前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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「ご飯たべたいから早く済ませよう。
先ずアリスちゃん。宝石ありがとう!商業ギルドは大助かり!取ってきてくれた中で純度と大きさがかなり良かった秘宝クラスは君に返すね。ご褒美!」

ルーエンの示すゴング人形が持っていた布袋には我の掌程の石が入っているようだ。…うむ、多いな。けっこうな重量だな。そうとう希少だったらしい。値段が付けられないから放棄したな?今度漬物の重し石を欲しがっていたリタ殿に綺麗なやつをあげよう。

…ああ、我がいつ宝石を取っていたのかというと、迷宮内にいた時常に、だな。暇すぎて。流石に入ってすぐのところにはなかったのだが、あのヘビのところに続く別れ道付近にはゴロゴロあった。
勿論表層にはない。魔法で深いところから引き摺り出しただけだ。我はなるべく大きなものを狙って出していたのだが、モヒカン待ちしてるときにゾドムがドン引きしながら、もっと小さいやつでいいと言うからそれからはクズ石と言われそうなやつを中心に集めたのだ。

「質のいい宝石だから皆喜ぶよ。
魔物も倒してくれたみたいだし。これで安心安心。首だけはウチのギルドの職員が引き取ってきたみたいだけど、胴体とかはまだ迷宮の中なのかな?まだ見つかったって報告が無いんだけど、深部だったりする?」
「胴体なら我の収納の中だな。この部屋に出してもいいが、……窒息してもいい?」
「ケーキ食べていい?みたいに言われても…」

というか、そんなにデカイの?確かに頭でかかったけど。というルーエンをよそに、クレア殿が後で回収場に案内するから、その時によろしくと言うので引き摺り出すのは大人しくやめておく。

「此方からの依頼の品物については回収場に纏めてあるからな。
さて、私たちが出てきた理由があるとすれば、君たちへの報酬の一部というべきかな。

エディンでのアリスちゃんの活躍は妹から事細かに聞いているよ。
推察するにAランクの戦闘力は有しているだろう。そこで、エディンのギルマス、私、そしてルーエンの推薦でAランクに押し上げることにした。
推薦状を王都の冒険者ギルドに送ったから、暫くしたら召集がかかる。王都のギルマスと面接して問題なければそのままAランクに上がることになる」

召集にはきちんと応じてほしい。推薦した我々の評価にも関わってくると言われてしまえば行かないわけにもいくまい。クレア殿の評価に響くと言うのなら我は千の槍が降って来ようが地面が割れて溶岩の海が広がろうがきちんと王都のギルドまで辿り着こうではないか。

それはさておき、Bランク通り越してそれはアリなのか。

「アリスちゃんが重ねてる功績なら、本来Cランクから始めて然るべきだったんだよ。いくら身内のゴタゴタで忙しかったからって、ラドンはエルサに仕事任せすぎ。
もっと早く僕らに事情説明してアリスちゃんをせめてBランクに上げるべきだった」

ラドン?と声に出さずに首をかしげたところ、ゾドムがエディンのギルマスだと補足した。ああ!確かに!ラドンって言ってた気がする!ほら、我人の形をしたマッチョの名前を覚えるのは苦手だから仕方なかろう。

そういや前も身内の事で忙しくて王都に行ってたとかなんとか…言ってたような…?

「…普段から自分の機械いじりに夢中になって副官に仕事丸投げしてる商業ギルド長の言えるセリフでは無いとおもうが?」
「うん。それはごめんなさい」

怒らないでクレア、と恐る恐る様子を伺うルーエン。チッ、容姿の使い方分かってやがる。無自覚でやってるとしたらとんだ天然ショタじじいだ。敵認定したい。
クレア殿も見た目詐欺効果で満更でも無さそうだから余計腹立つ。

「…それから、ゾドム。君のBランク昇級試験の推薦状も用意してある。私とルーエンの連名だ。十分ギルマス1人分として認定してもらえるだろう」
「…おう」

ゾドムが封書を受け取った。それがそんなに欲しかったのか。試験なんぞ受けずに仕事いっぱいすればいいのに。

「今回の討伐の報酬はどうする?」
「化け物ぶっ潰したのコイツだから俺は要らねえ。危険行為をしたアイツらは自動的に報酬は無し。ただ俺が倒して回収した素材の報酬は俺のでいいだろ」

いいなら異論はないが、ドムチョを囮に使ったので1割程度はやらんでもなかったのだが。
…本人が気にしてないならいいか。だが渡す前に胴体一部分切り落としておこう。レシピが見つかっても材料無いと意味無いからな。

「処分になるあの2人はこっちで取り調べが終わったらエディンに送る。アリスちゃん達は気にせず商隊をエディンまで護衛してくれ」
「人数減るけど大丈夫?一応商隊を此処まで護衛してきた冒険者パーティーも付いてくるみたいだけど…」
「うむ。問題ない。早朝出ると言う事は夜にはエディンに辿り着くだろう?」
「まあ、普通に、何事も無く進めばね?」
「ならば問題無い」

辿り着かないと言うのなら、辿り着かせるまでだからな。
何する気とリィが訝しげに我の頭の上でペシペシと前足をバタつかせるが、心配はない。いざとなれば記憶消去っていう便利な魔法があるのだから。

料理長も言ってたしな。都合の悪い事は目撃者をちょちょいとすれば問題無しと。

「「「ちょちょい…」」」
「何か?」
「「「なんでもない……」」」

話も終わって我はクレア殿のお勧めの店にて食事を楽しんだ。なんとルイーダ殿の店だった。世間とは狭いものである。



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