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第一章 公爵夫人になりました
魔力の解放は正しい手順をオススメします
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「私の噂とは姉いじめという事ですか?」
「おやおや随分昔のものを引っ張り出してきたね。
それとは違うな今は狡猾な女とか愚鈍な女だね」
「えっ?」
知らない噂に戸惑いましたがいったい誰が流しているのでしょう。
「これを初めに流したのはキャンベラという女だ。君はよく知ってるだろう?」
ほほう彼女ですか、社交界で流しているのでしょうね。
やはり彼女の資質ですね。
「よっぽどサンディルを取られたのが悔しいのかな。でも彼女は全く気づかないんだよ、入れ替わってる事に。それくらいの想いなのさ。
それと彼女の周りの者やあとはそれに便乗した息子のファンかな」
えっと、お義父様は息子自慢をしたいのかしら?
「したいよ!自慢の息子だからね。でも息子は良くも悪くも私に似たようだ」
忘れてました、心を読むのでしたね。
思考停止しましょうか⋯⋯⋯⋯⋯。
無理そうです。
「社交界ではかなり広まってるんだ。それを信じてる人もいる、うちの侍女長とかドーランとかね」
「ドーランは半信半疑ってとこでしょう」
王妃様が参戦されました。
「心配しなくてもいいわよ、そのうち下火になるから。
私に任せて置けば大丈夫」
「エンヌは王妃だものね。心強いでしょう」
お義母様が優しいです。沁みます、王妃様は崇めた方が宜しいでしょうか?
「とりあえず私達は君の味方だと伝えたかったんだよ。それが君を呼んだ一番の目的」
「そうなのよ。でもテモシーとマークはサンディルに怒られるのを恐れてるし、侍女長とドーランは噂を信じて邪魔するしでお手上げだったの。
でもテモシーは流石に報告はちゃんとしてくれていたから、貴方が噂のような人ではないし、やっぱりチェリーナの娘だとね。
だから貴方からこちらに来るように策を弄したのよ、ねっ」
3人でニコニコしながら頷きあってます。
上手く行ったわね~というところでしょうか。
完全に手のひらの上で踊らされていたのですね、まぁそれに乗りましたけれども。
「では話を戻すよ。何故義姉上がいるのか気になるだろう?実はね君に一役、いや二役くらいかな、協力して欲しいんだ」
「協力ですか?」
「そうだよ。兄上は普段偉そうに玉座にふんぞり返ってるけど割と臆病者でね。
わかったと思うけど夢見で大騒ぎするしさ、でも臆病だから慎重でもあるんだ。
国政はそのお陰でより良く纏まっているんだ。
でも他国には、そう見えると今は良くない。
王族がしっかりしているとアチコチに歪を植え付けようとするんだよ。
現にうちには間諜がてんこ盛りだった、私が養子に入る前からね。
王家にも勿論いたが王家に潜入する者は簡単に排除出来るけど、メイナードではそうもいかないんだよ」
「何故でしょうか?」
「こちらも間諜の家系だからさ。
相手の出方を探る必要があるんだ、これは王家の仕事ではなくメイナードの仕事なんだ。
だから国単位の間諜は泳がせる、国内の者は捕まえる。そう選別していたんだけれど、ここに来て国単位の者が減って来たんだ」
えっと、でもまだ沢山間諜がいると聞いたけど。
「その者たちは国内の者ばかりだよ。
おかしいだろう?公爵家を探るのにこんなに沢山の家から潜入させたり取り込んだり、下手したら家を潰されかねないのにね」
「それはおかしいですね」
「そう、って事は探っているのは家ではなく、君だね」
「そうなりますね」
「察しが良くて助かるよ、やはり息子の目に間違いはない」
またまた息子自慢です。
これはもう親バカですね、お義父様。
「今他国がこちらに仕掛けやすいようにエンヌに隙を作ってもらってる。王家はそれでいいんだけど、きっと他国が問題にするのは王家の保険ともいえるうちの存在なんだ。
そんな所に嫁いできた君は何者かってね。
息子の代わりのあいつはあれでいい、そのまま隙になるから、でも君はどうなんだって誰でも考える」
「私何人かの前で魔法を使ってしまいましたが良かったですか?」
「あぁ別にいいんだ。君が魔法を使うのも何もかも君の思った通りにしてくれて大丈夫だ。
ただこの話を知ってるのと知らないのでは、君の気持ちが違うだろう?
