37 / 53
モルトワ子爵家の変革
兄
しおりを挟む
カイルと二人で出かけた日から数日後、兄が訪ねてきた。
カイルと海に行ったあの日、家に帰ったら姉の使いが待っていて、そのまま姉の邸に向かった。
そこにはロイドもいて、そして母もいた。
今モルトワ子爵家は父から兄に家督を継承する為に色々と動いてる最中なのだとその時聞いた。
母の膝に座るロイドは私の寂しかった気持ちを他所にご機嫌だった。
色々な事が片付くまでは取り敢えず母は姉の所にいるという。
そんな中での兄の来訪
何故私を直接訪ねて来たのか真意がちょっと解らない。
「入ってもいいか?」
「どうぞ」
「どうじょ」
私の真似をするロイドを眩しそうに眺めている兄の顔を見ていた私に
「そんな顔するな」
と言われたがどんな顔だろう?
「仕事前なのですが⋯」
「あぁ忙しい時に悪かった、急いできたから何か飲みたくて⋯⋯」
図々しい兄にお茶を煎れてあげると「生き返った」と大げさなことを言う。
「悪かった、今日仕事が終わってから話したいんだ、出来れば二人で話してからそれからライナ達とも話したい」
図々しいと、またまた思ったが家の事だろうと了承した。
ロイドの着替えをさせて外に出ると帰ったはずの兄が馬車の前で待っていた。
「行き先は同じなんだ一緒に行こう」
親切心から言ってるのが解っていたがまたもや図々しいと思ってしまって心の中で自分を笑う。
いつもの様にロイドを預けに来た私が兄と一緒で執事が驚いていた。
それはそうだろう
ロイドをお願いして仕事に行こうとすると馬車で送ると兄に言われたが丁重に断った。
そういえば兄にお礼を言うのを忘れていた事に傍と気付いた。
先日義姉からロイドに誕生日のプレゼントが届いた。
一体いつ着せる機会があるのだろうかと思うほど豪華な子供服と知育玩具だった。
手紙にはサイズが解らなくて一般的な3歳の男の子で作ったけれどお直しは可能だからと3年間知らなくて何も出来なかったとお詫びが認められていた。
話す時にお礼を言わないとと思いながら今日の業務に取り掛かった。
仕事が終わり外に出ると兄が待っていた。
馬車の近くに立ち馭者と話をしていた、数日前のカイルを思い出して、いやだ兄と重ねるなんてと思った自分に驚いた。
別に重なってもいいじゃない
そう考えながら兄の方へ歩を進めると兄が手を上げた、またあの日に重なる⋯だから!!⋯⋯⋯。
自分の脳内が変になってしまったのかと落ち込みながら馬車に乗った。
連れて行かれたのはカフェだった、姉のお薦めだそうだ。
いえいえ私もこの地に住んでいるからここは知ってると喉まで出かかって止めた。
要らぬ事は言わないほうがいいと判断した。
何故なら兄が得意気な顔をしていたからだ。
頼んだ珈琲を一口飲んでから兄は先ずはと謝罪をした。
因みに私も頼んだのは同じく珈琲だ。
「マリナはしなくていいと言ったが私の自己満足かもしれないが謝らせてほしい」
そう言って幼い妹を気遣えなかった自分を恥じていると謝っていた。
私はそれをぼんやりと眺めたが、一つも怒りが湧いてこなくて、自分の中で既に昇華していることに気付いた。
だが「いいの」と言ってしまっていいのだろうか?
