前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁

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我はただ今、リィと共に王都へ順調に進んでいる。今回はちゃんと正規の道を行っているぞ!
エディンから東に向かって、山超え川超え森を抜け、漸くエディンを含む領の領主のいる街に着く。そこから王都までは大体2日で着くらしい。

さて、そのエディンから王都までの絶妙に長い道のりの中、どこかしこでも子供を狙った誘拐事件が起きているらしい。
別の言い方をすれば、子供だけがある日突然消えているらしい。
全く物騒な世の中だな。子供達の中には将来磨けば光る原石がいるかもしれないのに!

道中で物騒な事件が起きている事をミランダ嬢は酒場に来た冒険者達から、マチルダ嬢は商人達から聞いていたのだろうな。だから引き留められたのだろう。我、子供だし。

「しかし、ただ居なくなると言われても、状況も何も分かったものではないな」

どっかに痕跡が残ってるわけも無いし。

『……一本道の森に入る所から一定間隔で見張りがいて、奥に数人で待ち構えていて、逃げようと背を向ければ背後からも集団で迫って来て、結果他勢に無勢で誘拐されるんじゃナイかしラ?』

リィがやけに具体的な事を言う。
森はとうの昔に抜けて来たのに。

「しかしそれは森の話だろう?」
『物陰に隠れて、ターゲットが街に入って一安心と思った時に不意打ちで眠らせて連れ去るってこともあるワヨネ』
「うむ。無きにしも非ずだろうな。人間どれだけ警戒していようと、見知った場所に辿り着けば気が緩んでしまうものだし」

何を隠そう、過去に勇者どもは、「王都という結界で守られた土地に魔族は立ち入ることすら出来ない。出来るはずがない」という勝手な安堵と思い込みから、我がちょくちょく王都に遊びに出かけても気付かなかった。正直教会だの、聖なるなんちゃらだの、魔を弾く結界だの、効かんし。

ともあれ、勇者ですら油断しまくるのだから、普通の子供なんて油断というか油断している事にすら気付かないだろう。

『若しくは普通に正面から、力技で絞め落として誘拐するって事もあるワ』

あんな風に。と、リィ示す先では、丁度家と家の影、町中の人の死角に引き込まれて、声を上げる間もなく布で口を塞がれ、暫くして気を失い、手足を縛られて麻布袋に放り込まれ、連れて行かれる子供の姿が。

正規の道を来たはずなのだが、何故町の外れの方に我は出て来ているのだろうか?

『それはご主人が、獣の方の正規の道を進んできちゃったからでショう?』

うむ!やはりそうか!通りで。マチルダ嬢がくれたマップの特別ガイドに載っている店が無いはずだ。

まあソレはともかくとして…。

……一部始終、見てしまった。手慣れているのか、余りにも無駄がない動きだ。
縛りの強さと結び目は残念な見れなかった。そっち方面のプロか判断つかない。ちょい遠いな。遠視魔法使えばよかった。

『いや何を残念がっているノヨ。あの子連れてかれちゃうワよ?』
「ん?………あ、誘拐か!リィが余りにも具体的に犯行手口を言うのが不思議だったが、実はどこかしらで見かけていたのだな!」

誘拐を放っておくわけにもいくまい。こっそりと後をつけながらリィとの話を続ける。

実は過去に何度か誰かを誘拐してるのかと思ってちょっと焦ったぞ。
でも我、納得。ついでに安堵。

『…ええ、見かけてたワ。というかご主人が道中でされそうになってた誘拐手口だけど』
「……なに!?」

我初耳。
そんな輩、いたっけな?
森に居たのは妙にガラの悪い木こり集団だったし、街で会ったのは親切な掃除人だったぞ?街で掃除中で凄く空気が埃っぽいからどうぞと口に当てる布をくれたのだ。

『あの盗賊崩れ共は、囲まれた瞬間ご主人が周りの木を秒で丸太に変えたから木こりだって嘘ついて逃げたノヨ。多分ご主人が魔法で一気に木を薙ぎ払ったから、異変に気付いた警邏隊が捕まえてる頃デショ』
「紛らわしいな。そのまま我にかかってくれば、腹に一発ずつ食らって気を失う事はあっても、警邏隊に捕まる事は無かっただろうに」
『悪い奴だから捕まって正解ヨ。
それから、町で会った親切な掃除人とやらだケド、ご主人の口と鼻を塞いだ布には即効性の睡眠薬、遅効性の痺れ薬の類が塗ってあったと思うわ』

あの胡散臭い野郎が言ってた、異臭を嗅がないようにする為に使って下さいっていうのはウソよ。と、リィがガチトーンで話す。そうか…そうだったのか。

「でも我、その類の薬も効かんしな」
『相手が悪過ぎたってヤツよネ。ご主人に薬が効かない事に驚いて逃げるの忘れて立ち尽くして、直ぐお縄になってたワ。前科があるのカモね』
「前科が有ろうが無かろうが、薬を使うとは何とも卑劣!」


そんな事を言ってる間に麻袋を担いだ男は街を抜けて近場の森の中へ。周囲を警戒しながら、生い茂った木の枝が重なり合った場所へと消えていった。

成る程、洞窟の入り口が木の枝で隠れているらしいな。つまり、此処がアジトという事だろう。いつぞや洞窟内を探った時と同じように、中へと魔力を広げていく。比較的浅い所に先程の男と思われる反応。それより更に奥の方に、数人。複数の小さな反応と、それを取り巻くように何人かがいる。…ん?……んんん?

『ご主人、どうしたノ?』
「…いやー、なんかちょっと、気持ち悪い反応がな」

手早く済ませないと不味そうなのでとりあえず、平和的解決(物理)でいくか。
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