三度目の正直

maruko

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 あと数日で王家主催の夜会が開かれる。
 アリーシャは今その日に着るドレスの最終調整でルルーラ達に試着させられていた。

 丁度1ヶ月前の事である。
 父に夕食後に大事な話があると言われた。
 最近ではトーマスの課題にも慣れてきた所だ、彼に言わせればまだまだだそうだが。父の大事な話とは仕事の事だろうか?それとも最近頻繁に父に突撃しているマルシスの事だろうか?
 話の内容が分からず、アリーシャはソワソワしながら食事をした、その日はアリーシャの好物のチェリーパイがデザートに出たのに一切れしか食べれなかった。

 マルシスとはまだ手紙のやり取りのみの関係だ。前と違うのはそこに愛の言葉が並べられていることだ。前は癒やしの手紙だったのに最近は読む度に照れてしまって最後まで読むのに時間がかかってしまう。
 その頃からどうやらマルシスは父に面会を申し込んだり、手紙を書いたりしているようで、先日は到頭王城の廊下で突撃されたと父が言っていた。
 何を話しているのかはマルシスも父も教えてはくれないけれど、その話なのかな?とアリーシャは考えていた。

 食後に父の執務室へと行こうとするとトーマスから父の自室へと行くように言われた。
 中央に移ってからも父の自室へは数えるほどしか訪っていない。
 緊張しながらトーマスがノックするのを見つめていると「入れ」と声がかかる。
 中に入るとトーマスとルルーラは廊下で待つのだという。訝しみながらもアリーシャは父の側へと向かう。

「ここに」

 父がソファの自分の隣をポンポンとしながら座るように促すから、アリーシャはドキドキしながら腰掛けた。
 座ったアリーシャの瞳を見つめて、父はアリーシャの両手を包むように握った。

「アリーシャ、年末でデビューしよう」

「⋯⋯⋯っ!」

 父の言葉に思わず感動してアリーシャは声にならない声を発した。
 3回目の人生で初めてのデビュタントだった。
 この国では庶子はデビュタントが出来ない、そう線引きが成されている、因みに養子だと可能になる。
 デビュタントが出来ないということは貴族としてお披露目が出来ないということだ、だからと言って夜会に出てはいけないということではない。
 過去のアリーシャは夜会には参加していたが庶子だった為デビュタントはさせてもらえなかった。
 ルチアーナの白いドレスを羨ましく眺めるだけだった。

 でも今回はデビュタントが出来る、父がその用意をしてくれていると言った。
 アリーシャは天にも登る気持ちで高揚する。

「お父様、ありがとうございます」

「何を言ってる当たり前の事だ、私の娘を皆に自慢しないとな」

 (当たり前じゃなかったんです)
 心の呟きは声に出さず父の顔を見つめた。


 年末に開かれる王家主催の夜会は今年最後の貴族の義務と言っても過言ではない。毎年数名の貴族子女がデビューする。

 父の用意してくれたドレスはアリーシャの心をすぐに鷲掴みにした。
 ホルターネックにプリンセスラインのドレスの色は勿論白なのだが、腰に大きく結ばれたリボンと裾に銀糸で刺繍がしてあり胸にはレースが重ねられそこにアメジストの小さな石が散りばめられていた。

 アリーシャと父と母の色で飾られたドレスは親子の絆を感じさせる。胸にあしらったアメジストは自分の色でもあるが母の色でもあった、今日の試着は2回目だったが、アリーシャは何だか母に抱きしめられてる気持ちになる。

「お嬢様、またお痩せになりました?」

 ルルーラの少し非難めいた言葉にアリーシャはドキッとした。
 下半身は兎も角上半身は痩せないようにと注意を受けていたのだが⋯何故か痩せてしまっていたようだ。
 ペロっと舌を出して「ごめんなさい」と謝った。それ以上アリーシャに出来る事はない。何せあと数日で本番なのだから。

 試着して大きな姿見の前で後ろのリボンの位置や裾の長さ、靴まで履いて確認しているとノックが聞こえ父が入ってきた。

「失礼、アリーシャ⋯綺麗だ。まるで⋯」

 そこまで言って父は目元を隠した。
 きっと母の事を思い出したのかしら?まさかお祖母様ではないわよね、なんて考えていたら父の後ろから入室したトーマスが長方形や正方形、色々な形の箱を父に手渡した。

 それ等はアリーシャが当日着ける為に用意したアクセサリーの数々だった。
 そして一際大きい宝石箱を父はアリーシャに手渡した。

「これは私がアリスに贈った物なんだ」

 父は震える手でそれ毎アリーシャの手を包む、中には父の母への愛が詰まっていた。
 母は拉致されたように此処から連れ出されているから、きっとこれはその時からこのままで時を過ごしていたのだろうか?
 だが、中の指輪もピアスの石も一つも曇ってはいなかった。

「お父様、磨いていたの?」

 父は涙を流しながら頷いた、それを見て母が最期に父を誤解したままだったのがとても悔やまれた。

 (春になったらお父様と一緒にお母様に会いに行こう)

 母に執事の件は誤解だったとちゃんと報告しなければとアリーシャは小振りなダイヤの指輪を一つ手に取り心の中で話しかけるように誓った。




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