あぁ昇華はまだだったと自分で自分を冷ややかに笑う。
「今日のお話というのは?」
「あぁ叔母のことだ」
「あの人⋯⋯のことですか」
「母上の前で話してしまうと気に病むだろう、今は小康状態だが、その、あまり良くはないから」
母が弱っているのは王都で会ったときに母に聞かされていたので知っている。
叔母が私を虐げた話など母の心臓を止めてくれと言う様なものだ。
私は一応兄の行動を理解した。
「その、言いにくいだろうし今更なのは本当に解っているし、マリナの気持ちを考えると無理にとは言えない、だが何があったのか。私が目を反らしていた日々に何が起こっていたのかを知りたいんだ」
「聞いて如何するのですか?」
「叔母を追い出すのは決定している。今隔離しているんだが、現状ではそれしか出来ないんだ。罪を知りたい、ちゃんと罰したいんだ」
そう言って兄は私に説明してくれた。
叔母の罪は現状では当主に対しての虚偽報告のみだそうだ。
それは父が叔母を信用しすぎた結果とも言える。
領地にいる叔母が父から依頼されたのは家政を取り仕切る事と私と姉が学園に入るまでの養育。
私と姉が成人してからは領地のモルトワ子爵家の邸の管理だ。
本来なら事細かに予算を割り振ってお金を渡す筈が妹を信じきった父が割り振らずに予算だけを一括で毎月渡していた。
報告が虚偽だった事は責めることが出来るが横領には当たらない。
何故なら報告をする義務を課してなかったからだそうだ。
あの報告は変な言い方だが叔母の善意だという。
「報告義務を課してなかったって事?」
「あぁ」
「お父様は馬鹿なの?」
「⋯⋯そうかもな、領地を預かる者としてはそうなるな」
兄の言い方が解せないのが顔に出ていたようだ。
「例えば父上と同じ状況が私に起こったとして叔母と同じようにライナが申し出てくれたとしたら私も父上と同じだったかもしれない。でもマリナも自分に置き換えてみてライナが子供にそんな事をしてるとは思わないだろう?」
思わず兄の例え話に納得してしまった自分が悔しい。
でも姉がそんな事をするはず無いと私は知っているのも本当だ。
あぁ父にとってのあの叔母は、私にとっての姉だったということなのか。
「だからといって叔母をそのままなわけには行かない、表向きにはこれ以上は何も出来ないんだ。だが⋯⋯」
「?」
「スタンリー公爵が児童虐待の罪には問えるのではないかと提案してくれた、その代わり父上も連座になるが、父上は覚悟を決めた」
兄はそう言って私をジッと見つめた。
カイルと海に行ったあの日、家に帰ったら姉の使いが待っていて、そのまま姉の邸に向かった。
そこにはロイドもいて、そして母もいた。
今モルトワ子爵家は父から兄に家督を継承する為に色々と動いてる最中なのだとその時聞いた。
母の膝に座るロイドは私の寂しかった気持ちを他所にご機嫌だった。
色々な事が片付くまでは取り敢えず母は姉の所にいるという。
そんな中での兄の来訪
何故私を直接訪ねて来たのか真意がちょっと解らない。
「入ってもいいか?」
「どうぞ」
「どうじょ」
私の真似をするロイドを眩しそうに眺めている兄の顔を見ていた私に
「そんな顔するな」
と言われたがどんな顔だろう?
「仕事前なのですが⋯」
「あぁ忙しい時に悪かった、急いできたから何か飲みたくて⋯⋯」
図々しい兄にお茶を煎れてあげると「生き返った」と大げさなことを言う。
「悪かった、今日仕事が終わってから話したいんだ、出来れば二人で話してからそれからライナ達とも話したい」
図々しいと、またまた思ったが家の事だろうと了承した。
ロイドの着替えをさせて外に出ると帰ったはずの兄が馬車の前で待っていた。
「行き先は同じなんだ一緒に行こう」
親切心から言ってるのが解っていたがまたもや図々しいと思ってしまって心の中で自分を笑う。
いつもの様にロイドを預けに来た私が兄と一緒で執事が驚いていた。
それはそうだろう
ロイドをお願いして仕事に行こうとすると馬車で送ると兄に言われたが丁重に断った。
そういえば兄にお礼を言うのを忘れていた事に傍と気付いた。
先日義姉からロイドに誕生日のプレゼントが届いた。
一体いつ着せる機会があるのだろうかと思うほど豪華な子供服と知育玩具だった。
手紙にはサイズが解らなくて一般的な3歳の男の子で作ったけれどお直しは可能だからと3年間知らなくて何も出来なかったとお詫びが認められていた。
話す時にお礼を言わないとと思いながら今日の業務に取り掛かった。
仕事が終わり外に出ると兄が待っていた。
馬車の近くに立ち馭者と話をしていた、数日前のカイルを思い出して、いやだ兄と重ねるなんてと思った自分に驚いた。
別に重なってもいいじゃない
そう考えながら兄の方へ歩を進めると兄が手を上げた、またあの日に重なる⋯だから!!⋯⋯⋯。
自分の脳内が変になってしまったのかと落ち込みながら馬車に乗った。
連れて行かれたのはカフェだった、姉のお薦めだそうだ。
いえいえ私もこの地に住んでいるからここは知ってると喉まで出かかって止めた。
要らぬ事は言わないほうがいいと判断した。
何故なら兄が得意気な顔をしていたからだ。
頼んだ珈琲を一口飲んでから兄は先ずはと謝罪をした。
因みに私も頼んだのは同じく珈琲だ。
「マリナはしなくていいと言ったが私の自己満足かもしれないが謝らせてほしい」
そう言って幼い妹を気遣えなかった自分を恥じていると謝っていた。
私はそれをぼんやりと眺めたが、一つも怒りが湧いてこなくて、自分の中で既に昇華していることに気付いた。
だが「いいの」と言ってしまっていいのだろうか?
