護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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帰国編

【51】第三部帰国編【挿話】妹愛

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ノルティ・ソードは男爵家の次男
彼は生まれた時はお先真っ暗な人生だった。
そもそも男爵家は尤も平民に近い貴族だ。
準男爵という爵位もあるがモンマルトルでは現在はいない。

ソード男爵家は与えられた領土も小さい。
町長レベルの広さの領に何があるか⋯何もない
特産品もなく領民が各々の食い扶持をせっせと耕して作っているような所だ。
当然税収も少ない。
国に納める税も最底辺であるから何とかやっていけている状態だ。

そんな家の次男に生まれたのだ、貴族とは名ばかりの平民一直線の人生。
当主のソード男爵は実は娘を期待して二人目を拵えた。
娘ならば子爵家かソード男爵家よりも裕福な男爵家または豪商の平民の格付けの為の婚姻が出来るのではないかと、貴族らしい一発逆転を狙って毎晩励んだのだが、出てきた子には付いていた。
赤子なのに立派なものが⋯。

男爵は新たな生命に嬉しくもあり期待していた分残念でも有りと複雑な面持ちで赤子のを見つめていた。

だがそんなお先真っ暗な人生にはさせてはならぬと男爵はノルティに自身の持ち得る技量を与えようと奮起した。
兄であるカインと同じように教育も施した。
なんなら二人纏めて学ばせた方が安上がりとばかりに、長子のカインが5歳から始めた教育を二つ下のノルティも同じ部屋に放り込んで学ばせたのでノルティは3歳からで教育を受けていたのだ。

カインも男爵家の子供にしては優秀だったがノルティは其れを遥かに上回った。
剣術は男爵の幼馴染が王宮騎士団に所属していたので破格のお礼のみで、仕込んでもらった。
二人の子供は基本だけ学び後は勝手に成長してくれた。

そして運命の分岐点
カインは当然王都の学園に通わせる、だが次男まで通わせる余裕は男爵家には無かった。
何処で生活しても困らないようにと教育してきた次男は思ったよりも優秀で、その優秀さが不憫であった。

そんなある日くだんの幼馴染がその話しを持ってきてくれた。
彼の家は子爵家で第一王子派であった。
ソード男爵家はモンマルトルの派閥制度の中でも割と異質(男爵はそうは思ってない)で貧乏すぎて何処からもお声がかからない無派閥の家だった。

「第一王子が君の家の次男に興味を示したんだ」

「本当か?でも何故突然、接点などあったか?」

「お前の上の息子だよ」

「カインが?」

「あぁ彼は一年ながら優秀だったから第一王子のアルフォンス様のお目に止まってな、良くお声をかけて下さっていたようなんだが、カインが弟の方が優秀だと言ったそうだ、そして家の事情も話したんだ」

「家の事情とは⋯貧乏な事か!」

「そうそう、優秀な弟は家の事情で学園にも通えないとな。其れを聞いたアルフォンス様が一つ提案をしてきた、君に打診してくれと」

「何を?」

「一つ目は第一王子派になる事、二つ目は帝国に留学する事。あぁ心配するな費用は全てアルフォンス様が出してくれる」

「帝国に?」

「あぁココだけの話だぞ他言無用で頼む、息子にも言うなよ。帝国で鉄道という事業が起ころうとしているのだ」

「鉄道?何だそれは」

「俺にもよくわからん、だがアルフォンス様は興味がある様だ」

「それで?」

「其の事業にモンマルトルも一枚噛みたいがモンマルトルと帝国はそこまで友好国でもないからな。何人か帝国に留学させてはいるがそこそこの優秀さではその話しを聞く事もできていない。幾ら帝国でも国を上げての事業だから優秀な学生には何らかの声がかかるはずだ、とくに留学生にはな」

「留学生に?」

「あぁ、国に帰って資金調達してもらうためだよ。そういう学生が国単位で何人か報告が上がっているのだ。だがモンマルトルにはまだ話しが来てない。それで優秀な学生が欲しいんだよ」

「そうか!ノルティにチャンスが巡ってきたんだな」

「そうだよ!君が生まれたてのノルティのを見て絶望しても蔑ろにせずに当たり前にちゃんと育てたご褒美が来たんだよ」

「だが今までみたいにノルティにも話しが帝国から来なかったら?ノルティに罰が下ったりはしないよな?費用を返せとかなったりしないか?それだったら断りたい、ノルティが可哀想だ」

「そんな事はない、今までの学生達も普通に王宮で働いたり騎士団に所属したりしている」

「そうか!ならノルティに話して見るよ。鉄道の話しをしなければいいんだろう」

「あぁノルティが喜ぶ顔を俺も見たいから同席したい」

二人はノルティに話しをして彼を帝国へ送り出した。
優秀すぎるノルティは、留学試験も特Aを取り中等部から高等部への飛び級まで果たして、その時に帝国より鉄道の話しを聞かされた。
そのままアルフォンスに話しが行き第一王子は甚くノルティがお気に入りになった。

そしてユメールの護衛騎士選抜の際にアルフォンスはノルティを急遽呼び戻して、選抜試験を受けさせた。
当然受かったノルティにアルフォンスはある事をした。

「ノルティやはり君は優秀だな、推薦した私も鼻が高い」

「お褒めに預かり恐悦至極であります」

「うん、ノルティお前に頼みたい事があるんだ」

「何に変えても王子の命は承ります」

「命令ではない、お願いだ」

「?」

「兄として妹の為に願いたい。ユメールは子供の時から王女でなプライドが山の如しだ。全く可愛げがない。その反動で素では愚痴ばっかり言っている」

「ユメール様がですか?」

「お前あの見てくれに騙されるな、猫をバンバン被ってのらりくらり生きておるんだぞあやつは」

ノルティは顔合わせの時のユメールは笑顔こそ封印していたようだが、綺麗な天使のような方だと思っていた。そんな己の偶像アイドルが、目の前の彼女の兄によって崩された。

「それで?」

「兎に角守ってほしい甘やかせとは言っていないぞ、ただアレの心を守って欲しいんだ」

「そんな懸念があるなら帝国になぞ行かさなければ良いのでは?」

「あの跳ねっ返りが望んだんだ、兄としては見送るしか出来まい。だがあの皇子は少しばかり腰抜けだからいつか躓く、その懸念がある以上アレの心が壊れるかもしれないと思ってな」

「⋯⋯」

「だからユメールが帰りたいと言った時は何を於いても帰す努力をしてくれ、なぁに鉄道の事があるから簡単には婚約白紙にはならない。婚約したままで帰って来させて帝国の腹を見極めたいのだ。そんな事が起きなければ尚結構だがな。鉄道事業は何処の国も噛みたいんだよ、横槍がバンバン入るだろうから。そんな国単位の事にユメールの恋心を潰されたくない」

「過保護では?」

「兄が妹に過保護になって何が悪い!この国は派閥制度で成り立っている。王家は家族愛が薄いんだ。だがそんな垣根を超えて私と遊んでくれたユメールは私の中では可愛い可愛い妹なのだ」

アルフォンスの支離滅裂な妹愛に呆れながらも半ば強引に了承させられたノルティは、その後再度の帝国での生活でユメールの魅力に虜まれアルフォンスのお願いを忠実に守るのであった。


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