッシュとハッシュで勝負をした二人、結局サッシュが負けていたのだが、そのアルディオーレの言葉を聞いて、サッシュが「じゃあメイラは僕が」と言って決まった。
あとでハッシュにこてんぱんにやられたと苦笑していたサッシュの笑顔が今では懐かしい。
何故なら3ヶ月のお世話係が終わった途端サッシュはアルディオーレに傾倒していったから。
何を置いてもアルディオーレ
二人のお茶会でもアルディオーレ
今まで一度も蔑ろになどされた事のなかった私は愕然としてしまった。その時ずっと慰めてくれたのはハッシュだった。
私は、こんな辛い思いをハッシュはずっとしていたのかと思うと、改めてルイス・マーモンに腹が立ったし、それと同じことをしているサッシュにも愛想が尽きた。
そんな時、ハッシュから告白された。
卒業したら家を出て貴族を捨てるのだと。
私はサッシュとの婚約解消の件と合わせて父にハッシュの事も相談した。
最初は婚約解消を渋っていた父も独自で調べたのだろう、分かってくれてハッシュの件も引き受けてくれた。
ハッシュの父親のグランバス伯爵も分かってくれたらいいのにと祈っていたのだけど、駄目だった。
あの日ハッシュがハアハア言いながら家へやってきた。
「メイラもう説得は諦めた、ルイスも家も捨てるわ」
晴れ晴れとした顔でハッシュは言い切ったけど、頬には涙の跡が残っていた。
きっとここに来るまでに走りながら歩きながら泣いたのだろう。
「大丈夫、これからは私が貴方を守るわ」
初めて会ったあの時と同じ言葉を私はハッシュを抱きしめながら贈った。
私は隣国との国境に領地を構える辺境伯の次女として生まれた。
我がモルト領はこの国では南側に位置している。
領地も広く海にも近い、王国の避暑地や観光にも利用されている、偶に隣国からも旅行で訪れる人々もいて本当に恵まれた領地だ。
この国の貴族は15歳になると学園に通うのだが、どの学園に通うのかは当主に拠って考え方が異なる。
通える学園は王都に2ヶ所、このモルト領の真逆の北の位置にある学園の3ヶ所だけが王家に認められた学園だった。
このモルト領から選ぶなら王都の2択になる。
私の兄姉も王都の学園に通っていた。主に、兄は領地運営の為に姉は嫁ぎ先を決める為。姉の時王都のタウンハウスで生活している貴族達は子供の頃から婚約を結ぶのが主で、婚約者の決まっていない姉は相手を探すのにとても苦労したのだとか、結局姉が嫁いだのは学園に留学生で来ていた隣国の公爵家だった。
喩え公爵家だったとしても隣国は遠い、何かあっても直ぐには駆けつけられないし、今の平和な世の中ではないと思いたいが、隣国と戦争が始まったりする可能性もゼロではない。
そんな不安要素を払拭したい父は、姉の事を教訓に早々と王都に出向き私の婚約を決めてきた。
私が、10歳の時だった。
婚約者とは早めに交流を持つことが望ましいと父は婚約が決まってすぐ10歳の私を一人王都に送り出す事を決定した。
顔合わせはまだ1ヶ月も先の予定だったけど、早めに王都に慣れるために私一人で先に出立することになる。
「メイラ来月には顔合わせだ、私達も行くからな」
辺境伯という爵位の立場上、国境を守らないといけない父、それを支えなければならない母は長く領地を離れられない。そんな事情もあって早く一人に慣れさせる為という考えもあったのかもしれない。
一人で王都に出てきた私は寂しくて寂しくて毎日泣いていた。一緒に付いてきてくれた侍女のミアも、婚約者が辺境騎士団にいるので結婚したら帰ってしまう。その心細さもあって王都に着いて1週間、私は屋敷に引き篭もった。
すると1週間目にグランバス伯爵家から婚約者とその姉が訪いたいと先触れが来た。
ミアに泣きはらした目の周りと衣服を整えてもらい初めて会うことになった。
寂しさに引き篭もっていると聞いた二人は私を心配して両家の顔合わせを前倒しにしてくれたのだ。
「君がメイラ嬢?僕はサッシュ、君より一つ年上だよ。これからよろしくね」
サッシュは王都に多い金髪で目は琥珀色の男の子、とても優しそうな可愛らしい男の子だった。
「私はハッシュ!メイラって呼ぶわね!私達もう姉妹よ。仲良くしようね」
手を差し出して握手をするとそのまま抱きしめてくれた。ハッシュとサッシュは髪と瞳の色は同じだが顔つきが違っていた。ハッシュはどちらかというとキレイ系だった。
「寂しくないよメイラ、今日から私とサッシュが貴方を守るから。それでも寂しかったらうちに泊まりにおいで」
ハッシュは抱きしめたままそう言ってくれた。抱き合う私とハッシュ二人を纏めて抱きしめようと腕の長さが足らないと「うーんうーん」と手を伸ばすサッシュ。
私はその日から二人が大好きだった。
その婚約に影が差したのは学園に入学してからだった。私は王都に来てからずっと勉強していたから二人と一緒に居たくて飛び級制度を利用した。
本当なら新入生の私だったが二人と同じ学年の2年に編入できた、でも編入者は私の他にもいたのだ。それがアルディオーレだった。
編入生は1年のブランクがある為、3ヶ月はお世話係が必要になる、本当は私のお世話係をハッシュがするはずでお願いしていたのに、何故か分からないけれどアルディオーレが突然ハッシュを指名してきた。
その指名の仕方も「ルイス・マーモン様の婚約者でお願いします」という失礼千万な申し込み。
だが私のお世話係を巡ってサッシュとハッシュで勝負をした二人、結局サッシュが負けていたのだが、そのアルディオーレの言葉を聞いて、サッシュが「じゃあメイラは僕が」と言って決まった。
あとでハッシュにこてんぱんにやられたと苦笑していたサッシュの笑顔が今では懐かしい。
何故なら3ヶ月のお世話係が終わった途端サッシュはアルディオーレに傾倒していったから。
何を置いてもアルディオーレ
二人のお茶会でもアルディオーレ
今まで一度も蔑ろになどされた事のなかった私は愕然としてしまった。その時ずっと慰めてくれたのはハッシュだった。
私は、こんな辛い思いをハッシュはずっとしていたのかと思うと、改めてルイス・マーモンに腹が立ったし、それと同じことをしているサッシュにも愛想が尽きた。
そんな時、ハッシュから告白された。
卒業したら家を出て貴族を捨てるのだと。
私はサッシュとの婚約解消の件と合わせて父にハッシュの事も相談した。
最初は婚約解消を渋っていた父も独自で調べたのだろう、分かってくれてハッシュの件も引き受けてくれた。
ハッシュの父親のグランバス伯爵も分かってくれたらいいのにと祈っていたのだけど、駄目だった。
あの日ハッシュがハアハア言いながら家へやってきた。
「メイラもう説得は諦めた、ルイスも家も捨てるわ」
晴れ晴れとした顔でハッシュは言い切ったけど、頬には涙の跡が残っていた。
きっとここに来るまでに走りながら歩きながら泣いたのだろう。
「大丈夫、これからは私が貴方を守るわ」
初めて会ったあの時と同じ言葉を私はハッシュを抱きしめながら贈った。
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