あぁ昇華はまだだったと自分で自分を冷ややかに笑う。
「今日のお話というのは?」
「あぁ叔母のことだ」
「あの人⋯⋯のことですか」
「母上の前で話してしまうと気に病むだろう、今は小康状態だが、その、あまり良くはないから」
母が弱っているのは王都で会ったときに母に聞かされていたので知っている。
叔母が私を虐げた話など母の心臓を止めてくれと言う様なものだ。
私は一応兄の行動を理解した。
「その、言いにくいだろうし今更なのは本当に解っているし、マリナの気持ちを考えると無理にとは言えない、だが何があったのか。私が目を反らしていた日々に何が起こっていたのかを知りたいんだ」
「聞いて如何するのですか?」
「叔母を追い出すのは決定している。今隔離しているんだが、現状ではそれしか出来ないんだ。罪を知りたい、ちゃんと罰したいんだ」
そう言って兄は私に説明してくれた。
叔母の罪は現状では当主に対しての虚偽報告のみだそうだ。
それは父が叔母を信用しすぎた結果とも言える。
領地にいる叔母が父から依頼されたのは家政を取り仕切る事と私と姉が学園に入るまでの養育。
私と姉が成人してからは領地のモルトワ子爵家の邸の管理だ。
本来なら事細かに予算を割り振ってお金を渡す筈が妹を信じきった父が割り振らずに予算だけを一括で毎月渡していた。
報告が虚偽だった事は責めることが出来るが横領には当たらない。
何故なら報告をする義務を課してなかったからだそうだ。
あの報告は変な言い方だが叔母の善意だという。
「報告義務を課してなかったって事?」
「あぁ」
「お父様は馬鹿なの?」
「⋯⋯そうかもな、領地を預かる者としてはそうなるな」
兄の言い方が解せないのが顔に出ていたようだ。
「例えば父上と同じ状況が私に起こったとして叔母と同じようにライナが申し出てくれたとしたら私も父上と同じだったかもしれない。でもマリナも自分に置き換えてみてライナが子供にそんな事をしてるとは思わないだろう?」
思わず兄の例え話に納得してしまった自分が悔しい。
でも姉がそんな事をするはず無いと私は知っているのも本当だ。
あぁ父にとってのあの叔母は、私にとっての姉だったということなのか。
「だからといって叔母をそのままなわけには行かない、表向きにはこれ以上は何も出来ないんだ。だが⋯⋯」
「?」
「スタンリー公爵が児童虐待の罪には問えるのではないかと提案してくれた、その代わり父上も連座になるが、父上は覚悟を決めた」
兄はそう言って私をジッと見つめた。
1,411
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
※短編連作
※この話はフィクションです。事実や現実とは異なります。
「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
佐藤 美奈
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……
幼馴染か私か ~あなたが復縁をお望みなんて驚きですわ~
希猫 ゆうみ
恋愛
ダウエル伯爵家の令嬢レイチェルはコルボーン伯爵家の令息マシューに婚約の延期を言い渡される。
離婚した幼馴染、ブロードベント伯爵家の出戻り令嬢ハリエットの傍に居てあげたいらしい。
反発したレイチェルはその場で婚約を破棄された。
しかも「解放してあげるよ」と何故か上から目線で……
傷付き怒り狂ったレイチェルだったが、評判を聞きつけたメラン伯爵夫人グレース妃から侍女としてのスカウトが舞い込んだ。
メラン伯爵、それは王弟クリストファー殿下である。
伯爵家と言えど王族、格が違う。つまりは王弟妃の侍女だ。
新しい求婚を待つより名誉ある職を選んだレイチェル。
しかし順風満帆な人生を歩み出したレイチェルのもとに『幼馴染思いの優しい(笑止)』マシューが復縁を希望してきて……
【誤字修正のお知らせ】
変換ミスにより重大な誤字がありましたので以下の通り修正いたしました。
ご報告いただきました読者様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
「(誤)主席」→「(正)首席」
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
「子供の親権も放棄しろ!」と言われてイリスは戸惑うことばかりで、どうすればいいのか分からなくて混乱した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる