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サミュエルはマルシェに気付いて、暫く呆然としていたが、我に返り自分の上に乗っていたミルフィを突き飛ばした。ミルフィはいきなりの事に驚いて、為すすべもなくベッドの下へと転落した。下は厚手の絨毯なのでおそらく怪我はしていないだろう。
マルシェはそんな二人を見ていたが、どうせ二人が服を着なければ、話しにならないと思い、扉を閉めた。
ここに来るまでの間に、食堂らしき部屋が扉を開け放たれたままだったので、そちらに移動した。部屋の扉を閉めたとき、何やらサミュエルが叫んでいたけれど知らない。
その部屋はやはり食堂らしい。マルシェが幼い頃に母と住んでいた部屋に、あったくらいの大きさのダイニングテーブルが置いてあった。
だが平民の家のとは素材がまるで違った。そのテーブルの天板は磨き上げられた石で出来ていた。
それにしても、と部屋を一望してマルシェは首を撚る。
この部屋には人が住んでる匂いがする。
誰かの家なのは間違いはないけれど、一体誰の家なのだろう?そんな疑問が湧いてきた。
マルシェが首を捻っていたら、ドタバタと大きな音がしたと思ったら、後ろから羽交い締めにされた。
「ひっ!」
「マルシェー!」
羽交い締めではなく抱きしめられたと気付くには、0.3秒ほどは要したのだろう。
短い悲鳴のあとに、マルシェは体を全力で捩って、サミュエルの腕から逃れた。
「マルシェ?」
「触らないで!気持ち悪い」
思わず出た本音はサミュエルの心をぐりっと抉ったらしく、彼は胸を押さえてその場に蹲った。
そんな事をしていたら、漸くミルフィが部屋にやって来て、蹲っているサミュエルに駆け寄っていた。
「サミュ!大丈夫?」
目の前で茶番が始まるのかと、溜息を吐いていたマルシェだったけれど、茶番に反してサミュエルがミルフィを再度突き飛ばしていた。
「お前のせいだ!お前のせいで俺はこんな所に来なきゃ行けなかったんだ!」
「そ、そんな!だって!そうでもしなければ⋯私達は結ばれなかったのよ」
「どうしてお前と結ばれなきゃいけないんだ!」
サミュエルの罵倒とミルフィの悲壮な泣き声が入り混じった言い合いが始まった。
あぁこれもある意味茶番だわとマルシェは思い、時間の無駄なので大きく柏手を打った。
それにビクッと反応した二人をついでに拝んでみた。
「取り敢えずサミュエル話があるの。ミルフィ様も同席構いませんわ」
ダイニングテーブルを指差し、マルシェがそう言うと足取り重そうにサミュエルが一つの椅子に腰掛けた。そしてその横にミルフィが座る。
その様子がとても自然で、普段からそうなのだと思わせるには十分な動きだった。
対面の空いてる椅子にマルシェが座ると、その時に初めてサミュエルは、席順がおかしい事に気付いたのだろう、慌てて立ち上がろうとしたが、マルシェの「今更です」の一言で力なく再びその席に腰掛けていた。
「マルシェ違うんだ!」
「何がでしょうか?」
「俺達はそんな関係じゃない!」
サミュエルがおかしな事を言い出して、マルシェは呆気にとられる。二人が合体していた場面をマルシェの双眸はしかと捉えている。今更違うと言われても、それこそ「何が?」としか返せない。
本当に何を言ってるのだろう?
するとサミュエルはつらつらと言い訳をし始めた。
魔物の討伐はかなり神経をすり減らすのだそうだ。マルシェには経験がないから、聞くことしかできないけれど、そうなんだーくらいで聞いていた。
彼らは討伐の時、神経もすり減らすが、興奮もしている、所謂アドレナリンがマックス状態なのだそうで、それを鎮めるためにその欲を発散する必要があるのだとサミュエルは真剣にマルシェに語った。
要は魔物討伐で興奮した熱が冷めないから、浮気は当然なんだと彼は言いたいらしい。
そこまで理解して、マルシェは思わず「ふうん、無理!」と言った。
その言葉でサミュエルは「なぜだ!」なんて言ってる。
思わず笑ってしまった。
「サミュエル貴方何言ってるの?」
「何って。説明したじゃないか!」
「そうね聞いたわ」
「だったら!」
「だけど、それがどうしてそこのミルフィ様になるの?彼女は歴とした貴族のご令嬢よ。娼婦ではないわ。貴方責任取らなきゃいけないんじゃないの?」
サミュエルは浮気の正当性を淡々とマルシェに宣ったが、まぁ100歩譲ってそうなるのかもしれないと、男の興奮の度合いなどマルシェは前世も含めて女なので、その辺は良くわからないから、そこまでは理解も無理くりにできたとする。
だけど、前世と違ってこの異世界では全く違う感性がある。それは貴族令嬢の処女性だ。
貴族の令嬢は結婚するまで純血でなければならないとされている。
だからこそマルシェの母は、学園も家も国さえも出なければならなかったのだ。
サミュエルが先程まで合体していたミルフィは、このマキラン王国の宰相の娘だ。侯爵令嬢を娼婦代わりになんて、出来るはずがないのだ。
当然この事は宰相の耳にも入っているはず、おそらく何から何まで彼の計画的な所業なのだろう。
それにまんまとサミュエルは捕まってしまった。