それと真の間諜を知る必要もあると思ったからね」
「真の間諜ですか?」
「そうだよ。テモシーから少しは聞いているんじゃないかい?」
「アッパールですか」
「正解」
お義父様とお義母様、そして王妃様はニッコリ微笑んでいます。
そしてやはりというか何というか、結局聞きたくもない話を聞かされるのでした。
──────────────
魔力を解放する発動原理が命の危険である。
この事は昔から知り得た事でした。
この国における平和が魔力保持者を少なくしていったと言っても過言ではないのです。
解放しないままの魔力持ちは年々増えていきやがて枯渇していきます。
でもこの大陸には魔法が蔓延っているのも確かなことです。
だからこそこの国では魔法が使えるのは王家に最も重宝される者であり一族なのです。
そういえば祖母が魔術師団の試験を私が受けようかと言ってたとき名誉なことだと言っていたわ。
本来なら命の危機というものは普通に過ごせばなかなかないのです。
でも簡単に出来る方法があるとお義父様が教えて下さいました。
それが鼻を摘む事。
奇しくもキャンベラが私と弟にした事でした。
だからこの魔力解放の原理を知っている家長は子供が5歳くらいの時にそれを行うそうです。
何故5歳かというと親が子供の異変に気付けるからです。
あまりにも小さいと子供が苦しんでる極限がわからずにそのまま呼吸困難に陥れてしまって救えなくなる命が出るからというのです。
アッパール伯爵家、4代前まではこの国の影を担っていた家です。
この4代前のもう一つ前の伯爵が少し偏執な考えを持っておられた事が、後の伯爵家の没落に繋がっていきます。
5代前の当主は魔力量がそんなに多くはなかったそうです。
彼はその事にかなりのコンプレックスを感じておりました。
なぜならアッパール家では一番魔力の少ない者が伯爵家を継承する様になっていたからだそうです。
継承した=魔力が弱い=役立たず
と思い込んだのか思わされたのか。
アッパールは分家の方が力があると思われていました、アッパールの中だけなんですけどね。
だから兄弟の子達よりも自分の子の方が魔力量が多くないとバカにされると思い込んだ当主は子供達の鼻を摘むだけでいいのに、崖から突き落としたそうです。
全員を。
そうする事によって魔力が増えるはずだと妄想したのです。
運良く生き残ったのが後の4代目当主とその弟の二人だったそうです。
その時に4代目となった当主は自分の子供にそんな事はできない、そしてこの影の連鎖も止めるべきだと態と魔力の解放をさせなかったのです。
なぜなら4代目は鼻を摘むだけという解放の仕方を知らなかったからです。
なので3代前のアッパール伯爵は他の貴族と同様に嫡男が継承し、魔力の解放の事は全く知らされませんでした。
魔法を使えないので王家の影にはなれません。
それからはただの伯爵家として成り立っておりました。
その事に気づいたのが先代のアッパール伯爵でした。
元々アッパール家は影でしたので領地は多くはなくそこまで突出した産物があるわけでもなかったので、3代前からは裕福ではありませんでした。
4代前の伯爵が画策した事は弟も解っていたので本家に解放の仕方を教えるべからずと遺言にしていたのですが、どこの親戚にも余計な事をいう輩はいるわけで先代のアッパール伯爵の知る事となったのです。
しかも彼は5代前の伯爵に性格が似ていたのでしょうか、かなり卑屈な心を持った方だったようです。
お義父様の側近候補として側仕えしていた時も他者を貶める事に躍起になって、仕事はダメダメだったそうでメイナードに入る時に早々に関係を解消したのですが、それも卑屈な心に油を注いだみたいです。
関係を解消されたあとに4代前の当主の秘密を知り、彼によって自分は本当は王家に重宝される人間の筈だったのにとお義父様に手紙を送ってこられていました。
何度も何度も。
でも彼自身には魔力は無かったそうなので(魔術師団長調べ)重宝されるべきというのは完全に彼の妄想です。
手紙の返事がない事に業を煮やした彼が次の手段に出たのが息子でした。
息子に魔力解放を施す事にしたようですが、不幸な事に彼の息子には魔力はなかったのです。
その事をお義父様が知ったのは息子の方からもらった手紙でした。
その手紙には事の経緯と父に何度も殺されかかっていると書いてあったそうです。
お義父様は魔力の鑑定ができるサンディル様を伴い息子に会って魔力なしの鑑定をして伯爵にも会ったのですが彼は納得していなかったようです。
息子を保護するために王家で働けるように根回しをしている間にとうとう伯爵は息子を死なせてしまいました。
死なせた理由は影絡みですので王家は秘匿して伯爵は毒を飲ませて処刑しました。
そしてアッパールの歴史は幕を閉じたそうです。
没落ではなく断絶だったのですね。
悲劇を繰り返す事を止めるために施した処置でした。
「おやおや随分昔のものを引っ張り出してきたね。
それとは違うな今は狡猾な女とか愚鈍な女だね」
「えっ?」
知らない噂に戸惑いましたがいったい誰が流しているのでしょう。
「これを初めに流したのはキャンベラという女だ。君はよく知ってるだろう?」
ほほう彼女ですか、社交界で流しているのでしょうね。
やはり彼女の資質ですね。
「よっぽどサンディルを取られたのが悔しいのかな。でも彼女は全く気づかないんだよ、入れ替わってる事に。それくらいの想いなのさ。
それと彼女の周りの者やあとはそれに便乗した息子のファンかな」
えっと、お義父様は息子自慢をしたいのかしら?
