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4 怒り(侍女)
「リーシャ様、昨夜からかなりお悩みのご様子ですが」
馬車に乗り込み小窓から外を眺めておりましたが、昨日からの事を考えて度々溜息を吐いていた私に居たたまれなくなった侍女が遠慮しながらも話しかけてくれました。
この侍女はハイデルの娘さんでレマールと紹介を受けました。
ハイデルに似てキビキビと他の侍女を指導しながら動いておりましたので、なかなかに気の利いた侍女のようです。
「ありがとう、気を遣わせてるわね」
「いえそんな事はお気になさらずに、リーシャ様の憂いを取り除くのも侍女の仕事です。この中の事は父にも話しません。よかったらその憂いを私にも分けてくだされば解決の道も開かれるかもしれません、ほら先達も傍目八目と申しております」
「おかめ?」
「えぇ三人寄ればとも申します」
どうやらレマールもかの東の島国の言葉を存じてるようです。そうですね、他者の意見も聞いてみようと私は考えました。
「実は⋯⋯」
そう切り出して私は、子供の頃リヒト様と婚約した時の事から昨日に至るまでの話をレマールに聞かせました。昨夜のリヒト様の言葉は一言一句違えずに。途中まではレマールは「まぁ」「それは⋯」「そんな!」等と相槌を打っていたのですが昨夜のリヒト様の言葉になると、お顔が能面の様で少し恐怖を感じてしまいました。
「リーシャ様の心は不安なのでございますね」
レマールの言葉に私は頷きました。
「そうですわね。リヒト様の仕打ちは有り得ませんわ!そもそもリーシャ様が動けぬのならばご自身が動いても良いではありませんか!女のひとり旅はいくら護衛がいても早々出来ません、辺境伯が領地を動けないのであれば、リーシャ様が動けないのも道理。でしたら学園にも休みがありますればその時に辺境伯の領地まで動くことに何の障りがあるというのか!現にパーレル伯爵夫妻は動かれておりますわ!」
「?」
「それに、それに!学園卒業後も会いに行っていないとは!リーシャ様、お手紙などは!」
「季節のご挨拶は頂いてましたわ、私の方は一月に一度ほどでしたかしら?」
私もその頃のことを思い出そうと首を傾げながら顎に手を当てて考えます、それにしてもレマールが興奮して話すのであまり口が挟めません。彼女の言葉が私ちょっと理解が⋯⋯。
「まぁ!なんて事でしょう、季節の挨拶だけ等と!しかも女の適齢期を何と心得ているのですかパーレル小伯爵は!そして、そして!約束してたのにも関わらず遅れて現れて、まだいるとは思わなかった!ふざけてるんじゃありませんわよ!そして現地集合?有りえない!有りえない所業です!まさかまさかあの男!リーシャ様をいい様に扱おうとこの年まで待っていたのでは?それとそのドレスの色のチョイス!確かに辺境伯家のお色ではございます、ですがリーシャ様はあまりお好みの色ではないのではないですか?ドレスを着けてから寂しそうなお顔をされております」
レマールがなんだかとても怒っていて、私のほうが身が竦む思いです。
目も血走っております。
怖いわ~レマール
まぁドレスの件は仰るとおりなのですが、リヒト様を悪しざまに言うとヒートアップしそうなので、微笑むだけに留めておこうと思います。
私は顔つきが派手顔をしていると周りから言われます、自分ではよくわかりませんが目鼻立ちがくっきりとしているからでしょうか。それとあまり感情が面に出ないのは生まれつき表情筋が壊れているのです、それはアルーステン家の特徴なのです。なる丈笑顔というか微笑みだけはお母様と幼い頃から練習いたしました。それから釣り上がってるわけではないのですが、よく目が怖い気が強そう等と影で日向で言われております、そして我が辺境伯家の色は赤。それ等を纏めて私の評価は巷の大衆娯楽小説の悪役令嬢の様と揶揄されておりましたの。寄子達の集まる所ですら言われるのです、きっと広い世間ではもっと言われるのでしょうね、想像するだけで恐ろしい。そういうこともありまして私が好んで着る衣装の色はベージュや白、淡いブルーといった当たり障りのない自己主張しない色を選んでおりました。今回リヒト様から贈られたドレスは真逆です、少し悪意を感じてしまって⋯いえ考えすぎですわね。やっぱりその辺を考えるのはやめておきましょう。それよりももっと考えなければいけないことがありますし。
それとレマールは、ちょっと私とは違う所に矛先が向いているようで不思議です。
私は意を決してそれを正すために口を挟みました。
「レマール、私怒ってはいないのよ。もっと根本的なことなの」
「へっ?」
レマールはキョトン顔でこちらを見て変な言葉を発しましたの。
ふふふ、その顔、面白いですわ!
鳩が豆でっ⋯⋯⋯これ以上は侮辱に当たるかしら?
