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しおりを挟むそれからとりあえず一度宿へと戻って、昼に再度ギルドへと向かうことになった。
「俺は寝る!何が何でも寝る!起こすな!大人しくしてろ!!!」
そして昼まで起こすなとゾドムは言うなり自分の部屋に篭ってしまった。短期は損気という言葉を知らぬのかあのドムチョ。冒険者なんて不眠症の奴らばかりだと料理長は言っていたのに。
『ご主人、アタシ達も休みましょ。ご主人寝てないシ』
と、リィが言うので渋々我も布団へ潜った。
まあ、案の定眠れないので、羊皮紙を取り出す。依頼書だ。
【港町お使いリスト 3日間(予定)】
・迷宮で宝石をとってきて商業ギルドに届ける
・商業ギルドにまとめてあるエディン宛の荷物を回収する
・港町からエディンまでの商隊の護衛(3日目)
『コレもお菓子袋に入ってたのかしラ?』
「うむ。一つめは終わったも同然なのだが。商隊の護衛ということは、そこまでは居なくてはならないな。まったく」
『ねえご主人?折角だから町の中見に行きまショウ?』
「ドムチョが起こすなと言っていたぞ?」
『ええ。起こすな、とは言われたけれど、出かけるなとはいわれてないモノ』
………。りぃ…。お主も悪よのう…。と、言うわけで我らは出かけることにした。なに、ドムチョが起きてくるまでのほんの少しの間だけだ。
小さくなったリィを定位置に、窓から飛び降りて宿を出る。次は屋根から降りて窓の中に入れば良かろう。
まだまだ早朝だが、港町らしく海の男達は起きていた。皆それぞれ網を引き船を操舵し、逞しい筋肉が目白押し。リィのテンションが爆上がり。……リィ、もしやリィがこれを見たいが為に我を唆したのか…?図られた?我、相棒に謀られた?
『ぬっはー!絶景!ココ最高じゃナイ!』
「……リィが、楽しそうでなによりだ」
リィの目が釘付けだな…。仕方ない。放置して何か面白いもの探しにいくか。気が済んだら勝手に来るだろう。
歩きながら町の様子を観察する。少し前に行ったスキンヘッドの海の街は、商船や釣り船ばかりだったが、こちらも似たようなものなのだな。客船が停まるような港ではないらしい。
客船が停まるような港を持つ街は、王都と同じくらい大きな町らしい。通りがかった店のおかみが教えてくれた。仕入れたという魚を運ぶのを手伝ったら朝食を振舞ってくれた。美味かった。
「おかみ、おかみ、飯のお礼に何か手伝う事があれば遠慮なく「ルイーダさぁん!大変ですッ!!」…いってほしい…」
おかみ…ルイーダ殿の店に慌ただしく入ってきたのは、5名。ガタイのいい男に肩を貸しながら、同じくらいの大きさの男たちが3人。残り1人は女性だ。…コリーと同じくらいの年頃か?支えられている男が1番ひどい怪我をしている。他も腕やら足やらに包帯巻いてる。
「アンタ!どうしたんだい!?」
…どうやら肩を借りて入ってきたのは、ルイーダ殿の旦那らしい。うーむ。美女と野獣…。さばさばした姉御肌っぽいルイーダ殿を射止めたその幸運が羨ましい。
「グンジさん達、若いのが落としちまった角材がぶつかっちまって…!」
「下敷きになっちまってな。すぐコイツらが助けてくれたんだが、腰やっちまったみてえだ」
「すぐ部屋に!」
わたわたと動き始めるルイーダ殿。旦那を支えている男たちを誘導して奥の方へ。残ったのはあの女性と、もう1人若い青年だ。
…うーむ。身長の小さい我が座っているせいか余計に気付かれないようで、2人は我の頭の上で話し合いを始めた。盗み聞くようでアレだが、勝手に耳に入ってくるし、そのまま聞き流すことにしよう。
「親方たちが居ないんじゃ、今日の荷運びは無理だろ…」
「でも期限は今日までなのよ?それに、角材を落としたのは向こうの見習いのせいでしょ?!責任とって期限を伸ばして貰えばいい!」
「そういうのが通じない相手だから親方も受けるの渋ってたんだろ?!」
その後も何故か喧嘩腰で話は続く。
成る程成る程?商船から商会の建物までの荷運びを頼まれたが、そこの商会長は物凄く意地が悪く、隙あらば仕事にケチつけ報酬を減らそうとしてくると?
今回角材を船から落として従業員に怪我を負わせたのはその商会の輩の1人で、それを理由に期限を延ばさせたいが、却下された挙句に仕事が出来なくなるように評判を落とされかねないと。ふむ。
……それにしても、よく回る舌だな。我、そこに関してだけ感心。しかし、いい加減うるさいな。
「うるさい。誰かの食事中は静かに。埃を立てられては折角の食事が台無しだ」
あまりにもうるさくて口出してしまった。
2人は視線を彷徨わせた後、我に漸く気付いたらしい。明らかに驚いた顔を見て逆に腹立つ。本当に我に気付いてなかったんかい。
我、それなりに美少女なのに…!!
「ご、ごめんね…?」
「ご飯の邪魔して、すみません…?」
「うむ。で、先ほどから騒いでいる問題の荷物はどこだ」
何で?と首を傾げる2人にいいからさっさと案内しろと意味を込めて笑顔を向ける。
おかみへの礼がまだ済んでおらんのでな。
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