「したいよ!自慢の息子だからね。でも息子は良くも悪くも私に似たようだ」
忘れてました、心を読むのでしたね。
思考停止しましょうか⋯⋯⋯⋯⋯。
無理そうです。
「社交界ではかなり広まってるんだ。それを信じてる人もいる、うちの侍女長とかドーランとかね」
「ドーランは半信半疑ってとこでしょう」
王妃様が参戦されました。
「心配しなくてもいいわよ、そのうち下火になるから。
私に任せて置けば大丈夫」
「エンヌは王妃だものね。心強いでしょう」
お義母様が優しいです。沁みます、王妃様は崇めた方が宜しいでしょうか?
「とりあえず私達は君の味方だと伝えたかったんだよ。それが君を呼んだ一番の目的」
「そうなのよ。でもテモシーとマークはサンディルに怒られるのを恐れてるし、侍女長とドーランは噂を信じて邪魔するしでお手上げだったの。
でもテモシーは流石に報告はちゃんとしてくれていたから、貴方が噂のような人ではないし、やっぱりチェリーナの娘だとね。
だから貴方からこちらに来るように策を弄したのよ、ねっ」
3人でニコニコしながら頷きあってます。
上手く行ったわね~というところでしょうか。
完全に手のひらの上で踊らされていたのですね、まぁそれに乗りましたけれども。
「では話を戻すよ。何故義姉上がいるのか気になるだろう?実はね君に一役、いや二役くらいかな、協力して欲しいんだ」
「協力ですか?」
「そうだよ。兄上は普段偉そうに玉座にふんぞり返ってるけど割と臆病者でね。
わかったと思うけど夢見で大騒ぎするしさ、でも臆病だから慎重でもあるんだ。
国政はそのお陰でより良く纏まっているんだ。
でも他国には、そう見えると今は良くない。
王族がしっかりしているとアチコチに歪を植え付けようとするんだよ。
現にうちには間諜がてんこ盛りだった、私が養子に入る前からね。
王家にも勿論いたが王家に潜入する者は簡単に排除出来るけど、メイナードではそうもいかないんだよ」
「何故でしょうか?」
「こちらも間諜の家系だからさ。
相手の出方を探る必要があるんだ、これは王家の仕事ではなくメイナードの仕事なんだ。
だから国単位の間諜は泳がせる、国内の者は捕まえる。そう選別していたんだけれど、ここに来て国単位の者が減って来たんだ」
えっと、でもまだ沢山間諜がいると聞いたけど。
「その者たちは国内の者ばかりだよ。
おかしいだろう?公爵家を探るのにこんなに沢山の家から潜入させたり取り込んだり、下手したら家を潰されかねないのにね」
「それはおかしいですね」
「そう、って事は探っているのは家ではなく、君だね」
「そうなりますね」
「察しが良くて助かるよ、やはり息子の目に間違いはない」
またまた息子自慢です。
これはもう親バカですね、お義父様。
「今他国がこちらに仕掛けやすいようにエンヌに隙を作ってもらってる。王家はそれでいいんだけど、きっと他国が問題にするのは王家の保険ともいえるうちの存在なんだ。
そんな所に嫁いできた君は何者かってね。
息子の代わりのあいつはあれでいい、そのまま隙になるから、でも君はどうなんだって誰でも考える」
「私何人かの前で魔法を使ってしまいましたが良かったですか?」
「あぁ別にいいんだ。君が魔法を使うのも何もかも君の思った通りにしてくれて大丈夫だ。
ただこの話を知ってるのと知らないのでは、君の気持ちが違うだろう?
