79 / 80
第四章 未来へのみちしるべ
79
しおりを挟む
ユリシーズは、シモンの研究室を公爵家に用意したいとユリアーナからお強請りされて複雑な心境になった。娘が今度こそ幸せになれる!と思う喜ばしい気持ちと、その時が刻一刻と迫って来る寂しい気持ちが鬩ぎ合う。
「では早々に返事をしなければ、な」
最後の“な”に父親の空虚感をエリーヌは感じてユリシーズの背に手を添えた。
長い間ユリシーズは娘の為に必死で生きてきた、それを自分は共有する事が出来なかったのだと彼の気持ちを慮り、添える手に思いを込めた。
ユリシーズの言葉にユリアーナとシモンは安堵した。
それからの展開は早かった。
婚約期間を半年と区切り、その間に公爵家の一部をリフォームした。
シモンの研究室が完成したと同時に彼はライレーン王国へと移り住んだ。
そしてそこに盲目のシャルロッテが同行してきた。
彼女と彼女の夫は今後ロッサルト公爵家の薬師として領地の方で活躍して貰う予定だ。
シャルロッテはユリアーナの母よりも少しだけ若いのだが、見た目はイザベラくらいに見える。その瞳には物理的には何も映せなくなってしまっているけれど、薬師としての揺らぎない自信はその盲目の瞳に炎が灯っているかの様に熱い。
突然目が見えなくなり知らない場所に置き去りにされた絶望的な状態でも、彼女は生きる事を諦めなかったのだと、そんな彼女に惹かれたのだと、彼女の夫はユリアーナに教えてくれた。シャルロッテに寄り添う夫の姿を見て、ユリアーナは自分もシモンをそんな風に支えて行きたいと思った。
ユリアーナの周りが急速に慌ただしくなる。
それと並行してユリアーナは結婚式の準備に追われるようになる。
ユリアーナとシモンの結婚式は、女王陛下がダイナスの件での迷惑料という事で、親友のエンバーと同じ大聖堂を抑えてくれた。
今日もロッサルト公爵家には婚姻の準備の為のアレコレで商会の代表達が入れ代わり立ち代わり訪っている。
その全てに次期女公爵としてユリアーナは応対する。
最初の頃は自分の結婚式を自分で執り仕切るのは、かなり照れるものがあり、毎回晒されている気分になって落ち着かなかった。
だが幸せへと一歩一歩近付いている事を肌で感じるのも悪くないと、最近はやっとそう思えてきた。
相変わらずシモンは研究室に閉じこもり、結婚式のタキシードの合わせのために引っ張りだすのに苦労するが、それも何だか愛おしい。
その間にユリシーズがロッサルト公爵をユリアーナに渡す準備を着々と進めていた。
――――――――――
※短くてごめんなさい
繋げようと思いましたが一旦区切ります
次が本編最終話になります
よろしくお願いします🙇♀
「では早々に返事をしなければ、な」
最後の“な”に父親の空虚感をエリーヌは感じてユリシーズの背に手を添えた。
長い間ユリシーズは娘の為に必死で生きてきた、それを自分は共有する事が出来なかったのだと彼の気持ちを慮り、添える手に思いを込めた。
ユリシーズの言葉にユリアーナとシモンは安堵した。
それからの展開は早かった。
婚約期間を半年と区切り、その間に公爵家の一部をリフォームした。
シモンの研究室が完成したと同時に彼はライレーン王国へと移り住んだ。
そしてそこに盲目のシャルロッテが同行してきた。
彼女と彼女の夫は今後ロッサルト公爵家の薬師として領地の方で活躍して貰う予定だ。
シャルロッテはユリアーナの母よりも少しだけ若いのだが、見た目はイザベラくらいに見える。その瞳には物理的には何も映せなくなってしまっているけれど、薬師としての揺らぎない自信はその盲目の瞳に炎が灯っているかの様に熱い。
突然目が見えなくなり知らない場所に置き去りにされた絶望的な状態でも、彼女は生きる事を諦めなかったのだと、そんな彼女に惹かれたのだと、彼女の夫はユリアーナに教えてくれた。シャルロッテに寄り添う夫の姿を見て、ユリアーナは自分もシモンをそんな風に支えて行きたいと思った。
ユリアーナの周りが急速に慌ただしくなる。
それと並行してユリアーナは結婚式の準備に追われるようになる。
ユリアーナとシモンの結婚式は、女王陛下がダイナスの件での迷惑料という事で、親友のエンバーと同じ大聖堂を抑えてくれた。
今日もロッサルト公爵家には婚姻の準備の為のアレコレで商会の代表達が入れ代わり立ち代わり訪っている。
その全てに次期女公爵としてユリアーナは応対する。
最初の頃は自分の結婚式を自分で執り仕切るのは、かなり照れるものがあり、毎回晒されている気分になって落ち着かなかった。
だが幸せへと一歩一歩近付いている事を肌で感じるのも悪くないと、最近はやっとそう思えてきた。
相変わらずシモンは研究室に閉じこもり、結婚式のタキシードの合わせのために引っ張りだすのに苦労するが、それも何だか愛おしい。
その間にユリシーズがロッサルト公爵をユリアーナに渡す準備を着々と進めていた。
――――――――――
※短くてごめんなさい
繋げようと思いましたが一旦区切ります
次が本編最終話になります
よろしくお願いします🙇♀
558
あなたにおすすめの小説
ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
【完結】あなた方は信用できません
玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。
第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?
婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――
それは、多くの令嬢にとって人生を揺るがす一大事件。
けれど彼女は、泣き叫ぶことも、復讐に走ることもなかった。
「……では、私は日常に戻ります」
派手なざまぁも、劇的な逆転劇もない。
彼女が選んだのは、線を引き、基準を守り、同じ判断を繰り返すこと。
王宮では改革が進み、領地では生活が整えられていく。
誰かが声高に称えられることもなく、
誰かが悪役として裁かれることもない。
それでも――
混乱は起きず、争いは減り、
人々は「明日も今日と同じである」ことを疑わなくなっていく。
選ばない勇気。
変えない決断。
名を残さず、英雄にならない覚悟。
これは、
婚約破棄をきっかけに
静かに日常を守り続けた一人の令嬢と、
その周囲が“当たり前”を取り戻していく物語。
派手ではない。
けれど、確かに強い。
――それでも、日常は続く。
悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。
ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」
ぱんっ。
愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。
甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。
──え?
打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。
木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。
「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」
シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。
妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。
でも、それなら側妃でいいのではありませんか?
どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?
【完結】君の世界に僕はいない…
春野オカリナ
恋愛
アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。
それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。
薬の名は……。
『忘却の滴』
一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。
それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。
父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。
彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる