前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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「…と、言うわけで凍らせてみた。
反省も後悔もしていない」

というか、我が反省なんてする必要無いと思う。

エディンの冒険者ギルドにて、我は今事情聴取をされている。
……何故だ!!

『森一つ凍らせたらそうなるわよネ』
「ちゃんと溶かしたのに!」
「そりゃあ森どころかあの辺一帯が急に氷漬けになって、その後一瞬で炎に巻かれて消えるところが見えればそうなるだろ」
「森には一切被害を出していないのに!?」

それもだが、そこじゃねえよとゾドムが言う。リィも呆れた顔をするが、何が違うと言うのだろうか。

「アレだけの魔物を取りこぼしなく、時間をかけずかつ被害を出さずに駆除するには、動物の習性を利用するのが1番確実だろう?」

そうだとも。我はあくまでも、ドムチョがなる早って言ったからそうしただけだもの。そこを強く主張したところ、エルサ殿が(我の常識知らずに気付いていながら)規模のコントロールを忘れるような注文をしたドムチョにも責任があると認めたので同罪と判断した。連帯責任というやつだな!我はドムチョが9割悪いと思う!

早くしろって言われたからやったんだもんという更なる主張は華麗に無視された。しょぼん。

「極寒の中で動きを止められてしまえば、動物は眠りにつくことしか出来ない。内臓まで凍りつき、動かなくなってしまえば手を下すこともなく息絶える」

生物なんてそんなものだろう。

「たった数度の体温上昇・下降で呆気なく死ぬ。人間も含めてな。全くもって儚すぎるものだな」
「……。ちょっと待て。つまり間一髪巻き込まれかけた俺は、危うく死ぬところだったってことか?」
「…………料理長のレシピ集どこだっけな~」
「おいコラ」

現場に着いて我は迷わず魔法をぶっ放すことに決めた。というか、決めた瞬間に発動させた。

マズイと思ったリィがマッチョを連れて逃げたために、凍らなかったんだからいいじゃないか。もし息の根止まっても蘇生してやる予定だったし、怒らなくても良いではないか。3秒ルール、3秒ルール!

……我のすぐ近くにいれば凍ることは無かったという事実は言わないでおこう。

「まあともあれ、1番良い方法だと思い、実行した。何か異論はあるか」

ギルマスは頭を抱えて悩んでいる。
…まあ、それもそうだろうな。

『森にも被害はなく、大量の魔物だけを駆逐、怪我人も実害も無し、まあご主人を責められる訳ないワよね』
「だろうな」

問題があるとすれば、

「アリスちゃんが大規模すぎる魔法の使い手だって事を大々的に宣言するような状況になってしまったことはマズイかもしれないわ。森に一切被害を出さず、魔物だけを綺麗に殲滅して元に戻す。それはかなりの魔力量と魔法コントロールがなければ出来ない。
アレは遠目からも見られていたし、今日は王都が拠点の冒険者達も多かったから、もう噂になってるもの」
「また呼び出しがかかったしな……」

アレだけの事を出来る冒険者がほぼ野放しという状況が知れ渡った事だろうな。そもそも我はこの時代の魔法の使い手がアレを出来ないなんて事を知らなかったのだが。

我が魔物を掃討し、護衛に戻り(こちらでも物凄く心配された。特に商隊長の父から熱烈に。ちょっと暑苦しかった)、その後エディンに到着してすぐに依頼の荷物と一緒に道中駆除した魔物を提出した為、状態から我がアレをやった本人と断定され、ギルマス達に呼び出されたのだ。
で、説明を求められ冒頭につながり今に至る訳だ。

「…まあ、アレだ。お前の登録の時から色々と間が悪かった結果が積み重なった今だからな…。とりあえずあの大規模魔法については俺らの方できっちり報告しておく。近々推薦状の件も含めて王都に呼び出しがあるだろうから、それまでは大人しくしててくれ。依頼も極力受けなくて良い」
「いやしかし、それでは稼ぎが…」
「…そんなにギリギリなのか?」

いや、我も知らんのだけど。
いつも報酬を貰う際に、職員が我の稼ぎの残高を見て物凄く顔を顰めるかドン引きするから、そんなにギリギリで我はやりくりしてるのかと思って。

……わかってる。分かっているのだ。
たしかに、少しだけ…そう、ほんの少しだけ、最近は収納しとけば腐らないから買い食いの際には多めに買い込んだり、商家の令嬢マチルダ嬢から珍しい食材をちょっと値が張るけど買ったり、仕立て屋のシル嬢からちょっといい布を購入してたからな…。出費が多かったというところは否めない。必要経費と我は思ってはいるのだが。

しかし、それを埋める為に我は働く事に精を出したとも!それこそ、ゾドムに聞かれて答えた完了件数を5日でこなす程に。残念ながらそれでも残高が目に入った職員の反応は変わらなかった。

「…そんな訳で、我、自分の財産規模しらんのだ」

その内その日暮らしのアリスちゃんになってしまうだろうか。少し散財は我慢して、依頼こなしまくって資金貯めて早く一軒家とかに移り住んで、骨を埋める場所を見つけるべきなのだろうか。

エルサ殿とギルマスが苦笑。ゾドムとリィは呆れている。…リィ、言っておくが、散財の一部にリィの野菜代も含まれてるんだからな?

「今回の素材の買取金の確認ついでに見てくるわ。アリスちゃん、これからはきちんとお金の管理はしなきゃダメよ?」
「うむ!」

…これでエルサ殿始め何人かのギルド関係者には、我が金の管理についてちょい不安なところがあるという知識がつくから、基本的に残高を把握していなくとも、使い過ぎていたりすれば向こうから余計なお節介で声をかけてくれるだろう。

何せ、我はこのエディンでは不遇の環境のせいで冒険者にならざるを得なかった可哀想な元ご令嬢の少女という認識だからな!!
…まあ、そこまで間違っていないが。

それはさて置き。

「ギルマス、あのガトーショコラ「グトーな。グトー・ガルボデラグ」…とやらはどうなった?モヒカン達の登録含め、だいぶ迷惑をかけたようだが」
「お前は何も悪くねえから気にすんな。新人が脅されて手続きしちまったが、ウチに実害は無えよ。むしろ悪かっな。ウチのが手続きしたばかりに、余計な足手纏いをつけちまって。
だがもう安心してくれ。アイツらエディンからも実質追放されたからな。もう二度とあのバカにここらの敷居は跨がせねえ」
「追放?よく出来たな。あのグトーが素直に追放されたのか?!」
「ああ。"クズはクズ箱に投げ入れて蹴り飛ばせ"って言ってな。"将軍"が直々に街の外まで蹴り飛ばしたんだ。人間ってあんなに吹っ飛ぶのな?その後は塩蒔きまでする念入りさだったな!」

脅されたギルド職員は大丈夫だろうか。心身ともに疲れていないだろうか。どれ女性ならば我が慰める名目でお近づきに……なろうと計画を練っていたのだが、覚えのありすぎるクズの処分方法にそれを考えるのは後回しになった。


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