三度目の正直

maruko

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 次の日、ルルーラは泊まっていた宿を引き払いアリーシャの居る別邸にやって来た。

 ナンシーとマックスから部屋で大人しくしているようにと言われていて、アリーシャは言われるがまま大人しく刺繍をしていた。

 今日は少し大判の布に練習用の刺繍を刺している。
 ギルドに入る依頼で好まれる刺繍の種類は割と偏っていた。
 その主たる物が『花』だった。
 アリーシャは今、基本中の基本マーガレットを刺している。
 ナンシーにも言われていたように繰り返すことによって少しずつ上達していたアリーシャだったが、バラ、アネモネ、チューリップなど家紋に取り入れやすくなってる花を刺す前に、一度必ずマーガレットを刺すように言われていた。
 黄色い糸を必死に刺す、刺す、刺す!
 いつしか無我夢中で刺していた。


 一方、アリーシャを部屋に押し込め?てマックスとナンシーは別室でルルーラと話をしていた。
 主に話すのはアリーシャの前情報の把握であった。

 それはマックスからではなくナンシーから教えられた。
 ナンシーはオクトール公爵家の侍女で最初にアリーシャについて引き継がれたのは当たり障りのない情報であった為、それと同じことをルルーラは聞いて熱心にメモを取っていた。

 アリーシャの特に好きなもの
 アリーシャの嫌いな物
 アリーシャの愛読書
 アリーシャの好みの色

 ナンシーがルルーラに話しているのをマックスは黙って聞いていた。
 その間、ルルーラの観察も忘れない。
 それにしてもナンシーはアリーシャに付いてまだ1ヶ月も経たないのに、かなり良くアリーシャを理解していた。
 とても優秀な侍女なのだと感動していた。
 しかも彼女は武芸も備えてて護衛も兼ねているのだ。
 先日彼女が言っていた“出来る侍女”“優秀な侍女”とは彼女の事なのではないかと思った。

 ─自画自賛?いや謙遜?それにしてもスゴイな、まぁ僕には負けるだろうけど。なったってアリーシャお嬢様の事なら僕が一番知ってるから─

 心の中でマックスは鼻を高々でしていた。

 軽く引き継ぎが終わり、アリーシャが別邸にいる間はナンシーも一緒に付くことになってると彼女はルルーラに告げると、椅子に座ったままルルーラはマックスを見上げた。

「アリーシャお嬢様は今後をまだ決めかねているのでしょうか?」

 ルルーラの問にマックスは頷いた。

「やはりあの日の事を気にされていらっしゃいますか?」

「おそらく」

 マックスの返答にルルーラは俯いた。
 ルルーラの言うの事はルルーラ達にも衝撃だったのだから、言われたアリーシャはどれ程傷ついただろうと心中を慮っていた。

「止められなかった私達の落ち度でもあります。申し訳ないことをしてしまいました」

「ルルーラさんのせいではないのでは?突発で口から出るものを止められる人はなかなか居ないと思いますよ」

 マックスの慰めの言葉にルルーラは頭を左右に振る。

「いいえメリジェーン様の行いでルチアーナお嬢様はかなり精神的に疲弊されていました。それに気づきながら私達も油断していたのです。ただ旦那様から話を聞くまではそこまでアリーシャ様のことを気にしてはおりませんでした。すべてが誤解と分かってルチアーナお嬢様付きの侍女は驚愕したのです。表立って私達とアリーシャお嬢様に接点はありませんでしたので長年お見かけすらもしていませんでした。避けていたわけではありませんが敢えて近づかないようにしなくとも会わなくてすんでいました。北側の侍女たちが何をしていたのかも気にも止めていませんでした。申し訳ないことです。同じ公爵家のお嬢様であられるのに」

 ルルーラはルチアーナが公爵の子ではないと知らないようだったのでマックスは教えないことにした。
 必要ならそのうち旦那様より知らされるだろうと思った。

 ただ、人は無関心を同じ屋敷にいても出来るのだと勉強した。
 マックスは、なる丈ルチアーナと遭遇しないように気をつけていたが気にも止めてなかった事が衝撃でもあった。

「アリーシャお嬢様が公爵家に帰られる決心をしたのならば私はお嬢様を守ります!」

 ルルーラの誓いはマックスにとっても心強い物だった。


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