婚約者様は妄想と違っておりました

maruko

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10 勘違い2 (リヒト様)

 「待ってくれ!」

 リヒト様は走って来られたようです。私の右腕を後ろから握って、握ってない方の手はご自分の膝です。お辞儀をするポーズで肩で息をされていますので、私の状態に目が入っておりませんの。彼の目には今地面のみ。

 腕が捻られておりますリヒト様、とっても痛いです!
 涙目になりながらも耐えながら、どうにか振り返りこの状況を打破したいのですが、今振り返ると尚更腕が捻る事に気づきました。タップしたくても彼に手が届きません。そしてリヒト様、貴方ひょろリの癖に手の力が強すぎる~!!
 私の前を歩いていて対応に遅れたレマールが慌ててリヒト様を引き離そうとしましたが、彼は体は後ろに下がるものの腕を離してくれません。

「痛~~~い!!!」

 私、到頭我慢できなくて絶叫に近い声を上げてしまいました。淑女のしの字もありません、面目次第もございません。
 やっと我に返ったのでしょうか?今まで下を向いていて私の惨状に気づかなかったリヒト様は、やっと状況を把握して腕を離したのです。
 私は痛む腕を擦りながら涙目でリヒト様を睨みます。これくらいは許されるでしょう?だって痛いんですもの。

「も、申し訳ない!そんなに強く握ったつもりは⋯」

 リヒト様は謝罪の言葉を延べながら不思議そうな顔をしています。そして次の言葉で私は唖然としました。

「君は騎士だから直ぐに解かれると思って、強く握り過ぎたのかもしれない」

 は?今リヒト様騎士って仰いましたかしら?
 私はレマールを見ました、レマールも不思議な顔をして私とリヒト様を交互に見ています。
 思わず私はレマールに、人差し指で自分を指し示し「私の事?」というように目で訴えました。
 するとレマールは首を縦に振ったあとその首を傾げます。
 ですわよね、私は騎士ではございませんもの。
 リヒト様はどうしてか此方を見もせずに持論を語ります。

「いや、いくら騎士といっても女性を握る力ではなかったな、それは本当に失礼した。だが君が逃げるから、君は前の時も逃げ回っていたし。それに以前もスピカ嬢を虐めていた前科があったから、つい彼女の言葉を信じてしまった」

 おやおや、もっと訳のわからないことを言っておりますリヒト様。
 おそらくですが何方かと私を勘違いしているのは、分かりました。そしてその何方かが誰なのかも。

「ねぇレマール、脳筋って人の話を聞かないとかって意味もあるかしら」

「大きく捉えればそんな意味にもなり得ます」

 マリアンが脳筋って言った意味が何となく分かりました。いえやっぱりどういう状況でそう思ったのかを話してほしかった。けれど彼女マリアンは本当にほんと~~~に面倒くさがりなので、きっと説明が面倒くさかったのだと思います。
 そのうち顔合わせをすれば分かるとでも思ったのでしょう、こんな結婚式の直前まで顔合わせが延びるなんて誰も想像出来ませんものね。
 さて、間違いを正したいのですがまだまだ持論を展開されてるリヒト様は聞いてくださいますかしら?

「リヒト様、リヒト様、リヒト様!リヒト様!!」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ん?何だ?」

 私の段々と大きくなる声で、繰り返した何度目かの問いかけにやっと返事を返してくださいました。この人、人の話を聞かないのではなく聞こえないのかしら?お耳の掃除が必要かもしれませんわねぇ。

「おそらくですが、いえ絶対にリヒト様は人違いをされております」

「人違い?何の話だ」

「先ず!」

 私は人差し指で1を造り彼の目の前に振りかざしました。

「私は騎士ではありません!!」

 どうだ参ったかと言うふうに宣言いたしましたが、リヒト様に鼻で笑われました。

「はっ!何を言うかと思えば、騎士でなければ優勝するはずがない」

「だから、その人物は私ではありません。従姉です」

「は?だがアナウンスでアルーステンと聞こえたぞ」

「はあ~~~~~」

 私は大きく溜息を吐きました、もう、失礼とかどうでも良くなっちゃったのです。

「その家名の前は聞かなかったのですか?」

「いや聞こえなくてもアルーステンの女性は君しか居ないだろう?漸く会えると思って会場に走ったんだ」

 あぁこれが脳筋の正体でしたか。

 マリアン!
 本当にもっと詳しく教えてほしかった。
 恨みますわよ!



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