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しおりを挟む我に全力を出してボロ負けしたラギアが配下に降るや否や、我に魔法を放ってしまっただの、無礼千万もう生きている価値がないだのと泣き出し取り乱したが、それを鎮圧した。スカートの裾がちょっと焦げた!すぐ復元したけど!!
「無駄な嘆きは要らん!」
「申し訳、ございません……」
……叱られてるのに何で若干嬉しそうなんだ。
ラギアは前世の我の忠実なる配下だった。(当時の名前はグレゴールな。)ラギアを再度我が配下とするにあたり、考えた筋書きが以下だ。
なんやかんやで敵意の消えた天才魔術師ラギア・グルヴェル。彼はどうやら幼い頃より伝説の魔王に憧憬の念を抱いていた為、彼のイメージを汚すような黒髪や紅目の人物を、変色魔法で別な髪色や目の色にする事で排除してきたらしい。
そんな折に、冒険者ギルドに新しく"魔王"の二つ名を付けられる予定のSランク冒険者がいると聞いた(潜り込ませてる部下が盗み聞いた)。急いで調べると何とびっくり、黒髪紅目で規格外の魔力、起こした事件は数知れず。あの迷宮で勇者の剣を発見したのもそうだと聞いて、怒り狂った。
それほどまでに彼にとっては魔王が特別だから。
しかし、実際我に会って全く通じない攻撃に素直に敬服。見た目はともかく彼にとっての魔王像とピッタリ重なった為、これはもう僕にしてもらうしかないと確信。
我に頼み込んで配下に加えてもらう事にした。
……という筋書きを考えたの、我じゃないからな。ラギアが勝手にそう決めたんだからな。
あの後、新しく(改めて)我の配下に降ったこの男は手早くリィ達を解毒、周りの使用人達を回復させると、そう宣った。
それを聞いたリィの一言は、
『アタシはもう驚かないワ…。ご主人の周辺、魔境だとは思うケド』
だった。別に我、勧誘はしたけど誘惑してないのに。仕えたいって割と勝手に皆寄ってきたクチのくせに。
「そういう訳で、私はアリス様の忠実なる僕にしていただいたラギア・グルヴェルだ。以降アリス様のお側に侍る。いくら私より先にアリス様に仕えていたからといって(羨ましい妬ましい)、私より役立てる者はこの中にはいないだろう(当然だがな)。見知りおかれずとも結構だ。(いつかアリス様の側から排除してやるから今のうちに束の間の栄誉に浸るがいい)よろしく」
料理長も呼び寄せて、改めて自己紹介したラギア。…なのだが、
『……どうシテかしラ。まったくよろしくする気が無さそうに見えるワ』
「喧嘩売りついでに挨拶をされているような気がするのですが」
『また増えましたのね…。アリス様ったら…。…いっそ閉じ込めてしまえば私だけのアリス様になるかしら…?』
何故か3名の不評を買っているらしかった。おかしいな?若干確かに不遜ではあるが、一般的な挨拶の筈なのだが。あとルシア、その発言はアウトだ。
「アリス様、私達に伏せてる事はございませんか?」
「いや全く」
『悩む素振りもなく即答されるト、余計疑われるって知ってたかしラ?』
知らん。だって料理長が、疑われたくない時はしっかりはっきり否定しましょうって言ってたもん!
パッと料理長に視線を移せば不自然過ぎるほど自然に目を逸らされた。そ、そんな…!
しかしそんな我を見捨てない忠臣もいるもので、ラギアが我の前に出てきた。
「アリス様がそうだと言うのならそうだ。異論は私が認めない」
「今回に関してアリス様が何か隠していることがあるなら聞きたいが、その意見には大いに賛同する」
「…ほう。噂に聞く"将軍"の同意が得られて光栄だな」
よろしくとラギアが料理長と握手した。
「ガドフ・ゼスタインだ」
「知っている。私の事はラギアでいい。爵位持ちだがアリス様の前では同格だろうからな」
うむうむ。仲良きことは良き事だ。
『日々ご主人の守りが固まっていくのはいい事だケド、ご主人の非常識にも拍車がかかりそうで頭が痛いワ』
「我、いつ非常識だった?」
『……自覚が全くないから、余計困るのヨね』
「まあでも我が非常識でも、まずい時はリィが止めてくれるのだろう?頼りにしているぞ、相棒」
『……クッ…!本心からの言葉なのが分かるから困るのヨね…!』
リィが顔を伏せてしまった。大丈夫だろうか?え?喜びに打ち震えているだけ?ならいっか。
「それで?結局のところこの料理達は毒入りなのか?」
「…いえ、きちんとアリス様の到着に合わせてシェフ達に作らせたものですが…?」
じゃあ食べて問題ないな。料理長を見れば渋い顔をしつつも、料理に罪はないといって許可してくれた。そう言う事なら…。
「いただきます」
我が食べている間、料理長がラギアに色々質問したいそうなのだ。その方がよかろうな。何せ、我に聞いても多分答えないし。その点ラギアなら何かの拍子に口を滑らすかも知れない。我の元配下なのでそれはないが。
「歳は?」
「17になったな。爵位は成人で継げるから驚くことでも無いだろう?」
「…7歳差か。……職務放棄をしているとか?」
「彼方此方で急に魔王を名乗り出そうとするバカが湧いて出てきたものだから、情報収集と根回しで忙しくてね。……仕事は趣味のための資金集め。私は趣味の嘘吐き狩りを優先していただけだよ。その仕事(特別魔術師)だって私はやりたくてしている訳ではないからな。今回で一件片付いたから早々に対処に戻るさ。出来る限りアリス様のお側に居たいからね」
「…アリス様の為ならばというやつか。気持ちは分かる」
「それに、私が対処を頼まれた件は殆ど終わっている」
他でもない、どうやら我がいつの間にやら解決していたらしい。
「算段がついているならその件についてはもういい。最後の質問だ」
お。意外と終わるの早い。
じゃあもう聞き耳立てなくていいか。デザートデザート。
「アリス様に侍ると抜かしたが、それは最終的にアリス様の伴侶になりたいということか?」
「アリス様がお許しくださるなら!」
「そうか。私より美味い料理が出せない男にアリス様はやらん」
『『……』』
もぎゅもぎゅ。ぷはぁ。次パスタ。甘いものの後ってどうしてこう塩辛いものが恋しくなるのだろうな。無限に食える。エクレアの次はフライドポテトを味わおうではないか。じゅるり。
「リィも食べられるもの食べてはどうだ?」
『…ご主人……』
『全くもって聞こえておりませんでしたのね……』
…………何が?
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