何故ならマルシェとサミュエルの結婚証明者は、国に届けられていなかったのだ。
現時点で、マルシェとサミュエルに婚姻の事実は書類的にはない。
それをマルシェが知ったのは、シュール家を追い出される時だった。
マルシェはそんな二人を見ていたが、どうせ二人が服を着なければ、話しにならないと思い、扉を閉めた。
ここに来るまでの間に、食堂らしき部屋が扉を開け放たれたままだったので、そちらに移動した。部屋の扉を閉めたとき、何やらサミュエルが叫んでいたけれど知らない。
その部屋はやはり食堂らしい。マルシェが幼い頃に母と住んでいた部屋に、あったくらいの大きさのダイニングテーブルが置いてあった。
だが平民の家のとは素材がまるで違った。そのテーブルの天板は磨き上げられた石で出来ていた。
それにしても、と部屋を一望してマルシェは首を撚る。
この部屋には人が住んでる匂いがする。
誰かの家なのは間違いはないけれど、一体誰の家なのだろう?そんな疑問が湧いてきた。
マルシェが首を捻っていたら、ドタバタと大きな音がしたと思ったら、後ろから羽交い締めにされた。
「ひっ!」
「マルシェー!」
羽交い締めではなく抱きしめられたと気付くには、0.3秒ほどは要したのだろう。
短い悲鳴のあとに、マルシェは体を全力で捩って、サミュエルの腕から逃れた。
「マルシェ?」
「触らないで!気持ち悪い」
思わず出た本音はサミュエルの心をぐりっと抉ったらしく、彼は胸を押さえてその場に蹲った。
そんな事をしていたら、漸くミルフィが部屋にやって来て、蹲っているサミュエルに駆け寄っていた。
「サミュ!大丈夫?」
目の前で茶番が始まるのかと、溜息を吐いていたマルシェだったけれど、茶番に反してサミュエルがミルフィを再度突き飛ばしていた。
「お前のせいだ!お前のせいで俺はこんな所に来なきゃ行けなかったんだ!」
「そ、そんな!だって!そうでもしなければ⋯私達は結ばれなかったのよ」
「どうしてお前と結ばれなきゃいけないんだ!」
サミュエルの罵倒とミルフィの悲壮な泣き声が入り混じった言い合いが始まった。
あぁこれもある意味茶番だわとマルシェは思い、時間の無駄なので大きく柏手を打った。
それにビクッと反応した二人をついでに拝んでみた。
「取り敢えずサミュエル話があるの。ミルフィ様も同席構いませんわ」
ダイニングテーブルを指差し、マルシェがそう言うと足取り重そうにサミュエルが一つの椅子に腰掛けた。そしてその横にミルフィが座る。
その様子がとても自然で、普段からそうなのだと思わせるには十分な動きだった。
対面の空いてる椅子にマルシェが座ると、その時に初めてサミュエルは、席順がおかしい事に気付いたのだろう、慌てて立ち上がろうとしたが、マルシェの「今更です」の一言で力なく再びその席に腰掛けていた。
「マルシェ違うんだ!」
「何がでしょうか?」
「俺達はそんな関係じゃない!」
サミュエルがおかしな事を言い出して、マルシェは呆気にとられる。二人が合体していた場面をマルシェの双眸はしかと捉えている。今更違うと言われても、それこそ「何が?」としか返せない。
本当に何を言ってるのだろう?
するとサミュエルはつらつらと言い訳をし始めた。
魔物の討伐はかなり神経をすり減らすのだそうだ。マルシェには経験がないから、聞くことしかできないけれど、そうなんだーくらいで聞いていた。
彼らは討伐の時、神経もすり減らすが、興奮もしている、所謂アドレナリンがマックス状態なのだそうで、それを鎮めるためにその欲を発散する必要があるのだとサミュエルは真剣にマルシェに語った。
要は魔物討伐で興奮した熱が冷めないから、浮気は当然なんだと彼は言いたいらしい。
そこまで理解して、マルシェは思わず「ふうん、無理!」と言った。
その言葉でサミュエルは「なぜだ!」なんて言ってる。
思わず笑ってしまった。
「サミュエル貴方何言ってるの?」
「何って。説明したじゃないか!」
「そうね聞いたわ」
「だったら!」
「だけど、それがどうしてそこのミルフィ様になるの?彼女は歴とした貴族のご令嬢よ。娼婦ではないわ。貴方責任取らなきゃいけないんじゃないの?」
サミュエルは浮気の正当性を淡々とマルシェに宣ったが、まぁ100歩譲ってそうなるのかもしれないと、男の興奮の度合いなどマルシェは前世も含めて女なので、その辺は良くわからないから、そこまでは理解も無理くりにできたとする。
だけど、前世と違ってこの異世界では全く違う感性がある。それは貴族令嬢の処女性だ。
貴族の令嬢は結婚するまで純血でなければならないとされている。
だからこそマルシェの母は、学園も家も国さえも出なければならなかったのだ。
サミュエルが先程まで合体していたミルフィは、このマキラン王国の宰相の娘だ。侯爵令嬢を娼婦代わりになんて、出来るはずがないのだ。
当然この事は宰相の耳にも入っているはず、おそらく何から何まで彼の計画的な所業なのだろう。
それにまんまとサミュエルは捕まってしまった。
何故ならマルシェとサミュエルの結婚証明者は、国に届けられていなかったのだ。
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