旦那様、愛するつもりがないのはお互い様でした

maruko

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「ホリシオン様!大丈夫ですか?」

「えっ?私は見ての通り大丈夫よ、大丈夫じゃないのはサッセルン侯爵の方ね」

昨日から突然私の専属護衛になったケトナー卿が、侯爵が椅子からズリ落ちた音を聞きつけ走ってきた。
面割れしてるからという理由で後で紹介する予定だったのだけど、早速予定が狂ったわ。

「何があったんですか?」

「う~ん心に決めた人がいるって言うから、貴族の理を教えただけよ。ねぇそれより、思ったよりも彼は深刻かもしれない」

「?」

「貴方学園生の時感じなかったのかしら?彼多分教育をちゃんと受けてないわ」

「貴族教育ですか?」

私はケトナー卿の問に頷いた。

「マナーが全然ダメダメだったの。多分領地経営とかは学園で習うから良かったのかもしれないけれど、所作がとても高位貴族とは思えなかった。そこから学ぶほうがいいわ、彼の今後のためにも。ひょっとしてダンスも学園で習っただけかしら?あの騒動のあと誰も指摘しなかったのかもしれないわね」

「何も学ばせてもらえてなかったんですね」

ケトナー卿がボソリと呟いた。
私は思ったよりも酷いサッセルン侯爵の境遇が胸に詰まった。
彼はずっと孤独だったのね、もしかしてそこを利用されてるのかな?
侯爵は私よりも年上だけど弟を見ている気持ちになる。

「貴方、教えてあげなさいな」

「えっ俺ですか?」

「宰相の息子だもの、騎士って言っても一通り習ったでしょう、所作がとても綺麗だわ。それに、そうすれば貴方侯爵邸に入り込めるでしょう」

「ありがとうございます。⋯⋯そうですねそれで少しでも彼の役に立てれば!」

「ねぇ⋯⋯⋯⋯⋯重くないの?」

私は思わずケトナー卿に訊ねてしまった。
何故ならケトナー卿が今、私のヨコを並んで邸に向かって歩いているのだけど、気を失ったお姫様抱っこで運んでいるのだ。

「全然、まだ針金と変わらないですね。少し食べさせないと!」

騎士って凄いわ!力持ちだわ!
ケトナー卿は彼の役に立てるのが嬉しいのか、昨日と同じくお尻に尻尾が見えるようにフリフリしていた。
犬ね!まさに犬!

その様子を見ていた私は疑問がむくむくと湧き上がる。
まさか⋯彼って⋯まさかね。

「ねぇ!ケトナー卿は男の人が好きなの?」

私の直球に彼は立ち止まり、ゆっくりと首をコチラに向けた、何故か音がギギギと鳴っているように聞こえる。

「⋯⋯俺は女好きです」

私はケトナー卿のたらし宣言を有難く拝聴した。
顔に青筋立ってて怖いわ!
さっきまで可愛い子犬のようだったのに!
私はケトナー卿の変貌を素知らぬ顔で躱したけれど、内心は慌てふためいていた。
騎士を揶揄うのは止めようと心に誓った。


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