眠れる森の聖女

maruko

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第一章

いざ森へ!

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アミエルは本日再び森の入り口へとやってきた。
あの試験の日から3ヶ月経過していた。

森の聖女から、いつ声がかかるか解らなかったのでアミエルはこの最西の地、ルージェント領に留まっていた。
他の聖女候補や見届け人は、最終試験の2日後には王都へと戻って行った、勿論『聖女選抜試験』は終了で王都に戻り次第聖女候補達は解散する事になった。

この地に残ったのはアミエルとスザンヌ、ラウチ、新しく任命されたアミエルの護衛騎士ハリスとトムソンだけだった。

アミエルはこの地に留まったが毎日する事がないので領地を見物して回っていた。
森の聖女は極秘扱いになっていたので見届け人以外にはアミエルも話してはいない。
例外はスザンヌとラウチだけだったが二人には口止めしている。護衛達も他の元聖女候補達もアミエルが聖女だと思いこんでいる。

毎日のように領内を回っていたからアミエルはルージェント領にとても詳しくなっていた。
なんなら宿周辺の事には特に詳しい。
宿屋の隣の雑貨屋でお手伝いに駆り出されている宿屋の娘のミルファと雑貨屋の店主が不貞を行っている事も知っている程詳しいのだ。
(そのうちバレて罰が当たるわ)と密かに思っていた。

その日は突然やってきた。
(決して雑貨屋主の不貞がバレたのではない)
朝食をいつものように美味しく頂いていた時にその声は聞こえた。

─おはよう!そろそろいい感じよぉ─

イェナルからの呼びかけだった。

「聖女様お久しぶりですわ」

─そうねぇ、やっと元に戻ってきたのよぉ─

「?それは良うございました」

何が元に戻ったのか理由を知らないアミエルだったが聖女イェナルが喜んでいたから取り敢えず相槌を打っておいた。

─ねぇねぇ来てくれるでしょう?─

「それが、その、私一人で行くのは大変心許ないので、聖女様が出てこられる事は出来ませんか?」

ご足労願うのは失礼かなとアミエルは思ったが森にボッチで足を踏み入れるのは、かなり躊躇するのだ。だから思い切ってお願いしてみた。

─女神様が言うには私が寝てからかなりの時間が経ってるのよ、導く者が居ないと森の外には出られないの、それに今私が出ちゃうと私を護ってくれていた聖獣達がゾロゾロと森の外に出るかもしれなくて。こちらに来てくれたら色々と直接話すわ。あっ!そうだ一人なら供を連れてこれるわよ─

「えっ?本当ですか?」

イェナルの途中の言葉には引っかかりがあったが供を連れていけると言う言葉に反応して、その前の言葉は如何でも良くなってアミエルは返事をした。

─うん!貴方と手を繋いで来ればいいのよ。但し城へ来るまではその手を離しちゃ駄目だからね。そうしないと弾かれちゃうから。城に入ったら手を離してもいいわ。城は特別区域だから─

「ありがとうございます、誰かが付いてきてくれるならすぐにでも森へ向かいますわ」

─待ってるからねぇ─

会話を終えてからアミエルは皆を集めた。
というか皆は始めからその場にいたのだが、スザンヌ以外は聖女とアミエルの会話を聞いたことがなかった為、アミエルが独り言を言っているように感じていた。
護衛騎士のハリスとトムソンに至っては森の中の聖女の事も知らないから、が乱心したかと身構えていた。

今後の事も鑑みてアミエルはハリスとトムソンにも森の中の聖女の事を話した。
王家から正式に発表があるまでは他言無用と口止めも忘れずに。
それからは誰がアミエルと一緒に森の中へと向かうかで揉めに揉めた。
当然だが皆行きたがった。
結界の中に入れるという好奇心もあるが、それ以上に、眠りの森の中にいるに会いたいと皆が手を上げるのだった。
結局は森の中にあるという城までの道程にどんな危険があるかも解らない、ということでハリスかトムソンの2択になり二人で話してもらった結果ハリスに決定した。

そして今森の中へと入るべくハリスと手を繋いだのだが、そこでアミエルは突然我に返った。
(婚約者以外の人と手を繋ぐなんていいのかしら?)
そう思いながら森へと入ったが途端に【バチン】ハリスが弾かれた。
アレレと思っていたら声がかかる。

─駄目よぉ彼、手袋してるでしょう─

見るとハリスは騎士が着ける鎧姿であった。
ガントレットは外していたがその下に着用していたグローブは着けたままになっていた。
手を繋ぐという行為が発生する為、公爵令嬢のアミエルをハリスなりに慮ったのだろうと推察された。
だけどそれを外して素手で手を繋ぐのはアミエルも些か迷う。
(どうしようかしら?)
考えていたら再び声が聞こえた。

─森の中に危険はないわよ、私がいるんだから貴方に手出しはさせないし聖獣達が案内してくれるわ─

イェナルの言葉にアミエルは決断した。

「ハリスごめんなさい、スザンヌと一緒に行くわ。聖女様が守ってくださるそうだから森に危険はないわ」

「⋯⋯承知しました、アミエル様お気をつけて下さい」

「えぇありがとう、じゃあスザンヌ行きましょうか」

アミエルがスザンヌに右手を差し出した。
ハリスとアミエルの会話を横で聞いていたスザンヌはアミエルが自分を指名してくれた時から、ガッツポーズを全身で決めていたのでホクホク顔でアミエルの綺麗な手に自分の手を重ねた。

「さぁ参りますわよ」

アミエルとスザンヌは森の中へと進んでいった。

残された三人は、森の入り口で二人の背を見つめながら、さてさて戻ってくるまでどうやって時間を潰そうかなぁと各々考えを巡らせていた。





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