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11 お似合い sideレマール
私は今、お互いが勘違いをし続けた婚約者同士の遣り取りを見つめております。
お一人は私が現在(仮)で仕えるアルーステン辺境伯の御息女リーシャ様、もうおひとかたがそのリーシャ様のご婚約者様であるパーレル小伯爵です。
リーシャ様にお仕えはしていますが、実を言いますとお嬢様にお会いしたのは昨日が初めてで御座いました。
私や父が本来所属していますのは王宮なのですが、現在は陛下より派遣されてアルーステン辺境伯家のタウンハウスの維持管理を担当しております。
こちらに来て父は15年、私は半年になります。
私はリーシャお嬢様付きの侍女を任されました。半年ほど前に長らく延びに延びておりました、アルーステン家とパーレル家の婚姻の日取りがやっと決まりまして、その際に陛下から直々に依頼されて派遣されたのです。その前は陛下付きの侍女でした。
態々陛下自らが書状を持っての依頼でしたのでその際に理由も聞かせて頂きました。
アルーステン辺境伯一族には、全員ではございませんが特徴があるそうです、それが表情筋の沈黙。俗に言う無表情でございます。何故それで?と皆様もお思いになられるとは思いますがまぁお聞きください。
昨日お会いしたときには私は然程感じませんでしたが、王城へ向かう馬車の中でリーシャお嬢様の思いの丈をお伺いした時に、この事か!と納得致しました。
馬車の中で私はお嬢様の『推し』についてのご高説を伺ったのですが、あっ!推しという言葉については私の歳でも知っておりますのご心配なくホホホ。
その思いを、息つく間もなく、ずっーと語って、えぇ言葉通り語ってくださったのです!ですがいえそうですね、語りの口調は熱の篭った物だと私には何とか伝わりました。
ただ、本当に残念な事にその熱い言葉を全て無表情で繰り広げられました。
正直もうしまして陛下や父から聞いていなければ、私も畏怖を感じたでしょう、それほどに、前もってお嬢様の事を聞いていた私でさえもただ一言申しますなら少しだけ「怖かった」この言葉につきます。おそらく他の方でしたら馬車から今すぐ降りたいという衝動に駆られたかもしれません。
私がその時の気持ちを例えるならばそうですね、思い浮かんだのは東方の島国で崇めていて皆が折りにつけ拝聴していると聞く『お経』なる物と感じました。いえそれよりも抑揚がなかったように思います。
王城の豪奢な馬車とはいえ、その中はやはり狭いのです。その狭い中かなりの大きな声で無表情で抑揚のないお経を詠んでいる、そんな錯覚をする程の様子で御座いました。
いやぁ~あれは怖い。
本当に怖い、あれほどのご様子は並の侍女では、しかも初見では神経が保てないでしょう。私ですらお嬢様が尚もお続けになられるのを思わず止めてしまいましたから。
そんなリーシャ様ですので、痛みに耐えるという今の眉間の薄い皺を寄せられた表情はレア中のレア物だと私は思いましたの。ですから尚更慌てて直ぐに御者に医官を呼ぶ様に言いつけました。その間も小伯爵はお嬢様と勘違いしていらっしゃる何方かの事を詰め寄っておられます。本当に“脳筋”言い得て妙です、文官なのに。
どうやらお嬢様のお従姉様と間違えているご様子。
私もその方は陛下が表彰されましたので、遠目に拝見させて頂きました。
ですが、そっくりというほどでもございません。
髪色も似ておりますし瞳の色も同じですから、あまりお会いしたことなければさもありなんって所なのでしょうか?
今お嬢様が何度も間違いを正そうとしておられますが相変わらず無表情。いえ痛みによる眉間のうっすい皺はありますが、それがお嬢様には珍しい尚一層の怒りという物を表現しているように思われます。
ただ普通の人はあんなに薄ければ皺にも気付きませんが⋯。それほどに薄いです。0.001mmって所でしょうか?
表情筋がびくともしてないようで、開く口だけが動いている、そんな感じです。やはり恐ろしいですね。
ですがそれをものともせずに言い返す小伯爵もなかなかに強者ですねぇ。
ひょっとしてこのお二人お似合いなのでは?
お一人は私が現在(仮)で仕えるアルーステン辺境伯の御息女リーシャ様、もうおひとかたがそのリーシャ様のご婚約者様であるパーレル小伯爵です。
リーシャ様にお仕えはしていますが、実を言いますとお嬢様にお会いしたのは昨日が初めてで御座いました。
私や父が本来所属していますのは王宮なのですが、現在は陛下より派遣されてアルーステン辺境伯家のタウンハウスの維持管理を担当しております。
こちらに来て父は15年、私は半年になります。
私はリーシャお嬢様付きの侍女を任されました。半年ほど前に長らく延びに延びておりました、アルーステン家とパーレル家の婚姻の日取りがやっと決まりまして、その際に陛下から直々に依頼されて派遣されたのです。その前は陛下付きの侍女でした。
態々陛下自らが書状を持っての依頼でしたのでその際に理由も聞かせて頂きました。
アルーステン辺境伯一族には、全員ではございませんが特徴があるそうです、それが表情筋の沈黙。俗に言う無表情でございます。何故それで?と皆様もお思いになられるとは思いますがまぁお聞きください。
昨日お会いしたときには私は然程感じませんでしたが、王城へ向かう馬車の中でリーシャお嬢様の思いの丈をお伺いした時に、この事か!と納得致しました。
馬車の中で私はお嬢様の『推し』についてのご高説を伺ったのですが、あっ!推しという言葉については私の歳でも知っておりますのご心配なくホホホ。
その思いを、息つく間もなく、ずっーと語って、えぇ言葉通り語ってくださったのです!ですがいえそうですね、語りの口調は熱の篭った物だと私には何とか伝わりました。
ただ、本当に残念な事にその熱い言葉を全て無表情で繰り広げられました。
正直もうしまして陛下や父から聞いていなければ、私も畏怖を感じたでしょう、それほどに、前もってお嬢様の事を聞いていた私でさえもただ一言申しますなら少しだけ「怖かった」この言葉につきます。おそらく他の方でしたら馬車から今すぐ降りたいという衝動に駆られたかもしれません。
私がその時の気持ちを例えるならばそうですね、思い浮かんだのは東方の島国で崇めていて皆が折りにつけ拝聴していると聞く『お経』なる物と感じました。いえそれよりも抑揚がなかったように思います。
王城の豪奢な馬車とはいえ、その中はやはり狭いのです。その狭い中かなりの大きな声で無表情で抑揚のないお経を詠んでいる、そんな錯覚をする程の様子で御座いました。
いやぁ~あれは怖い。
本当に怖い、あれほどのご様子は並の侍女では、しかも初見では神経が保てないでしょう。私ですらお嬢様が尚もお続けになられるのを思わず止めてしまいましたから。
そんなリーシャ様ですので、痛みに耐えるという今の眉間の薄い皺を寄せられた表情はレア中のレア物だと私は思いましたの。ですから尚更慌てて直ぐに御者に医官を呼ぶ様に言いつけました。その間も小伯爵はお嬢様と勘違いしていらっしゃる何方かの事を詰め寄っておられます。本当に“脳筋”言い得て妙です、文官なのに。
どうやらお嬢様のお従姉様と間違えているご様子。
私もその方は陛下が表彰されましたので、遠目に拝見させて頂きました。
ですが、そっくりというほどでもございません。
髪色も似ておりますし瞳の色も同じですから、あまりお会いしたことなければさもありなんって所なのでしょうか?
今お嬢様が何度も間違いを正そうとしておられますが相変わらず無表情。いえ痛みによる眉間のうっすい皺はありますが、それがお嬢様には珍しい尚一層の怒りという物を表現しているように思われます。
ただ普通の人はあんなに薄ければ皺にも気付きませんが⋯。それほどに薄いです。0.001mmって所でしょうか?
表情筋がびくともしてないようで、開く口だけが動いている、そんな感じです。やはり恐ろしいですね。
ですがそれをものともせずに言い返す小伯爵もなかなかに強者ですねぇ。
ひょっとしてこのお二人お似合いなのでは?
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