護衛騎士が勝手に侍ります(泣)

maruko

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帰国編

【56】

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部屋に戻るとマリーが手紙を持って待っていた。

「何?」

無言で渡すマリーに一抹の不安
姉のサリーナからだった。
不安気に見るユメールヘ安心させるようにマリーはいつものハグをした。
ユメールは気持ちを落ち着かせるように一つ深呼吸をしてソファに座り手紙を開く。

万が一ユメールの気持ちを慮ったとしても手紙だった。
手紙を膝に置き天井を見上げる。

「お姉様は牢で何と仰ってるって?」

「セタナールへはユメール様を行かせると⋯」

「フッ」

ユメールは、つい鼻で笑ってしまった。
(やはり姉は姉だった、よくもまぁ16年も隠してくれたもんだ)
ユメールの猫被りの上を行く所業だと彼女は考える。

「相変わらず自分本意なのね、でも私の為だと書いてあるわ」

「最果ての果てに嫁ぐのがですか?」

「えぇ、ご自分の罪を忘れてらっしゃる所がお姉様らしいわね」

サリーナは自分の罪を罪と感じていない、何故なら恋しい人を得る為に自分が出来る事をしただけだから⋯というのが彼女の言い分だ。

だが帝国のユメールへの婚約の打診を派閥ぐるみで隠蔽した事に紛れもなくサリーナも加担していた。

国と国との書簡を握り潰すのは大罪だ。
其れが解っていないのだ、そろそろ牢に入って一年近くなるがまだ頭が冷えないらしい。
まぁ貴族牢などサリーナには堪えないかもしれない。
いっそ侍女を全員引き揚げさせれば解るだろうか?
そんな事を考えていたらマリーが珈琲を目の前に置く。
このタイミングで帝国の特産など出すなんて。
睨みながら口を付けると意外と落ち着いてしまい悔しい。

「そういえばお姉様の護衛騎士達って如何してらっしゃるのかしら?」

「サリーナ様の貴族牢の門番をされていらっしゃいます」

「えっ?そうなの⋯其れはお気の毒な」

王宮騎士は騎士の中でも花形の職業だ、皆憧れを抱き入隊だけでも名誉な事と励んでいたのに、姉の護衛騎士だったというだけで門番とは⋯人の運とはわからぬ物とユメールは憂いた。

「⋯⋯サリーナ様は何と?」

カリーナが聞いて来たが返事に躊躇してしまう、兄が言っていた姉は王族ではないという言葉が蘇る。

「⋯⋯自分が帝国に嫁いでマルデリータ様を始末してやるから代われと仰ってるわ」

「始末⋯⋯ですか」

「えぇどんな始末か考えるだけでも恐ろしいわね、戦争したいのかしら?」

本当に姉は視野が狭くなっている、子供の時からそうだっただろうか?
もっと小さい時は共に学んで遊んで楽しかった記憶も沢山あるのだ。
其れが何時しかサリーナはユメールの事をライバルと見るようになったらしい。
おそらく派閥を自分なりに理解したのだろうと思うが、ある日突然だったのかジワリジワリそうなったのかが思い出せない。

コンコンコン
その時ノックの音が響いた。
カリーナが見に行くとノルティとルパートであった。
話しがあるというので入ってもらった。

「如何したの?」

訊ねるユメールに何も言わない二人。
暫く待っているとノルティがルパートを体で押す。

「あっ」

ルパートが押されて思わず声を上げた。
その様子から話しがあるのはおそらくルパートなのだろうと推察して、ルパートの方をじっと見ると彼の顔が朱に染まる。
耳までトマトのようだ。

「ルパート話しがあるのね、どうぞ聞くわ」

「ユメール様!あの⋯助けてください!」

突然のルパートの哀願に驚いたユメールだったが、マリーが冷静だった。

「ルパート殿、突然そんな事を言われてもユメール様がお困りです、詳しくお話してからです。そもそも何故上司に当たるセントリーナ卿に相談されていないのですか?」

「マリー様、申し訳ありません、私がルパートにユメール様に相談しては如何かと勧めてしまいました、叱責なら私にもお願いします」

ノルティが謝罪するが、ユメールは不思議に思った。
ノルティの生家はアルフォンス派だ。
今こそ彼はユメールの護衛騎士だがアルフォンスの方が親密度から言うなら近いはず、それなのにユメールに相談事を持ちかけると言う事は、どう言うことだろう?

ユメールは不思議に思う気持ちを体で表現してしまった様で、またまた首をコテンとして今回はそのまま上目遣いで二人を見てしまった。

その表情は思春期から青年に切り替わる時期の彼らには凶器だ。

自分の仕草が男の心を擽るなんて彼等に“素”を曝け出してしまったユメールは全く気づかない。
そろそろ自覚させなければと、その場にいる侍女二人は思うのであった。




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