それと真の間諜を知る必要もあると思ったからね」
「真の間諜ですか?」
「そうだよ。テモシーから少しは聞いているんじゃないかい?」
「アッパールですか」
「正解」
お義父様とお義母様、そして王妃様はニッコリ微笑んでいます。
そしてやはりというか何というか、結局聞きたくもない話を聞かされるのでした。
──────────────
魔力を解放する発動原理が命の危険である。
この事は昔から知り得た事でした。
この国における平和が魔力保持者を少なくしていったと言っても過言ではないのです。
解放しないままの魔力持ちは年々増えていきやがて枯渇していきます。
でもこの大陸には魔法が蔓延っているのも確かなことです。
だからこそこの国では魔法が使えるのは王家に最も重宝される者であり一族なのです。
そういえば祖母が魔術師団の試験を私が受けようかと言ってたとき名誉なことだと言っていたわ。
本来なら命の危機というものは普通に過ごせばなかなかないのです。
でも簡単に出来る方法があるとお義父様が教えて下さいました。
それが鼻を摘む事。
奇しくもキャンベラが私と弟にした事でした。
だからこの魔力解放の原理を知っている家長は子供が5歳くらいの時にそれを行うそうです。
何故5歳かというと親が子供の異変に気付けるからです。
あまりにも小さいと子供が苦しんでる極限がわからずにそのまま呼吸困難に陥れてしまって救えなくなる命が出るからというのです。
アッパール伯爵家、4代前まではこの国の影を担っていた家です。
この4代前のもう一つ前の伯爵が少し偏執な考えを持っておられた事が、後の伯爵家の没落に繋がっていきます。
5代前の当主は魔力量がそんなに多くはなかったそうです。
彼はその事にかなりのコンプレックスを感じておりました。
なぜならアッパール家では一番魔力の少ない者が伯爵家を継承する様になっていたからだそうです。
継承した=魔力が弱い=役立たず
と思い込んだのか思わされたのか。
アッパールは分家の方が力があると思われていました、アッパールの中だけなんですけどね。
だから兄弟の子達よりも自分の子の方が魔力量が多くないとバカにされると思い込んだ当主は子供達の鼻を摘むだけでいいのに、崖から突き落としたそうです。
全員を。
そうする事によって魔力が増えるはずだと妄想したのです。
運良く生き残ったのが後の4代目当主とその弟の二人だったそうです。
その時に4代目となった当主は自分の子供にそんな事はできない、そしてこの影の連鎖も止めるべきだと態と魔力の解放をさせなかったのです。
なぜなら4代目は鼻を摘むだけという解放の仕方を知らなかったからです。
なので3代前のアッパール伯爵は他の貴族と同様に嫡男が継承し、魔力の解放の事は全く知らされませんでした。
魔法を使えないので王家の影にはなれません。
それからはただの伯爵家として成り立っておりました。
その事に気づいたのが先代のアッパール伯爵でした。
元々アッパール家は影でしたので領地は多くはなくそこまで突出した産物があるわけでもなかったので、3代前からは裕福ではありませんでした。
4代前の伯爵が画策した事は弟も解っていたので本家に解放の仕方を教えるべからずと遺言にしていたのですが、どこの親戚にも余計な事をいう輩はいるわけで先代のアッパール伯爵の知る事となったのです。
しかも彼は5代前の伯爵に性格が似ていたのでしょうか、かなり卑屈な心を持った方だったようです。
お義父様の側近候補として側仕えしていた時も他者を貶める事に躍起になって、仕事はダメダメだったそうでメイナードに入る時に早々に関係を解消したのですが、それも卑屈な心に油を注いだみたいです。
関係を解消されたあとに4代前の当主の秘密を知り、彼によって自分は本当は王家に重宝される人間の筈だったのにとお義父様に手紙を送ってこられていました。
何度も何度も。
でも彼自身には魔力は無かったそうなので(魔術師団長調べ)重宝されるべきというのは完全に彼の妄想です。
手紙の返事がない事に業を煮やした彼が次の手段に出たのが息子でした。
息子に魔力解放を施す事にしたようですが、不幸な事に彼の息子には魔力はなかったのです。
その事をお義父様が知ったのは息子の方からもらった手紙でした。
その手紙には事の経緯と父に何度も殺されかかっていると書いてあったそうです。
お義父様は魔力の鑑定ができるサンディル様を伴い息子に会って魔力なしの鑑定をして伯爵にも会ったのですが彼は納得していなかったようです。
息子を保護するために王家で働けるように根回しをしている間にとうとう伯爵は息子を死なせてしまいました。
死なせた理由は影絡みですので王家は秘匿して伯爵は毒を飲ませて処刑しました。
そしてアッパールの歴史は幕を閉じたそうです。
没落ではなく断絶だったのですね。
悲劇を繰り返す事を止めるために施した処置でした。
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