レマールが気を悪くしては駄目よね、これは黙っておきましょう。
馬車に乗り込み小窓から外を眺めておりましたが、昨日からの事を考えて度々溜息を吐いていた私に居たたまれなくなった侍女が遠慮しながらも話しかけてくれました。
この侍女はハイデルの娘さんでレマールと紹介を受けました。
ハイデルに似てキビキビと他の侍女を指導しながら動いておりましたので、なかなかに気の利いた侍女のようです。
「ありがとう、気を遣わせてるわね」
「いえそんな事はお気になさらずに、リーシャ様の憂いを取り除くのも侍女の仕事です。この中の事は父にも話しません。よかったらその憂いを私にも分けてくだされば解決の道も開かれるかもしれません、ほら先達も傍目八目と申しております」
「おかめ?」
「えぇ三人寄ればとも申します」
どうやらレマールもかの東の島国の言葉を存じてるようです。そうですね、他者の意見も聞いてみようと私は考えました。
「実は⋯⋯」
そう切り出して私は、子供の頃リヒト様と婚約した時の事から昨日に至るまでの話をレマールに聞かせました。昨夜のリヒト様の言葉は一言一句違えずに。途中まではレマールは「まぁ」「それは⋯」「そんな!」等と相槌を打っていたのですが昨夜のリヒト様の言葉になると、お顔が能面の様で少し恐怖を感じてしまいました。
「リーシャ様の心は不安なのでございますね」
レマールの言葉に私は頷きました。
「そうですわね。リヒト様の仕打ちは有り得ませんわ!そもそもリーシャ様が動けぬのならばご自身が動いても良いではありませんか!女のひとり旅はいくら護衛がいても早々出来ません、辺境伯が領地を動けないのであれば、リーシャ様が動けないのも道理。でしたら学園にも休みがありますればその時に辺境伯の領地まで動くことに何の障りがあるというのか!現にパーレル伯爵夫妻は動かれておりますわ!」
「?」
「それに、それに!学園卒業後も会いに行っていないとは!リーシャ様、お手紙などは!」
「季節のご挨拶は頂いてましたわ、私の方は一月に一度ほどでしたかしら?」
私もその頃のことを思い出そうと首を傾げながら顎に手を当てて考えます、それにしてもレマールが興奮して話すのであまり口が挟めません。彼女の言葉が私ちょっと理解が⋯⋯。
「まぁ!なんて事でしょう、季節の挨拶だけ等と!しかも女の適齢期を何と心得ているのですかパーレル小伯爵は!そして、そして!約束してたのにも関わらず遅れて現れて、まだいるとは思わなかった!ふざけてるんじゃありませんわよ!そして現地集合?有りえない!有りえない所業です!まさかまさかあの男!リーシャ様をいい様に扱おうとこの年まで待っていたのでは?それとそのドレスの色のチョイス!確かに辺境伯家のお色ではございます、ですがリーシャ様はあまりお好みの色ではないのではないですか?ドレスを着けてから寂しそうなお顔をされております」
レマールがなんだかとても怒っていて、私のほうが身が竦む思いです。
目も血走っております。
怖いわ~レマール
まぁドレスの件は仰るとおりなのですが、リヒト様を悪しざまに言うとヒートアップしそうなので、微笑むだけに留めておこうと思います。
私は顔つきが派手顔をしていると周りから言われます、自分ではよくわかりませんが目鼻立ちがくっきりとしているからでしょうか。それとあまり感情が面に出ないのは生まれつき表情筋が壊れているのです、それはアルーステン家の特徴なのです。なる丈笑顔というか微笑みだけはお母様と幼い頃から練習いたしました。それから釣り上がってるわけではないのですが、よく目が怖い気が強そう等と影で日向で言われております、そして我が辺境伯家の色は赤。それ等を纏めて私の評価は巷の大衆娯楽小説の悪役令嬢の様と揶揄されておりましたの。寄子達の集まる所ですら言われるのです、きっと広い世間ではもっと言われるのでしょうね、想像するだけで恐ろしい。そういうこともありまして私が好んで着る衣装の色はベージュや白、淡いブルーといった当たり障りのない自己主張しない色を選んでおりました。今回リヒト様から贈られたドレスは真逆です、少し悪意を感じてしまって⋯いえ考えすぎですわね。やっぱりその辺を考えるのはやめておきましょう。それよりももっと考えなければいけないことがありますし。
それとレマールは、ちょっと私とは違う所に矛先が向いているようで不思議です。
私は意を決してそれを正すために口を挟みました。
「レマール、私怒ってはいないのよ。もっと根本的なことなの」
「へっ?」
レマールはキョトン顔でこちらを見て変な言葉を発しましたの。
ふふふ、その顔、面白いですわ!
鳩が豆でっ⋯⋯⋯これ以上は侮辱に当たるかしら?
レマールが気を悪くしては駄目よね、これは黙っておきましょう。
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