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しおりを挟む「ね、ね、アリスちゃんは!?その服のデザイン、絶対カエラでしょ?!」
「う、うん。…まあ」
なぜだ。
「いーなぁ!ボクもカエラの服欲しい!あそこ基本的紹介制の貴族ブティックだからボク門前払いなんだよぉ~!
折角冒険者として知名度上げても何のイミも無くてさ!」
「じゃあ…今度行く時に、…一緒に」
何故、こうなった?
「ありがとぉおおお!アリスちゃん大好きぃ!」
間の机を無視して、マリムが身を乗り出して何なら机に乗り掛かって我に抱きついた。
…うむ。これはこれでなかなか…。
『ア リ ス 様?
私を放置だなんて、いけずにも程がございましてよ?』
ふわっとマリムから香るお菓子の甘い匂いに一瞬どうでも良くなりかけたが、ベリっとマリムを剥がして我を抱き込むようにして座り直したルシアにより、思考停止は阻止された。
「ありゃ?おねーさん嫉妬?」
『ふふふ。誰だって見知らぬ泥棒猫に主人を取られたら八つ裂きにしてやりたくなりますでしょう?』
「あはは。今まで八つ裂きにした事はあるけどされた事はないなぁー。…出来るモンならやってみ?」
『あらあら冗談に決まっておりますのに…。随分と血気盛んなお子様ですこと。マナーを身に付けて出直してくださいませ?』
「へぇー?粗野でごめんねぇ?ボク、根っからの庶民だからぁ、そーいうの疎くてさぁ?でもそういうの気にしなくていいから冒険者やってるんだよねぇ。同じ冒険者のアリスちゃんも、そうじゃないかなぁー?」
ねー?と笑いかけてくるマリム。
同じくらい笑顔でアリス様は寛容なお方ですからねぇと返しているルシア。
……バックには竜と虎が見える。間には鳴り止まぬ稲妻と雷鳴だ。
ザ・修羅場である。
…………なぜ?
えーっと、どうしてこうなったのだったか。
確か我は冒険者ギルドに着いて、変な依頼書見て、……このマリムに絡まれた。
そしてそのまま我の髪色だとか眼の色だとかが珍しいというお褒めから始まり、ファッションの話題に移り、最終的にこの間我の胴体をコルセットという凶器でギリギリまで服のために絞りまくったブティックオーナーの話になった。そう、そしてそこの服が気になっている彼女を勢いに負けて今度連れて行くことにした話だな。うむ。
……で、我に構われなすぎてルシアが拗ねて、マリムと笑顔のキャットファイトトーク…?
「ボク、毒持ちの魔物とかもふっつーに食べる"悪食"だからさぁ、気に入らない奴はけっこう何でも?それこそ人間だって食べたこともあるんだけど、精霊はハジメテかもぉ~。
……冗談だけどお」
『私、今では落ち着きましたけれど、昔はそれはそれはやんちゃでしたの。名の知れた武道家を迷宮の奥に閉じ込めて廃人にした事もございましたわ。強者を甚振る快感は、今でも忘れておりませんのよ?
……冗談ですけれど』
あはは。うふふ。という途切れぬ笑い声に気付いて、状況整理するのをやめて現実を見るが、何故か先程より状況悪化してる気がするのは我だけだろうか?
『ふぁーぁ…』
リィはいつも通り、我の頭の上で昼寝してる。相棒、我が意識飛んでる間は飛ばないでくれ。
「る、ルシア。我はお前を忘れていたわけではない。今回此処にきた手段(飛空艇)についても、お前がいたからこそ思い付いたのだ。感謝もしているし、お前がそばにいる事で男共から向けられる羨望の眼差しに優越感も感じることが出来て我は大変満足している。
そんなルシアの事を我が忘れて放置する訳がなかろう?」
これで怒りが収まるのかは不明だったが、とりあえず言うだけ言ってみる。
『そんな…!アリス様はこんなにも私の事を常に思っていてくださるのですね…!ありがとうございます……!』
ルシアは驚くほどチョロかった。
非常に嬉しそうに我を膝に乗せ直して、不機嫌の消え去ったただの笑顔で我を撫でている。うん、…もう拗ねるのやめて黙ってくれたから、それでいいや。機嫌も物凄い良さげだしな。
「むぅうう。アリスちゃんナデナデずるぃい。ボクもやりたい…」
羨ましいのはするほうなのか。
「すまんが、定員オーバーと思ってくれ。あと我、そんなに安くないのでな。撫でるのもハグも我の友人として認められてからにしてもらいたい」
…ルシアとミランダ嬢は初対面ゼロ時間でハグだったけど。
「えー?アリスちゃん認めてよぉ。ボクらもうすぐ同格になるんだしぃ。ね?ね?イイでしょ?ボクのこと、キライ…?」
うるうる。そんな音が聞こえそうなほど、大きな目をじっと我に向けてくる。う…ぐぐ…。
(女の子は)大好きですけど?
くるっとした目、小型犬を思わせるような愛くるしい顔立ち。心なしか耳が見えそ……ん?
「………同格?」
「あれ?聞いてないの?ほら、Sランクに昇格するでしょ?ボクは推薦者の1人で、"悪食"のマリムだよ。よろしくね、アリスちゃん」
空色の短い髪、同色の丸い瞳。低身長。ロリ系の顔立ちにはもっと似合いそうな服があると思うが、立ち寄る服屋やら装備の関係だろうか、元々選択肢が少ないため、少々カジュアルさが目立つ。
もう少し可愛らしい服装の方が似合う。間違いない。我と方向性が被るので、戦闘スタイルに問題が無いなら可愛いに振り切って欲しい。だって我、クラシックとロリータを調和させたような服装だし。可愛いを追い求めることに隙はないが、同じくらい上品路線も求めてるもん。
さて、総評。
「……仲良くするのはいい。だがその前に、1つ質問がある」
「な、なに…?」
我のただならぬ気配に、マリムがたじろいだ。
そう。緊張感を持て。これは今後の死活問題に関わってくるのだからな…!
「自分と我、どっちが可愛いと思う?」
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